健康連載ブログ

2005年08月31日

2005年08月31日

【第48回】動脈硬化抑制する納豆

「動脈硬化」

 動脈硬化は無症状のままじわじわ進行するが、個人差も大きい。生活習慣における危険因子の影響が大きいからである。動脈硬化に詳しい福生吉裕・博慈会老人病研究所所長は「改善可能な危険因子をコントロールすることが重要」と言う。

 総コレステロール値は目安になる。理想的な数値はLDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪を合わせた数値が140~200ミリグラム/デシリットルの範囲にあること。300を超えると心臓発作のリスクが2倍以上になる。

 「中性脂肪、血糖、血圧の三者がそろうとそれだけで心疾患のリスクは飛躍的に上昇します」と福生所長。

 過食、脂肪分のとり過ぎは動脈硬化への危険因子だが、血管壁に入り込んで動脈硬化の原因となるマクロファージ(免疫細胞)の血管壁との接触を抑制する成分が見つかっている。ポリアミン(低分子有機化合物)と呼ばれるものだ。

 「ポリアミンは細胞内で合成される物質で細胞の増殖に欠かせないものです。加齢とともに体内の濃度は低下しますが、ポリアミンにはLFA-1とマクロファージなど白血球系の接着分子を抑制する働きもあります」(福生所長)。

 動脈硬化は炎症を起こした部分にマクロファージなど白血球系が接触することが原因になっている。ポリアミンが多く含まれる食べ物の代表が納豆である。納豆は血栓を溶かす成分が有名だが、動脈硬化を抑制する成分も豊富だったということになる。

 中性脂肪がたまらないように摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスが食事療法の基本となる。高血圧を促進する塩分摂取量も気をつけたい。「ポリアミンの補給も含めて和食が動脈硬化対策には最適の食事でしょう。後は運動。有酸素運動が有効です」と福生所長はアドバイスする。

 ストレスの問題も無視できない。ストレスホルモンといわれるコルチゾルは血圧上昇や胸腺を委縮させ、免疫を抑制することで動脈硬化を促進する作用がある。ストレスのダメージは睡眠と休養で回復する。上手に眠ることは現代人の健康管理にとって必須条件かもしれない。

 ◆動脈硬化予防のビタミン類 ビタミンCやEの抗酸化ビタミンは酸化LDLを減らすためにも有効。ビタミンB12、B6、葉酸も酸化LDLの動脈付着を促進するホモシステインのケ血中濃度を下げる働きがある。

August 31, 2005 09:24 AM | トラックバック (5)

2005年08月30日

2005年08月30日

【第47回】動脈硬化治療は危険因子への認識が重要

「動脈硬化」

 動脈硬化はようやくその進行のメカニズムが分かってきたため、治療の対象になってきた。ただし、硬くなった血管を再び柔軟にするわけではない。硬化度合いを遅らせることが目的になる。

 高脂血症は明らかに動脈硬化の最大危険因子だが、治療薬の使用で血中のコレステロール値、中性脂肪値は下がっても、動脈の硬化度が改善したわけではない。

 動脈硬化を研究テーマとしている福生吉裕・博慈会老人病研究所所長は「動脈硬化は突然、心筋梗塞(こうそく)、脳梗塞を起こすことがあります。自覚症状がないため進行に気づかないからです。どのあたりから治療をすすめるのがいいのか。この見極めが大事です」と話す。

 福生所長は未病(病気と健康の境目)段階の医療を探る日本未病システム学会の常任理事も務める。未病の概念からも動脈硬化は格好のモデル、という。たとえ症状がなくても精密検査は重要である。「CTスキャン、頸(けい)動脈超音波検査、大動脈脈派速度、負荷心電図などを組み合わせることでかなり動脈硬化度は分かるようになってきました」と福生所長。

 未病段階の治療は食事療法、運動療法、禁煙などの生活指導が有効なことは間違いない。もともと血管内壁を覆う血管内皮細胞は、動脈硬化や血栓ができないような物質を産生している。

 内壁が傷つくことから動脈硬化が始まるともいえる。酸化LDLを減らす、血圧の上昇を防ぐ、風邪をひかないようにするなどが防止策になる。さらにピロリ菌を除去しておくことも動脈硬化の予防につながると福生所長は言う。減塩、禁煙などは血管を傷つけないために有効なのである。

 「臨床的立場からみて未病段階での治療は難しい部類に入ります。効果があるかどうか納得しにくいからです。こまめに生活指導をしてくれる医師に巡り合うことがポイントになるかもしれません」(福生所長)。

 動脈硬化治療を効果のあるものにするには、その人が改善できる危険因子への認識が重要。肥満、運動不足、喫煙などは改善できる危険因子。治療も予防も未病の段階から始めなくてはいけないのが動脈硬化の特徴だろう。

 ◆ホモシステイン アミノ酸の1つであるメチオニンが代謝される際、中間的にできる物質。代謝がうまくいかないと血中に残り、動脈硬化の要因となる。ホモシステインには血管壁を傷つけたり、悪玉コレステロール(LDL)の血管内壁付着を促進する作用がある。ビタミンB12がホモシステインを下げるといわれている。

August 30, 2005 11:08 AM | トラックバック (1)

2005年08月29日

2005年08月29日

【第46回】生活習慣が招く動脈硬化

「動脈硬化」

 動脈硬化の原因となる危険因子は、日ごろの生活習慣と結びついているものが多い。診断のポイントはまずその人の生活歴を尋ねることといわれているぐらいだ。動脈硬化研究が専門テーマの福生吉裕・博慈会老人病研究所所長は「肥満、運動不足、喫煙、飲酒は危険因子です。糖尿病、高血圧、高脂血症、痛風は動脈硬化を促進する重要な危険因子。最近注目されだしたメタボリック・シンドロームは動脈硬化への前奏曲です。それに家族に動脈硬化性疾患の人がいるかどうかも診断のポイントの1つ」と言う。

 とはいっても血管の動脈硬化度を正確に把握するのは実のところ難しいが、頸(けい)動脈エコーでアテローム(脂肪性物質の沈着)の有無を見たり、脈派の伝わり方(PWV)を測ることで分かるようになった。血管年齢は意欲低下、うつ症状や骨年齢(骨密度)、さらにED(ぼっ起不全)との相関関係があるとの研究もある。

 動脈硬化といえば何といってもコレステロールの問題がある。コレステロールは特殊なたんぱく質と結合して、リポたんぱくという粒子となって血液中に運ばれる。悪玉コレステロールと呼ばれるLDL(低比重リポたんぱく)は血管壁に入り込んで酸化され、アテロームを作り出す。「中性脂肪もリポたんぱくとして血液中を運ばれますが、一部が分離して小さなLDLを作ることがあります。この小さなLDLを最近では超悪玉と呼んでいます。より血管壁に入りやすく、また酸化を受けやすいからです」と福生所長は説明する。

 血管内壁の炎症反応も動脈硬化を招く。アテローム動脈硬化では、発症から進展の過程を通してリンパ球、単球、マクロファージといった白血球系が関係していることが分かってきた。いずれも炎症が起こってくる時に集まってくる白血球だ。「炎症反応で活性化するマクロファージは酸化LDLや脂肪性物質を異物としてがむしゃらに処理するのですが、結局消化しきれず泡沫(ほうまつ)細胞と呼ばれるものになります。この泡沫細胞は動脈壁内で増加してアテロームを作るのです」と福生所長。

 また喫煙はこの白血球系を活性化させ、さらに動脈内壁を傷つける一酸化炭素の血中濃度を高め、HDL(善玉コレステロール)値を低下させる作用もある。動脈硬化性疾患のいずれに対しても喫煙は進行させる要因になる。

 ◆メタボリック・シンローム 直訳すると代謝症候群。血糖、血圧、コレステロールおよび中性脂肪、肥満の4つが重なると心臓病や血管病にかかる確率が正常な人と比べ3倍以上になる。それぞれの数値がわずかなオーバー状態でもメタボリック・シンドロームになる。

August 29, 2005 10:46 AM | トラックバック (1)

2005年08月28日

2005年08月28日

【第45回】風邪も動脈硬化の危険因子

「動脈硬化」

 人は血管とともに老いるという。動脈が柔軟性を失い劣化した状態を動脈硬化と呼ぶ。動脈硬化こそエイジングの指標となる、と言っても言い過ぎではない。

 脳動脈の硬化度を詳しく調べた有名な研究(九州大学)がある。1000人以上の日本人を対象に、亡くなった後、病理解剖された人の脳動脈の狭窄(きょうさく)度を調べたのである。22カ所の動脈の狭窄度を5段階評価(0~4)したところ、どこも変化がなかった0点の頻度は10歳未満では100%、10代では92%となり年齢が上がるとともに減っていった。60歳以上では10%以下になった。

 日本動脈硬化学会評議員を務める福生吉裕・博慈会老人病研究所所長は「注目すべきは10代後半から動脈硬化がみられることと個人差も結構大きいことです」と解説する。近年、動脈硬化の進行メカニズムが解明されてきたところから、予防や治療の対象となる疾患ともなっている。

 動脈硬化は沈黙の病気とも呼ばれる。徐々に進行し自覚症状もない。しかし高血圧、脳卒中、心臓病の基本原因になる。腎動脈の硬化が進むと慢性腎不全にもなる。網膜出血も動脈硬化が関係している。

 血液循環が関係するさまざまな病気は、動脈硬化の合併症ともいえる。「動脈硬化を進める原因は多岐にわたります。止めるわけにはいきませんが、いかに進行を遅らせるかが健康長寿につながることは間違いありません」と福生所長はいう。

 病理学的はアテローム(粥=かゆ=状)動脈硬化と呼ばれる種類が最も重大で多くみられる。まさしく粥状のものが血管に詰まってくる。脳や心臓、腎臓などの臓器、足の中動脈や大動脈にも損傷を与える。

 「このアテロームの形成には免疫システムもかかわることが分かってきました。感染症によって動脈内壁が傷つくと、アテロームの形成が促進され、しいては動脈硬化につながります。実はカゼも動脈硬化の原因の1つになるのです」(福生所長)。
 動脈硬化の危険因子は多岐にわたるが、互いに相関関係がある。危険因子を1つでも防ぐことが予防対策となる。

 ◆痛みとけいれん 自覚症状がない動脈硬化も動脈内が狭まると症状が表れてくる。代表的な症状が痛みとけいれん。血液循環の不良から各組織に運ばれる酸素と栄養が足りなくなるのがその理由。歩行中にふくらはぎが痛むのは下肢(し)の血管の動脈硬化の可能性がある。運動中の胸痛も要注意である。

August 28, 2005 10:04 AM | トラックバック (3)

2005年08月27日

2005年08月27日

【第44回】ホルモンの補充で生活の質回復

「総合ホルモン補充療法」

 アンチエイジング医学の最前線といっていい総合ホルモン補充療法。今後の普及も期待されるが、ブレーキ要素も結構ある。治療に用いられるホルモン剤が保険適用になっていないものが多い。
 原則として病気を治す治療を対象としているのが健康保険制度。より健康的な状態つくりを目標とするアンチエイジング医学は、今のところ健康保険制度とはなじまない。総合ホルモン療法も自由診療となる。

 アンチエイジング医学における検査は詳細にわたる。それだけ費用もかかる。総合ホルモン補充療法が普及している欧米各国でも事情は多少違うが、従来の診療より費用が高いのは同じ。若返りを強調するかしないかを別にしても、総合ホルモン補充療法が、金持ち相手の治療になっている面は否めない。

 海外での診療経験もあり、世界抗加齢協会日本代表を務める賀来玲玲(かく・りんりん)ひばりケ丘医院副院長は「アンチエイジング医療の本質は土台作り。地味な作業の積み重ねを医師と患者さんが共同で実践する医療です。特にホルモン補充療法は個々の患者さんと一生付き合う気持ちがないと成り立たないと思っています」と話す。

 よりよい健康状態を目標とする総合ホルモン補充療法だが、病気治療で期待されている面がある。それは治療が原因となる患者のQOL(生活の質)の落ち込みを回復させる手段としてだ。

 「例えば抗がん剤治療の副作用は明らかにホルモンバランスを乱します。ホルモン補充をすることで症状を緩和させることが可能です。欧米でも一部ですが、そうした取り組みが始まっています」と賀来副院長。実際、抗がん剤治療を受けている人、透析治療を続けている人や肥満症など過度のストレスにさらされているケースへのホルモン補充療法も手がけている。

 完治が不可能な慢性疾患が多くなる高齢者にとってQOLの低下は何よりも深刻な問題。精神的ストレスが病状を急速に悪化させる例が多いだけに、アンチエイジングにとどまらないホルモン補充療法に対する期待度は増す。

 賀来副院長は「アンチエイジング医学の広がりを理解してもらう努力が普及にもつながるはず」と考えている。

 ◆成長ホルモン ホルモン補充療法で最も注目されているホルモン。成長期に分泌が盛んなため、この名が付いたが一生涯にわたり体内で重要な役割をする。若く厚い皮膚や筋肉を作り(たんぱく質合成作用)、エネルギーレベルや性的能力も高める働きがある。気分改善、記憶力の持続力にも関係している。

August 27, 2005 12:34 PM | トラックバック (0)

2005年08月26日

2005年08月26日

【第43回】急速進展ホルモン研究

「総合ホルモン補充療法」

 ホルモン補充療法はそもそも日本では普及しているとは言い難い。厚生労働省の治療ガイドラインにあるエストロゲン補充療法にしても普及率は1・5%程度。スウェーデン(40%)、米国(30%)、韓国(20%)などの諸外国と比べてかなり低い。全体としてホルモン補充療法の経験の少なさが、日本における総合ホルモン補充療法の普及を妨げているともいえる。また、ホルモンの機能研究も最近になって分かってきたことが多いという点もある。

 欧州アンチエイジング医学会専門医、米国アンチエイジング学会認定医でもある賀来玲玲(かく・りんりん)ひばりケ丘医院副院長は「総合ホルモン補充療法を実施する医療機関は、ホルモンに関する知識に精通する医師がいることが必要です」という。

 賀来副院長は人種差も無視できないアンチエイジング医学の中、東洋人向けの統合抗老化プログラムを開発し、ホルモン補充療法でも実践している。

 総合ホルモン補充療法で用いられるホルモンはメラトニン、DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)、エストロゲン、プロゲステロン、テストステロン、甲状腺ホルモン、コルチゾルなどが代表的。DHEAは副腎でつくられるすべてのホルモンの源となるもので、男性ホルモンも女性ホルモンもDHEAからつくられる。ホルモン生成にも関与しDHEAから50種類以上のホルモンがつくられている。「DHEAのアンチエイジング効果の長期的データはこれからですが、ホルモン研究は急速に進展しているので、期待がもてます」と賀来副院長は話す。

 ひばりケ丘医院で総合ホルモン補充療法を受けている人の年齢層は、30代から80歳過ぎの高齢者と幅広い。同医院では1からのスタート。海外での治療経験などを受診者に話すうちに総合ホルモン補充療法を受ける人がいわば口コミで広がった。「成長ホルモン分泌の抑制要因には糖分摂取過多、運動不足、ストレス、睡眠不足などがあります。環境ホルモン問題なども加わり、加齢だけでなくホルモンバランスを崩す要素は今の日本にたくさんあります。総合ホルモン補充療法がより求められるはず」と賀来副院長は予測している。

◆環境ホルモン 体に影響を与える化学物質は分泌ホルモンだけではない。ダイオキシンなど有害化学物質もごく微量で生殖に関するホルモン作用を阻害し、ホルモンのような作用を示すことから環境ホルモン(内分泌かく乱物質)と呼ばれる。98年に67物質がリストアップされたが現在は見直し中。

August 26, 2005 10:22 AM | トラックバック (2)

2005年08月25日

2005年08月25日

【第42回】治療満足度 半年で92%

「総合ホルモン補充療法」

 総合ホルモン補充療法はアンチエイジング医学らしい療法といえる。老化の原因となるホルモン分泌の低下→補充することで老化を防ぐ、という分かりやすさもある。しかし、実際の総合ホルモン補充療法はそんな単純なものではない。

 日本では実践する医療機関が少ない総合ホルモン補充療法をひばりケ丘医院(東京・西東京市)で行っている賀来玲玲(かく・りんりん)副院長は、「アンチエイジング医療のベースは食事や運動を中心にした生活指導です。病気を招く生活習慣を続けたままでホルモン補充で何とかなるものではありません」という。

 ひばりケ丘医院では受診者の健康状態を十分に把握することから始まる。アンチエイジング判定ドッグでも行われている問診、血液・生化学検査、内分泌検査、骨密度、動脈硬化度などを測定し、治療の方針を決める。

 「生活指導やサプリメント指導と合わせて行うのが総合ホルモン補充療法の基本です。アンチエイジングは1つの療法だけで十分といえるものではありません。ホルモン補充もその1つですが、短期的に効果が表れやすいのが最大の特徴でしょう」と賀来副院長は説明する。

 ひばりケ丘医院の臨床データでは治療後3カ月、48%の受診者の不快な自覚症状が消え、28%でかなりの改善があった。治療満足度は76%と高い。6カ月目の再問診表では92%がQOL(生活の質)が高まったと回答している。

 食事療法、運動療法にはない短期での改善効果は総合ホルモン補充療法の大きなメリットである。「1週間に1度の治療がベースになりますが、患者さんがまず言われる感想は『元気になった』です」と賀来副院長。

 ホルモン補充の効果は例えは悪いが、運動選手における筋力増力剤(テストステロン)の効果で実証されている。ただ、ホルモンは微量で体内に影響を与える物質。安全性の問題が総合ホルモン補充療法で求められる基本条件でもある。

 ◆ホルモンの加齢による低下 個人差はあるが成長ホルモンは30歳ごろから低下し、10年で約13%も落ちる。睡眠とも関係するメラトニン量も成長期を過ぎると急速に低下する。女性ホルモンは30代後半(閉経以降は激減)から、男性ホルモンも同じ時期から分泌量が下がる。

August 25, 2005 09:50 AM | トラックバック (0)

2005年08月24日

2005年08月24日

【第41回】これからのホルモン補充療法

「総合ホルモン補充療法」

 エイジング(加齢・老化)とともに<1>エネルギーレベルの低下<2>筋力および運動能力の低下<3>性衝動および性的能力の低下<4>精神的および視覚的鋭敏さの低下<5>脂肪のない筋肉量の減少<6>骨粗しょう症の発症<7>皮膚の柔軟性の喪失などの症状が表れる。

 いずれもホルモン分泌量の低下やアンバランスと深い関係にある。ホルモン低下が老化の一因となっているといわれる根拠でもある。そうしたホルモン分泌の減少を補い、ホルモンバランスを改善する目的で行われているのが総合ホルモン補充療法と呼ばれるものだ。医学の長い歴史の中では、始まったばかりといえる存在である。

 更年期障害や甲状腺機能障害など個々の病気治療に使われるホルモン補充療法は歴史もあるが、アンチエイジング医学の目標であるオプティマルヘルス(最高の健康状態)を目的に行われる総合ホルモン補充療法は最先端、最前線的位置にある療法だ。

 そんな総合ホルモン補充療法を西東京市(東京都)で始めている賀来玲玲(かく・りんりん)ひばりケ丘医院副院長は「欧米では盛んになりつつある療法ですが、日本では経験を積む場もないのが現状です。普及、理解度もこれからです」と言う。

 賀来副院長は都内で内科、産婦人科医として勤めた後、英国に留学しロンドン大大学院修了、王立内科学会認定医の資格を取得している。日本人初のヨーロッパ抗加齢医学会専門医でもあり、世界抗加齢協会の日本代表ともなっている。

 ひばりケ丘医院で行っている総合ホルモン補充療法では、受診者100人(うち女性95人)を対象に臨床データをまとめている。

 疲労、慢性頭痛、肩凝り、生理不順、月経困難症、更年期障害、肥満、不眠、肌荒れ、気分変調といった自覚症状が治療後3カ月目の再問診表では48%の受診者でほとんどみられなくなり、6カ月目では92%の受診者がQOL(生活の質)が高まったと認識しているとの結果になった。「総合ホルモン補充療法は検査で足りないと分かったホルモンを補えばいいという単純なものではありません。個人に応じたきめ細かな療法が求められます」と説明する。

 詳しくは次回で。

 ◆ホルモン 主に体内恒常性を維持するために分泌される微量化学物質。ギリシャ語のホルマオー(刺激するもの、呼び覚ますもの)にちなんで名づけられた。大脳が分泌をコントロールしている。70種類以上あるとされている。それぞれのホルモンに標的細胞・器官があり、代謝調節も行う。

August 24, 2005 10:09 AM | トラックバック (2)

2005年08月23日

2005年08月23日

【第40回】喫煙者減らすには1箱460円以上

「喫煙習慣」

 習慣として定着したものを変えるのは簡単にはいかない。禁煙をするかしないかは個人の意思にかかっているが、喫煙習慣の健康への影響を考えると社会的取り組みが重要になってくる。健康増進法が施行されるなど禁煙対策は本格的に取られ始めているが、阿部真弓・東京農工大健康管理センター助教授は「まだまだ満足すべき状況とはとてもいえない」と言う。

 阿部助教授は禁煙指導者を増やし、バックアップする禁煙支援者コンサルネットを今年6月、立ち上げた。これまでもインターネットなどで喫煙者本人に対する相談を受けていたが、「個々に対応するには限界があります。禁煙指導をしてくれる人を全国に増やすことが効果を上げるはず」と期待している。

 全世界的に禁煙運動を推進しているWHO(世界保健機関)では、総合的たばこ対策プログラムに取り入れるべきいくつかのキーポントを挙げている。1番目は子どもをたばこ依存から守る対策。未成年の喫煙は日本でも問題になっている。中学生と高校生を対象とした全国調査では「この1カ月にたばこを吸ったことがある」との回答が高校3年の男子で約37%、女子で約16%に達している。

 「喫煙の悪影響は吸っている年月の長さと相関関係があります。20~30年間で顕著に表れます。10代から吸い始めれば、30~40代の働き盛りに影響が出ることになります」と阿部助教授は心配する。

 教育とともにたばこの使用の防止対策も欠かせない。WHOではたばこ税を利用した価格の引き上げを2番目のキーポイントとしている。ある試算によると日本の場合、1箱460円を分岐点にそれ以上たばこの値段が上がれば、喫煙者は確実に減るそうだ。

 「たばこの値段を上げることで喫煙者が減ることは諸外国で証明されています。当然、たばこ産業にかかわる人へのサポートも必要になります。たばこ対策の決め手は社会的な取り組み次第といっていいでしょう」と阿部助教授は強調する。

 たばこを止めること、吸わないことはアンチエイジングにとってもキーポイントだが、さてどうなる。

 ◆成人喫煙率(平成15年調査) 【男】20~29歳=55・8%、30~39歳=56・8%、40~49歳=55・4%、50~59歳=54・4%、60~69歳=35・7%、70歳以上=26・6%【女】20~29歳=19・2%、30~39歳=18・1%、40~49歳=15・5%、50~59歳=10・7%、60~69歳=6・4%、70歳以上=4・2%。

August 23, 2005 11:26 AM | トラックバック (1)

2005年08月22日

2005年08月22日

【第39回】ニコチン禁断症状 2~3日ピーク

「喫煙習慣」

 喫煙習慣には「分かっちゃいるけど止められない」側面がある。ニコチンの依存性の問題だ。最近は禁煙治療の専門外来を設ける医療機関も増えている。

 阿部真弓・東京農工大助教授は禁煙外来をいち早く東京女子医大付属病院に立ち上げたことで知られるが、「ニコチンの禁断症状は2~3日がピーク。意外と早く抜け出せます」と言う。禁煙外来は基本的には保険適用がない自由診療となるが、たばこの購入費(月1万円前後)とほほ同じ料金なところが多い。

 禁断症状を緩和する方法として、ニコチン置換療法が行われるのが普通になっている。「たばこを止める代わりに皮膚に張るニコチンパッチなどを使って徐々にニコチン依存を解消していくやり方です」と阿部助教授は説明する。

 ニコチン置換療法は禁断症状を200分の1程度に抑えるといわれている。早い人では2週間ほどでニコチン置換療法が必要なくなる。個人差は当然あるが、禁煙治療は8週間ほどで終了する。最近の報告では禁煙外来の治療成績はおおむね良好で、禁煙外来終了時の成功率が6割以上のところもある。ただ最終的にはたばこを止めたい本人の意思が成功のカギになるのはいうまでもない。

 「禁煙治療をしている間はたばこを止められても、その後が問題。追跡調査するとやがて吸い出す人が少なくないのが現状でしょう」と阿部助教授は推測している。

 ニコチンは「毒物及び劇物取締法」の対象ともなる毒物だが、中枢神経系の興奮と抑制が生じる精神作用物質でもある。喫煙で頭がスッキリしたり、精神が落ち着く作用もある。愛煙家にとって何よりの効用かもしれない。

 「たばこを止めたい理由をはっきりさせるのが禁煙のコツです。心理面に配慮したアドバイスも禁煙治療には欠かせません」と阿部助教授。

 たばこは健康に悪い。周囲にも迷惑をかける。止める理由はたくさんあるのに現実には止められない。認識の問題もあるが、喫煙習慣の対処には、個人レベルにとどまらない社会的取り組みも重要だ。

 その点は次回で。

August 22, 2005 10:04 AM | トラックバック (1)

2005年08月21日

2005年08月21日

【第38回】骨粗しょう症に結び付く喫煙

「喫煙習慣」

 たばこのパッケージにはさまざまな警告文が印刷されている。「妊娠中の喫煙は、胎児の発育障害や早産の原因の一つとなります」もその1つ。女性の喫煙は男性にはない影響の広がりがある。長年、禁煙運動にたずさわっている阿部真弓・東京農工大健康管理センター助教授は「喫煙は不妊の割合が高くなり、ピル(経口避妊薬)を服用している場合、喫煙によって虚血性心疾患にかかる危険性が増すという報告があります」と言う。

 現在の喫煙率(厚生労働省国民栄養調査)は男性では減少傾向にあるが、女性の喫煙率は40歳以下では増加傾向にある。特に20代の増加が目立ち、この10年で倍増している。阿部助教授は「女性の場合、たばこをやめるきっかけは結婚と妊娠といわれていました。晩婚化や子どもを生まない女性が増えていることと喫煙率の上昇は無縁ではないでしょう」と分析する。

 それでも欧米諸国と比較すると日本の女性の喫煙率は低い。軒並み30%を超える欧米女性に対し、日本は最も喫煙率が高い20~29歳で19・2%(平成15年)と2割を切っている。男女差を意識する社会環境が喫煙に関してはプラスに働いているといえなくもない。「男女差に関する社会意識も変わってきています。欧米女性並みの喫煙率になる可能性もあります。それだけに今のうちに喫煙の影響をしっかり認識して欲しい」と阿部助教授は切望している。

 がんやCOPD(慢性閉そく性肺疾患)などへの危険性は男女とも認められるが、子どもへの影響となると女性の喫煙は特別なものがある。たばこのパッケージに印刷されている胎児の発育障害は、疫学調査の推計では、たばこを吸う妊婦は吸わない妊婦と比べ低出生体重の危険性が約2倍ある。早産の危険性は約3倍だ。

 「エストロゲン(女性ホルモン)が低下する閉経は女性の骨粗しょう症が男性に比べて圧倒的に多い主な原因です。喫煙習慣は閉経を早めることが分かっています」と阿部助教授。骨粗しょう症になると骨折しやすく、高齢者のQOL(生活の質)を落とす大きな原因になっている。元気な長寿社会を目標とするアンチエイジング医学にとって、喫煙は見逃せない生活習慣なのである。

August 21, 2005 10:19 AM | トラックバック (0)

2005年08月20日

2005年08月20日

【番外編】欧米ではJカーブ曲線を追認

 喫煙とならんで健康への影響があるのが、アルコール摂取の問題。飲酒はアルコール分解を担当する肝臓への負担が大きい。1日160グラムのアルコール(日本酒換算4合)を飲み続けると肝臓障害を起こすリスクが高い。また、高血圧の原因にもなる。滋賀医科大の調査では毎日、日本酒にして2合以上飲む人は平均6から8以上、最大血圧が上がっている。

 一方で酒は百薬の長ともいう。死亡率との関係では有名な疫学調査がある。Jカーブ曲線の名で知られ、1日3~4杯飲む層の死亡率が一番低く、それ以下またはそれ以上の層は死亡率が高くなっているのである。欧米ではJカーブ曲線を追認する多くの研究報告がある。

 最近は細胞を老化させる原因として活性酸素の存在が知られるようになった。活性酸素から守る抗酸化物質もポリフェノールを筆頭におなじみの言葉になっている。健康食品はポリフェノール効果をうたうものだらけである。

 この人気者のポリフェノールとアルコール(エタノール)に意外な関係がある。ポリフェノールを取り出す際、エタノールに溶け込ませる抽出法を使うが、その時ポリフェノールはポリフェノール重合物となり、分解されにくく体内での残存期間が長くなるのである。

 体内に摂取したアルコール(エタノール)は肝臓でアセトアルデヒドと水にまず分解される。アセトアルデヒドは2日酔い、悪酔いの原因物質なのだが、ポリフェノールは、このアセトアルデヒドと反応してポリフェノール重合物となる。

 飲酒は活性酸素から体を守っているといえなくもない。ただし飲みすぎは肝細胞を傷つけることは間違いない。ほどほどが大事。漢方でいう中庸(ちゅうよう)が健康のもとである。ほどほどを身につけている人は人生の達人。達人クラスは意識せずとも健康管理の達人にもなっている。

 ◆適正飲酒の10カ条 <1>笑いながら共に楽しく飲もう<2>自分のペースでゆっくりと<3>食べながら飲む習慣を<4>自分の適量にとどめよう<5>週に2日は休肝日を<6>人に酒の無理強いをしない<7>くすりと一緒に飲まない<8>強いアルコール飲料は薄めて<9>遅くても夜12時で切り上げよう<10>肝臓などの定期検査を(アルコール健康医学協会)。

August 20, 2005 10:01 AM | トラックバック (1)

2005年08月19日

2005年08月19日

【第37回】喫煙がアスベスト障害促進

 「スモーカーズフェース」という言葉がある。年齢より顔のシワが増え、頬(ほお)がこけている顔つきを指す。長年の喫煙習慣がもたらす特有の顔だ。生活習慣はエイジング(老化)と深い関係がある。中でも喫煙習慣は健康への影響からいっても特別な意味を持つ。

 東京女子医大付属病院内にいち早く禁煙外来を設立したことで知られる阿部真弓・東京農工大健康管理センター助教授は「あまり指摘されていませんが、今、問題になっているアスベストによる健康障害は喫煙によって病気の発生が促進されることが前々から分かっています」と言う。

 たばこの煙には4000種類以上の化学物質が含まれ、発がん性が分かっているものも43種類ある。現在、フィルター付きのたばこが多いが、吐き出す煙と火のついた部分から出る副流煙の有害物質は、口から吸い込む主流煙より数倍多い。中には100倍以上多い有害物質もある。フィルター付きだから吸い込む化学物質が減る、とは単純にいえないのである。

 「たばこを吸わない人も吸い込む煙をETS(環境中たばこ煙)と呼びます。ETSが非喫煙者の肺がんの原因になることは81年に証明されています。たばこは受動喫煙の問題も大きいことをあらためて知ってほしい」と阿部助教授は言う。

 喫煙の健康障害では単独で、がんの原因の約30%を占めている。呼吸器内科の医師でもある阿部助教授は、COPD(慢性閉そく性肺疾患)への喫煙リスクを指摘する。COPDは慢性気管支炎や肺気腫(しゅ)などの病気の総称でもあるが、WHO(世界保健機関)の統計では世界の死亡総数の4位を占めている。

 日本でも500万から700万人の潜在患者がいると推定されているが、健康診断の検査項目に入っていることはほとんどない。「COPDはたばこを吸い始めてから約20年後から発症するとされています。本数も関係があり1日の本数×喫煙年数が400を超えると重症化する危険性が高まります」(阿部助教授)。

 たばこによる健康への悪影響は一般にも浸透し、全体として喫煙率が下がっているが、女性では20~29歳の若い層を中心にタバコを吸う人が増えている傾向もある。気になる点だ。

August 19, 2005 09:45 AM | トラックバック (2)

2005年08月18日

2005年08月18日

【第36回】建物は第3の皮膚となるべき

「工学的アプローチ」

 老化の生化学を工学的なアプローチによって研究している浦野四郎・芝浦工業大教授は「寿命はあるにしろ高齢者になっても生き生きと生活できるようにすることがアンチエイジング医学の目指す道でしょう。機能回復や維持のシステムを医工学的に確立するのも大きな仕事と考えています」と言う。

 浦野教授の夢は、神経系の化学を追究し、人工臓器や義肢義足に神経を導入することだという。免疫拒否の問題がある人工臓器、動かす感覚を感じることのできない義肢義足に神経を導入できれば、より肉体的精神的に活力をもって生きることが困難でなくなる。

 浦野教授がセンター長を務めるエイジング&ヘルスサイエンスセンターでは、高齢者介助・支援の機器開発やリハビリテーション訓練装置の開発も研究テーマになっている。

 「エイジングに対する工学的アプローチに、老化による退行性変化の機構解明は欠かせません。そこが分かれば防御法も確立可能になるはずです」と浦野教授。

 現在、取り組んでいる認知症の発症要因と予防に関する研究からは、脳神経細胞への抗酸化物質の有用性を解明中だ。

 老化は生理的なものを含め、いろいろなものが関係してくる。環境要因も多い。体内で発生する活性酸素にしても精神的ストレスと無縁ではない。「体内化学的にはホルモン分泌の問題になりますが、そのきっかけは感情です。その人の生きている環境が老化とリンクしているともいえます」と浦野教授。

 アンチエイジング医学では、住まいやオフィス環境を重視し、建築生物学(バウビオロギー)という分野も注目されている。建物は人間という有機体の延長として第3の皮膚になるべき、との立場をとっている。

 「生命科学を工学的な発想からとらえることで医学に貢献できるはず。私自身大いに期待しています」と浦野教授は締めくくる。

 ◆建築生物学 ドイツ語のバウ(建築)、ビオ(生物)、ロギー(学問)を合成した言葉。ドイツを中心に生まれた学問で、人と住環境の関係を考えるもの。人の体や環境に優しい建築資材は何かなどを研究している。アスベスト(石綿)被害が注目されているだけに、バウビオロギーの普及も早そうだ。

August 18, 2005 10:17 AM | トラックバック (0)

2005年08月17日

2005年08月17日

【第35回】酸化障害防ぐことが鍵

「工学的アプローチ」

 世界的にも始まったばかりといえる老化の工学的研究をしている浦野四郎・芝浦工業大教授(同大エイジング&ヘルスサイエンスセンター長)は、薬学博士で、日本ビタミン学会や日本過酸化脂質フリーラジカル学会にも所属し、酸化障害に関しては専門家である。

 現在、応用化学科生物学教室では、なぜ老化するのか? どうやって防いだらいいのか? を研究のメーンテーマにしている。「ラット実験の段階ですが抗酸化物質であるビタミンEの投与が脳の酸化障害を改善する効果を示しています。脳にたまったベータアミロイドを除去する効果は認められませんでしたが、予防する効果は期待できます」と言う。

 ビタミンEは人体における抗酸化作用の科学的根拠が実証されているビタミン。細胞膜や微小器官を包む膜を含めて生体膜というが「ビタミンEは生体膜の油に溶けて存在し、膜を酸化から守っています。ほとんどの臓器にビタミンEは含まれます」と浦野教授。体内組織のビタミンE濃度(組織1グラムあたり)を調べた研究では、脂肪組織、副腎、脳下垂体などが高値を示している。

 ビタミンは補酵素としていろいろな働きをしているが、ビタミンEの場合、副腎や脳下垂体などホルモンを分泌する器官に多く含まれる。細胞の受容体(司令を受け取るアンテナ)の膜を安定させる結果、ホルモン分泌の調整作用をする存在として注目されている。

 「ストレスホルモンといわれるコルチゾルは脳の海馬部分を障害します。海馬にはコルチゾルの受容体があります。ラット実験ではビタミンEを多量に投与すると、コルチゾルのホルモン分泌が正常に戻ることが分かりました」と浦野教授は、脳の病的老化を抑制するものとしてビタミンEに期待をかけている。

 脳細胞は抗酸化酵素が少ないことでも知られる。一方で脳細胞は正常に機能するのに必要以上の数の細胞を持っている。酸化障害を予測して余分な細胞を持っているようにもみえる。「酸化障害をいかに防ぐかがアンチエイジングのカギになることは間違いないでしょう」と浦野教授は確信している。

 ◆ビタミンE論争 「ビタミンEの大量投与は死亡率を高める」との研究発表が米国であった。その投与量の基準が米国のビタミンEの1日許容量より下だったことが、サプリメント大国のアメリカ人に衝撃を与えた。ただ研究そのものが世界で行われた臨床試験結果を分析したもので、参考にした報告論文の選択の問題もあり現在も論争が続いている。

August 17, 2005 10:35 AM | トラックバック (0)

2005年08月16日

2005年08月16日

【第34回】抑制作用あるビタミンE

「工学的アプローチ」

 老化を工学的にとらえる研究をしている芝浦工業大の浦野四郎教授。若いラットにアルツハイマー型認知症と同じ状況をつくることに世界で初めて成功した。「アルツハイマー病の原因といわれるベータアミロイドの沈着が、高濃度酸素を吸わせることによってラットの脳に表れました。脳神経系の老化原因の1つが酸化障害であることの裏付けにもなります」と言う。

 もともと脳細胞の膜にはアミロイド前駆体と呼ぶ長い構造のたんぱく質がくっついている。このたんぱく質がセクレターゼという酵素が働くと切断され、ベータアミロイドができることが分かっている。アルツハイマー病では、ベータアミロイドの沈着による変化が早いのである。「ベータアミロイドの沈着は神経細胞を死滅させます。その結果が認知障害となるわけですが、ベータアミロイドを生み出すメカニズムにも活性酸素による酸化的ストレスが関与していると考えられます」と浦野教授。

 ラット実験では新しい記憶をつかさどる脳の海馬と呼ばれる部分への酸化障害についても検討され、認知機能の衰退の要因になっている可能性が高いという。

 脳の機能は年齢を重ねていくに従って変化していく。加齢による影響は避けられない。浦野教授は「生理的老化は元に戻すわけにはいきません。ただ病的老化を抑制することは可能です。そのポイントとなるのが酸化的ストレスであり、これを防ぐ抗酸化作用です」と説明する。実験ではラットに抗酸化物質のビタミンEを投与すると海馬領域での酸化障害が改善し、不足するとこう進することが確認されている。脳細胞は細胞膜に不飽和脂肪酸が多いことで知らせる。流動性、弾力性を必要とするからである。

 この不飽和脂肪酸は酸化されやすい物質である。また脳細胞は酸素を必要とする器官でもある。呼吸で取り入れる酸素の5分の1は脳で消費される。活性酸素を筆頭にフリーラジカルが発生しやすい環境なのである。「年とともに脳内には鉄がたまります。鉄は酸素と反応するとフリーラジカルを生み出します。脳の老化と酸化障害は無視できない関係です。その抑制作用が期待できそうなのがビタミンEなどの抗酸化物質です」(浦野教授)。

 ◆脳神経細胞(ニューロン)の数 大脳皮質で約140億あるとされる。加齢とともに数は減っていくが、残っている神経細胞の間では新しい結合がつくられる。神経細胞のほかにグリア細胞と呼ばれるものが存在し、神経細胞への栄養供給やニューロン間の信号伝達の補助をしている。

August 16, 2005 11:41 AM | トラックバック (0)

2005年08月15日

2005年08月15日

【第33回】工学的アプローチ研究

「工学的アプローチ」

 アンチエイジングは単に医学からだけでなく、いろいろな分野で研究対象となっている。芝浦工業大エイジング&ヘルスサイエンスセンターは<1>老化による退行性変化の機構解明と防御法の確立<2>高齢者介護、支援の機器開発<3>画像診断処理機器の開発<4>リハビリテーション訓練措置の開発を主な研究テーマに活動している。

 同センターのセンター長を務める浦野四郎教授(応用化学科生物化学教室)は「日本は世界一の長寿国になりましたが、肉体的精神的にも活力を持ち、健康で長生きする環境になっているとは言い難い。これを可能にするには工学的発想が大きな力になると思います」と話す。

 浦野教授は長らく東京都老人総合研究所で研究生活を送り、老化研究が専門分野。「生命現象はすべて生体内の化学反応によって行われています。この化学反応のメカニズムを明らかにして医学への応用を目指しています」。

 浦野教授の工学的アプローチは、医学界でも注目される成果を生み出している。若いラットに高濃度酸素を吸わせ、アルツハイマー病と同じ状況をつくることに世界で初めて成功したのだ。

 アルツハイマー病になるメカニズムは今のところ完全には解明されていないが、「脳神経系の老化原因の1つが酸化的ストレスにより発生した活性酸素の酸化障害であることを裏づける実験結果になったと思います」と浦野教授は説明する。

 アンチエイジング医学にとってアルツハイマー病に代表される認知症への対応は大きなテーマ。発生のメカニズムが分かれば、治療・予防への道も見えてくる。

 「老化の生化学を工学的アプローチによって研究する取り組みは世界的にも始まったばかりです。実験結果などを踏まえ、認知症への予防策にも道筋が見えてきたと考えています」(浦野教授)。

 詳しくは次回で。

 ◆アルツハイマー病 20世紀の初めに発見したドイツのアルツハイマー博士にちなんで名づけられた。脳血管性のものとともに認知症の2大原因。米国の年齢別増加率の調査では65歳では5%程度だが、75歳を過ぎると20%以上に跳ね上がっている。比較的若い時期に発症する遺伝的(家族性)アルツハイマー病があることも分かっている。

August 15, 2005 09:45 AM | トラックバック (0)

2005年08月14日

2005年08月14日

【第32回】無駄な日焼け避ける

「光老化」

 紫外線の影響は生まれた時から始まっている。紫外線による遺伝子の傷が元で遺伝子に間違いが起き、シミが出来るのだが、それまでには20年以上かかる。子どもの時は細胞分裂が大人に比べ盛んなため遺伝子に間違いが起きやすい。ただ蓄積された遺伝子の傷が少ないためにシミが出ない。しかし、子どもも大人と同じように傷はできるので、紫外線対策は子どもの時からスタートさせる必要がある。

 一生に浴びる紫外線量のうち約50%は18歳ぐらいまでに浴びるといわれる。それだけ野外での行動が盛んということだが、同じ紫外線量でも子どもの時に浴びるほど影響が大きいとの疫学調査(皮膚がん発症率との関係など)もある。紫外線研究の第一人者、市橋正光・神戸大学医学部名誉教授は「これまでの多くの研究から小児期から無駄な日焼けを避けることは、若々しく健康な皮膚を維持することにつながることは明らかです」と話す。

 皮膚がんの発生率が高くなっている豪州では、子どものころの日焼けが大人になってから皮膚がんの原因になることを教育している。Slip(スリップ=長袖を着る)、Slop(スロップ=サンスクリーン剤を塗る)、Slap(スラップ=帽子をかぶる)を標語に国を挙げて取り組んでいる。

 日本でも母子健康手帳で98年から「日光浴のすすめ」が「外気浴」に変更され、昨年4月には環境省が紫外線保健指導マニュアルを出している。しかし市橋名誉教授の目からみるとまだまだもの足りない。「サンスクリーン剤を塗ることをお化粧することと思っている先生や親が結構います。小学校でも教育の一環として紫外線を避けることの大切さを理解させ、具体的な方法を教えるべきです」と提案する。

 市橋名誉教授は現在、ある幼稚園を対象に園児の紫外線の影響を調査中だ。ちなみに市橋名誉教授の紫外線対策は日焼け止めを顔と手に塗ること。1日中外出し紫外線を浴びるときには、2~3時間おきに塗り直している。

 紫外線の量は太陽光の強さに比例する。特に遺伝子を直撃する紫外線Bは季節によってかなり違う。気象庁では92年から全国4カ所で毎日、紫外線Bの量を調べている。夏と冬では数倍の差があり、少なくとも4月から9月までは紫外線対策を意識した方がいい。

 ◆ビタミンD ビタミン類は体内では作られないが、ビタミンDは肝臓で作られるプロビタミンDが皮膚において紫外線に当たることで活性型ビタミンDになる。日光浴を勧める1つの根拠になっていたが、食事から必要量は取れているし、1日に数分間、太陽光を浴びれば十分なことも分かっている。

August 14, 2005 10:17 AM | トラックバック (1)

2005年08月13日

2005年08月13日

【第31回】日本人の18%色白は老けやすい

「光老化」

 肌の衰えは加齢とともに進む。シワやシミから年が分かる。しかしシワやシミの形成には紫外線の影響が最も大きい。

 肌の弾力性は真皮の状態が左右する。真皮には膠原(こうげん)線維のコラーゲンや弾性線維のエラスチンがあり、ヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸など糖たんぱく質が水分を取り込み、クッションの働きをしている。

 紫外線はコラーゲンを細かく切断する酵素(コラゲナーゼ)を多く作り出す作用がある。コラーゲンは3分間、太陽光を浴びるだけで変性することが分かっている。

 紫外線研究で知られる市橋正光・神戸大学医学部名誉教授は「子どものころから紫外線対策をしておけば皮膚の若さは保てます。シミも紫外線の影響でメラニンを作り出す遺伝子に変異が生じるためにできるものです」と言う。

 個人差もある。紫外線に反応してメラニンを合成する能力は遺伝的に決まっている。日本人では日焼けで赤くなるか黒くなるかで、スキンタイプをⅠ~Ⅲに分類している。約70%がタイプⅡ。日焼けでそこそこ赤くなり、その後に褐色になる。

 「赤くなりやすいが、黒くなりにくい人がタイプⅠで17~18%います。いわゆる色白タイプ。紫外線の影響を防ぐメラニンを少ししか作らないので真皮へのダメージも大きい。老けやすいといえます」と市橋名誉教授。

 シミやシワは美容にとって大敵。直接、長寿とは関係しないが、日本抗加齢医学会理事でもある市橋名誉教授は「見た目の若さは精神的にも大きく影響します。若いといわれれば行動的にもなります。高齢社会に入った日本で皮膚の若々しさを保つことは想像以上に大切になってくる、と考えています」と話す。

 介護に美容を取り入れた化粧療法を実施する高齢者施設もある。美容福祉学科を設けた短大もある。健康長寿に精神的な問題は外せない。紫外線の影響は広範囲にわたるのである。

 紫外線対策をどうすべきかは次回で。

 ◆フォトリバイブ(光療法) 最近、普及し始めているシワ取り療法。LED(発光ダイオード)を使いコラーゲンを作り出す線維芽細胞を活性化させる方法。宇宙空間で植物を育成するため、米航空宇宙局(NASA)で開発された技術を応用している。光(紫外線)での衰えを光で改善するという皮肉な結果になっている。

August 13, 2005 09:50 AM | トラックバック (1)

2005年08月12日

2005年08月12日

【第30回】紫外線が皮膚がんに影響

「光老化」

 紫外線の影響でやはり気になるのが皮膚がんとの関係だ。がんは遺伝子が傷つくことがきっかけになる。がん細胞では異常増殖を抑制するがん抑制遺伝子に変異が生じていることが明らかになっている。

 日本抗加齢医学会の理事を務め、紫外線研究で知られる市橋正光・神戸大学医学部名誉教授は「遺伝子が傷つくと修復作用が働きますが、時には元のDNA配列と違う形で修復される場合があります。紫外線によって生じた独特の遺伝子の傷は、間違って治されて変異を起こしている部分と一致することが分かっています」と説明する。

 神戸大学医学部皮膚科は兵庫県加西市の協力のもと皮膚がん検診を実施している。その中で日光角化症(カサカサした赤い発疹が特徴)と呼ばれる皮膚がん1歩手前の前がん症について調査(92~01年)している。人口10万人に対し加西市では118・9人が日光角化症だったが、沖縄(伊江村)では約4・6倍の551・4人という結果になった。「紫外線を浴びる量が多いと皮膚がんを起こす危険性も高いといえます。メラニン色素が少ない色白の人も日光角化症になる率が高い」と市橋名誉教授は言う。

 皮膚がんは、どの細胞から発生するかによって特徴が異なっている。顔にできることの多い基底細胞がんは皮膚がんで最も多いタイプ。表皮の角化細胞が、がん化する有棘(ゆうきょく)細胞がんは皮膚がんの中でも紫外線の影響を受けて生じることが最も多い。日光の当たる顔や手の甲にできやすい。「基底細胞がん、有棘細胞がんはほとんど転移しません。もちろん治療は必要です。手術のほか放射線・化学・凍結療法などが行われています」(市橋名誉教授)。

 皮膚がんは近年、増えているがんの1つ。主な理由は高齢化の進行と過去の日光崇拝の影響もある。「日本で紫外線量が増えたというデータはありません。やはり老化による免疫力をはじめ、DNA修復能の衰えなどが、皮膚がんを増やしているその他の理由でしょう」と市橋名誉教授。

 ファッションの変化、つまり、昔と比べ肌を露出する服装が多くなったことも紫外線の健康影響に関係しているといわれる。

 ◆メラノーマ(悪性黒色腫) 表皮に存在するメラノサイト(色素細胞)が、がん化したもの。全身に転移しやすく悪性度が高いが、足の裏やつめの下に生じやすく、紫外線が主原因ではない。背中やスネ、腕にもできる。

August 12, 2005 11:35 AM | トラックバック (0)

2005年08月11日

2005年08月11日

【第29回】紫外線が光老化を促進

「光老化」

 夏、真っ盛り。小麦色に日焼けした姿はいかにも健康的にみえる。しかし、日焼けを起こす紫外線の影響は思う以上に大きい。紫外線研究の第一人者である市橋正光・神戸大学医学部名誉教授は「近年、急速に進歩した分子生物学の力で紫外線がなぜ健康に悪いのかが細胞や遺伝子レベルで分かってきました」と言う。

 太陽の光に含まれる紫外線は波長の違いからA、B、Cの3種類に分けられている。波長が短い紫外線ほどエネルギー量が多く、人体への影響が大きい。波長の最も短いCはオゾン層で吸収され、ほとんど地表には達しないが、エベレストの頂上くらい高くなるとCも届く。最近は環境汚染によるオゾン層の破壊で、紫外線Cの影響も心配されている。

 皮膚のシミやシワが紫外線の影響であることは、知られるようになってきた。光老化と呼ばれ、個人差はあるが、20歳過ぎから光老化は皮膚に表れ始める。この光老化に大きくかかわるのが紫外線A。「表皮の下にある真皮にまで届き、コラーゲンやエラスチンを変性させ、皮膚の老化を促進します。細胞内外で吸収される際、活性酸素を発生させるので遺伝子DNAも傷つけます」と市橋名誉教授は説明する。

 紫外線Bは直接、遺伝子DNAに吸収され、皮膚がんの原因となる。真皮には届かないが、表皮の90%を占める角化細胞に作用し、メラニンの産生に関係する生理活性物質(サイトカイン)を過剰に作り出す。メラニンの受け渡しが多い部分がシミとなることが分かっている。紫外線Bも光老化の犯人の1人なのだ。

 また皮膚は病気や異物に抵抗する免疫機能の重要な役割を担っている。表皮細胞内に存在するランゲルハンス細胞と呼ばれる細胞は、外から侵入した異物を捕らえ、リンパ節にあるリンパ球まで運ぶ。その結果、リンパ球の免疫反応が起こるのである。「ランゲルハンス細胞は紫外線に大変感受性が高いのです。日焼け後は10日間ほど働きが弱まります。つまり紫外線は免疫力を低下させる作用があるということです」(市橋名誉教授)。

 疲れがたまると口の周りにツブツブが出る。口唇ヘルペスと呼ばれるが、体の抵抗力が落ちると表れる。日焼けをした後、この口唇ヘルペスになる人がいる。紫外線が免疫力を弱めた結果なのである。アンチエイジングにとって紫外線対策は重要だ。

 ◆メラニン 紫外線に反応して合成される。表皮細胞の核の上に帽子のように乗り、紫外線の影響を防いでいる。色素細胞がつくり出し皮膚の色を決める。黒いユーメラニンと黄~赤色のフェオメラニンの2種類あり、有色人種はユーメラニンが多い。抗酸化作用もある。

August 11, 2005 10:02 AM | トラックバック (1)

2005年08月10日

2005年08月10日

【第28回】40、50代こそ運動必要

「運動のアンチエイジング」

 健康のための運動にとって何がネックになるといえば、分かってはいるけど続かない点だ。1回の持続が最低10分あれば有効なカロリー消費になり、肥満防止につながる。筋肉は基礎代謝量の6割を占め、内臓脂肪蓄積を防ぐ大きな味方にもなる。

 運動の健康効果についての研究が専門の高波嘉一・東京医科大講師は「脂肪摂取が多くなった食生活の変化が指摘されますが、活動量の少なさが生活習慣病を増やしていることは確実です」と言い切る。

 国民栄養調査をみても50年代から1日のエネルギー摂取量はそれほど変化がない。肥満は摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ることから始まる。摂取エネルギーが変わらないのに太る原因は、身体活動による消費エネルギーが少なくなったからだ。

 「運動プログラムの講習会を開くと集まってくれるのは仕事をリタイアした人がほとんど。アンチエイジングのためにも運動が必要な40代、50代の人はめったに見かけません」と高波講師。

 病気リスクの脅しも実際に自分や知人が病気にならない限り、波及効果は少ない。高波講師は社会的、全体的な取り組みも必要という。個人個人の自覚に任せても手遅れになりそうな状況でもある。

 「運動をすることのメリットを具体的に示す制度を考えてもいいのではないでしょうか。健康保険料が安くなるといったものです。生活習慣病が減れば医療費の大きな削減につながります」と提案する。

 市立病院などは地域の中核医療機関として位置づけられているが、運動療法が手軽にできる施設の充実も考えるべきだろう。高齢者のサロンになっていると以前から指摘する声があるが、「もっとサロン化してフィットネスクラブ並みの施設を作ったらどうでしょう。高齢者の健康対策として社会参加が重要ですが、病院にこうした施設を作れば外出する気もおきます。一石二鳥の効果が期待できます」(高波講師)。

 アンチエイジング医学が大胆な医療改革を起こすかもしれない。

 ◆運動と食事 消費エネルギーと摂取エネルギーのバランスが健康を維持するカギ。消費(運動)に見合った摂取(食事)、摂取に見合った消費を考えないとアンチエイジングはおぼつかない。まずは自分の消費エネルギーと摂取エネルギーの把握からスタート。

August 10, 2005 10:12 AM | トラックバック (0)

2005年08月09日

2005年08月09日

【第27回】日常の活動量増やす

「運動のアンチエイジング」

 運動は健康のために欠かせない。ではどんな運動をどの程度、行えばいいのだろうか。WHO(世界保健機関)から健康増進スポーツ医学研究協力センターに指定されている東京医科大衛生学公衆衛生学教室の高波嘉一講師は「本当に効果のあるものにするには、個々に即した運動処方が必要になってくるでしょう」と言う。

 運動処方はメディカルチェックを行い、運動の種類、強度、持続時間、頻度、進め方を決める。運動の効果を最大限にし、リスクを最小限に抑える目的がある。健康増進のためか病気の改善目的かで、当然、その内容は変わってくる。

 実際のところ専門家によって運動処方を実行する機会は少ないだろう。ある程度の目安としては米国スポーツ医学会(ACSM)の指針が世界的に知られる。日本における指針も準じている。ACSMでは何回か指針を改訂し以前は体力増強が中心だったが、現在は生活習慣病の治療や予防のための運動量を意識した内容になっている。

 「中等度の運動を10分以上1日合計で30分以上することが疾患リスクの減少につながるとしています。運動の種類も以前は有酸素運動を強調していましたが、今は仕事と仕事以外の身体活動や運動も含めています。要は日常の活動量を増やすことが健康につながると考えているわけです」と高波講師は解説する。

 病気予防につながる運動量は体力増進を図るものと比べて少なくとも効果がある、ということになる。といってもちょっと運動すれば効果が上がると証明されたわけではない。高波講師は「病気治療のための運動は始めただけで効果が出るケースも多いのですが、予防のための運動は効果測定が難しく、微妙な違いがありそうです」と言う。高波講師の研究では週2回と3回の運動では健康効果に差が出ている。「週2回でも3回と変わらない運動の仕方も考えていますが証明には至っていません」。

 階段を上る習慣をつけるなど、まず日常生活の活動量を上げることが運動の第1歩。運動は続けないと効果がないのも大前提となる。

 ◆運動と活性酸素 運動によって体内の活性酸素量は増えるが、「それに応じて体内の抗酸化酵素も多くなるなど抗酸化能力が高まることも分かってきました」(高波講師)。運動による抗酸化能力の高まりも運動効果の指標として重要になっている。

August 9, 2005 11:48 AM | トラックバック (0)

2005年08月08日

2005年08月08日

【第26回】筋肉継続を心がける

「運動のアンチエイジング効果」

 運動は内臓脂肪における生理活性物質の分泌を正常化し、動脈硬化を抑制する効果がある。最近の研究から明らかになった新しい意義ともいえるが、もちろん健康効果は幅広い。

 今年度から文部科学省の補助金研究「生活習慣病の予防に対する運動の効果を予測するバイオマーカーの探索」に取り組んでいる高波嘉一・東京医科大講師は「筋肉を刺激することは大きな健康効果、アンチエイジング効果があるといえます」と言う。

 人の体には約200の骨と約400種類の筋肉がある。骨格を土台にそれを覆う筋肉が肉体を構成している格好になっている。骨量を維持し、筋肉(骨格筋=随意筋)を保つことは健康体でいる基本といえるものだ。

 骨格筋は線維の種類によってタイプ1(赤筋)とタイプ2(白筋)に大別されるが、エネルギー源として糖を取り込むため筋肉の活性化は、糖代謝をスムーズにする欠かせない組織といえる。「タイプ1はインスリン感受性が高く安静時の糖の取り込みが盛んです。タイプ2もインスリン感受性は低いのですが、筋収縮による刺激でインスリンとは無関係に糖を取り込むとされています」と高波講師。糖尿病治療に運動療法が大きな柱になっている理由でもある。糖尿病だけでなく高脂血症、高血圧症などに対する運動療法も近年、注目され保険適用にもなっている。

 タイプ1を刺激するにはウオーキングや軽いジョキング、水泳などの有酸素運動、タイプ2にはダンベル体操などのレジスタンス運動が効果を上げる。運動効果には2つの視点がある。1つは病気改善や予防、1つは運動能力の維持・向上。筋肉を鍛えなくても内臓脂肪の減少など運動することの健康効果は大いにある。ただ筋肉を鍛えることは加齢による運動能力の衰えをカバーすることも可能になる。

 「転倒による骨折は寝たきりになる理由の上位を占めています。骨や筋肉の衰えが高齢者の転倒の大きな原因になっています。体力がないと外出もおっくうになり、心身とも老け込みがちになります。QOL(生活の質)を落とさないためにも筋肉の維持は心がけるべきです」と高波講師は体を鍛える運動も勧める。

 ◆加齢による筋肉量の変化 個人差も大きいが一般に40歳を過ぎると脂肪が増え、1年で1%程度減るといわれる。運動不足によって助長される。タイプ2の方が加齢による委縮が顕著。上半身より下半身の衰えが早く、特に大腿四頭筋(太もも前側)の筋肉量減少が目立つ。

August 8, 2005 10:24 AM | トラックバック (0)

2005年08月07日

2005年08月07日

【第25回】代謝促すアディポネクチン

「運動のアンチエイジング効果」

 運動の健康効果は常識化しているが、最近、新たな意義が強調されるようになっている。それは運動による内臓脂肪の蓄積の阻止・解消が、動脈硬化の抑制、代謝障害の改善に役立つことがはっきりしてきたからだ。

 脂肪細胞からはいろいろな生理活性物質が分泌されている。その1つであるアディポネクチンと呼ばれる物質に初期の動脈硬化を抑制する作用があることが判明した。動脈硬化における運動の予防効果研究で知られる高波嘉一・東京医科大講師は「このアディポネクチンは脂肪細胞が肥大すると分泌が減るという現象が起こります。肥満が動脈硬化や代謝異常を誘発しているのです」と説明する。

 高波講師が研究者代表を務めた研究報告がある。非活動的な中高年者14人に毎回30~60分の有酸素運動を週3回以上、3カ月継続し、運動をしなかった非活動的な中高年者12人と比較したものだ。

 「運動をしたグループは体重、ウエスト、内臓脂肪面積などすべての脂肪が減少した半面、血清アディポネクチン濃度は高くなりました。運動をしなかった12人は何の変化もありませんでした」と高波講師は運動におけるアディポネクチン増加の効果を語る。

 アディポネクチンの低下は、動脈硬化だけでなくインスリン抵抗性(インスリンの働きが悪くなること)を高め、糖尿病など生活習慣病にも深い関連があることも指摘されている。「内臓脂肪は皮下脂肪と比べて蓄積しやすいものですが、落としやすい性質もあります。特にウオーキングや軽いジョギングなど有酸素運動が減少させる手段として有効です」(高波講師)。

 血糖、血圧、コレステロール及び中性脂肪、肥満の4つが重なると、それぞれわずかな異常値でも動脈硬化や心臓病になる確率が飛躍的に上がる。メタボリックシンドローム(代謝症候群)の名で知られるようになったが、その診断基準における必須項目としてウエストの数字(男性85センチ以上、女性90センチ以上)が採用されている。

 ウエストのサイズは内臓脂肪の多さを示している。運動による内臓脂肪の減少は健康長寿に直結している。

 ◆運動機能と加齢 運動能力は加齢とともに衰える。立ち幅跳びにおける年齢との関係を調査した研究では男女とも10代後半がピーク。60歳を過ぎるとピーク時の約半分になる。低下の原因は<1>筋肉量の減少<2>運動にかかわる神経細胞(ニューロン)の数や機能の低下などが挙げられている。

August 7, 2005 09:16 AM | トラックバック (0)

2005年08月06日

2005年08月06日

【第24回】代謝促すアディポネクチン

「運動のアンチエイジング効果」

 運動の健康効果は常識化しているが、最近、新たな意義が強調されるようになっている。それは運動による内臓脂肪の蓄積の阻止・解消が、動脈硬化の抑制、代謝障害の改善に役立つことがはっきりしてきたからだ。

 脂肪細胞からはいろいろな生理活性物質が分泌されている。その1つであるアディポネクチンと呼ばれる物質に初期の動脈硬化を抑制する作用があることが判明した。動脈硬化における運動の予防効果研究で知られる高波嘉一・東京医科大講師は「このアディポネクチンは脂肪細胞が肥大すると分泌が減るという現象が起こります。肥満が動脈硬化や代謝異常を誘発しているのです」と説明する。

 高波講師が研究者代表を務めた研究報告がある。非活動的な中高年者14人に毎回30~60分の有酸素運動を週3回以上、3カ月継続し、運動をしなかった非活動的な中高年者12人と比較したものだ。

 「運動をしたグループは体重、ウエスト、内臓脂肪面積などすべての脂肪が減少した半面、血清アディポネクチン濃度は高くなりました。運動をしなかった12人は何の変化もありませんでした」と高波講師は運動におけるアディポネクチン増加の効果を語る。

 アディポネクチンの低下は、動脈硬化だけでなくインスリン抵抗性(インスリンの働きが悪くなること)を高め、糖尿病など生活習慣病にも深い関連があることも指摘されている。「内臓脂肪は皮下脂肪と比べて蓄積しやすいものですが、落としやすい性質もあります。特にウオーキングや軽いジョギングなど有酸素運動が減少させる手段として有効です」(高波講師)。

 血糖、血圧、コレステロール及び中性脂肪、肥満の4つが重なると、それぞれわずかな異常値でも動脈硬化や心臓病になる確率が飛躍的に上がる。メタボリックシンドローム(代謝症候群)の名で知られるようになったが、その診断基準における必須項目としてウエストの数字(男性85センチ以上、女性90センチ以上)が採用されている。

 ウエストのサイズは内臓脂肪の多さを示している。運動による内臓脂肪の減少は健康長寿に直結している。

 ◆運動機能と加齢 運動能力は加齢とともに衰える。立ち幅跳びにおける年齢との関係を調査した研究では男女とも10代後半がピーク。60歳を過ぎるとピーク時の約半分になる。低下の原因は<1>筋肉量の減少<2>運動にかかわる神経細胞(ニューロン)の数や機能の低下などが挙げられている。

August 6, 2005 10:30 AM | トラックバック (0)

2005年08月05日

2005年08月05日

【第24回】深呼吸は肺にもいい影響

「脳のアンチエイジング」

 脳のアンチエイジングといえば認知障害、認知症への関心が最も高いといえるだろう。アンチエイジング指導として動脈硬化を防ぐ、寝たきりを防ぐ、がんを防ぐと並んで認知障害を防ぐことは、具体的な目的として挙げられている。

 認知症は2種類あることが知られている。脳血管性とアルツハイマー病である。血液生理学の専門家でもある高田明和・浜松医科大名誉教授は「最近の考え方はこの2つは実は分けにくいというものです」と言う。

 アルツハイマー病の患者は血栓症になりやすく、脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞で亡くなることが多い。また「脳梗塞になるとアルツハイマー病の症状を悪化させることも知られています。脳梗塞の血栓から神経毒となる物質や活性酸素ができ、神経細胞を障害してしまうのです」(高田名誉教授)。

 認知症の代名詞になっているアルツハイマー病は、医学的に分かっていないことも多い。治療薬も進行を遅らせるものしか開発されていない。脳血管性の認知症は動脈硬化などの血管、血流の問題が最大のリスクとなる。今後、増えると予測されるアルツハイマー病も脳血管性の認知症との関連を考えると現在、できることは脳梗塞をいかに防ぐかである。

 「脳血管性の認知症になりやすいのは血栓が脳の奥の方に入り、神経の連絡通路を障害するタイプです。多発しやすいためです。無症候性脳梗塞と呼ばれるもののほとんどがこれです」と高田教授は解説する。

 血栓は動脈硬化がもたらすものだが、高血圧によって血管にカルシウムの固まり(石灰化)ができることが原因になる。コレステロールより高血圧の方が認知症の危険因子なのである。

 不整脈(心房細動)によって心臓にできた血栓も脳梗塞を招く。血液はもともと精神的に興奮すると固まりやすい性質を持っている。

 高田名誉教授は「高血圧も不整脈も緊張、興奮が大敵。脳の老化は脳血管性であれアルツハイマー病であれ、心の安定が予防の大きな力になるはずです」とアドバイスを送る。

【ジャーナリスト 小野隆司】

 ◆健脳食 ある程度の目安として高田名誉教授は<1>1日100グラム程度の肉の摂取<2>脂肪摂取のバランスは1=飽和脂肪酸:1・5=一価不飽和脂肪酸:1=多価不飽和脂肪酸ぐらいにする<3>ビタミン、ミネラルを十分に摂取する、などを挙げる。

August 5, 2005 11:33 AM | トラックバック (0)

2005年08月04日

2005年08月04日

【第23回】考え方を変えストレス解消

「脳のアンチエイジング」

 脳のアンチエイジング(抗加齢)のアプローチとして、精神を安定させる呼吸法は大きな柱になっている。生理学者の高田明和・浜松医科大名誉教授も呼吸と脳の関係に注目している。

 ストレスは生理的に緊張、興奮をもたらす。自律神経である交感神経が活発になるためだ。自律神経は文字通り自律して動き、自分の意思でコントロールできないが「唯一、例外が呼吸です。ゆっくり呼吸することで副交感神経を活性化させ、交感神経による緊張や興奮が抑制できます」と高田名誉教授は説明する。

 近年の研究で脳幹にある二酸化炭素に刺激される受容体の細胞がセロトニン神経であることが分かった。二酸化炭素の量で呼吸が促されるが、セロトニン神経から分泌されるのは、精神を安定させる作用のあるセロトニン。

 呼吸をゆっくりさせ、二酸化炭素の量を増やすとセロトニン量が増え、気分を落ち着かせるということにもなる。深くて大きい呼吸が好影響をもたらす。

 座禅は集中力や免疫力も高まるといわれる脳波(アルファ派)を出させることで知られるが、「座禅では呼吸をゆっくり深くしないと効果がないと高僧が本に書いています。呼吸法の基本は腹式呼吸によるゆっくりとした呼吸です」と高田名誉教授。

 脳ばかりでなく、ゆっくりとした深呼吸は、肺にもいい影響がある。もともと肺の血流は均等ではなく、安静時には肺の末しょう部分は機能していない。深呼吸によって通常は使われない肺気管支の末端まで酸素が送られることは、「毛細血管の血流も回復するので健康効果も大」(高田名誉教授)なのである。

 自ら座禅を実行している高田教授は、天台宗の座禅法を参考に、呼気も吸気もゆっくりさせる呼吸法を実践している。

 「吐く息を非常に静かにゆっくりと、まるで吐いていないように出していくと本当に気持ちが落ち着きますよ」と高田名誉教授。

 呼吸法には呼吸そのものの効用以外にも、精神統一の足がかりになる、運動効果(腹筋)といった面もある。

【ジャーナリスト 小野隆司】

 ◆自律訓練法 自己暗示で催眠状態をつくり、心身をリラックスさせる。ドイツの精神医のシュルツが体系化し、いくつかの公式がある。病気の背景に緊張が関与している患者に対し、心療内科などで指導を行うこともある。

August 4, 2005 09:57 AM | トラックバック (0)

2005年08月03日

2005年08月03日

【第22回】和食は素晴らしい

「脳のアンチエイジング」

 脳は健康の司令塔である。この司令塔はストレスに影響を受け、ほっておくと老化を促進する指令を出しかねない。どうストレスをコントロールすべきか。

 脳のメカニズムと健康に関する著作が多い生理学者の高田明和・浜松医科大名誉教授は「人を含め動物はストレスを予測したり、それを回避する手段があると、ストレスの影響を弱めることができます。そのことは多くの研究が明確にしています」という。
 M&Aによる社員(特に重役)を対象にした米国の研究によると、合併による環境が不利な立場の人でも、何とかそれを解決しようとしている人は、強いストレスが表れなかった、と報告している。

 環境の程度と能力の問題も絡むが、高田名誉教授は「置かれた環境にしろ自分の能力にしろ、その評価は実に主観的なものです。考え方を変えることで解消されるストレスがいかに多いかを認識すべきです」とアドバイスを送る。

 ストレスは感情が生み出すが、脳機能分析などから最近では「不安に感じる出来事が直接、感情を生むのではなく、その出来事が生む一瞬の考えが感情を生んでいると考えられている」(高田名誉教授)という。

 考え方を変えると感情も変わるといえる。脳のストレスを端的に表している病気がうつ病。高田名誉教授が挙げる、うつ病になりやすいタイプは<1>白黒(オール・オア・ナッシング)人間<2>結論を早まる(他人の思惑を気にする)<3>問題の拡大化<4>感情の理由付け<5>自分のラベル化(自己規定する)など。

 うつ病の治療でも考えを変えることの効果は認知療法として重要視されている。

 簡単に考え方が変わるなら苦労はない、との声も聞こえてきそうだが、うつ病の治療薬は精神の安定に働くセロトニンが減るのを抑える作用がある。気分を良くして明るく考えることができるようにするためだ。

 「脳の神経には使わないとつながりが少なくなる特徴があります。脳が変われば感情が変わる。感情が変われば考え方も変わります。逆も同様」と高田教授。

 考え方を変えることはアンチエイジング(抗加齢)の大きな1歩になる。

【ジャーナリスト 小野隆司】

 ◆セロトニン 脳内の神経伝達物質の1つ。他の神経伝達物質のドーパミン(喜び、快楽)やノルアドレナリン(恐れ、驚き)などの情報をコントロールして精神を安定させる働きがある。トリプトファン(必須アミノ酸)の代謝過程で作られる。

August 3, 2005 10:45 AM | トラックバック (0)

2005年08月02日

2005年08月02日

【第21回】ストレスから悪玉ホルモン増

「脳のアンチエイジング」

 加齢(エイジング)とともに成長ホルモン、メラトニン、性ホルモンなどは急激に減少していく。そんな中、ほとんど変わらないものがある。俗にストレスホルモンと呼ばれるコルチゾルである。老化度判定ドックでの測定値は、コルチゾル濃度は減るどころか増える傾向にある。

 生理学が専門で脳に関する著作も多い高田明和・浜松医科大名誉教授は「コルチゾルは免疫機能を抑制するため、強いストレスによって健康を大きく損なうことがあります」という。

 コルチゾルは副腎から分泌されるが、脳内(視床下部)で作られるCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)がきっかけになる。CRHが視床下部につながる下垂体からACTH(副腎皮質刺激ホルモン)を出させ、その刺激がコルチゾルを分泌させるという順序になる。

 「視床下部のCRH分泌は大脳が感じるイライラ感、不快感が関係します。コルチゾルは血圧を高め、動脈硬化も促進させます。脳が感じるストレスをいかにコントロールするかが、現代人の健康を守るカギといっていい」と高田名誉教授は断言する。

 そもそもコルチゾルはエネルギー源であるブドウ糖を新たに作り出すきっかけになるホルモン。その分泌は当然の反応なのだが、量が多いとさまざまなマイナス要素を招くことが近年の研究から明らかになっている。

 ブドウ糖の血中濃度が高くなるといろいろな細胞成分(たんぱく質)と結合しやすくなる。糖尿病の指標となっているヘモグロビンA1cは赤血球内にあるヘモグロビンとブドウ糖が結合したものである。

 「PTSD(心的外傷後ストレス障害)のベトナム帰還兵の調査から、コルチゾルが記憶を担当する脳の海馬を委縮させることが分かりました。うつ病患者もコルチゾル濃度は高い」と高田名誉教授。

 コルチゾルは老化を進める悪玉ホルモンにもなる。その過剰分泌のスタートがストレス。アンチエイジングにストレス対策は欠かせない。どうすべきかは次回に。

【ジャーナリスト 小野隆司】

 ◆ストレスと血栓 脳梗塞(こうそく)、心筋梗塞の原因となる血栓はストレスとの関係が深い。ストレスが長く続くと交感神経が活発化しノルアドレナリンが出され、副腎からアドレナリンが出る。双方とも血小板を刺激し凝固しやすくなる。これが血栓を生むメカニズム。

August 2, 2005 11:13 AM | トラックバック (0)

2005年08月01日

2005年08月01日

【第20回】和食は素晴らしい

「食のアンチエイジング」

 和食こそアンチエイジング食になり得る、というのが近藤和雄・お茶の水女子大生活環境研究センター教授だ。

 「欧米では脂肪摂取が多いこともあって脂肪酸の摂取バランス研究が盛んです。その中で指摘されている理想的なバランスは、日本食における脂肪酸バランスなのです。平均寿命も健康寿命も世界一となった日本の秘密は日本食にあると世界は理解しているのです」と近藤教授は言う。

 ごはん、魚、貝、大豆、海藻、野菜、キノコがそろう和食は、栄養学からいってもバランスは最高。有効成分を数え上げると、イソフラボン、ビタミンE・C・K、カルシウム、カリウム、食物繊維、イソフラボン、サポニン、レシチン、オリゴ糖、タウリン、ベータ-グルカン、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)と健康成分のオンパレードである。

 近藤教授は「食生活の中でこれが足りない、あれが足りないとよく話題になりますが、欧米でのデータが基準になっているものがみられます。宣伝に踊らされないで足元を見つめれば、食生活は意外と簡単に改善できるはず」と話す。

 アンチエイジング医学の目標である“いかに長く健康寿命を伸ばすか”は、いかに生活習慣病の予防を始めるかにもかかっている。その意味では文部科学省も力を入れ始めている食育は重要である。和食の素晴らしさをぜひ伝えて欲しいと近藤教授は希望している。

 適正カロリー、栄養バランスが食生活の基本。年齢に応じた栄養バランスも当然、考えられる。抗加齢治療の食事療法では脂肪や塩分の過剰摂取には細心の注意をはらっている。

 食事スタイルも指導している。よくかみ、ゆっくりと1日3回の規則正しく腹八分。伝統的な言い伝えでもある。

 食品に関しては添加物の安全性、遺伝子組み換え作物に対する対応などいろいろ問題もあるが、「食事の内容に関心が薄れるのが健康長寿の最大の敵と思って欲しい」と近藤教授は締めくくる。

【ジャーナリスト 小野隆司】

 ◆加齢による食の変化 必要カロリーの減少、水分摂取の増加などがあり、ビタミン類ではB2、B6、葉酸、C、D、Eが不足気味になる。ミネラル類ではカルシウム、セレンなどが目立つ。生活習慣に合った補充策を考えることが大事。

August 1, 2005 11:16 AM | トラックバック (0)