2005年10月31日
2005年10月31日
【第19回】信頼できる医師に一任
「大空真弓の選択(5)」
乳がんを無事克服した大空真弓さんだったが、それはがんの序幕だった。その2年と1カ月後、01年1月には胃がん、03年には食道がんと診断された。胃がんは2度告知されているから、5年間に4つのがんを経験したことになる。
再発や転移ではなく、あらためてがんが発生する「多重がん」だった。がんが治るようになって、複数のがんを経験する人も増えている。大空さんの場合、いずれも早期に発見されているので、胃がんは内視鏡で切除できたし、食道がんも通常ならば手術になるところを、医師たちが悩んだ揚げ句、内視鏡での切除となった。
これだけ多くのがんを病み、家系的にもがん死が多いとなると、相当がんについても勉強したのではないかと思った。ところが、大空さんは「医療のことは分からないから」とあっけらかんとしている。食道がんの治療法で、医師たちが討論していた間も、大空さんはのびのびと舞台に集中していた。
この平静さは、どこからくるのだろうか。大空さんは、何でも話せる友人をつくること、そして信頼できる医師との巡り合いだという。信頼できる医師の言葉には、面倒な質問はしないで素直に従う。
大空さんは若いころ、盲腸の手術で麻酔の失敗から脊髄(せきずい)液が漏出。激しい頭痛のためにはってトイレに行くほどつらい経験をしている。病院や医師によってひどいことになるのもよく分かっているのだ。大勢の人に会って人を見る目も養われた。その目で見て、今回治療にあたった医師たちを大空さんは全面的に信頼している。
信頼しているから、多少痛みがあろうが、苦しかろうが治療に文句は言わない。だから、一層信頼関係が増していく。そんなサイクルができているようだった。
信頼する医師に巡り合えたら、専門家であるその人にすべてを任せる。それも立派な治療の選択肢であると思う。今、大空さんは舞台「細雪」(27日から明治座)に向かって、また走っている。
◆死生観 大空さんは死に対する恐怖もないと語っている。「三浦綾子さんなど素晴らしい生き方をされた方も見ていますし、大事なのは命をどう使うかです」。尊厳死協会にも入会している。
October 31, 2005 10:17 AM | トラックバック (0)
2005年10月30日
2005年10月30日
【第18回】意欲が回復への後押し
「大空真弓の選択(4)」
仕事に対する意欲が、どれだけ病気の克服に力を発揮するか、大空真弓さんの体験が物語っている。
大空さんの場合、「闘病」という言葉に漂う悲愴(ひそう)感は全くない。乳がんの手術が終わると、その直後から腕を上げる練習を始めている。乳がん手術で脇の下のリンパ節を切除すると、腕が上がりにくくなることが多い。そのため、ゆっくりとリハビリが始められるのだが、大空さんは早くから自主訓練を始めていたようだ。
好奇心も含めてリハビリのために、病院中を歩き回り、探索して歩くのも日課。大空さんは、なるべく心配をかけたくないからと、病気のことは数人にしか伝えなかった。マスコミに気付かれたくないからと病室の名前も本名にしてもらった。それなのに、本人は無防備に院内を歩き回っていたのだ。こういう愛すべき人柄が、多くの人の励みにもなっていたらしい。
しかし、こうした努力の根底にあるのも仕事への強い思いだった。術後10日目からは、病院からドラマの撮影や舞台のけいこに通い始めた。かわいがっていためいの結婚式に参列した時には、周囲の反応から病気やつれもないので、舞台は大丈夫と判断している。
マスコミに知られることを恐れたのも、舞台の共演者に話が伝わり、「ささいなことでも、私をかばうようなそぶりが出たり、不自然なしぐさやぎこちなさが出ると耐えられない」と考えたからだそうだ。女優魂というのだろうか。
この時、大空さんは宮尾登美子さん原作の「蔵」という舞台に出演することが決まっていた。とりわけ思い入れも深い舞台だった。腕を上げるリハビリや病院内の階段を上下して体を訓練していたのも、この舞台が当面の目標としてあったからだ。
そして、大空さんは乳がんのことを誰一人共演者やスタッフに気付かれることなく、無事2カ月間の公演を果たしたのである。仕事に限らず、何かへの強い愛着や責任感、といったものは、病気の回復をさまざまな形で後押ししてくれるのだと思う。
◆リンパ節の検査 今は疑わしい場合は、がんの病巣から最初にがん細胞が流れ込むリンパ節をとって検査をし、転移がなければ脇の下のリンパ節を全部かきとることはない。
October 30, 2005 10:06 AM | トラックバック (0)
2005年10月29日
2005年10月29日
【第17回】短期入院希望して乳房切除
「大空真弓の選択(3)」
今は、がん治療はできるだけ臓器を残して治療するようになっている。乳がんは、その中でも代表的ながんだ。多くの人が、乳房の温存を望む。ところが、大空真弓さんの決断は、実に「潔い」ものだった。
大空さんの場合、左乳房にできたがんは、乳首に近く、多少技術的に難しいけれど、乳首を残して乳房を温存することは可能という説明だったそうだ。昔は、乳房温存のためには、乳首からがんが何センチ離れていることといった条件があったが、今は手術技術も進んでいる。
乳房温存療法は、がんの摘出後、補助的に放射線照射が必要になる。手術で残った可能性のあるがんを放射線でたたいて完成する治療法なのである。ところが、ここで大空さんがあげた希望が、極めてユニークだ。
仕事が忙しいので一番入院期間が短い手術法を希望する。これを一番の前提にした。さらに、放射線照射によって入院・治療期間が延びるのならば願い下げ、脱毛などの副作用があると聞くので抗がん剤も使わない、アレルギー体質なのでほかの薬も余計なものは使わない。
明確な意思表示である。抗がん剤や放射線治療も行わないとなれば、乳房を切断する乳房切除しか方法はない。これが、いろいろ条件をつけて、それでも乳房を残したいというのならば、ただのわがままである。しかし、大空さんは自分の希望をはっきりと伝え、医師は医学的にそれにかなう方法として乳房切除を提示した。「本当に温存法は望まないのですね」と言う医師の言葉に、大空さんは「バッサリ切ってください」と伝えている。
つまり、希望を出すと同時に乳房を失うという結果もしっかり引き受けている。医師と患者の意思疎通、連携が実にうまくいったケースと言えるだろう。
結局、大空さんは乳房の再建術も入院期間が延びるという理由で、受けないことにした。こうして治療は、手術だけで再建術もなしと決定したのである。
◆放射線治療 温存療法の場合は、手術でがんを摘出したあとに通院で行われる。通常は週に5日、1カ月半ほど病院に通うことになる。
October 29, 2005 12:23 PM | トラックバック (0)
2005年10月28日
2005年10月28日
【第16回】まず病巣を摘出して生検
「大空真弓の選択(2)」
テレビが一家だんらんの象徴であった時代。大空真弓さんはよくちょっとそそっかしいけれど、気丈で明るく頼りになる存在、といった役柄を演じていた。
大空さんほど、そのイメージと実像が近い人も珍しいのではないだろうか。あれほど乳がんの告知を冷静に受け入れた人が、事務所に連絡した時は子宮がんと伝えている。自分でも変だと思って知人に連絡し、「そうだ、乳がんだったっけ」と慌てて訂正している。
しかし、治療方針となると、大空さんには確固とした信念があった。まず仕事、そして周囲の人にできるだけ迷惑をかけないことである。それが、治療方針を決める判断基準だった。
大空さんの乳がんは、「粘液がん」という特殊なタイプだったそうだ。シコリがブヨブヨしていたのは、粘液がゼリー状の塊になり、その中にがん細胞があったからだ。がんとしてのタチは悪くないが、治療の前に、まずこの塊を摘出し、細胞の顔つきや広がりを確認しなければならない。生検である。
ところが、大空さんの左乳房にできたゼリー状の塊は、すでに直径5センチ近い大きさになっていた。これを取り出すには全身麻酔が必要になる。それで、もしがんが広がっていないと分かれば、それ以上の手術は必要ない。
だが、もしがん細胞が広がっていた場合には、あらためて手術が必要になる。といっても、全身麻酔で生検を受ければ、翌日手術というわけにはいかない。つまり、入院期間が長くなる。可能性としてはこちらの方が強かった。
それが、大空さんには嫌だったという。「当時はテレビの連続ドラマの収録中で、大事な舞台も控えていました。とても、そんな時間はなかったのです」。
結論は、病巣を摘出して生検を行い、がんの広がりが確認されれば、そのまま乳がんの手術に入るというものだった。
◆生検 組織を摘出して顕微鏡で調べ、がんかどうかを確定する検査。針を刺して吸引する方法と組織を外科的に摘出する方法があるが、大空さんの場合は後者を全身麻酔で行う必要があった。
October 28, 2005 10:00 AM | トラックバック (0)
2005年10月27日
2005年10月27日
【第15回】くよくよ思い煩わない生き方
「大空真弓の選択(1)」
いくらがんが不治の病ではなくなったとはいえ、自分が「がん」と診断されて平常でいられる人はそうは多くないだろう。
ところが、多くの患者を診てきた医師でさえ、なぜこの人は、こんなに冷静でいられるのだろうと不思議に感じたというのが、女優の大空真弓さんだ。大空さんは98年11月末、最初のがん告知を受けた。乳がんだった。その時の思いをこう語っている。
「私の家は、がん家系なので必ず自分もがんになると思っていました。それが、私の場合はおっぱいにきたのかと、反射的にそう思いました」。
大空さんの家族は、4歳上の姉が29歳の時に胃がんで亡くなり、母親も肝臓がんで亡くなっている。当時存命だった父親も胃がんの手術を受けていた。4人家族の中で、大空さん以外は全員がんになっていた。やはり自分にもそれがきたのだな、そんな思いだったようだ。
実は乳がんが発見されたのも、そうした思いと無縁ではなかった。大空さんはがん家系であるし、舞台が始まると休めないからと、半年に1度は人間ドックを受けていた。最初はここで「シコリ」が発見されたのである。精密検査の結果は良性。この時から定期的な観察が続けられた。異変が見つかってがんと診断されたのはそれから3年後のことだ。
この間、大空さん自身も左の乳房の「シコリ」には気付いていた。といっても、このシコリはよく本で読むような固いクリッとしたものではなく、ブヨブヨしていた。しかも、病院では良性と診断されている。
がん家系であるからこそ、シコリに神経質になりそうなものだが、そこが大空さんらしいところなのだろう。乳がんでは入浴時の自己検診が勧められるが、アレルギー体質の大空さんは入浴はもっぱらシャワー。それもあって自己検診をすることもなかったという。
するべきことはして、くよくよ思い煩わない。それが大空さんの生き方のようにみえた。
◆大空真弓 1958年新東宝入社。「坊ちゃん社員」でデビュー。映画、テレビ、舞台で活躍中。90年、菊田一夫賞受賞。最近、がん体験を「大空真弓『多重がん』」撃退中」(宝島社)として出版した。
October 27, 2005 10:34 AM | トラックバック (0)
2005年10月26日
2005年10月26日
【第14回】人生観に基づいて塾考
「前立腺がん8」
前立腺がんがリンパ節や骨などに転移を起こした場合、力を発揮してくれるのがホルモン療法だ。放射線療法や手術は、局所のがんにしか効果がないが、ホルモン療法は全身に効果がある。静岡県立静岡がんセンター院長の鳶巣賢一先生によると、「骨転移して、腰痛や尿が出ないといった症状に苦しんでいた人でも驚くほど元気になる」という。
ホルモン療法には、どのような方法があるのだろうか。鳶巣先生によると、昔から行われているのは男性ホルモンを分泌する精巣を取る精巣摘出術。永久に男性ホルモンの分泌を止められるのが利点だが、精神的な苦痛もあるし、最近は休薬期間をおいてホルモン療法を行う間欠療法が普及してきたので、あまり行われなくなった。
現在の中心は、LHRHアナログという注射薬。精巣をとるのと同じ効果がある。これを月に1回か3カ月に一度注射する。ホルモン療法の宿命で、やがてこの薬も効かなくなるが、男性ホルモンの働きを抑える抗男性ホルモン剤の飲み薬もある。それがダメでもエストロゲンという女性ホルモン剤を使えば、またPSAの値が下がることもある。
それでもPSAが上がってきたらステロイド剤を使う。かなり厳しい状態の人でも食欲が出たり、痛みが軽くなるそうだ。こうした治療によって、「骨にもリンパ節にもたくさん転移がある人でも平均して2年、リンパ節にいくつか転移がある程度ならば10年生存率は2~3割。5年生存率は5割を超えるでしょう」と鳶巣先生は語っている。転移しても、なお治療で元気に過ごせる時間が長いのが、前立腺がんなのである。
鳶巣先生は「前立腺がんは治療の選択肢が広く、患者さんが置かれた状況で選択肢も変わってきます。まず、がん細胞の悪性度、病巣の広がり、各治療法の利点と欠点を知り、自分の生き方や人生観に基づいて治療法を選択することが大切です」と語っている。進行が遅いので、3カ月くらいは時間をかけて考えてもいいそうだ。
◆陽子線治療 陽子線を使った放射線療法。従来の放射線に比べてがんにエネルギーを集中できるので、副作用が少なく効果も手術に匹敵する。早期の前立腺がんが対象で費用は280万円ほど。
October 26, 2005 10:13 AM | トラックバック (0)
2005年10月25日
2005年10月25日
【第13回】ホルモン効果UPの間欠療法
「前立腺がん7」
がんが、実際にどこまで広がっているか。ある程度検査で推測はできても、本当のところは切った組織を顕微鏡で調べないと分からない。
例えば、前立腺内にとどまると思われたがんでも、切除した組織の切り口にがん細胞が見つかることがある。PSAの値が20を超えていたり、がん細胞のタチが悪いタイプにこういう例がある。その場合には、放射線かホルモン療法を補助的に行う。しかし、静岡県立静岡がんセンター院長の鳶巣賢一先生によると、2つの治療法は全く意味が違うという。
「放射線治療は、照射した範囲にあるがん細胞を全滅させる可能性がありますが、照射範囲の外に残ったがん細胞には効果がありません。一方、ホルモン療法は全身的な効果が期待できますが、すべてのがん細胞を死滅させることはできないと考えられています。どちらの治療が適しているかは人により異なるのです」。
では、ホルモン療法はどのくらいの期間がんを抑え込めるのだろうか。鳶巣先生によると、一生の間に効く期間は人によって決まっているらしい。そこで、最近はずっと続けるのではなく、PSAの値が高くなったらホルモン療法を行い、下がったら休むという治療を繰り返すそうだ。これが間欠療法だ。「ホルモン療法の効果を長続きさせ、副作用も軽くできる可能性がある」そうだ。
一方、前立腺の外にがんが食い込んでくると、転移の可能性も出てくる。この場合は、手術や放射線治療だけで治すのは難しい。ホルモン療法と放射線療法の併用が、世界的な標準治療。放射線を照射してからホルモン療法を行うことが多い。鳶巣先生によると、ホルモン療法でがんを縮小させてから放射線療法を行うと、放射線の照射範囲が狭くてすむので、これもなかなかいいそうだ。あるいは、ホルモン療法と手術を組み合わせたり、3つの治療法を組み合わせることもある。
まだ、この段階になると決まった治療法はないが、いろいろな治療法を組み合わせることで、10年生存率は7~8割になる。前立腺がんは、早期ではなくてもそう悲観する必要はないのだ。
◆画像診断 前立腺がんは早期には塊にならずにパラパラと散っているので、画像診断では捕らえにくい。早期と診断しても、手術で摘出した組織をみると、前立腺の外に出ている場合もある。
October 25, 2005 09:12 AM | トラックバック (0)
2005年10月24日
2005年10月24日
【第12回】抑え込むホルモン療法
「前立腺がん6」
手術、放射線に続く前立腺がんの第3の治療法が、ホルモン療法だ。前立腺がんの多くは、男性ホルモンの刺激で成長する。そこで、ホルモン療法は、男性ホルモンの分泌を抑えたり、その働きを阻止してがんを抑え込む。
実際に、前立腺がんにはホルモン療法がよく効く。しかし、ここで間違ってはいけないのは、ホルモン療法は「がんを治すのではなく、がんを抑え込む治療法」であることだ。静岡県立静岡がんセンター院長の鳶巣賢一先生は「ホルモン療法は、一時的にがんを抑えるだけで長い間にはいずれがんが再燃します。ですから、転移がない限り第1選択にはなりえないのです」と語っている。
第1選択とは、一番最初に勧められる治療法といった意味だ。ホルモン療法は、薬による治療なので安全で体の負担も少ない。そのため、昔は早期でもホルモン療法が行われていたそうだ。ところが、ホルモン療法にも副作用はある。男性ホルモンの働きを抑え込んでしまうので、100%勃起(ぼっき)障害が起こる。性的な意欲も失われ、乳房が女性のように膨らむこともある。
さらに、女性の更年期障害と同じようにのぼせやほてり、発汗、不眠、うつなどの症状が現れる。これが、長期になるとかなりつらいのだという。「アクティブに動いている人には、集中力も落ちるし眠れないなど大変なのです。更年期障害と似ているといっても、健康な女性の場合とは違うのです」。
前立腺の早期がんは先が長い。5年も10年もホルモン療法を続けていると、高血圧や高脂血症が助長され、心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞のリスクも高まると言われている。
「高齢で心臓にも特に問題がない、手術も放射線も嫌という人には、早期でもホルモン療法という選択肢もあり得ます。でも、若い人はホルモン療法で一時的にがんを抑えることはできても一生逃げ切ることはできないのです」と鳶巣先生は語っている。
ホルモン療法が本当の力を発揮するのは、もう少し進んだ段階だ。
【医療ジャーナリスト祢津加奈子】
◆がんの再燃 ホルモン療法を続けていると、やがてホルモン療法の効かないがん細胞が生き残り、これが増殖してまた大きくなると考えられる。
October 24, 2005 09:51 AM | トラックバック (0)
2005年10月23日
2005年10月23日
【番外編】科学的根拠に基づく欧米の「結論」
「世界の標準治療と日本の標準治療」
今、医療の世界では「EBM」という言葉が盛んに使われている。日本語に訳すと、科学的根拠に基づく治療。
昔は、経験に基づく治療や権威の勧める治療法が幅を利かせることもあったが、治療法が限られていたので、それほど大きな問題になることも少なかったのである。しかし、今は違う。
がん治療でも、新しい抗がん剤が次々と開発され、組み合わせ方もいろいろ試されている。手術もあれば放射線もある。それを併用する治療法もある。いったい、今の時点でどの治療法がベストと言えるのか、医師でさえ判断するのが難しくなっているという。
そこで、世界的な規模で大勢の患者さんに参加してもらい、治療法を比較する試験を実施。その結果、一番治療成績が高かったものが、その時点での標準治療とされている。つまり、科学的根拠に基づいた治療である。
ところが、実際には世界的にはこれが標準治療だけれど、日本ではこっちが一般的というケースが結構ある。特に手術や放射線治療は、個人の技術力の差もあるし、文化や歴史、体格の差などもあって、抗がん剤ほど簡単には比較しにくい。
例えば、日本では昔から手術が優先して考えられてきた。転移の可能性があれば、米粒より小さなリンパ節も丁寧にかきとる。しかし、欧米ではそこまで複雑な手術をすることは少なく、放射線治療が好んで行われてきた。
歴史も背景も異なるので、なかなかその結果を単純に比較することが難しいこともあるのだ。しかし、逆にすでに世界的な比較試験で結論が出ているのに、日本でその結果が十分に受け入れられていない場合もある。
これが今の標準的な治療法ですと言われた場合には、世界的に認められた標準治療なのか、違うとすればなぜ別の治療法がいいと考えられるのか、その理由を聞いてみることも必要なのである。
◆臨床試験 標準治療の基礎となる臨床試験は欧米で行われたものが多い。日本人にも同じ結果が当てはまるのかが常に問題となってきたが、最近ようやく日本でも科学的な臨床試験が行われるようになってきた。
October 23, 2005 10:23 AM | トラックバック (0)
2005年10月22日
2005年10月22日
【第11回】障害少ない小線源療法
「前立腺がん5」
がんが前立腺内にとどまる早期の前立腺がんの場合、放射線治療も選択肢になる。
放射線治療は、手術に比べて若干治療成績が落ちるが、「尿失禁や勃起(ぼっき)障害など手術で起こるような合併症の危険が少ないこと、また手術に比べて体にかかる負担も少ないので、高齢者でも受けられるのが長所です」と静岡県立静岡がんセンター院長の鳶巣賢一先生は語っている。
日本では、まだ外からがんの病巣に放射線を照射する外照射という方法が一般的だ。この方法だと、放射線の副作用で治療中や治療後2~3カ月は、直腸から出血したり、排便時の痛みが出ることが多い。また、治療後10年以上経過したあとにも、まれとはいえ直腸からの出血や排尿障害などの晩期合併症が起こることがある。
これらは、いずれも放射線ががん周囲の臓器にかかることで起こる障害だ。しかし、最近は外照射でも原体照射や強度変調放射線治療など、がんの病巣に放射線をより集中させる照射法が生まれている。まだ行える病院は限られているが、こうした方法だと、放射線による合併症は低く抑えられ、治療効果は高まる。よって「手術に匹敵する効果を上げる」までになっているのだ。
一方、早期で性格もおとなしい前立腺がん(低危険度群)ならば、小線源療法も選択可能だ。これは、前立腺の中に低い線量の放射線を出す線源を埋め込み、前立腺内部から放射線治療を行う方法。小線源療法は、放射線を前立腺に集中させることができるので、より大量の放射線を前立腺に照射することができる。
その結果、治療成績も手術に並ぶといわれている。かつ、放射線障害が起こる率も非常に低くなっている。アメリカなどでは、早期の前立腺がんに手術と半々の割合で行われているそうだ。
「放射線治療は、治療成績で手術に勝ることはありませんが、かなり拮抗(きっこう)するところまできています。あとは、その長所と短所をどう考えるかです」と鳶巣先生は語っている。
◆治療期間 一般的な外照射の場合は、2カ月間の通院が必要。小線源療法(永久留置)の場合は、線源を前立腺内に埋め込むのに2時間ほどかかる。入院期間は3日ほど。
October 22, 2005 09:54 AM | トラックバック (0)
2005年10月21日
2005年10月21日
【第10回】手術で治る率UPも合併症の危険
「前立腺がん4」
がんが前立腺内にとどまる場合、基本的には手術と放射線治療という2つの選択肢がある。
手術のメリットは、何といっても治る率が高いことだ。前立腺がんの場合、進行が遅いので10年生存率ががんが治った目安になる。静岡県立静岡がんセンター院長の鳶巣賢一先生によると、「手術による10年生存率は90%を超える」と言う。ちなみに放射線治療では、80%とされている。
ただし、手術の場合は入院期間も含めて1カ月ぐらいは休養をとる必要がある。さらに尿もれや勃起(ぼっき)障害などの合併症が出る危険性がある。もっとも、鳶巣先生によると「最近では、手術も進歩し、日常生活に支障が出るほどの尿漏れが起こる人は1~2%」だそうだ。
しかし、勃起障害の方はかなりの比率で起こる。勃起機能をつかさどる神経を残すことができれば、勃起機能は残せるのだが、この神経は前立腺のすぐ両脇を走っている。そのため、無理に残すとがんを取り残す危険も出てくる。したがって、ごく早期でもない限り、勃起障害が起こると考えた方がいい。
こうした合併症と治る確率の高さをどう考えるかだ。この時期だと、今は腹腔(ふくくう)鏡下の手術も注目されている。メスで腹部を切開する代わりに、孔(あな)をあけて腹腔鏡という内視鏡を挿入し、手術と同じように前立腺を切除する方法だ。傷が小さく痛みも少ない、入院期間も短いというのがメリット。しかし、鳶巣先生は「いずれは、腹腔鏡下手術の方向に行くと思いますが、今はまだ過渡期。技術の差が大きすぎます」と語っている。
もともと前立腺の手術はあまり痛みが強いわけではないらしいが、やはり問題は医師による技術の差が大きいことだ。腹腔鏡の場合、狭い視野の中で手術をするので、不慣れな人だと尿漏れなどの合併症を起こす危険も高くなる。つまり、みんなが一定以上のレベルに達しないと、標準的な治療とはいえないというのである。
◆前立腺の手術 前立腺と精のうを、前立腺内部を走る尿道と一緒に丸ごと切除し、膀胱(ぼうこう)と切断した尿道の端をつなげる。平均3~4時間の手術で、入院期間は2週間ほど。
October 21, 2005 10:01 AM | トラックバック (0)
2005年10月20日
2005年10月20日
【第9回】治療せずに共存する方法
「前立腺がん3」
前立腺がんの場合、前立腺の中にとどまるごく早期のがんで、性質もおとなしい場合、治療をしないで経過をみるという選択肢もある。といっても、これはその人の年齢や考え方次第。
静岡県立静岡がんセンター院長の鳶巣賢一先生は「がんで苦しい思いをしないのならば、上手に共存できればよしとする、1つの哲学です」と説明している。前立腺がんは、かなり進むまでほとんど症状がない。それならば、あえて治療で合併症などの危険を冒すよりは、がんとうまく付き合っていこうという考え方だ。
特にこうした選択肢も考えられるのが高齢者。「期待できる余命とがんの進行状態、治療で起こり得る合併症の危険などを勘案して、もう少しがんが進んだ状態でも無治療を選ぶ場合もあります」と鳶巣先生は語っている。同じ早期の小さながんでも、若い人にはこういう考え方は成り立たない。もっとも「大事な時期で仕事を中断できないといった場合、若い人でも2~3年は大丈夫だろうという予測のもとに一定期間経過を観察することはある」そうだ。
また、治療をしないといっても、今は2つの方法がある。1つは、何か症状が出るまでは経過を観察するだけで治療をしないという方法。前立腺がんの場合、それからでもがんとの共存を目指して打つ手はある。もう1つは、厳重に経過をみて、あるところで治療を始めるという考え方だ。
具体的には、「PSAのダブリングタイムを指標にすることが多い」と鳶巣先生。ダブリングタイムというのは、倍になる時間のこと。例えば、PSAの値が5から10になるまでに5年かかったとすると、あまり心配がない。しかし、これが2年未満で倍になったとすると要注意。同じPSA値でもがんが成長する勢いが強い可能性があるからだ。がんの大きさやタチの変化をチェックして、治療を開始することもある。つまり、ある条件を決めて経過をみる。最近はこのタイプの「無治療」が増えているそうだ。もちろん、高齢でも最初から治療するという選択肢もある。
◆無治療という選択 鳶巣先生によると、高齢者の場合、かなり進んだがんでも何もしないでいいという人から、放置しても大過ないと思われる小さながんでも手術して欲しいという人までさまざま。
October 20, 2005 10:45 AM | トラックバック (0)
2005年10月19日
2005年10月19日
【第8回】低危険群は経過観察
「前立腺がん2」
静岡県立静岡がんセンター院長の鳶巣賢一先生によると、「早期の前立腺がんには、治療をしないで経過を観察するという選択肢もあり得る」という。
これは、具体的にはどういうケースなのだろうか。前立腺がんには、PSAという非常に感度の高い腫瘍(しゅよう)マーカーがある。PSAは、がんの目印のようなもので、早期発見に威力を発揮するだけではなく、がんが大きくなるほど数値も上がるとされている。つまり、がんが前立腺という土俵の中にとどまっているのか、土俵を割って外に出ているのか、あるいは遠くの観客席まで飛んでいるのか、おおよその進行度を知る目安にもなる。
といっても、PSAは目安で個人差も大きい。特に、血清1ミリリットル中に含まれるPSAが10ナノグラム以下の場合、グレーゾーンといわれ、がんが見つかる人は3~4割しかない。そこで、PSAで異常があった場合には、前立腺に満遍なく針を刺して組織をとり、顕微鏡でがん細胞の有無をみる。これが生検と言われる検査だ。
生検によって、がんかどうかが最終的に判断できるので、これは確定診断といわれる。それだけではなく、がん細胞の顔つきをみることで、がんとしてのタチ(組織分化度)、つまり前立腺がんの中でものんびりしたがんか、足の早いがんなのかも分かる。
そこで、最近は転移のない前立腺がんは、PSAの値と生検でみたがんのタチ、さらにがんがどこまで広がっているか(臨床病期)という3つの要素から、治療方針を決めることが多いそうだ。
実際には、低危険度群、中危険度群、高危険度群という3つのグループに分類される。この中で、治療をしないという選択肢もあり得ると鳶巣先生が言うのが、低危険度群。PSAの値が10ナノグラム以下のおとなしいがんで、前立腺の中にとどまっていると思われるものだ。分かりやすく言えば、ごく早期の小さくておとなしいがんだ。
◆PSA値 血清1ミリリットルあたりに含まれるPSAの量。個人差も大きいが、4ナノグラム以下が正常とされる。ただし、前立腺がんに特異的な目印ではなく、前立腺に特異的な目印なので、前立腺肥大や前立腺炎でも上昇する。
October 19, 2005 09:47 AM | トラックバック (0)
2005年10月18日
2005年10月18日
【第7回】選択はさまざま
「前立腺がん1」
がんの治療法を選択する時に、まず何を考えるべきなのか。静岡県立静岡がんセンター院長の鳶巣賢一先生が「その要素がすべて含まれているがん」と語るのが、前立腺がんだ。
前立腺がんは、手術、放射線治療、ホルモン療法といくつもの治療法があり、それぞれに効果がある。加えて、状態によっては治療をしないで経過を観察するという選択肢もあり得る。つまり、考え方次第でさまざまな選択があるのだ。
前立腺がんは今、日本でも急激に増えている。食生活の変化や人口の高齢化も一因とされるが、鳶巣先生が一番の要因と指摘するのは、腫瘍(しゅよう)マーカーの進歩。腫瘍マーカーは簡単にいえば、血液中に現れる目印のようなものだ。前立腺がんの場合、PSA(前立腺特異抗原)という非常に感度の高い腫瘍マーカーがある。そのおかげで、血液検査さえ受ければ、ごく早期から疑わしいがんを拾い上げることができるようになった。
「以前は、進行して骨に転移するようになって見つかることが多かったのですが、PSA検査が普及してから、過半数のがんが早期から中期で見つかるようになりました」という。
がんを治すという意味では、非常にありがたい進歩なのだが、ここから悩みも生まれてきた。前立腺がんの多くは進行が遅く、タチがいい。早期に見つかった場合、放置してもそれが転移して命にかかわるようになるまでには、10年以上かかるといわれている。潜在がんといって一生がんと気付かないような前立腺がんもある。
しかも、このがんは高齢者に多い。日本人の場合、50歳以降、年をとるほど前立腺がんが増える。70代になると3人に1人は前立腺がんを抱えるといわれている。つまり、老化と密接に関係したがんなのである。
とすると、例えば80歳を過ぎて早期の小さな前立腺がんが見つかった場合にどうするか。「全く無症状の人でも治療によって合併症による苦痛を抱えることもありえます。寿命を縮める危険も少ないのに、早期治療にこだわるべきかという問題が出てきたのです」。
◆前立腺 膀胱(ぼうこう)の出口にあり、尿道をくるむように存在する直径4センチほどの臓器。精液の成分である前立腺液をつくる。
October 18, 2005 08:57 AM | トラックバック (0)
2005年10月17日
2005年10月17日
【第6回】化学療法は専門家に確認を
「セカンドオピニオン」
いざ、セカンドオピニオンを受けようと考えても、どこで誰に話を聞けばいいのか。たいていの人が迷うのではないだろうか。
実際には、がんの種類や進行度によっても、話を聞くべき専門家は変わってくる。例えば、大腸がんの場合、早期ならば最初は腹腔(ふくくう)鏡で手術ができるか開腹手術が必要かというところで、内視鏡の専門医と外科医に手術の方法などを聞くことになる。
ナグモクリニックの南雲吉則院長は、乳がんの外科治療が専門だ。「乳がんの場合は、いろいろな治療法があるので、複数の外科医に手術の選択肢、乳房を切除するのならば形成外科医に乳房再建について話を聞く必要があります」と語っている。
つまり、各がんで選択可能な治療法によって、セカンドオピニオンを聞く相手も変わってくるのである。がんによっては最初から抗がん剤が使われることもあるし、転移があれば全身に効果を期待できる化学療法(抗がん剤治療)が中心になることが多い。
実は、化学療法は進歩が早い。どの抗がん剤をどう組み合わせ、どのくらいの量をどういうスケジュールで投与するか。それによって、化学療法という名前は同じでも効果はかなり違ってくるのだ。漫然と化学療法の効果を聞くのではなく、化学療法の専門家(腫瘍=しゅよう=内科医)に、詳しく内容を確かめることが必要だ。
具体的には主治医にセカンドオピニオンを聞くべき専門医を紹介してもらうこともできる。最近は、セカンドオピニオン外来を設ける病院も増えてきた。南雲院長によると「脳腫瘍や血液のがん、数の少ないがんだと、外来にその専門医がいないなど問題もある」というから、事前に確認した方がいい。また、南雲院長らが立ち上げたセカンドオピニオンネットワークでは、ホームページで協力医リストを公開している。
◆化学療法 新しい抗がん剤の開発が進む一方、欧米を中心にどういう抗がん剤の組み合わせや投与法がベストなのか、比較する大がかりな試験が盛んに行われている。その結果次第で、標準治療が変わってくる。
October 17, 2005 09:22 AM | トラックバック (0)
2005年10月16日
2005年10月16日
【第5回】大手術の際は受けるべき
「セカンドオピニオン」
がんと言われてボーッと過ごしていると、あっという間に病院のレールに乗せられて、気がついたら治療が終わっていたということになりかねない。
その流れの中で、あえてセカンドオピニオンを求めるのは、今の日本ではまだ勇気のいることかもしれない。セカンドオピニオンを求めている間に、手遅れにならないかと心配する人も多い。しかし、ナグモクリニックの南雲吉則院長によると「セカンドオピニオンを受けるための数週間の遅れは、治療結果に悪影響を与えないというのが、アメリカ国立衛生研究所の公式見解」だそうだ。
むしろ、適切な治療法の選択は治療成績や生活の質を向上させる。乳房温存療法で乳房を失わずにすんだり、手術で失われるはずだった食道が放射線と抗がん剤のおかげで残せるといった具合だ。誤診が見つかることもある。
しかし、セカンドオピニオンは相反する意見を求めるものでもない。セカンドオピニオンで主治医と同じ治療方針を告げられ、安心して治療を受けられたという人もいる。かくいう筆者も家人が末期の肺がんと分かったとき、セカンドオピニオンを受けることでがんを治す治療はないことを確認。納得して自分たちなりの過ごし方を考えることができた。納得のしかたもいろいろなのである。
実際に、セカンドオピニオンを受けるには「医師の意見を添えた紹介状と確定診断である病理検査のコピー。可能ならレントゲンなど画像診断やその他の検査結果を持参するといい」そうだ。万が一、主治医が検査データの貸し出しを拒絶したら「手ぶらでセカンドオピニオンを受け、その医師から主治医に検査データの貸し出しを求める依頼状を書いてもらうといい」そうだ。
「がん治療は、仕事や将来の進路も考え、パートナーとも相談して複数の選択肢から選ぶことが必要。特に全摘手術など大掛かりな手術を勧められたら、セカンドオピニオンを受けるべきです」と南雲院長は語る。
◆医師の話を聞くとき いきなり医師の話を聞いても分からないこともある。説明を聞くときには、テープを持参して録音しておくと、後で分からない言葉や聞き逃したことを確認できる。
October 16, 2005 11:12 AM | トラックバック (0)
2005年10月15日
2005年10月15日
【第4回】診断、方針の確認と是正
「セカンドオピニオン」
セカンドオピニオンの普及に取り組むナグモクリニックの南雲吉則院長によると、「セカンドオピニオンは、21世紀の医療の切り札と呼ばれている」そうだ。
情報の収集だけではなく、他科の治療法を知る、複数の医師の意見を聞くことができる、主治医の診断や治療方針に誤りがないか確認できるなど多くの利点がある。それによって「生存率と生活の質(QOL)を向上させ、がんの再発率や後遺症の発生を低下させることができる」と考えられているからだ。
そのために大切なのがタイミング。最初の治療を受ける前にセカンドオピニオンを受けるのがベストだ。それも、空手で行っても本来の目的は果たせない。いつどこで、どういう検査を受け、その結果どこのどういうがんと診断されたのか。がんの広がりや深さはどうか。それをもとに、主治医からどんな治療法を勧められているのか。その中で、自分は何に疑問を感じ、主治医はどう答えたのか。これをまとめておく必要がある。
「診断が確定すると、主治医からインフォームド・コンセント(説明と同意)を受けるはずです。そこでこうした質問をし、疑問があればまた尋ねる。その結果を持って、セカンドオピニオンを受けてほしいのです」。主治医の意見がなければ、それに対する回答も評価もできない。つまり、セカンドオピニオンにならないのである。こういう人が意外に多いという。
そして、忘れてはならないのが、セカンドオピニオンの結果を主治医に伝えることだ。意見が違った場合「そういう考え方もあるけど、私はこういうデータからこの治療法を勧めています」と主治医が説明してくれれば、さらに治療法に対する理解が深まる。「不機嫌になるようなら、よほど都合が悪いんだなと思った方がいいですよ」と南雲院長。セカンドオピニオンは、医師の見落としや誤りを是正するという意味でも、21世紀の医療の切り札なのである。
◆セカンドオピニオンの費用 セカンドオピニオンという名目での保険適応はないため、自費扱いで数万円のところから、初診料に診断料を加えているところなど、施設によってさまざま。
October 15, 2005 09:56 AM | トラックバック (0)
2005年10月14日
2005年10月14日
【第3回】最初の治療の前に受けるべき
「セカンドオピニオン」
患者が自分で治療法を選ぶ時代とは言っても、素人の患者が治療法を判断するのは、至難の業。そこで、情報の収集や別の医師の意見を聞くという意味で、一番早道で間違いがないのがセカンドオピニオンを受けることだ。
といっても、もともと患者の権利や意思が尊重される米国で生まれたシステム。日本でもきちんと理解され、普及しているかというと、そうでもないようだ。例えば、日本ではまだセカンドオピニオンというと、担当医が気に食わないから、別の医師を求めて走るというイメージがある。しかし、これはドクターショッピング。ただ医師を転々とするだけで全く意味がない。
もっと深刻なのは、主治医にセカンドオピニオンを受けたいと言ったら、機嫌を悪くするのではないかという心配だ。がん情報をボランティアで提供しているキャンサーネット・ジャパンにはメールで年間2000件の相談が寄せられる。
代表であるナグモクリニックの南雲吉則院長によると「本当は、最初の治療を受ける前にセカンドオピニオンを受けるべきなのですが、最初は主治医に切り出せなくて、再発したり、後遺症が出てから初めて意見を求めてくる人が多いのです。しかし、こうなってからセカンドオピニオンを求められても、解決は難しいのです」と、嘆く。
主治医が何を聞いても答えてくれない、セカンドオピニオンを受けずに言われるままに治療を受け、再発したら主治医にさじを投げられた。ギリギリまで追い詰められてから、やっとセカンドオピニオンを求めて来る人が一番多いという。
南雲院長は、これではセカンドオピニオンの本来の目的は達成できないという。「がんは、経過の長い病気です。セカンドオピニオンを希望した時の医師の反応で、生涯信頼できるパートナーとなれるかどうか。その踏み絵にもなるのです」。
◆キャンサーネット・ジャパン 1995年に設立されたがんの情報提供ボランティア。メールでセカンドオピニオンに回答するほか、セカンドオピニオン外来も開設。セカンドオピニオンの協力医を集めてセカンドオピニオンネットワークも結成している。ホームページのアドレスはwww.cancernet.jp
October 14, 2005 10:44 AM | トラックバック (0)
2005年10月13日
2005年10月13日
【第2回】主治医以外から専門家に聞く
セカンドオピニオン
がんと診断されてから治療を始めるまでの間に、まず受けておきたいのがセカンドオピニオンだ。セカンドオピニオンとは、簡単にいえば、主治医以外の専門家に意見を聞くことだ。
キャンサーネット・ジャパンの代表としてセカンドオピニオンの普及に努めてきたナグモクリニックの南雲吉則院長は、その背景をこう語っている。
「昔と違って、今は放射線治療でもがんによっては手術と同じ効果があります。抗がん剤やホルモン療法を利用することで治療効果が高まるがんも多くなってきた。そうなると、外科の主治医1人の意見で決めていいのかということになってきたのです」。
主治医以外の外科医や放射線の専門家、抗がん剤が効くがんならば、化学療法の専門家にも意見を聞く。それによって、治療の選択肢や理解が広がり、自分にとって最適の治療法を選べると考えられるようになったのだ。
もちろん、主治医を信用しないからセカンドオピニオンを受けるのではない。けれども「外科医はメス、放射線科医は放射線、化学療法の専門家は抗がん剤でがんと戦います。そのため、つい自分の得意な治療法を熱心に説明してしまう傾向もあるのです」と南雲院長は語っている。
これだけ、がん治療の進歩が早くなってくると、1人の医師がすべての治療法を熟知することも難しくなっている。また、同じ部位の同じ程度のがんでも、必ずしも同じ治療が行われているわけではないのだ。99年に日本胃癌学会総会でアンケート調査を行ったところ、同じ早期の胃がんでも内視鏡治療から、胃を3分の2摘出する、全摘するなど想像以上にいろいろな治療法が行われていたという。それが、「胃癌治療ガイドライン」、つまり日本での治療指針が作られるきっかけにもなったのである。
大切なのは、セカンドオピニオンを受けるタイミングを外さないことだ。
◆セカンドオピニオン 米国で1970年代の終わりごろに生まれたシステム。日本では1991年、南雲院長らが乳房温存療法の普及のために翻訳したパンフレットに、セカンドオピニオンシリーズと名付けたのが最初とされている。
October 13, 2005 10:03 AM | トラックバック (4)
2005年10月12日
2005年10月12日
【第1回】標準治療が基準
今は、がんもいたずらに恐れる時代ではなくなった。とはいえ、いざ自分ががんと診断されると、たいていショックで頭が真っ白になる。しかし、ここが踏ん張りどころなのである。昔は、治療は医者任せだったが、今は「治療法を選ぶのは患者自身」と考えられている。
なぜか。1つにはがん治療の進歩がある。かつては、がんといえば手術。ほかに選択すべき道はあまりなかった。ところが、今は放射線治療や抗がん剤による治療が進歩し、手術で取らずに治るがんも増えてきた。手術と言っても、胃や乳房を丸ごと取ってしまう方法から、一部だけを取って臓器を残す方法。内視鏡や腹腔鏡で切らずに治す方法など、いろいろな種類がある。
つまり、がん治療の選択肢が増え、治り方にも違いが出てきたのだ。どの治療法を選ぶかで、副作用や後遺症も違う。臓器を失っても治る確率が高い治療法がいいと考える人もいれば、多少の違いならば臓器が残る方がいいと考える人もいるだろう。つまり、最終的には患者自身が治療で何を重視するのか、どういう人生を送りたいのか。それぞれの価値観で治療法の選択も変わってくるのである。
今の自分には、どの治療法が最善なのか。診断から治療までの期間は、それを選択する大事な時間なのだ。しかし、何の知識もなく治療法を選択するのは難しい。その第1歩がセカンドオピニオン、つまり主治医以外に意見を求めることであり、各がんの標準治療を知っておくことだ。
標準治療とは、その時点で1番効果が高いと科学的に証明された治療法のこと。標準治療を知っていれば、提示された治療法が標準治療なのかどうか、違うとすれば標準治療に比べてどういうメリットがあるのか、さらに科学的根拠に乏しい治療法や古くて効果の低い治療法を避けることもできる。つまり、標準治療は自分が受けるがん治療を判断し、選択する基準にもなるのだ。
◆標準治療 欧米では1990年代に入って、標準治療をベースに各がんの治療ガイドラインが作られてきたが、日本ではここ数年ようやく治療の標準化が進んできた。
October 12, 2005 09:43 AM | トラックバック (2)
2005年10月11日
2005年10月11日
【最終回】体の“ゆとり”を保つ
「今、できること」
最大寿命まで健康で自立した生活を楽しむ。そのための方策を模索しているのがアンチエイジング医学である。今のところの結論はバランス良く老いることである。適正体重を保ち、食事や運動に気を配り、ストレスに対抗できる生活を送ることが王道である。そのための健康レシピを考えてみた。
健康の曲がり角である40歳、会社員、身長170センチ、男性が対象。適正体重を計算するため身長を条件に入れている。
<1>適正体重(BMI指数22)=約63・5キロ。
<2>A適正な総エネルギー摂取(適正体重×25~30キロカロリー)=約1600キロカロリー~1900キロカロリー。B栄養素の適正配分=糖質60%、たんぱく質15~20%、脂肪=20~25%、食物繊維(1000キロカロリーあたり10グラム)、塩分10グラム以下、アルコール20グラム(日本酒1合、ウイスキー・ダブル1杯、ワイン・グラス2杯、焼酎コップ1杯)。
1800キロカロリー・適正栄養素の食事例:【朝食】スクランブルエッグ、豚肉のいため物、パン、牛乳【昼食(外食)】カレーライス、サラダ【夕食】マグロの刺し身、酢の物、けんちん汁、ご飯。
<3>禁煙=習慣化している喫煙では何本以下なら影響が少ないなどという医学的データはない。
<4>適度な運動=1日合計30分歩く。
<5>ストレス耐性を高める=A睡眠を十分にとる、B家族だんらんの時間を増やす、C疲労を感じたら休養を心がける、D自然と接する機会を多く持つなど。
生活習慣病は初期段階では自覚症状がないのが普通。会社員は労働安全衛生法に基づき年1回、定期健康診断を実施しているが、がん検診・眼底検査も受けた方がいい。市町村では40歳以上を対象とした節目検診(肝炎ウイルス検診もある)として上記の検査を行っている。
体の機能は加齢とともに低下するが、最近の研究からまず低下するのは予備能といわれている。普段の生活とかけ離れたストレスなどに耐えられるようにするための能力が予備能。予備能の減少が病気を招きやすくする。体の“ゆとり”を保つことこそアンチエイジングにつながる。(おわり)
【ジャーナリスト 小野隆司】
◆最大寿命 寿命の上限。人間は120歳程度と考えられている。寿命を決めるものは遺伝要因と環境要因があり、それぞれが複雑に絡まっている。異なった哺乳(ほにゅう)類では体が大きい動物ほど寿命が長めだが、同種の場合は体が小さいものが寿命が長いとの研究報告がある。
October 11, 2005 08:35 AM | トラックバック (1)
2005年10月10日
2005年10月10日
【第88回】臓器別体制に変革
「今後の期待」
アンチエイジング医学は再生医療、QOL改善医療、オーダーメード医療などとともに21世紀型医療といえるだろう。いずれもこれまでの医療が積極的に取り込めなかった分野である。
アンチエイジング医学の学術団体、日本抗加齢医学会理事の坪田一男・慶応義塾大学医学部教授は「アンチエイジング医学は学際的な色彩が濃いのが特徴です。いかに他分野の研究成果を取り込めるかが、今後の発展のキーになることは間違いありません」と話す。
坪田教授は角膜上皮の再生医療で世界的に知られるが、幹細胞から新しい細胞組織を作り出し、傷んだ部分を修復する再生医学の成果はアンチエイジングを実現させる重要な要素ととらえている。
現在、再生医学は急速に進展している。つい最近も心臓の筋肉(心筋)のもとになる幹細胞が人の心筋にあることが見つかり、分離することにも成功している。来年早々にも重症心臓病患者に対する心筋幹細胞の移植臨床研究が予定されている。
「アンチエイジング医学は病気を予防し、健康長寿を実現させるもの。でも万一病気になっても再生医療などの最先端医療できっちり治すことができれば医療はより豊かになる」と坪田教授。
またアンチエイジング医学の視点は、臓器別に分かれている治療体制の変革をもたらすかもしれない。統計的には白内障患者の死亡率はそうでない人より高い、というデータがある。白内障はフリーラジカル、活性酸素の影響が大きい。フリーラジカル、活性酸素は動脈硬化を促進し、心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞など命にかかわる病気の危険因子である。
「白内障の予防に抗酸化物質が役に立つという研究結果も少しずつ出始めています。白内障にアンチエイジング医学の視点に立つ予防法が確立すれば、それは動脈硬化などの全身の老化の予防にも役立つと考えられます」(坪田教授)。
東洋医学には異病同治という言葉もある。もとをただせば老化の促進を防止することが万能薬となる可能性もある。
「最終的に決め手となるのは医学的根拠、科学的根拠がどこまで解明されるかです。今後ともアンチエイジング医学に求められるものです」と坪田教授は締めくくる。
【ジャーナリスト 小野隆司】
◆幹細胞 臓器や組織ごとに存在し、必要な細胞を供給する“種”のような細胞。神経に変化するものを神経幹細胞などと呼ぶ。また、あらゆる細胞に変化する幹細胞をES細胞といい、受精卵から取り出せる。人に由来するES細胞の研究開発では生命倫理上の問題から文部科学省は慎重な配慮を求める指針を出している。
October 10, 2005 10:54 AM | トラックバック (0)
2005年10月09日
2005年10月09日
【第87回】キレーションで鉛排出
「今後の期待」
アンチエイジング医学の目的は、死ぬ間際まで元気で過ごせる健康状態を実現させることである。高齢者が感染症にかかったり外傷を負うと、以前より元気がなくなることがよくある。現実的に有効な老化予防は、まず病気やケガを予防することなのである。
日本抗加齢医学会の理事を務める坪田一男・慶応義塾大学医学部教授は「アンチエイジング医学は、病気が発症するまで病気ではない、という従来の概念から1歩進んだところがあります」という。
例として鉛汚染についての最近の考え方を坪田教授は挙げる。米国疾病管理センターの鉛中毒とする基準は1950年では血中濃度60マイクログラム/デシリットルだったが、現在は10マイクログラムとかなり厳しくなっている。少量であっても有害重金属は害をもたらす可能性があることから、鉛中毒として治療の対象になったものだ。
「老化が病気を招くなら米国の鉛中毒への対応と同じように考えるべきでしょう。老化を防ぐ方法があるなら積極的に活用しようとしているのがアンチエイジング医学ともいえます」と坪田教授。
キレーション療法と呼ばれるものがある。金属イオンと結びつき、体外への排出効果のあるキレート剤を静脈点滴するものだ。もともとは鉛中毒患者の治療として行われていたものだが、最近は抗酸化作用、血管内の老廃物付着の防止効果などから、アンチエイジングの一療法として注目されている。
「キレーション療法に関しては体内の鉛を排出することで腎不全の進行を抑制できるとの論文も発表されています。重金属は神経系、免疫系や眼の疾患にも悪影響をもたらします。キレーション療法はまだ研究途中ですが、アンチエイジング医学に重要な方向性を示すものの1つだと思います」(坪田教授)。
東洋医学における未病の概念のようにアンチエイジング医学は、症状が出る前から病気は始まっているととらえる。これに対してしかるべき対処をすることは、医療として求められても当然、と坪田教授は考えている。
【ジャーナリスト 小野隆司】
◆キレート剤 合成アミノ酸のEDTA(エチレンジアミン4酢酸)などが使われる。鉛、水銀、鉄、銅、アルミニウムなどミネラルの除去作用がある。体内の有害金属のレベルを調べる手段として血液・尿検査と並行して毛髪ミネラル検査がよく行われている。
October 9, 2005 10:23 AM | トラックバック (0)
2005年10月08日
2005年10月08日
【第86回】医学的に若返るための10カ条
「今後の期待」
アンチエイジング医学のキーワードは老化である。加齢は老化を促進し、病気を招く。多くの病気は加齢と深くかかわっている。
日本抗加齢医学会の理事を務める坪田一男・慶応義塾大学医学部教授は「加齢に伴う老化は環境が大いに関係しています。日ごろの食生活や運動といった生活習慣が老化と深くかかわっていることが明らかになっています。老化の速度を上手にコントロールしていこうというのが、アンチエイジング医学です」と説明する。
坪田教授は暦の上の年齢ではなく、メディカルエイジ(医学的年齢)という概念を提唱している。血管の状態、ホルモンレベル、筋肉量など詳細なデータをもとに測定する。体の中でも老化の具合はマチマチ。バランスの悪い老化が健康長寿を阻むと考えるのもアンチエイジング医学の基本的立場である。
「メディカルエイジをいかに若返らせるか。その方法を追究するのがアンチエイジング医学。もちろん科学的、医学的根拠に基づくものです。新しい分野だけにきっちりとしたEBM(実証)を築き、安全で有効な医療を実現することが今後の責務でしょう」と坪田教授が強調する。
来年5月に開催される第6回日本抗加齢医学会総会のメーンテーマは「メディカルサイエンスとしての抗加齢医学」。坪田教授が会長を務める。
メディカルエイジを若返らせる日常生活の留意点がある。
<1>しっかり睡眠を確保する
<2>よい水を十分に飲む
<3>運動を日常に取り入れる
<4>野菜や果物の抗酸化栄養素を中心とした良質な食事
<5>不要な物は排出する
<6>呼吸を深める
<7>新しい友だちをつくる
<8>1日1回は感動する
<9>何が何でも「ごきげん」を選択する
<10>「元気で長生き」を決意する
坪田教授が推奨するアンチエイジングの基本10カ条である。
【ジャーナリスト 小野隆司】
◆最大寿命 人では120~130歳程度と考えられている。寿命に関係する遺伝子がいくつか発見されていて、ショウジョウバエやセンチュウを使った実験では遺伝子操作で寿命が延びるという研究報告がある。哺乳(ほにゅう)動物では老化が遺伝子によりプログラムされている証拠は見つかっていない。
October 8, 2005 10:52 AM | トラックバック (0)
2005年10月07日
2005年10月07日
【第85回】老化速度コントロールへ
「今後の期待」
アンチエイジング医学は新しい医学分野である。スタートしたばかりともいえる存在だが、背負っている期待は大きい。高齢化に伴い加齢と病気の関係、健康長寿への取り組みは社会全体のテーマでもあるからだ。
日本抗加齢医学会の設立メンバーで、来年5月に開催される第6回同医学会総会の会長を務める坪田一男・慶応義塾大学医学部教授は「なるべく医者の世話にならず元気に一生を全うできるように応援することがアンチエイジング医学の大きな柱です。医者いらずの世界をつくるために医者が熱心に研究している分野ともいえますね」という。
日本抗加齢医学会はさまざまな分野の研究者が集まっている。これまでにない医学会のスタイルである。中には老化をも病気ととらえて、これに対抗しようという積極的な考えの医師もいる。
坪田教授は角膜移植、角膜上皮の再生医療でも知られる眼科医だが、「目の病気の多くが加齢に伴って起こります。白内障、緑内障、網膜の病気、視力の衰えなどの進行を遅らせたり発症を防ぐことができたら素晴らしいことです。アンチエイジング医学こそ、第一に目指すべき医療ではないかと考えています」と話す。
加齢とともに身体的および生理機能が低下する。老化と呼ばれる現象だ。その原因の1つとして挙げられているのが臓器当たりの実質細胞数の減少。臓器が縮んで機能が低下していく。縮み具合は臓器によってまちまちだが、脾(ひ)臓、胸腺、肝細胞、骨格筋細胞などの減少が著しいことが分かっている。
しかし、これにも個人差があることから、なるべく細胞数を減らさないための食事や運動などの生活改善、さらには医学的な介入が期待されるところである。
「老化のメカニズムは完全に解明されたわけではありませんが、老化も治療の対象となるような科学的根拠が示されるようになってきました。老化の速度をコントロールできれば、若々しく元気に寿命を全うすることは可能と考えます」と坪田教授はアンチエイジング医学への期待を語る。
【ジャーナリスト 小野隆司】
◆老化度 暦年齢と生物学的年齢の差が老化度として表される。生物学的年齢は生理機能(血圧・視力・聴覚など)、運動機能(握力・垂直跳び・反復横跳びなど)、外見(歯脱落数・顔のシワ・顔面色素沈着など)で測定され、統計計算を使って割り出す。ばらつきがかなりあり、個人差が出るのが老化の特徴などともいわれる。
October 7, 2005 10:30 AM | トラックバック (0)
2005年10月06日
2005年10月06日
【第84回】今すぐできるCM体操
「肥満対策」
肥満解消としてダイエットは重要な手段になる。ただ長続きさせるのは難しい部類に入る。5年後も減量した体重を維持していた人は1割にも満たないとの研究報告もある。
ダイエットに関する著作も多い大野誠・日本体育大学大学院教授は「人それぞれに性格が違い、生活習慣も異なります。一律的なダイエット方法は長続きしません。自分に合ったオーダーメードの方法を見つけることが必要です」と言う。
行動修正療法と呼ばれるものがある。肥満は5~10年がかりで徐々に進行するのが普通。食事と運動を基本とする毎日の生活習慣の中に必ず太った原因が潜んでいる。しかし、食事と運動はあまりにも基本的な生活習慣であるため意識せずに行動していることが多い。
「あらためて食事の内容をメモする食事日記や生活活動日記をつけてみるのです。食事量はもとより過食のきっかけが分かることもあります。敵を知り己を知るのがダイエットを成功させるコツです」と大野教授。
また、すぐに実践できる現実的な方法を取り入れることもダイエットには肝心。運動がいいと分かっていても習慣化するのは難しい。大野教授が勧めているのがCM体操。テレビのCM中に腹筋や腕立て伏せなど簡単な筋力トレーニングを行うのである。1時間番組なら10分程度の筋力トレーニングができる。
「従来の考え方ではウオーキングに代表される有酸素運動は30分以上続けないと効果がないとされていましたが、最近の研究から10分ずつ3回でも効果に大差がないことが分かってきました。ですから、1日に合計で30~60分、1週間に合計150分以上の速歩が最近の運動指針です」と大野教授。
肥満を解消するライフスタイルは生活習慣病を改善・予防するライフスタイルでもある。最後に大野教授は質のよい老後を送れる養生訓を挙げる。“一無、二少、三多”である。
「一無とは喫煙を止めること、二少は小食と少酒、三多は多動・多休・多接です。活動的な毎日を送り、疲労をためないよう休息を心掛けましょう。多接とは多くの人、事、物に接し仕事以外の生きがいを発見することです」(大野教授)。
肥満対策は人生の対策にもつながるらしい。
【ジャーナリスト 小野隆司】
◆行動修正のポイント 行動には連鎖がある。テレビを見ながらついスナック菓子を食べてしまうなら、テレビを見ない、スナック菓子をテレビの近くに置かない、あるいはスナック菓子を買わないなど行動の連鎖をどこかで断ち切れば修正されやすい。
October 6, 2005 10:11 AM | トラックバック (0)
2005年10月05日
2005年10月05日
【第83回】糖尿病治療食の宅配利用
「肥満対策」
肥満は万病のもと。日本肥満学会では、肥満に起因ないし関連し減量を要する健康障害として2型糖尿病、高血圧、高尿酸血症(痛風)、心筋梗塞(こうそく)・狭心症、脳血栓症・一過性虚血発作、睡眠時無呼吸症候群、脂肪肝、変形性関節症・腰椎(ようつい)症などさまざまな病気を挙げている。
日本肥満学会の評議員を務める大野誠・日本体育大学大学院教授は「体重を減らすダイエットは盛んですが、健全な方法が実行されているとは言い難いのも現実です」と注意を促す。
まずポイントとなるのは短期間に過激な方法で体重を減らすと、体調を崩す危険が大きいこと。人の体重の50~60%は血液などの水分が占めている。したがって短期間の体重減少は体から水分が抜けただけと思って間違いない。飢餓に備えるエネルギー源として脂肪細胞に蓄積される体脂肪が減るのはもっと後になってからだ。
「摂取エネルギーを抑える食事療法がダイエットの基本になりますが、体重や生活活動度を考えて摂取エネルギーを決めることが大切です」と大野教授は言う。
肥満症の指導マニュアルでは、身長170センチで生活活動強度が比較的軽い人(事務・管理職)なら1日の摂取エネルギーは1590~1907キロカロリーとなっている。このエネルギーの範囲でバランスの取れた規則正しい食生活を実行することが肥満の解消につながる。
簡単な方法として大野教授が勧めているのが、糖尿病治療食の宅配サービスの利用。「宅配の糖尿病治療食は1食500キロカロリーが基本になっています。栄養バランスは十分ですし、利用しているうちに目と口から自然と体得できます」(大野教授)。
食べ物を極端に減らすダイエットは問題が多い。1日1000キロカロリーを下回ると、筋肉や骨まで減り、やつれて体調を崩す危険性が大。消費エネルギーが多い筋肉量が減ることは太りやすい体質になることを意味し、リバウンドの原因になっている。
「ダイエットという言葉の語源は政策とか方針の意味です。太りにくいライフスタイル(人生の方針)をつくり上げることが真のダイエット。ゆっくりやせることが健康にとって大切です」と大野教授。効果的な方法は次回で。
【ジャーナリスト 小野隆司】
◆やせ過ぎ ダイエットブームのせいか、このところ20歳代の女性にやせ過ぎが目立つ。国民栄養調査では低体重(BMI18・5未満)の割合が20%を超えている。やせ過ぎは骨量の減少を招き、将来的に骨粗しょう症になる可能性が高い。骨粗しょう症・骨折は女性高齢者の寝たきり原因の1位である。
October 5, 2005 10:26 AM | トラックバック (1)
2005年10月04日
2005年10月04日
【第82回】ライフスタイルが影響
「肥満対策」
肥満は簡単にいえば摂取エネルギー量が消費エネルギー量を上回ることから始まる。余分なエネルギーは中性脂肪に変換され、脂肪細胞に蓄積されるメカニズムが働くからだ。食べ過ぎ、運動不足は当然、肥満の主な原因である。体の中で消費エネルギーの多い筋肉の衰えも肥満を招く。中年太りはその典型ともいえる。
東京慈恵会医科大付属病院で肥満専門外来を担当していたこともある大野誠・日本体育大学大学院教授は「肥満型食事スタイルといえるものがあります。一般に太っている人は夜にまとめ食いをする傾向があり、動物実験ではまとめて食べる方が明らかに多くの体脂肪が蓄積します」と言う。
人間の体は昼間は交感神経が優位になる。胃の運動も活発になり消化吸収が進む。夜は副交感神経が優位となり腸の運動が高まり、栄養素を吸収して体内に蓄積する生体リズムになっている。最近、この生体リズムを刻む体内時計を調節しているBMAL1というタンパク質が、夜間に脳と脂肪細胞に増えて体脂肪の蓄積を促進していることが分かった。
「夜に大食すると、朝は食欲が起きず欠食になるケースが増えます。国民栄養調査では男女とも欠食ありの人は、欠食なしの人と比べて皮下脂肪が厚いという調査結果も発表されています」と大野教授。
ヤセの大食いという言葉があるように肥満は体質の差も結構あるが、肥満を招きやすい食事パターンが知られている。<1>早食い・ドカ食い・ながら食いが多い<2>脂っこいものや油を使った料理が好き<3>お菓子やジュースなど甘いものを毎日とる<4>夜食または間食をすることが多い<5>飲む、食べることでストレスを発散する、などが肥満要因のチェックポイント。
「運動不足も含めて現代人の肥満にはライフスタイルが大きく影響しています。肥満を招きやすい生活習慣をいかに変容していくかが肥満防止の対策になります」と大野教授はアドバイスする。
体質からいえば日本人は倹約遺伝子の働きが欧米人(白人)よりも活発で、食べたものを体脂肪(エネルギー源)として蓄えやすい。本来、飢餓に強いサバイバル能力といえるが、飽食の時代では逆に肥満やそれにともなう生活習慣病につながっている。
「先祖伝来の食習慣を放棄し、高脂肪・高糖質の欧米型食習慣に急に移行した社会で、肥満と生活習慣病が急増しているので要注意です」と大野教授は話す。
【ジャーナリスト 小野隆司】
◆世界の肥満人口 WHOではBMI25以上の肥満人口を約11億人と推定している。日本は男性1300万人、女性1000万人が相当している。15歳以上に占める割合は約20%。米国、ロシア、英国、ドイツなどは軒並み50%を超えている。
October 4, 2005 09:57 AM | トラックバック (0)
2005年10月03日
2005年10月03日
【第81回】ウエスト85センチ以上は要注意
「肥満対策」
肥満は健康にとって危険因子である。そもそも標準(理想)体重は各種の疾病・異常を起こす率の最も低い体重を基準にしている。肥満者における死因別死亡率を調べた米国の研究では、標準体重の人を100とした場合、肥満者の方が死亡率が低いのは男女とも自殺と結核だけ。肥満は健康長寿を全うする上で大きなデメリットといえる。
肥満は皮下や内臓に分布する脂肪細胞が中性脂肪をため込むことから始まる。日本肥満学会評議員の大野誠・日本体育大学大学院教授は「脂肪細胞に蓄えられた中性脂肪はエネルギー源として利用されますが、分解過程で生じる遊離脂肪酸が生活習慣病の発症と密接なつながりがあります」と説明する。
遊離脂肪酸は肝臓に運ばれると再び中性脂肪に形を変えて蓄積し、脂肪肝を引き起こす。悪玉コレステロールと呼ばれるLDL(低比重リポタンパク)も増え、高脂血症の原因となる。またインスリンの効き目を妨げて、糖尿病を誘発することも。
「脂肪細胞からはさまざまなサイトカイン(生理活性物質)が分泌されていますが、内臓脂肪からは動脈硬化を促進する悪玉サイトカインがたくさん分泌される」と大野教授。
特に内臓脂肪は皮下脂肪よりも分解されやすいので、遊離脂肪酸がたくさん作られる。内臓脂肪型の肥満はリンゴ型肥満とも称され、腹部が目立つ。ウエストが男性なら85センチ以上、女性なら90センチ以上なら要注意である。
肥満者の現状(2003年国民健康・栄養調査)は30~60歳代男性の3割以上が肥満。女性では60歳代まで年齢とともに肥満の割合が高くなっている。03年調査から腹囲の計測をしているが、リンゴ型肥満(上半身肥満)を疑われる人の割合は、男性で24・9%、女性で13・8%いた。
「中高年の肥満者が一番気をつけたいのは、やはり生活習慣病です。内臓肥満、高血圧、糖尿病、高脂血症の4つが重なるメタボリックシンドロームは心筋梗塞などの心臓病や脳卒中を誘発する危険性を飛躍的に高めます」(大野教授)。
肥満を招かない生活を心がけることがアンチエイジングにもつながる。そのポイントは次回。
◆肥満判定の基準=体重(キロ)÷身長(メートル)÷身長(メートル)で求めるBMIがよく使われる。日本肥満学会の基準ではBMI18・5~25未満が普通体重。25~30未満=肥満1度、30~35未満=肥満2度、35~40未満=肥満3度、40以上=肥満4度としている。生活習慣病を合併したり、将来そうなる可能性のある肥満は、肥満症という病気と診断される。
October 3, 2005 09:31 AM | トラックバック (0)
2005年10月02日
2005年10月02日
【第80回】未病を直す心と食の養生
「東洋医学」
健康はバランスの上に成り立っている。バランスは人によって違う。その人に合ったバランスを維持する治療や予防対策を実践するのがアンチエイジング医学である。東洋医学も全く同じ考え方に立っている。
日本抗加齢医学会評議員の劉影(リュウ・イン)未病医学研究センター所長は「体質、年齢、環境などを含め自然と一体となる養生を実行することが大切です」と言う。
季節によってホルモンバランスが変わり、体を調整していることは科学的にも証明されている。東洋医学では食養生として昔から四季の養生法がある。
「これから訪れる秋は最も過ごしやすい季節。食欲も増しますが、秋の食養生は食べ過ぎを戒めています」(劉所長)。楽しい気分で食事することも食養生のポイント。イライラしたり短時間ですます食事は栄養素吸収の妨げにもなる。
心の養生も現代にあっては重要だ。中医学は喜・怒・憂・思・悲・恐・驚を七情といい、内臓と関連づけている。「中国では暴怒が肝を傷めるといいます。また、くよくよし過ぎると脾(ひ)臓に影響が出ます。感情を上手にコントロールすることは病気予防につながります」と劉所長。
未病の予防・治療が研究テーマの劉所長は未病を治す8訓を挙げる。
<1>少肉多菜(野菜をたっぷり)<2>少酒多茶(酒はほどほど)<3>少糖多果(糖分は果物で補う)<4>少食多嚼(食事量は控え、よくかんで食べる)<5>少塩多酢(塩分を減らし味付けは酢を利用)<6>少車多歩(なるべく歩く)<7>少怒多笑(イライラは血行不良のもと)<8>少憂多眠(健康の基本は睡眠)。
アンチエイジングの要諦にもなりそうだ。
「心身の調和を基本とする中医学、東洋医学は予防医学の重要性が増している21世紀の医療に大きな貢献ができると思っています。その効果をより上げるためには、きめ細かいアフターケアの実践が求められているはずです」と劉所長は結論づけている。
◆第3医療 西洋医学と東洋医学を結合させた統合医療が第3医療として注目されている。慢性疾患、アレルギー性疾患、自己免疫疾患など治療法が確立していない病気で、第3医療の力が発揮されるとの期待も大きい。
October 2, 2005 09:55 AM | トラックバック (0)
2005年10月01日
2005年10月01日
【第79回】四診で体質を把握
「東洋医学」
体質に合わせた治療は東洋医学の大きな特徴である。アンチエイジング医学も科学的データをもとにオーダーメード(テーラーメード)治療を目指している。日本抗加齢学会と日本未病システム学会でそれぞれ評議員を務める劉影(リュウ・イン)未病医学研究センター所長は「中医学は患者さんの体質やライフスタイルを加味しながら治療を進めるのが基本になります」と言う。
望診(舌、爪、人相、骨相などをみる)、聞診(声、呼吸、体臭、口臭などを診察)、問診(体の状態について質問)、切診(脈、腹、背中、耳、足などをチェックする)の“四診”から1人1人の体質に合った健康方法、食養生、心の養生、運動などトータルな生活指導を行っていく。「四診で証(しょう)と呼ばれる体質傾向を把握します。証は実証、虚証があり、中庸が最も健康度が高いものです」と劉所長は説明する。
実証の人は一見、年齢より元気にみえる。中枢神経系も活発だが、そのため血圧が高く便秘傾向もある。中医学で実証が表れている典型的な病気として糖尿病が挙げられている。
虚証は病気に弱い状態だが、体の異常に対するセンサーが鋭いため早期治療につながって重大な病気を防ぐ面もある。自律神経失調症になりやすいともされる。
「中医学では実証の人も虚証の人も、まず中庸にもっていくことを治療の目的にしています。中庸は普通も意味しますが、今の社会で普通でいることは簡単ではありません」と劉所長。
実証の人も年齢とともに虚証に変化していく人もいて、未病の段階から養生を始めることが健康長寿を実現させる手立てになる。
東洋医学における養生はなによりもバランスを重視する。食養生では証に合った食事をすることも指導する。順天堂大医学部が日本人の証と食事の関連性をテーマにした研究を行ったことがある。1300人を対象に調査したところ、健康体グループではほぼ半数の人が自分の証に合った食事を実践していたのに対し、病気を持っているグループでは73%の人が不適合な食事をしていたとの結果になった。
証に合った養生の具体例は次回で。
◆陰陽・五行説 東洋医学は中国古代思想に沿って発展した側面を持つ。食物も熱性・温性・涼性・寒性・平性があり、熱証型の人と寒証型の人に分けた場合、それぞれに相性のいい食物があるとしている。これが証に合った食事となる。
October 1, 2005 09:16 AM | トラックバック (0)
