健康連載ブログ

2005年08月16日

アンチエイジング医学最前線

【第34回】抑制作用あるビタミンE

「工学的アプローチ」

 老化を工学的にとらえる研究をしている芝浦工業大の浦野四郎教授。若いラットにアルツハイマー型認知症と同じ状況をつくることに世界で初めて成功した。「アルツハイマー病の原因といわれるベータアミロイドの沈着が、高濃度酸素を吸わせることによってラットの脳に表れました。脳神経系の老化原因の1つが酸化障害であることの裏付けにもなります」と言う。

 もともと脳細胞の膜にはアミロイド前駆体と呼ぶ長い構造のたんぱく質がくっついている。このたんぱく質がセクレターゼという酵素が働くと切断され、ベータアミロイドができることが分かっている。アルツハイマー病では、ベータアミロイドの沈着による変化が早いのである。「ベータアミロイドの沈着は神経細胞を死滅させます。その結果が認知障害となるわけですが、ベータアミロイドを生み出すメカニズムにも活性酸素による酸化的ストレスが関与していると考えられます」と浦野教授。

 ラット実験では新しい記憶をつかさどる脳の海馬と呼ばれる部分への酸化障害についても検討され、認知機能の衰退の要因になっている可能性が高いという。

 脳の機能は年齢を重ねていくに従って変化していく。加齢による影響は避けられない。浦野教授は「生理的老化は元に戻すわけにはいきません。ただ病的老化を抑制することは可能です。そのポイントとなるのが酸化的ストレスであり、これを防ぐ抗酸化作用です」と説明する。実験ではラットに抗酸化物質のビタミンEを投与すると海馬領域での酸化障害が改善し、不足するとこう進することが確認されている。脳細胞は細胞膜に不飽和脂肪酸が多いことで知らせる。流動性、弾力性を必要とするからである。

 この不飽和脂肪酸は酸化されやすい物質である。また脳細胞は酸素を必要とする器官でもある。呼吸で取り入れる酸素の5分の1は脳で消費される。活性酸素を筆頭にフリーラジカルが発生しやすい環境なのである。「年とともに脳内には鉄がたまります。鉄は酸素と反応するとフリーラジカルを生み出します。脳の老化と酸化障害は無視できない関係です。その抑制作用が期待できそうなのがビタミンEなどの抗酸化物質です」(浦野教授)。

 ◆脳神経細胞(ニューロン)の数 大脳皮質で約140億あるとされる。加齢とともに数は減っていくが、残っている神経細胞の間では新しい結合がつくられる。神経細胞のほかにグリア細胞と呼ばれるものが存在し、神経細胞への栄養供給やニューロン間の信号伝達の補助をしている。

August 16, 2005 11:41 AM

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