2005年10月18日
がんと向き合う
【第7回】選択はさまざま
「前立腺がん1」
がんの治療法を選択する時に、まず何を考えるべきなのか。静岡県立静岡がんセンター院長の鳶巣賢一先生が「その要素がすべて含まれているがん」と語るのが、前立腺がんだ。
前立腺がんは、手術、放射線治療、ホルモン療法といくつもの治療法があり、それぞれに効果がある。加えて、状態によっては治療をしないで経過を観察するという選択肢もあり得る。つまり、考え方次第でさまざまな選択があるのだ。
前立腺がんは今、日本でも急激に増えている。食生活の変化や人口の高齢化も一因とされるが、鳶巣先生が一番の要因と指摘するのは、腫瘍(しゅよう)マーカーの進歩。腫瘍マーカーは簡単にいえば、血液中に現れる目印のようなものだ。前立腺がんの場合、PSA(前立腺特異抗原)という非常に感度の高い腫瘍マーカーがある。そのおかげで、血液検査さえ受ければ、ごく早期から疑わしいがんを拾い上げることができるようになった。
「以前は、進行して骨に転移するようになって見つかることが多かったのですが、PSA検査が普及してから、過半数のがんが早期から中期で見つかるようになりました」という。
がんを治すという意味では、非常にありがたい進歩なのだが、ここから悩みも生まれてきた。前立腺がんの多くは進行が遅く、タチがいい。早期に見つかった場合、放置してもそれが転移して命にかかわるようになるまでには、10年以上かかるといわれている。潜在がんといって一生がんと気付かないような前立腺がんもある。
しかも、このがんは高齢者に多い。日本人の場合、50歳以降、年をとるほど前立腺がんが増える。70代になると3人に1人は前立腺がんを抱えるといわれている。つまり、老化と密接に関係したがんなのである。
とすると、例えば80歳を過ぎて早期の小さな前立腺がんが見つかった場合にどうするか。「全く無症状の人でも治療によって合併症による苦痛を抱えることもありえます。寿命を縮める危険も少ないのに、早期治療にこだわるべきかという問題が出てきたのです」。
◆前立腺 膀胱(ぼうこう)の出口にあり、尿道をくるむように存在する直径4センチほどの臓器。精液の成分である前立腺液をつくる。
October 18, 2005 08:57 AM
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