2005年10月10日
【第88回】臓器別体制に変革
「今後の期待」
アンチエイジング医学は再生医療、QOL改善医療、オーダーメード医療などとともに21世紀型医療といえるだろう。いずれもこれまでの医療が積極的に取り込めなかった分野である。
アンチエイジング医学の学術団体、日本抗加齢医学会理事の坪田一男・慶応義塾大学医学部教授は「アンチエイジング医学は学際的な色彩が濃いのが特徴です。いかに他分野の研究成果を取り込めるかが、今後の発展のキーになることは間違いありません」と話す。
坪田教授は角膜上皮の再生医療で世界的に知られるが、幹細胞から新しい細胞組織を作り出し、傷んだ部分を修復する再生医学の成果はアンチエイジングを実現させる重要な要素ととらえている。
現在、再生医学は急速に進展している。つい最近も心臓の筋肉(心筋)のもとになる幹細胞が人の心筋にあることが見つかり、分離することにも成功している。来年早々にも重症心臓病患者に対する心筋幹細胞の移植臨床研究が予定されている。
「アンチエイジング医学は病気を予防し、健康長寿を実現させるもの。でも万一病気になっても再生医療などの最先端医療できっちり治すことができれば医療はより豊かになる」と坪田教授。
またアンチエイジング医学の視点は、臓器別に分かれている治療体制の変革をもたらすかもしれない。統計的には白内障患者の死亡率はそうでない人より高い、というデータがある。白内障はフリーラジカル、活性酸素の影響が大きい。フリーラジカル、活性酸素は動脈硬化を促進し、心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞など命にかかわる病気の危険因子である。
「白内障の予防に抗酸化物質が役に立つという研究結果も少しずつ出始めています。白内障にアンチエイジング医学の視点に立つ予防法が確立すれば、それは動脈硬化などの全身の老化の予防にも役立つと考えられます」(坪田教授)。
東洋医学には異病同治という言葉もある。もとをただせば老化の促進を防止することが万能薬となる可能性もある。
「最終的に決め手となるのは医学的根拠、科学的根拠がどこまで解明されるかです。今後ともアンチエイジング医学に求められるものです」と坪田教授は締めくくる。
【ジャーナリスト 小野隆司】
◆幹細胞 臓器や組織ごとに存在し、必要な細胞を供給する“種”のような細胞。神経に変化するものを神経幹細胞などと呼ぶ。また、あらゆる細胞に変化する幹細胞をES細胞といい、受精卵から取り出せる。人に由来するES細胞の研究開発では生命倫理上の問題から文部科学省は慎重な配慮を求める指針を出している。
October 10, 2005 10:54 AM
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