2005年09月30日
2005年09月30日
【第78回】■血かどうかの自己チェック大切
「東洋医学」
東洋医学では気血水の乱れこそ病気の原因になる。古くなり通り道が狭くなった■血(おけつ)の改善は生活習慣病から身を守る鍵ともなる。
日本東方医学会学術委員の劉影(リュウ・イン)未病医学研究センター所長は「■血とは血液がドロドロになってスムーズに流れなくなってしまった状態を表す言葉です。中医学では古くから■血百病といわれ糖尿病、動脈硬化症、高血圧症や子宮内膜症でも■血状態が見られます」と言う。
中医学の世界では異病同治という言葉も使う。さまざまに違う症状の病気でも、そのもとをたどると原因は1つだったり、共通しているものがあるという認識だ。
■血は血糖値や中性脂肪率が高い血液がもたらすものでもある。偏った食事内容、疲労、ストレス、飲酒・喫煙、不規則な生活などが危険因子になる。
■血は未病(病気の前段階)でもみられる。「未病段階で■血が解消されれば生活習慣病にかかる危険性がかなり軽減されます。■血かどうかの自己チェックも大切です」と劉所長は話す。
肌が荒れやすくなった、目にくまができやすい、手足が冷える、肩や背中が凝る、足の静脈が浮き出ている、手足がしびれるなどの自覚症状は■血状態を示すチェックポイントになる。
「■血を解消する1番のポイントは原因を取り除くこと。過度のストレス、過労、食べ過ぎ、飲み過ぎ、睡眠不足、運動不足、喫煙などを避ける生活が送れるかどうかです」と劉所長。
抗■血作用のある野菜(長ネギ、ニンジン、カボチャ、ホウレンソウなど)や魚(サバ、サンマ、ヒラメ、アジなど)を摂取し、散歩やストレッチ運動などで体全体の筋肉を使って血行を良くすることを劉所長は勧める。
「未病に対する科学的アプローチも進んでいますが、個々への対応が大切です。従来の西洋医学はその面でもの足りない部分があります。体質に合わせた治療がアンチエイジングにつながるはずです」と劉所長は強調する。
個人に対応した未病治療も東洋医学の眼目である。
※■はやまいだれの中に於
◆医食同源 病気を治すのも食事をするのも健康を保つためで、その本質は同じということ。中国古代の医学書(黄帝内経)に「穀(穀物)は養いをなし、畜(肉)は益をなし、采(野菜)は充をなし、果(果物)は助をなす」との一節がある。
September 30, 2005 11:01 AM | トラックバック (1)
2005年09月29日
2005年09月29日
【第77回】■血の改善が重要
「東洋医学」
アンチエイジング医学は予防医学である。個人個人に合わせたオーダーメード(テーラーメード)医療であることも大きな柱になっている。一般的に漢方と呼ばれる東洋医学と考え方に共通点が多い。
中国国立中医学薬大学卒業後、日本の順天堂大医学部で医学博士号を取得し現在、順天堂大の非常勤講師を務める劉影(リュウ・イン)未病医学研究センター所長は「西洋医学は病気を治すことを目的に発展してきました。中国伝統医学である中医学をはじめ東洋医学は治療だけでなく養生を重視してきました。養生の考え方こそアンチエイジングにつながるものです」と説明する。
「養生は心、食、運動など生活の処方を重視した病気にならないための医学です。心身の機能を整えることは自然治癒力を高めることから、東洋医学は現代医療の中で世界中から注目されています」(劉所長)。
個々に合わせた治療を施すのも東洋医学の大きな特徴。年齢相応の活動性、反応性を考え、同じ病気で違った薬(漢方薬)を処方することも少なくない。薬が消化管に負担を与えると判断すれば鍼灸(しんきゅう)治療を使う、といったオーダーメード治療が基本になっている。
急性疾患を除くと、ほとんどの病気には前段階がある。検査値には表れていないが、何らかの症状がある、あるいは自覚症状は全くないが、検査値では異常があるといったケースだ。未病と呼ばれ、東洋医学が得意とする分野でもある。
「生活習慣病から身を守るカギは未病状態のケアにあります。具体的には■血(おけつ)の改善が重要です。古くなった血を意味する中医学独特の概念ですが、最近よくいわれる血液ドロドロの考え方と一致します」と劉所長。
■血百病という言葉もあるという。詳しくは次回。
※■はやまいだれの中に於
◆気血水 東洋医学(中医学、漢方)の概念。西洋医学の神経、血液、免疫、内分泌にあたるもので、気血水の3つのバランスの乱れが病気を招く。2つ以上乱れた時、病気の症状としてとらえられ、漢方薬が使われる。
September 29, 2005 09:52 AM | トラックバック (0)
2005年09月28日
2005年09月28日
【第76回】日帰り可能 白内障手術
「眼疾患」
60代で70%、70代で90%、80代以上ではほぼ100%の人が白内障による視力低下が認められるという。QOL(生活の質)を考えると対処が必要だが、白内障では手術による人工水晶体(眼内レンズ)への交換が一般化している。
慶応義塾大学病院で白内障の治療にあたっている根岸一乃・同大医学部専任講師は「白内障の手術は局所麻酔で行われ、痛みもほとんどありません。眼内レンズも遠方も近方も見える多焦点型など種類が増え、年齢や眼の状態に応じて使い分けられています」と説明する。
手術は約3ミリの切開部分から超音波で水晶体を砕いて吸い出し(超音波水晶体摘出術)、その後、残した薄い膜の水晶体嚢(のう)に眼内レンズを埋め込む方法が最近の主流になっている。特に問題がなければ日帰りも可能だ。100%安全ということはありえないが、安全性はかなり高くなっている。
技術の進歩から眼内レンズの性能も上がっている。遠くも近くも見える多焦点型はカメラのパンフォーカス型のようにややピントは甘いが、老眼の治療の一助ともなり得る。「日本では今のところ未承認ですが、欧米ではさらに多くの種類の眼内レンズが発売されています」と根岸講師。
短時間ですむ手術とはいえ、適切なアフターケアを怠らないことは大切。術後一定期間は医師が処方した点眼薬などをつける必要がある。しばらくは眼をこすらないよう注意することも重要。
「眼内レンズを入れた水晶体嚢の後ろの嚢が濁る後発白内障といわれる症状が起こることもありますが、最近は特殊なレーザーを使って外来でも簡単に治療できます」と根岸講師。
目は人体の中で老化が最も早い器官ともいわれる。酸素消費量の多さからの酸化ストレスや、太陽光線に含まれる紫外線の影響が大きな原因になっている。加齢が最大の原因になっている白内障を筆頭に眼疾患は、アンチエイジング医学の格好の目標といえる。
「今後とも高齢者の増加に伴って白内障は増え続けるでしょう。QOLを含めどのように対応すべきなのか、医師は常に考えておくことが求められると思います」(根岸講師)。
◆手術費用 眼内レンズ挿入の白内障手術は92年に保険適用になり、70歳以上(1割負担)なら自己負担額は1万5000~2万円程度が目安(検査、入院費は別)。70歳以上の高額所得者(2割負担)は3万~4万円程度となる。70歳以下(3割負担)は5万~6万円程度かかる。
September 28, 2005 10:27 AM | トラックバック (0)
2005年09月27日
2005年09月27日
【第75回】白内障には眼内レンズ手術
「眼疾患」
目はよくカメラに例えられる。フィルムにあたるのが網膜なら、レンズにあたるのが水晶体。この水晶体が濁ってくるのが白内障である。糖尿病やステロイド薬の長期使用、先天性など原因はいろいろあるが、最も多いのが加齢による老人性白内障と呼ばれるものだ。
慶応義塾大学病院で治療にあたっている根岸一乃・同大医学部専任講師は「早い人では40代から始まり、詳しく検査をすれば、80代ではほとんど人に白内障は発見されます」と言う。
水晶体が濁ることで、かすんだり物が2重に見えたりする。光が乱反射するためまぶしさを感じたり、光を背にした人の顔がよく分からなくなることも白内障の典型的な症状だ。屈折率が上がり、近視が進行することもある。
「高齢化が進む国では白内障は最もありふれた病気の1つになっています。今のところ水晶体の濁りを元に戻す方法はありません。初期段階なら進行を抑えることが治療の基本になります」と根岸講師は説明する。
水晶体の濁りの進行を抑制する点眼薬が使われるが、全くストップするわけではない。予防策としてバランスのよい食事、サングラスの使用による紫外線の防止なども挙げられるが、「有効性を示す完全なデータはありません」(根岸講師)。
視力の低下はQOL(生活の質)の低下にもつながる。老化とともに増える病気への対処法はアンチエイジング医学のメーンテーマだが、白内障はその点ではかなり進歩している。老化した水晶体を人工水晶体(眼内レンズ)と取り替える手術が効果を上げ、一般化してきているからだ。
「眼内レンズを入れる手術は年間80万件に達しています。個々の病状にもよりますが、手術も比較的短時間ですみ、安全性が高いこと手術件数が増えている大きな理由でしょう」と根岸講師は話す。
手術をする時期も早くなっている。以前は〝しろそこひ〟と呼ばれるような状態が基準だったが、現在は職業、日常生活に支障を感じるようになった時点で手術が行われるようになってきている。
◆皮膚病性白内障 アトピー性皮膚炎に伴う白内障もある。20~30代で視力障害が起こり、手術が必要になるケースが多い。また糖尿病や打撲などの外傷、放射線被爆も白内障の原因となる。
September 27, 2005 10:05 AM | トラックバック (0)
2005年09月26日
2005年09月26日
【第74回】50歳になったら眼底検査
「眼疾患」
失明の原因ともなる加齢黄斑変性には、網膜の中心部にある黄斑が栄養不足などで縮む委縮型と、新生血管から滲(し)みだす血液成分が黄斑に障害を起こす滲出(しんしゅつ)型の2種類がある。
慶応義塾大学病院の眼科抗加齢医学外来で黄斑変性の治療・研究にあたっている今村裕医師は「加齢黄斑変性は進行する病気です。委縮型から滲出型になるケースも少なくありません。治療はいかに進行を抑えるかが中心になります」という。
滲出型の原因となる新生血管は正常な血管の閉塞(へいそく)などをカバーするため新たにできるが、組織が粗く血液成分が漏れやすい。出血も起こる。光力学療法、手術などで新生血管を退縮・除去させる治療が行われ、新生血管が小さい初期は改善効果があることがある。
「委縮型は決め手となる治療法が確立していませんが、最近、ビタミン剤と銅、亜鉛の内服が進行の抑制、予防に役立つことが分かってきました。酸化ストレスの除去が効果をもたらしていると考えられます」と今村医師。
加齢黄斑変性の危険因子は<1>年齢(60歳以上に多い)<2>喫煙<3>高血圧<4>血管疾患<5>太陽光線による障害、などが挙げられる。遺伝要素もある。今村医師は特に喫煙に注意を促す。「喫煙者と非喫煙者の比較では6倍近く発症リスクの差があります。喫煙率の高い男性の方が加齢黄斑変性の患者さんが多いのが現状です」。
加齢黄斑変性は徐々に進行し生活習慣病の影響も大きい。早期発見、早期治療が大切といえる。人間ドックなどで見つかることもあるが、老眼や白内障など年のせいにして見過ごす可能性も大いににある。「50歳になったら眼底検査をすることをお勧めします。緑内障や糖尿病性網膜症など失明原因となる眼疾患の有無も分かります」と今村医師はアドバイスを送る。
加齢黄斑変性は30年ほど前までは日本ではまれな病気とされていた。増加の理由として食生活の変化も指摘されている。また再発しやすく、反対側の目に起こる危険性も年とともに高くなる。生活習慣の改善とともに定期検査も大事だ。
◆酸化たんぱく 加齢黄斑変性の典型的臨床像は、ドルーゼンと呼ばれる酸化たんぱくを大量に含む沈着物が発生し、その後に新生血管が発生すること。老人斑(アミロイドたんぱく)の沈着が原因となるアルツハイマー病の発症メカニズムと似ている。
September 26, 2005 10:53 AM | トラックバック (3)
2005年09月25日
2005年09月25日
【第73回】増えている黄斑変性
「眼疾患」
昨年10月、慶応義塾大学病院に眼科抗加齢医学外来が設けられた。抗加齢医学を標ぼうする眼科の専門外来は日本で初めてのことだ。高齢者の失明原因の主因となっている加齢黄斑変性と呼ばれる眼疾患の治療だけでなく、その予防や新たな治療の研究も行っている。
黄斑は網膜の中心部にあり、ものを見るために最も敏感な場所である。同外来を担当している今村裕医師は「黄斑変性をもたらす成因については不明な点が多かったのですが、最近、その発症メカニズムが分かってきました。酸化ストレスが大いに関与しています。加齢そのものを制御するアプローチが必要な病気なのです」と説明する。
網膜は酸素消費が激しい器官。単位あたりに換算すると脳より消費量が多い。それだけ活性酸素が発生しやすい。網膜を照射する太陽光線も活性酸素を発生させる。いくつかの疫学調査、臨床試験、病理検査から酸化ストレスが黄斑変性の原因になっていることが明らかになってきた。
「黄斑変性は視野の真ん中が暗くなったり、ものがゆがんで見えたりするのが特徴です。視力もかなり落ち、米国では糖尿病性網膜症を抜いて失明原因の1位になっています。有効な治療法の確立が求められている病気の1つです」と今村医師。
加齢黄斑変性は厚生労働省の特定疾患(難病)に指定され、日本でも増えている。高齢になるにつれ多くなる。正確な患者数は分かっていないが、福岡市に隣接する久山町の住民を対象にした研究では、進行型の加齢黄斑変性を有する人は50歳以上の人口の0・87%を占めている。
目の病気はQOL(生活の質)を低下させる。寝たきりになる理由(東京都調査)でも眼疾患は女性で2位(7・1%)、男性で5位(3・2%)。健康寿命の延長を目指すアンチエイジング医学で、加齢黄斑変性の予防・治療法の確立はメーンテーマでもある。
「カロテンやビタミンEなど抗酸化物質を多く摂取している人は加齢黄斑変性の発症リスクが低いという米国の大規模疫学調査もあります。酸化ストレスの除去が予防のカギになるでしょう」(今村医師)。
具体的な予防・治療法は次回で。
◆黄斑 網膜はいろいろな色素が含まれていて、中でも黄色が目立つことから、この名が付いている。視力の維持や色の判別など、ものを見るときに大切な働きをしている。
September 25, 2005 12:10 PM | トラックバック (1)
2005年09月24日
2005年09月24日
【第72回】運動で骨と筋肉維持
「寝たきり防止」
骨量、筋肉量の維持には運動が欠かせない。特に筋肉量は使わないと低下が著しい。日常生活での歩行なども運動になっているため実感できないが、宇宙飛行などの無重力状態では2日で1%の割合で筋肉量が落ちるとされる。寝たきり状態では2日に1%の割合で落ちる。
寝たきり防止と栄養・運動の関係を研究している松雄達博・香川大学農学部助教授は「加齢に伴う筋肉量の減少は上半身より下半身の筋肉の方が衰えが早い。下半身の中でも太ももの筋肉である大腿(だいたい)四頭筋の減少が目立ち、寝たきりの原因ともなっています」と話す。
松尾助教授のラットを使った研究では、老齢になっても高たんぱく質の間食を与え、軽いレジスタンス運動であるクライミング運動を日常化させたところ、筋肉・骨量とも増加することが確認されている。
骨粗しょう症の治療でも運動療法は大きな柱。骨にかかる際に発生する生体電気の電圧変化(ピエゾ電位)が骨をつくる骨芽細胞を活性化する。運動による血流増加は骨形成を促進する効果もある。硬い骨質の主成分となるカルシウムの摂取を心がけることは当然、大事だが運動による刺激が体内のカルシウムの利用効率を高め、骨量の維持にも働く。
高齢者の健康度の尺度ともなっているSDL(日常生活動作能力)は、骨と筋肉が支えているといってもいい。そのためには「肥満解消や寝たきり防止など目的に応じた食べ方、足りない栄養素を補う柔軟さ、栄養効果も高める軽レジスタンス運動の3つがポイントになります」という。
上記の3点は健康増進、生活習慣病予防にも役立つ。エイジング(加齢、老化)による身体の変化は不可逆的なものだが、その変化のスピードは環境条件に左右されることも間違いない。老化を病気に見立てるなら徐々に進行する慢性疾患。治療の基本はいかに進展させないか、になる。
「健康を守るものは結局のところ摂取栄養素と身体活動のバランスです。バランスを回復させる手立てが病気を防ぐことになります。高たんぱく質の摂取とレジスタンス運動の日常化は骨と筋肉の減弱化の抑制となり、高齢者の寝たきり防止につながるはずです」と松尾助教授は強調する。
◆中高年の筋力変化 国立長寿医療センター疫学研究所の4年間の追跡調査(男848人、女783人対象)では筋力の低下は女性および高年者で低下量が大きいことが分かった。余暇身体活動も下肢(し)筋肉の低下具合が関連している。
September 24, 2005 09:31 AM | トラックバック (0)
2005年09月23日
2005年09月23日
【第71回】血中アルブミン値落とさない
「寝たきり防止」
寝たきりの防止はアンチエイジング医学にとっても柱となっている医療目標である。QOL(生活の質)を著しく低下させ、元気で長生きするためには大敵である。寝たきりを招く要因の上位を占める骨折・骨粗しょう症の予防対策は欠かせない。
食事と運動が生体内代謝に及ぼす研究で知られる松尾達博・香川大学農学部助教授は「高タンパク質の摂取と筋肉を鍛えるレジスタンス運動が骨折・骨粗しょう症予防につながるはずです」と言う。
骨密度、筋肉量とも20代前半をピークに加齢とともに衰える。体内のたんぱく質合成能力が低下するためだが、摂取する栄養バランスと運動不足が助長している面も無視できない。骨粗しょう症は閉経後の女性や高年齢の男性に多い病気だが、若い人でも栄養や運動不足などの影響でなる人がいる。生活習慣病の1つと考えられている。
骨量の減少は骨の中のカルシウムの減少が要因になるがそれだけではない。「骨は硬たんぱく質の1種であるコラーゲンにカルシウムやリンなどがすき間なく詰まることでつくられます。たんぱく質不足も骨をもろくする原因になります」と松尾助教授は説明する。
その点で心配されているのは、若い女性に多い急激なダイエット。食事制限を主とする過激なダイエットはカルシウムとたんぱく質不足を招き、骨も細くなる。閉経によるホルモンバランスの変化もあり、骨粗しょう症は女性の方が早く発症する。「肥満調査で唯一、やせ気味と判定されている今の若い女性層が骨粗しょう症になる確率は高いといえます。高齢期になって転倒などによる骨折から寝たきりになる危険性も高いのではと懸念されます」と松尾助教授。
骨の形成には負荷も大きくかかわる。重量挙げの選手の骨密度は一般平均を上回っているが、水泳選手では筋肉量は多いが骨密度は一般平均並みだったという有名な研究報告もある。
肥満は転倒骨折の要因に挙げられているが、軽すぎるのも問題ということになる。寝たきり防止への運動の大切は次回に。
◆寝たきり要因(東京都衛生局調査) 女性<1>骨折・骨粗しょう症(16・5%)<2>老衰、眼疾患(7・1%)<4>脳卒中、心臓病(5・9%)。男性<1>脳卒中(25・8%)<2>老衰(9・7%)<3>神経痛、けが(6・5%)<5>骨折・骨粗しょう症、心臓病、眼疾患、パーキンソン病(3・2%)。
September 23, 2005 10:11 AM | トラックバック (0)
2005年09月22日
2005年09月22日
【第70回】急激ダイエットは骨弱くする
「寝たきり防止」
高齢者の健康度の目安になるのが日常生活動作能力(ADL)。歩行、食事、着替え、入浴、排せつが普通にできるかどうかが尺度になっている。上記の5項目のうち、最も衰えやすいのが歩行である。高齢者を対象にしたいくつかの調査でも、ほかの項目に比べて普通にできる人の割合が低くなっている。
高齢者の歩行能力は骨量と筋肉量が関係してくる。寝たきりになる原因でも上位を占める(女性では1位)骨折は、骨がもろくなる骨粗しょう症に加え、筋力低下が転倒を招くことから起こっている。骨量、筋肉量の減少は老化現象でもあるが、筋肉・骨の減弱化防止を研究している松尾達博・香川大学農学部助教授は「高齢者ではたんぱく質の摂取量が骨量、筋肉量の減少具合とかかわってきます。ADLを保つためにも、たんぱく質の摂取量を減らさないことが重要です」と言う。
骨量というとカルシウム不足が指摘されるが、たんぱく質の摂取も同様に大切だ。骨を鉄筋コンクリートに例えれば、鉄筋にあたるのがコラーゲン組織(たんぱく質)、コンクリートにあたるのがカルシウム。骨の成分構成比でいえばともに20%弱。「カルシウムが足りていてもたんぱく質が不足すれば骨は強くならない」(松尾助教授)という関係にある。
体を動かす原動力である筋肉は線維(たんぱく質)の束。たんぱく質の合成能力が衰えるとともに筋肉量も減少していくが、「高齢者の場合、摂取不足も大いに影響を及ぼしている」と松尾助教授は指摘する。摂取したたんぱく質は1度アミノ酸に分解され、その一部が肝臓でアルブミンと呼ぶたんぱく質に再合成される。血中アルブミン濃度は加齢とともに低下していく。
通常は血液1デシリットルあたり4グラム程度含まれる。東京都老人総合研究所の高齢者を対象とした長期追跡研究では、アルブミン値が3・8グラム以下の人は3・9グラム以上の人と比べ死亡率が約2倍も高くなっている。「血中のアルブミンは血液の浸透圧を調節したり、いろいろな物質の運搬にもかかわります。アミノ酸バランスのいい高たんぱく質の摂取は元気で長生きするためのポイントとなるといっていいと思います」。
◆たんぱく質バランス 必要とするたんぱく質摂取には、植物性たんぱく質と動物性たんぱく質の摂取比率が1対1になることが理想的。現在の日本人のたんぱく質摂取比率は1対1と理想を実現している。ちなみに人の血液中には35種類ほどのたんぱく質が存在している。
September 22, 2005 10:26 AM | トラックバック (0)
2005年09月21日
2005年09月21日
【第69回】筋肉運動とたんぱく質摂取
「寝たきり防止」
年を取れば、身体は若い時と当然、違ってくる。健康度を測るモノサシも変わってくる。WHO(世界保健機関)の定義によると高齢者の健康度は、生活機能の自立で測られる。
歩行・食事・着替え・入浴・排せつなどの日常生活動作能力(ADL)や社会的関係が普通にできていれば健康なのである。健康長寿を目標とするアンチエイジング医学でも老化に伴うADL低下にどう対処するかは、大きなテーマになっている。
栄養学が専門で食事と運動が生体内代謝に及ぼす影響を研究している松尾達博・香川大学農学部助教授は「一般的に体が動かなくなる直接的な原因は、骨と筋肉の衰えです。老化現象ともいえますが、衰えの進み具合を遅くすることが元気で長生きすることにつながるはずです」と言う。
寝たきりの主な原因になっている転倒・骨折には加齢に伴う骨・筋肉の衰えが関係している。大腿(だいたい)骨の骨密度と大腿四頭筋(太もも前側の筋肉)の筋肉量は40~50代から減少が目立ってくる。
「骨と筋肉の衰えは加齢による代謝の変化とかかわりがあります。高齢者はたんぱく質の合成能力が低下しています。また加齢とともに食事摂取量が減るために骨や筋肉の材料となるたんぱく質が不足することも衰える理由の1つと考えられます」と松尾助教授は解説する。
最近の研究では肝臓・消化管などの内臓組織のたんぱく質合成量は高齢者になっても衰えていないことが分かってきた。顕著なのは筋肉におけるたんぱく質合成量なのである。「食事で摂取したたんぱく質に由来するアミノ酸の多くが内臓組織の維持に使われていることになります。骨や筋肉を維持するには、十分なたんぱく質を摂取することが重要です」と松尾助教授。
松尾助教授はラット実験で高たんぱく質の食事をさせると骨や筋肉へ供給されるアミノ酸量が減少しないことを実証している。また筋肉に負荷を与える軽いレジスタンス運動を習慣化させたラットは骨量・筋肉量とも増加した。ADLを維持するにはたんぱく質摂取と筋肉運動がカギになるということだ。
◆骨密度と筋肉量の減少度 骨密度は20代がピーク。エストロゲン(女性ホルモン)の急激な変化から骨粗しょう症が多い女性では60代で3割ほど骨密度が減少している。筋肉量は40代からは1年で1%程度減っていくといわれている。そのスピードは運動不足により助長される。
September 21, 2005 10:22 AM | トラックバック (0)
2005年09月20日
2005年09月20日
【第68回】肥満解消と筋肉保持が大切
「変形性膝関節症」
加齢が発症の危険因子となる変形性膝関節症。40代から症状が表れる人もいるが、一般的には女性は50代、男性は60代から患者は増えてくる。関節軟骨がすり減るという耐用年数が問題になるが、効果的な予防法はあるのかどうか。気になる点だ。
日本整形外科学会専門医で変形性膝関節症に詳しい池田和男・いけだ整形外科院長は「現在のところ摩耗、老化した軟骨を若返らせる積極的な治療法はありません。日常生活でいかに膝の軟骨に負担をかけないようにするかが、予防のポイントになります。第1に肥満の解消。第2に膝周囲の筋肉も膝関節を支える大きな要素ですから、筋肉を衰えさせないことが同様に大切です」と言う。
変形性膝関節症の治療の1つに運動療法がある。軟骨に血管はないが、軟骨細胞に酸素と栄養が必要ないわけではない。軟骨細胞への酸素と栄養の供給は、周囲の関節液を介して取り込むことで行われている。ストレッチや膝周囲筋肉の強化運動により関節の安定化が図られ、関節の動きが良くなることは、膝周囲の血流改善のみならず、正常な関節液の分泌を促し、その結果、健康な軟骨を保持することができるようになる。
「まずは、膝を支える筋肉の大腿(たい)四頭筋、つまり太もも前面の筋肉を鍛えるのがいいでしょう。イスに座って左右の足を交互に上げて、膝を伸ばした状態を数秒維持する運動が簡単にどこでもできて効果的です」(池田院長)。太ももとスネが水平になるように伸ばすこの運動は、関節軟骨の代謝も促進し、柔軟性も増す。
加齢とともに病気は増えてくるが、WHO(世界保健機関)は高齢者の健康度は生活の自立で測る、としている。歩行、食事、排せつなど日常生活動作能力や社会的関係が普通にできていれば健康なのである。
変形性膝関節症への対応は高齢者の健康を守るためにも欠かせない。
◆関節軟骨の再生医療 患者自身の軟骨細胞を培養して移植する培養自家軟骨細胞移植術が、若年者のスポーツ外傷や交通事故などによる膝軟骨損傷において行われている。将来的には変形性膝関節症に対しても軟骨細胞移植術が適応される可能性がある。
September 20, 2005 09:56 AM | トラックバック (2)
2005年09月19日
2005年09月19日
【第67回】炎症抑え、軟骨修復するヒアルロン酸
「変形性膝関節症」
変形性膝関節症の治療として、その効果が評価されているのが、ヒアルロン酸を関節に注入する方法。炎症を抑え、すり減った軟骨をある程度、修復する働きがあることも分かってきている。ヒアルロン酸は関節の潤滑液として作用する関節液の主成分で、粘り気や弾力性がある物質だ。
数多くの変形性膝関節症治療にあたっている池田和男・いけだ整形外科院長は「人の体に含まれるヒアルロン酸に非常に近い高分子のヒアルロン酸が人工的につくられるようになり、治療法として普及するようになりました」と説明する。
ヒアルロン酸を使った研究から痛みの原因となる炎症を抑えるだけでなく、軟骨をある程度、修復する働きがあることも分かってきた。特に加齢に伴って起こる変形性膝関節症に対して効果を発揮している。患者の体内で合成される関節液では、ヒアルロン酸濃度は減少し、粘り気もなくなっている。
「ヒアルロン酸の注入は外来でできます。膝に細い針を刺し、ヒアルロン酸製剤を関節内に直接注入します。通常は1週間に1回の割合で5回ほど行いますが、もう数回注入したり、少し間隔を開けて断続的に注入すると効果的」と池田院長は勧める。
治療効果がどこまで続くかは個人差がある。「エックス線検査で変形がかなり進んでいるのに痛みを感じない人もいます。逆もあります。専門医と相談しながら治療を選択することも大事です」(池田院長)。
変形性膝関節症は末期になると軟骨そのものがほとんどなくなる。そうなるとヒアルロン酸の注入治療は効果が出ない。早期発見、早期治療はやはり重要である。
◆痛みの治療 炎症を抑え痛みをとることが変形性膝関節症の治療法となる。消炎鎮痛剤も処方される。内服薬、外用薬(シップ薬、塗り薬)、坐薬など種類もいくつかあり、それぞれ長所・短所がある。医師の指示に従って正しく使うことが大事。
September 19, 2005 11:04 AM | トラックバック (2)
2005年09月18日
2005年09月18日
【第66回】初期症状を見逃さないこと
「変形性膝関節症」
膝(ひざ)軟骨がすり減ることが主な原因となる変形性膝関節症。クッションの役目をしている軟骨の耐用年数切れともいえるが、すり減る理由はいくつかある。多くの要因が絡み合っているのも確かだ。
東京女子医科大の非常勤講師も務める池田和男・いけだ整形外科院長は「加齢、筋肉の衰え、肥満、O脚など足部の変形、膝への負担が大きい運動習慣などが変形性膝関節症の危険因子として挙げられます。ただ症状の表れ方や進み具合は千差万別です」と話す。
日本人に比較的多いとされるO脚は膝関節の内側に負担がかかりやすい。O脚の原因である脛(けい)骨の曲がりを直す手術(高位脛骨骨切り術)は、変形性膝関節症の治療法の1つになっている。
変形性膝関節症はケガや病気が原因となるもの以外は、症状が徐々に進行していく。初期症状として膝の違和感が表れる。膝に力が入ると痛みを伴うこともあるが、休むと痛みがなくなる場合が多い。「変形性膝関節症は早期発見、早期治療で病気を進行させないことが大切。初期症状を見逃さないことです。早めの手当てをするかしないかで、その後の経緯がかなり違います」と池田院長はアドバイスする。
痛みがはっきりと分かるようになり、膝が完全に伸びない状態になると中期ということになる。炎症も起こるため膝周辺がはれたりむくんだりしてくる。この時期に整形外科を訪れる人が多い。
日常生活に支障をきたすほどの痛みが続けば、かなり症状が進んだことになる。関節の変形が外見的にも目立つようになる。「高齢者の方の場合、痛みのため外出機会が減り、外界からの刺激も少なくなるとウツ状態を招く問題も近年、指摘されるようになってきました。QOL(生活の質)低下の影響は幅広いので、変形性膝関節症への適切な対応は重要です」。
治療は症状の進行に合わせて行われる。末期では人工関節に入れ替える手術もあるが、最近、注目されているのが膝関節の潤滑液(関節液)の成分であるヒアルロン酸を患部に注入する治療法だ。そのことは次回で。
◆軟骨 弾力性に富んだ組織からなる。コラーゲン繊維などで構成された網の中に水分が詰まった水まくらのような構造になっている。関節軟骨は1平方センチあたり200キロの圧力に耐えられるようにできている。
September 18, 2005 11:14 AM | トラックバック (1)
2005年09月17日
2005年09月17日
【第65回】すり減った軟骨は再生困難
「変形性膝関節症」
立ち上がる時、膝(ひざ)が痛い。階段を下りる際、膝がこわばる。中高年に多い変形性膝関節症の典型的な初期症状だ。膝の痛みで整形外科を訪れる人の半数近くが該当するともいわれている病気である。
日本整形外科学会専門医で変形性膝関節症に詳しい池田和男・いけだ整形外科院長は「膝関節でクッションの役目をしている軟骨が年とともにすり減ることが最大の原因になります。筋肉の衰えも影響します。高齢化社会では増える病気といえますね」と説明する。
推定患者数は1000万人。女性に目立つのも特徴だ。男性の2~3倍も患者が多い。もともと膝を支える筋肉量が少ないことと性ホルモンのかかわりも指摘されている。遺伝的素因もあるとされている。
軟骨には血管が通っていない。そのため1度すり減ると再生は困難で、病状は徐々に進行していく。膝関節では太ももの骨とすねの骨が接している部分が軟骨で覆われている。「衝撃を吸収する役割を持つ軟骨がすり減ると骨同士の圧力が増し、炎症も起こりやすくなります。それが痛みとなって表れます」と池田院長。
軟骨がすり減る原因は基本的には老化と使い過ぎ。体重が重いとそれだけ軟骨がすり減る度合いが大きい。筋肉も膝を支える重要な役割をしているので、筋肉量が落ちる中年から変形性膝関節症になるリスクは高くなる。
高齢化、肥満、運動不足傾向にある日本人に増えて当然の病気ともいえる。膝の痛みはQOL(生活の質)を低下させる。動くことがおっくうになる。その結果、ますます筋肉が衰え、痛みを増すといった悪循環も起こる。池田院長は「変形性膝関節症は進行を遅らせることが治療の主になります。早期発見、早期治療が大切です。うまく付き合って症状を悪化させないことが肝心。糖尿病など生活習慣病と全く同じです」と話す。
膝の痛みを起こす病気はいろいろあるが、変形性膝関節症の診断は難しくはない。診察、エックス線検査などで確定できる。関節リウマチや痛風との鑑別のため血液検査が必要なこともある。
◆膝関節の構造 しつがい骨(皿)、大たい骨(太ももの骨)、けい骨(すねの骨)で構成され、互いに接する部分は軟骨で覆われている。じん帯(線維状の帯)は関節が外れたり、逆方向に曲がらないように関節の中と外で固く止める働きをしている。
September 17, 2005 10:22 AM | トラックバック (0)
2005年09月16日
2005年09月16日
【第64回】「抵抗感ない社会を」
「うつ病対策」
「私はバリバリの鬱(うつ)です」。そう語りかける女優の木の実ナナさんが登場する製薬会社の広告が話題を呼んだことがある。5年前のことだ。堂々とうつ病を告白することも珍しかったが、うつ病治療にとって周囲のサポートにつながるカミングアウトは改善につながるのである。
臨床精神医学、精神療法が専門分野の大野裕・慶応大学保健管理センター教授は「うつ病治療に周囲のサポートは欠かせません。その意味で自分がうつ病であることを言える環境づくりも重要な問題です」という。
日本でも学校、企業などで精神カウンセリングの場を設けるところも増えてきたが、機能しているかどうかは分からないのが現状だ。うつ病=精神的に弱い、との評価は根強くある。心の風邪と呼び、誰でもかかる可能性はあるものの、「うつ病という病名は有名になりましたが、他人事と思っている人が多いのも事実です」と大野教授は実感を語る。
日本の場合、精神科を訪ねる抵抗感が強く、心理カウンセラーも国家資格にはなっていない。国家資格にする法案が先の国会で上程目前に見送られている。95年の阪神大震災以降、心のケアが叫ばれているが、社会的整備は全く進んでいないといっていいだろう。
このところ毎年3万人を超える自殺とうつ病の関係、こどものうつ病の増加などの問題もある。子どものうつ病に関しては英国での研究では、思春期前で0・5~2・5%、思春期に2~8%がかかっているとの報告がある。内向せず周囲に攻撃的になり、問題行動、非行の陰にうつ病が関係しているとの指摘もある。
「来年度から新しくスタートする介護予防事業で高齢者のうつ病への取り組みが行われます。これを契機に心のケアに対する社会的サポートが前進することを期待したいです」と大野教授は締めくくる。
これからの医療はWHO(世界保健機関)が定義する「健康とは何事に対しても前向きの姿勢で取り組めるような精神および肉体、さらに社会的にも適応している状態」を実現することであってほしい。
◆サポートの注意点 (1)心配し過ぎない(2)励まし過ぎない(3)原因を追究し過ぎない(4)プライバシーを尊重する(5)精神科医など専門家に相談する時は必ず本人と話し合い了解をとる、こと。
September 16, 2005 10:41 AM | トラックバック (0)
2005年09月15日
2005年09月15日
【第63回】3つの「C」で解決の道はっきり!!
「うつ病対策」
うつ病の治療や予防対策として注目されているのが認知療法である。ストレスに柔軟な対応をする考え方をすることで、うつ病に立ち向かう治療法である。
日本認知療法学会の理事長を務める大野裕・慶応大学保健管理センター教授はキーワードとして3つのCを挙げる。Cognition(認知)Control(コントロール感覚)、CommUnication(コミュニケーション)である。「要は悩んでいる問題について解決の道をはっきりさせることに意味があります。現実的で柔軟な考えをすることで抑うつ的な気分はかなり改善されます」という。
具体的には<1>自分が今、何に悩んでいるか<2>解決方法として何があるか<3>それぞれの解決法のよしあしは<4>最良のものを実行<5>実行した結果はどうか、など段階的に問題に取り組んでみるのである。
5つのコラム法と呼ばれる方法もある。<1>気持ちがつらくなったり動揺した時の状況<2>その時の感情や気持ち<3>それに対してどう考えたか<4>本当にそうかを考え直し、別の考え方を探す<5>別の考え方をしたことで、感情や気持ちがどのように変化したか、の5つをノートなどに書き出してみるのである。
「問題解決に取り組むことはコントロール感覚を取り戻すことにつながります。何でも自分でコントロールしている意識がないと問題に対処できません。5つのコラム法は続けていくうち、悲観的思考パターンから現実的で柔軟な考え方になっていきます」と大野教授は説明する。
最後のC、コミュニケーションは社会全体のうつ病に対する取り組みにもかかわってくる。心の病気で大きな支えになるのが周囲のサポートである。1人で悩んだ結果、うつ病を招くことがほとんどだ。「コミュニケーションは心身の健康にとって重要です。うつ病治療はその人だけでなく家族や仕事仲間の協力で効果を発揮します。そうした環境づくりがこれからのうつ病対策のキーポイントになるのは間違いありません」と大野教授は強調する。
◆ストレス感受性診断 血小板の測定に使われるPBR(末しょう型ベンゾジアゼピン受容体)値がストレス感受性を測る場合に応用されている。PBRはストレスホルモンと呼ばれるコルチゾルの合成に関係している。PBR値は個人差が大きく、値が高い人ほど不安になりやすい。
September 15, 2005 10:19 AM | トラックバック (0)
2005年09月14日
2005年09月14日
【第62回】思考パターン変えストレス対応
「うつ病対策」
うつ病のきっかけは精神的ストレスである。何がストレスになるかは千差万別のようにも思えるが、共通点も案外多い。家族や仕事、人間関係、それに伴う将来の不安などストレスを感じる事柄は誰でも似ているからだ。
厚生労働省の国民生活基盤調査の「悩みやストレス状況」の結果をみても悩みやストレスの原因として「自分の健康・病気」「将来・老後の収入」「収入・家計・借金」がいつも上位を占める。年齢によって当然、悩みの原因は変わってくるが、千差万別といえるほど多種多様ではない。
精神療法が専門の大野裕・慶応大学保健管理センター教授は「うつ病にはストレスが関係していることが多いのですが、受け止め方も大事です。うつ状態ではストレスとなっている問題を解決する方向に考えがいかなくなる」という。
自分を責めてますます症状を進めてしまうのも、うつ病の特徴である。うつ状態は自律神経が乱れ、ホルモンバランスの異常、それに伴う身体症状を招く。頭痛、肩凝り、胃の痛み、下痢、便秘、発汗、息苦しさ、倦怠(けんたい)感などの身体異常がストレスを増加させる。うつ病は悪循環の見本のような病気でもある。
「薬物治療などで精神的な症状も含めて改善しますが、根本的な治療にならないケースが多いのも事実。ストレスを受け止める方法を考えないと再発の危険性も高い」と大野教授は話す。
ストレスへの感受性は性格も関係するが、柔軟な対応は考えのパターンを変えることで可能になる。うつ病治療では最近、認知療法の重要さがいわれている。米国の統計でも認知療法を行ったうつ病患者の再発率は、薬物治療の患者と比べて低くなっている。
大野教授は日本認知療法学会の理事長を務めている。「うつ病になると根拠がないのに独断で推論する、少しのミスで自分を責めるなどの傾向が出てきます。認知療法はこの思考パターンを現実的なものに変えていくことで症状の改善を図るのが基本になります」。
具体的な方法は次回で。
◆順調希求 うつ病になりやすい性格特徴の1つ。いつも順調でありたいと思う気持ちが強すぎると、不調な状況を受け止めにくくなる。ストレスに弱い性格ともいえる。責任感が強く、きちょうめんで凝り性の執着性格もうつ病になりやすい。
September 14, 2005 10:38 AM | トラックバック (0)
2005年09月13日
2005年09月13日
【第61回】さまざまな病気と合併
「うつ病対策」
2006年度から始まる新しい介護予防事業では、高齢者のうつに対する早期発見の推進など本格的な取り組みが行われる。昔から病は気からといわれているように、精神的な問題が健康に及ぼす影響は大きい。
臨床精神医学、精神療法を専門とする大野裕・慶応大学保健管理センター教授は「うつ病はいろいろな病気と合併して起こっている場合が多いのです。うつ状態が病気をさらに進行させる悪循環ももたらします。高齢者に限らず、病気治療にうつ病対策は欠かせない状況になっています」と説明する。
最近発表された6500人以上を対象とした大規模調査では、2型糖尿病患者は、うつ病や神経症など心の病気にかかる割合が糖尿病でない人と比べ約3倍も高い、と報告している。うつ病に限定しても2倍以上高い。他の研究でも、がん患者は20~38%、冠動脈疾患では20~30%、認知症では70%近くの人がうつ病を合併しているとのデータがある。
「うつ病は免疫機能を低下させることも分かっています。400人近くを対象にストレス度を診断してから風邪ウイルスを感染させたところ、ストレス度の高い人ほど風邪を引きやすかったという有名な実験もあります」(大野教授)。
うつ病は“心の風邪”と称されるようにもなってきているが、現状では治療に行く人が少ない部類に入る。病気に対する偏見がまだまだ強く、うつ病に関する認識もいまひとつである。
大野教授はうつ病のサインともいえる症状を知っておいてほしいという。<1>毎日の生活に張りが感じられない<2>これまで楽しんでやれた趣味や活動などが楽しくない<3>楽にできたことがおっくうになる<4>自分は役に立つ人間だと思えない<5>わけもなく疲れたような感じがする、の5項目だ。
「5つのうち2つ以上当てはまり、こうした気分が2週間以上続くなら、うつ病が心配されます。また食欲低下、睡眠障害、注意力散漫といった症状を伴う場合もあります」と大野教授は話す。
対処次第では地獄の苦しみを味わうのがうつ病の怖いところだ。
◆うつ病人口 受診率が低いため実情をつかむことが難しい。厚生労働省の調査(02年)では、うつ病など気分障害があると診断された人は約71万人としている。一生のうち1度以上かかる率は5~10%ともいわれ、そうであれば比較的多い病気ということになる。
September 13, 2005 03:25 PM | トラックバック (2)
2005年09月12日
2005年09月12日
【第60回】うつ病や認知症への危険因子
「難聴」
難聴は治りにくいものと治りやすいものがある。内耳以降の神経が障害されるタイプは今のところ回復が困難だ。進行を食い止める保存療法となる。その意味では早期発見、早期治療が重要になる。
日本大学医学部付属練馬光が丘病院耳鼻咽喉科科長の生井明浩・同大医学部講師は「進行を抑える薬物治療が主になります。感覚細胞や神経を活性化するビタミン剤やステロイドホルモン剤も使います。ステロイドには内耳の炎症を抑えるとともに血行障害を軽減する効果があります」と説明する。
ある日、突然に音が聞こえづらくなる突発性難聴(片耳が大部分)では、内耳に高濃度の酸素を送り込む高圧酸素療法が行われることもある。突発性難聴の原因は完全には分かっていないが、ウイルス感染やストレスなどが誘因となって内耳の蝸牛(かぎゅう)が障害されると起こると考えられている。
「難聴の性質や原因などを正確に診断することが適切な治療に結びつきます。声が聞こえづらいと他人とのコミュニケーションがおっくうになります。不安やストレスも増えて高齢者の場合、うつ病や認知症への危険因子ともなりかねません。本人だけでなく周囲の人の心配りも大切です」と生井講師。
難聴が進行した際、補聴器の利用も考えられる。現在、約500万人が補聴器を必要とするといわれている。しかし利用率は250万人ほどにとどまっている。値段の問題(高いもので1つ30万円以上)もあるが、聞こえには個人差があり自分に合った補聴器を見つける苦労も結構ある。「基本的に補聴器は音を大きくするだけなので、感音性難聴の人に合わせるのは大変です。補聴器を付けることへの抵抗感もまだまだ強いですね」(生井講師)。
回復が困難な難聴の場合、生活の質をいかに低下させないかは健康にとって重要になる。音が聞こえないことで孤立したり消極的になることは健康を損ねるきっかけにもなる。生井講師は専門医と相談して補聴器を選択することを勧める。
◆難聴遺伝子 米国ワシントン大とイスラエルのテルアビブ大の共同研究では、進行性難聴を引き起こす遺伝子(DFNA37)の存在を報告している。先天的難聴の原因となる遺伝子のすぐ近くにある。一定の年齢(40歳以上が多い)に達すると、この遺伝子が働いて難聴を進めるという。
September 12, 2005 10:12 AM | トラックバック (0)
2005年09月11日
2005年09月11日
【第59回】「カ、サ、タ、ハ行」聞きづらくなったら要注意
「難聴」
耳が遠くなる。典型的な老化現象である。軽度の難聴を含めると約600万人とも推定されている。65歳以上の約半数は難聴気味といわれるが、単純に年のせいだけとも言えないことも分かっている。アフリカの先住民と比較した研究では、騒音の影響が難聴に関係していることが指摘されている。
日本大学医学部付属練馬光が丘病院耳鼻咽喉科の科長を務める生井明浩・同大講師は「内耳にある蝸牛(かぎゅう)と呼ばれる部分にある有毛細胞の衰えには長年の騒音による負担が関係します。都市生活者の方が早く難聴になりやすい傾向ははっきりしています」という。
音の波を感じて脳神経に伝える有毛細胞は障害を受けるたびに減っていく。高い音を感じる部分が前にあることもあって通常、高音から聞き取りにくくなる。10代では20~2万ヘルツの音を聞くことができるが、40代を超えると1万ヘルツ以上は聞こえなくなるともいわれている。「実際に生活に支障をきたすのは1000ヘルツあたりの音が聞こえなくなってからです。ただ聴力はかなり個人差が大きく、90歳になっても不自由しない人もいます。有毛細胞に酸素と栄養を運ぶ血行の問題も大きいと考えられています」と生井講師。
動脈硬化、脳血管障害、糖尿病などは難聴を促進する危険因子になっている。難聴は有毛細胞の問題だけでなく、外耳から中耳にかけて音を伝える器官の障害でも起こる。鼓膜が破れたり中耳炎などになると難聴になる。この場合は治療によって回復する可能性が高い。「子どもがよくかかる滲出性(しんしゅつせい)中耳炎は、高齢者の方にも多いのです。中耳に水がたまるので難聴気味になります。治療すれば難聴も回復します」と生井講師は話す。
難聴には治りにくいものと治りやすいものがあるが、年のせいだと思っていたものが、耳垢(あか)がたまり過ぎていたのが原因ということもある。
難聴も早めの治療が改善のカギになる。「カ行、サ行、タ行、ハ行が聞き取りづらくなったら難聴の可能性があります。ともに高周波数の多い音などで目安になります」(生井講師)。
◆難聴の種類 伝音性難聴(外耳~中耳までの異常)と感音性難聴(内耳より中枢に近い部分の障害によるもの)に大別される。骨伝導聴力を調べることで判別できる。2つが混合している場合もある。老人性難聴(感音性難聴)は耳鳴りを伴うことが多い。
September 11, 2005 10:29 AM | トラックバック (0)
2005年09月10日
2005年09月10日
【第58回】偏食しない、よく噛む
「味覚障害」
味オンチになる味覚障害の治療には、亜鉛が含まれる経口薬が使われることが多い。治療効果も高い。早期治療もカギになる。味覚障害を感じてから6カ月以上たってからの治癒率は50%程度に下がってしまう。
味覚障害が専門分野である生井明浩・日本大学医学部講師(同大付属練馬光が丘病院耳鼻咽喉科科長)は「まず血液検査をして亜鉛濃度が低い人の場合は薬などで補給してもらいます。亜鉛吸収が悪くなる薬の服用が原因なら、薬を変更してもらうこともあります」と説明する。
唾液(だえき)の分泌が悪いことから味が感じにくくなることがある。心因的な理由が多く、精神科・心療内科での治療で味覚障害も解消される。高齢者に多くなる口内炎も味覚を妨げる。糖尿病の治療を始めることで味覚障害が改善されることもある。
味覚障害は微妙な感覚の問題だけに放置されるケースも目立つ。生活の質を落とす病気というだけでなく、他の病気が隠れている可能性もある。「1~2週間以上、味の感覚がおかしいと感じたら1度診察を受けてほしいですね」と生井講師は話す。
検査(ろ紙ディスク検査)にも用いられるように薄い味への感度が悪くなるのが味覚障害の始まり。食事をしている際、周囲の反応との違いから自覚することも多い。濃い味付けに慣れると発見しにくい面もある。
「味覚障害の予防対策は偏食をしないこと。亜鉛を含めてミネラル不足を招きがちです。あとよくかんで食べることも大事です。唾液も出ますし、消化吸収が良くなります」と生井講師。加工食品や清涼飲料水などに含まれる食品添加物は亜鉛の吸収を妨げたり、排せつを促進することがある。アンチエイジングの柱でもあるバランスのよい食生活は、味覚障害を防ぐ方策にもなっている。
健康志向の高まりから各種のサプリメントが利用されている。「カルシウムを取りすぎると亜鉛濃度が下がるという報告もあります。バランスが大事です。きちんと検査した上で足りない分を補うようにしてください」と生井講師はアドバイスを送る。
◆亜鉛の1日所要量(第6次改定日本人の栄養所要量) 成人男性11ミリグラム、同女性9ミリグラム。激しい運動や労働をする人、偏食気味の人、アルコール摂取量が多い人は多めに取った方がいいとされる。許容上限摂取量もあり、30ミリグラムとなっている。
September 10, 2005 10:21 AM | トラックバック (0)
2005年09月09日
2005年09月09日
【第57回】若い人は食生活が主な原因
「味覚障害」
体の細胞の中で新陳代謝が激しいのが、味を感じるセンサーとなっている味蕾(みらい)細胞である。20日ほどで入れ替わる。新旧の交代がうまくいかないと、食べ物の味が分からなくなってくる。ひどい場合は味覚障害と診断される。
診察には甘味、塩味、酸味、苦味という基本味の感度を5段階で測る濾紙(ろし)ディスク検査が行われる。1が最も味が薄い。若年時は2ぐらいで味が分かるが、高齢者では4でも分からない人が結構いる。年とともに味蕾細胞は衰えるともいえる。
その味覚障害が増えている。日本口腔(こうくう)・咽頭(いんとう)科学会では、最近の調査から1年間の患者数を約24万人と推定している。95年の調査では約14万人。2倍近く増加している。味覚障害に詳しい生井明浩・日本大学医学部講師は「細胞の新陳代謝に欠かせない亜鉛不足が主な原因になっています。食生活も影響しますから若い人でも味覚障害になります」と説明する。
薬剤性の味覚障害も多い。高血圧治療薬などに亜鉛などの吸収を阻害する作用があるためだ。また糖尿病や腎障害になると体内への亜鉛吸収が悪くなるなど、病気が原因になっていることもある。「食生活でいえば加工食品の影響も無視できません。舌触りを良くするため加えられるフィチン酸やポリリン酸は亜鉛などミネラル分の吸収をブロックする作用があります」と生井講師は言う。
生井講師は日大医学部付属練馬光が丘病院で味覚障害の治療にもあたっているが、若い人の場合は食生活が原因になっていることが多い、とのことだ。「味覚障害にもいくつかの種類がありますが、濃い味でないと反応しにくくなるのは共通しています。塩分や糖分の摂取が多くなれば、高血圧や糖尿病にもつながります。生活習慣病を促進する面も考えるべきでしょう」と生井講師は指摘する。
第5の味といわれる旨味(うまみ)を特に感じているのが日本人。味に繊細でいることは、生活習慣病予防にもなる。
◆味覚障害の種類 味覚減退(味が分かりづらい)、味覚消失(味がしなくなる)、解離性味覚障害(特定の味だけ感じない)、異味症(本来と違った味を感じる)、悪味症(何を食べても嫌な味を感じる)、自発性異常味覚(口の中に何もないのに味を感じる)などがある。
September 9, 2005 09:10 AM | トラックバック (0)
2005年09月08日
2005年09月08日
【第56回】危険因子多い日本人
「糖尿病」
糖尿病は血液中のブドウ糖量が多くなる病気である。量が増えると、たんぱく質と結合しやすくなり、糖化されたたんぱく質は血管壁を傷つけ、動脈硬化、網膜症、腎症、神経障害などを起こす。自覚症状もなく進行するケースが多い。
糖尿病の専門医で日本抗加齢医学会の評議員を務める上芝元・東邦大学医学部講師は「高血糖状態では体内の酸化ストレスも促進されます。糖尿病は万病の元にもなり得る存在です」と言う。
上芝講師は6月の日本抗加齢医学会総会で「2型糖尿病における酸化ストレスマーカーとDHEAの関連について」と題した研究発表を行っている。副腎から分泌されるDHEA(ホルモン)は抗酸化作用があるが、2型糖尿病患者を対象に調べたものだ。
「血糖コントロールが悪い場合はDHEAが低下しています。また細胞の酸化変性の度合いの指標となっている物質も増加していました」と上芝講師。糖尿病患者ではビタミンB、C、Eの血中濃度がかなり低下することも知られている。
酸化ストレスは老化の大きな原因である。フリーラジカル(活性酸素)は遺伝子異常も起こす。つい最近、糖尿病患者や血糖値の高い人は、がん発症とがんによる死亡率が高いとの共同研究(米国のジョンズ・ホプキンズ大と韓国の延世大)が発表されて話題になった。特に膵(すい)臓がんとの関連性が高いという。対象者(韓国人男女120万人以上)に肥満者が少ないことも注目されている。
「カロリー過多、運動不足、体質、高齢化、ストレスと現代の日本人は糖尿病の危険因子に囲まれています。健診などで早期発見も可能です。糖尿病を予防・改善する生活習慣こそ健康長寿につながる道と考えて欲しいですね」と上芝講師は期待している。
ちなみに予防目的での糖尿病治療薬の使用は今のところ認められていないが、インスリン分泌を早める薬の発症予防効果についての研究も行われている。
◆糖尿病遺伝子 大阪大学医学部の研究では血糖値を下げるインスリンの働きが弱い人は、遺伝子にわずかな違いがあることを報告している。血管を拡張する作用のある一酸化窒素をつくりだす遺伝子に変異があり、合成量が少ないという。インスリンは一酸化窒素の合成酵素の働きを強める作用が分かっている。
September 8, 2005 10:57 AM | トラックバック (1)
2005年09月07日
2005年09月07日
【第55回】立つことで血糖値コントロール
糖尿病は完治するタイプの病気ではない。一生付き合う必要がある。その際、大切なのが血糖コントロールである。極論すれば高血糖そのもので死ぬことはないが、高血糖がもたらす合併症は著しくQOL(生活の質)を低下させ、命を縮める原因になる。
東邦大学医療センター大森病院の専門外来を担当している上芝元・同大医学部講師は「糖尿病の合併症は高血糖が長く続くことで発症します。高血糖状態を改善できれば“一病息災”も可能です」と話す。
最近、話題になっているメタボリックシンドローム(代謝症候群)は糖尿病予備軍も要注意である。過食や運動不足、インスリンの働きの低下は、高血圧や高脂血症を招く共通因子になっているからだ。高血圧や高脂血症の薬の中には、糖尿病の進行を抑える効果があることも分かってきている。「血糖をコントロールする基本は食事と運動です。その上で薬剤治療をすることになります。初期の段階なら生活習慣を見直すことで十分、血糖コントロールができます」と上芝講師。
具体的なポイントもある。食生活に関しては食事の前に血糖値を上げないようにすること。食べ物を摂取すれば誰でも血糖値は上がる。食前の血糖値が低ければ正常範囲内にとどまる可能性が高くなる。そのためには「間食はしないこと。菓子類や果物、清涼飲料水など糖分が多いものが多く、血糖値を上げやすいからです。間食を控えるだけで摂取エネルギーの抑制になります」(上芝講師)。
運動は筋肉も直接、ブドウ糖を取り込む働きをしているので、血糖コントロールの決め手になる。ただ現実としては運動時間をきちんと取れる人は少ない。おっくうでもある。上芝講師は生活の中でなるべく立っている時間を増やすことを勧める。太っている人よりやせている人の方が、立っている時間が長く、消費エネルギー量も多いという研究報告がある。
「ダイエット中の人が体重を気にするように血糖値に関心を持ってくれれば糖尿病患者は減るはずです」と上芝講師は期待する。最近は自分で測れる血糖測定器も市販されている。
◆糖尿病 すい臓でつくられるインスリン・ホルモンが不足したり、その作用が妨げられて血糖が異常に増加する病気。自己免疫などが関係し、インスリン分泌がない1型(インスリン依存型)と生活習慣が招く2型(インスリン非依存型)がある。2型がほとんどを占める。
September 7, 2005 10:21 AM | トラックバック (1)
2005年09月06日
2005年09月06日
【第54回】ウエスト20センチ増は注意
「糖尿病」
生活習慣が原因となる2型糖尿病は予備軍が多い。厚生労働省の実態調査(2002年)では糖尿病の可能性を否定できない人(予備軍)は約880万人いるとしている。97年と比較すると5年間で200万人も増えたことになる。
東邦大学医療センター大森病院で糖尿病の治療にあたっている上芝元・同大医学部講師は「予備軍とは血糖値が糖尿病とはいえないが正常値でもない、いわゆる境界型と呼ばれる人たちです。最近の研究から境界型でも動脈硬化を促進することが分かってきました」という。糖尿病の診断基準は空腹時血糖値が126ミリグラム/デシリットル以上か、ブドウ糖負荷試験で分かる負荷後2時間血糖値が200ミリグラム/デシリットル以上の場合だが、前者が110以上126未満、後者が140以上200未満は境界型とされている。
「血糖値が上がると、血管の内側を覆う内皮細胞に白血球の1種である免疫細胞が付着することが確認されています。免疫細胞の付着が動脈硬化の発症原因になることも分かっています。境界型でも心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞の危険性を高めることになります」と上芝講師は説明する。
境界型の場合、空腹時血糖値は正常でも食事後に急激に上がることが珍しくない。通常、健康診断などでは空腹時血糖値を調べる。食後の血糖値が推測できるブドウ糖負荷試験は、オプションや2次検査で行うことになっているケースが多い。上芝講師は「糖尿病の予防・改善には食後の血糖値を知っておくことが大事です。特に過食、運動不足の傾向のある人、家族に糖尿病の人がいる場合は要注意です」とアドバイスする。
インスリンの分泌量は体質(遺伝)の要素もある。インスリンの働きそのものが弱くなるインスリン抵抗性は、内臓脂肪と関係がある。血中のブドウ糖量はイン肝臓内で調整されるが、肝臓に内臓脂肪がたまる脂肪肝になると、肝臓での糖の取り込みが効率よくできなくなる。食後高血糖の原因になっている。「内臓脂肪の目安になるのがウエストのサイズ。若い時から20センチ以上大きくなっていたら縮める努力を始めましょう。糖尿病対策の第1歩になります」(上芝講師)。
◆糖尿病体質 日系人やピマインディアンを対象とした研究から糖尿病の遺伝的要素が明らかになっている。わずかなエネルギーでも体内にため込む体質が肥満→糖尿病を生んでいる。脂肪細胞が肥満するとホルモンバランスが乱れ、10%程度の肥満でも標準体重の人と比較すると糖尿病になる危険率は2倍になる。
September 6, 2005 10:17 AM | トラックバック (1)
2005年09月05日
2005年09月05日
【第53回】細胞全体が酸化ストレス状態
「糖尿病」
生活習慣が深くかかわる糖尿病(2型糖尿病)は、アンチエイジングのためにも見逃せない病気である。血液中のブドウ糖の量が多くなることで発症する糖尿病は、QOL(生活の質)を著しく落とす可能性があるからだ。
日本抗加齢医学会の評議員で糖尿病の治療にあたっている上芝元・東邦大学医学部講師は「放置すると3大合併症といわれる糖尿病性網膜症、腎症、神経障害を起こすようになります。網膜症は失明の原因になりますし、腎症が進行すると透析治療が余儀なくされます。また神経障害は足の壊疽(えそ)を引き起こします」と説明する。
糖尿病性網膜症が原因で失明する人は毎年、3000人を超え、透析療法が必要になる原因のトップは糖尿病性腎症。最新の調査(日本透析医学会)では年1万3000人を超え、全体の4割に達している。
また糖尿病は老化を促進させることも分かってきた。「高血糖状態になると糖がたんぱく質に結合した糖化たんぱく質ができやすくなります。この糖化たんぱく質は体内の鉄分などと反応して活性酸素を発生させます。しかも抗酸化酵素であるSODとも結合して、その働きを阻害します」と上芝講師は話す。
活性酸素は老化を進める大きな原因となる。アンチエイジング医学のダースベーダー的存在でもある。糖尿病は細胞全体が酸化ストレス状態に向かっているといえるのである。
02年の糖尿病実態調査(厚生労働省)によると、2型糖尿病を強く疑われる人と可能性を否定できない人の総数は約1620万人。成人の6人に1人が糖尿病とその予備軍となっている。97年と比較すると250万人も増えている。「日本は平均寿命、健康寿命とも世界一ですが、このままのペースで糖尿病が増えるとそれも怪しくなりかねません」と上芝講師。
自覚症状がなく徐々に進行するのも糖尿病の特徴である。どうすべきなのか。
◆糖尿病 すい臓でつくられるインスリン・ホルモンが不足したり、その作用が妨げられて血糖が異常に増加する病気。自己免疫などが関係し、インスリン分泌がない1型(インスリン依存型)と生活習慣が招く2型(インスリン非依存型)がある。2型がほとんどを占める。
September 5, 2005 10:30 AM | トラックバック (3)
2005年09月04日
2005年09月04日
【第52回】食事、運動療法で予防対策
「男性更年期障害」
男性更年期障害は男性ホルモンの分泌量低下が原因。加齢とともに徐々に減少するホルモンだけに、年齢による衰えを実感させる病気といえるかもしれない。年齢的には45歳から60歳前後に症状を訴える人が多くなる。中高年への曲がり角である。
男性更年期障害の研究で知られる伊藤直樹・札幌医科大学助教授は「生活習慣を見直すことで更年期症状も改善する印象を持っています。加齢に伴う病気に完全な予防策はないでしょうが、症状を軽減させるためにも生活習慣病的側面を訴えた方がいいかもしれません」と話す。
生活習慣の改善はアンチエイジング医学の大きな柱。カロリー過剰、脂肪の摂取過剰に注意する食事療法、男性の性腺機能の刺激にもなる運動療法は男性更年期障害への予防対策にもなり得る。
男性更年期障害のホルモン補充療法に使用されるDHEAは、体脂肪やLDL(悪玉コレステロール)を低下させることが分かっている。男女ともDHEAの分泌量は加齢とともに減少することから、米国では老化防止の目的として補充しているケースも目立つ。
「日本では男性更年期障害の存在が認められてきたのは、ごく最近です。QOL(生活の質)を落とすものだけに治療するメリットがあります。これから関心が集まる病気であることは確かでしょう」と伊藤助教授は予測している。
WHO(世界保健機関)は健康を〈何事に対しても前向きの姿勢で取り組めるような、精神および肉体、さらに社会的に適応している状態をいう〉と定義している。男性更年期障害は真逆の状態を招いてしまう。
WHOによる健康の定義で重要なのは、健康の目的を明らかにしていることである。何でもいいから健康ならいい、と言っていない。真の健康を望むなら男性更年期障害に関心を持たざるを得ないだろう。
◆ライディッヒ細胞 テストステロンを分泌している細胞。精巣の精細管の間(間質)にひも状に存在している。コレステロールを材料にテストステロンを合成している。思春期になると活性化し、テストステロンの働きによりペニスや前立腺などを発達させる。
September 4, 2005 10:57 AM | トラックバック (0)
2005年09月03日
2005年09月03日
【第51回】生活習慣の改善で良くなることも
「男性更年期障害」
男性更年期障害の治療は、ホルモン補充療法が行われるのが一般的である。漢方薬、抗不安薬、ぼっ起障害改善薬を使う場合もある。ホルモン補充は前立腺がんを促進する可能性があるので、事前の検査(直腸指診、PSA検査)などで疑いのある人には行わない。また多血症や重度の肝機能障害を持つ人も、症状を進行させてしまうため除外される。
専門外来で男性更年期障害の治療経験が豊富な伊藤直樹・札幌医科大学助教授は「補充するホルモンはテストステロンです。現在、日本において安全で効果的に使用できるのは注射剤だけで、2週間か1カ月に1回の割合で補充します」と説明する。
効果が表れるのは個人差があり、専門家の間でもどの程度の治療期間が必要なのか意見が分かれている面もある。伊藤助教授は「治療後3カ月、6カ月の時点で症状の改善度などを測定し、それ以後の治療方針を決めるようにしています。禁煙、節酒、運動など生活習慣の改善で更年期症状が改善する患者さんもいます。総合的な判断が大事です」と言う。
欧米では男性ホルモンの内服薬も使用されているが、日本の場合、使用が認可されている内服薬は効果が不安定で副作用も強いことから使われない。また塗り薬や張り薬もあるが、日本では今のところ認可されていない。
伊藤助教授は男性更年期障害治療の今後の課題として、各診療科間の連携も必要と言う。現在は泌尿器科が担当することが多いが「診察に訪れる患者さんにうつ病と思われる人がかなりいることが最近、分かってきました。生活習慣病が原因となる症状も男性更年期障害の症状と重なる部分も多い。いかに総合的に取り組むかが治療効果を上げるカギになることは間違いありません」と伊藤助教授は強調する。
◆テストステロン濃度 テストステロンの基準値の目安を示した研究報告もあるが、値自体と症状の重症度は相関していない。テストテロン濃度が低くても減少の程度が少なければ、男性更年期障害の症状が出ない人もいる。仕事や家庭のストレスなど環境条件も発症にはかなり関係する。
September 3, 2005 10:20 AM | トラックバック (0)
2005年09月02日
2005年09月02日
【第50回】神経質はなりやすい
「男性更年期障害」
男性更年期障害かどうかを判定する簡単なチェックリストがある。10項目に「はい」「いいえ」で答えるものだ。
<1>性欲(セックスをしたいという気持ち)はありますか?
<2>元気がなくなってきましたか?
<3>体力あるいは持続力の低下はありますか?
<4>身長が低くなりましたか?
<5>「日々の愉(たの)しみ」が少なくなったと感じていますか?
<6>物悲しい気分/怒りっぽいですか?
<7>勃起(ぼっき)力は弱くなりましたか?
<8>最近、運動をする能力が低下したと感じていますか?
<9>夕食後うたた寝をすることがありますか?
<10>最近、仕事の能力が低下したと感じていますか?
男性更年期障害の専門外来で治療にあたっている伊藤直樹・札幌医科大学助教授は「『はい』が3つ以上、あるいは<1>と<7>のどちらかが『はい』の場合は男性更年期障害の疑いがあります」と言う。
男性更年期障害は、男性ホルモン、特にテストステロンの分泌低下が原因となる。ホルモン分泌は脳がコントロールしていることもあって、性格的な面も関係している。神経質でまじめ、責任感や競争心が強く、きちょうめんで、せっかちなタイプは男性更年期障害になりやすいとの説もある。
「チェックリストで当てはまる項目が多いなら、専門医に相談されることをお勧めします。診察では初診時に採血をして男性ホルモンの値を調べます。結果は1週間ほどで分かります」(伊藤助教授)。
治療は男性ホルモン補充療法が一般的である。
◆男性更年期外来の診察 問診(家族歴、既往歴、現病歴)・チェックリスト記入、身体所見(特に前立腺の状態チェック)、採血(男性ホルモン量を調べる)、PSA(前立腺がん検査)などを初診で行う。ED(ぼっ起不全)を訴える人にはエレクトメーターによる能力評価をするケースもある。
September 2, 2005 09:17 AM | トラックバック (0)
2005年09月01日
2005年09月01日
【第49回】男性更年期障害の認識定着
「男性更年期障害」
更年期障害といえば、以前は女性特有の病気と思われていた。しかし最近は男性にも更年期障害があるとの
