2005年10月30日
がんと向き合う
【第18回】意欲が回復への後押し
「大空真弓の選択(4)」
仕事に対する意欲が、どれだけ病気の克服に力を発揮するか、大空真弓さんの体験が物語っている。
大空さんの場合、「闘病」という言葉に漂う悲愴(ひそう)感は全くない。乳がんの手術が終わると、その直後から腕を上げる練習を始めている。乳がん手術で脇の下のリンパ節を切除すると、腕が上がりにくくなることが多い。そのため、ゆっくりとリハビリが始められるのだが、大空さんは早くから自主訓練を始めていたようだ。
好奇心も含めてリハビリのために、病院中を歩き回り、探索して歩くのも日課。大空さんは、なるべく心配をかけたくないからと、病気のことは数人にしか伝えなかった。マスコミに気付かれたくないからと病室の名前も本名にしてもらった。それなのに、本人は無防備に院内を歩き回っていたのだ。こういう愛すべき人柄が、多くの人の励みにもなっていたらしい。
しかし、こうした努力の根底にあるのも仕事への強い思いだった。術後10日目からは、病院からドラマの撮影や舞台のけいこに通い始めた。かわいがっていためいの結婚式に参列した時には、周囲の反応から病気やつれもないので、舞台は大丈夫と判断している。
マスコミに知られることを恐れたのも、舞台の共演者に話が伝わり、「ささいなことでも、私をかばうようなそぶりが出たり、不自然なしぐさやぎこちなさが出ると耐えられない」と考えたからだそうだ。女優魂というのだろうか。
この時、大空さんは宮尾登美子さん原作の「蔵」という舞台に出演することが決まっていた。とりわけ思い入れも深い舞台だった。腕を上げるリハビリや病院内の階段を上下して体を訓練していたのも、この舞台が当面の目標としてあったからだ。
そして、大空さんは乳がんのことを誰一人共演者やスタッフに気付かれることなく、無事2カ月間の公演を果たしたのである。仕事に限らず、何かへの強い愛着や責任感、といったものは、病気の回復をさまざまな形で後押ししてくれるのだと思う。
◆リンパ節の検査 今は疑わしい場合は、がんの病巣から最初にがん細胞が流れ込むリンパ節をとって検査をし、転移がなければ脇の下のリンパ節を全部かきとることはない。
October 30, 2005 10:06 AM
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