健康連載ブログ

2005年07月31日

2005年07月31日

【第19回】抗酸化物質多い和食

「食のアンチエイジング」

 現代の食生活を考える上でどうしても外せないのが、抗酸化作用のある食べ物を摂取すること。生活習慣病の発症・促進に細胞の酸化変性が大きくかかわっているからだ。アンチエイジング医学の食事療法の柱と位置付けられている。

 動脈硬化と酸化ストレスの関係を研究テーマとしている近藤和雄・お茶の水女子大生活環境研究センター教授は「動脈硬化は血管内壁内で免疫細胞であるマクロファージが酸化変性したLDL(低比重リポタンパクコレステロール=悪玉コレステロール)を取り込み、泡沫(ほうまつ)化して内壁にたまることが原因になります。LDLの酸化を防ぐ抗酸化物質が注目される理由です」と解説する。

 90年代前半から本格的に始まった抗酸化物質の研究は、ポリフェノール、フラノボイドなどいくつかの抗酸化作用を実証してきている。近藤教授が国立健康・栄養研究所の室長時代にまとめた赤ワインに含まれるポリフェノールの抗酸化作用は英国の医学誌(ランセット)に掲載され、ポリフェノール・ブームの先駆けとなった。

 「食生活の中で体内の抗酸化作用をいかに維持し、高めるか。大変そうに聞こえますが、実は簡単なことと考えています」と近藤教授はいう。

 生物にとって外的環境がもたらす影響で1、2を争うのが酸素と紫外線とされる。ともに正常な細胞を変性する力が大きい。特に移動できない植物にとって大敵である。生き延びるため植物には他の生き物以上に抗酸化システムがある。

 抗酸化ビタミン類が一番多いのが植物。鮮やかな色を示す色素も強力な抗酸化物質である。β-カロテン(ニンジン)、アントシアニン(ブドウ)、リコペン(スイカ)など最近、話題の抗酸化物質は元をただせば色素である。

 「抗酸化物質の多い野菜、果物、豆類を食べることがアンチエイジングにつながるということです。われわれ日本人の伝統食、つまり和食こそアンチエイジングのための食事です」と近藤教授は和食の見直しを提言している。

【ジャーナリスト 小野隆司】

 ◆赤ワインのLDL酸化抑制効果 94年、ランセット誌に掲載された近藤教授の論文では、赤ワインを2週間飲んだ人から採血して調べた結果、飲む前に比べてLDLが酸化されるまでの時期が延長し、酸化されにくくなっていることが証明されている。

July 31, 2005 12:16 PM | トラックバック (0)

2005年07月30日

2005年07月30日

【第18回】脂肪摂取量どう考えるか

「食のアンチエイジング」

 今年度から平成21年度まで使われる日本人の食事摂取基準は生活習慣病予防に重点が置かれ、新たな指標(目標値)を設定した栄養素がある。増やすべき栄養素として食物繊維、n-3系脂肪酸、カルシウム、カリウムが挙げられている。減らすべき栄養素はコレステロールとナトリウム。

 また脂質については脂肪エネルギー比率だけでなく、その質も考慮し飽和脂肪酸、n-3系脂肪酸、n-6脂肪酸、コレステロールについても目標値を設定している。

 動脈硬化と酸化ストレスの研究が専門分野で、脂肪酸研究も手掛ける近藤和雄・お茶の水女子大生活環境センター教授は「日本人の食生活で1番大きな変化を示しているのが脂肪摂取量。20~40代では上昇傾向にあります。脂肪の摂取量をどう考えるかは、健康問題にとって欠かせないことは確かです」と言う。

 脂肪は中性脂肪、コレステロール、リン脂質などの総称。脂質を構成するのが脂肪酸で炭素に水素がついた炭化水素が鎖状につながっている。炭素数やつながり具合で性質が変わる。

 日本人の食事摂取基準では、n-3系脂肪酸の摂取が強調されている。イワシやサバ、サンマなど背の青い魚に多く含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)は代表的なn-3系脂肪酸。体内で合成されない必須脂肪酸でもある。

 「EPAはイヌイットの研究から動脈硬化抑制作用があり、心臓病の予防効果で有名になった脂肪酸です。また脳の神経細胞の結合部分にあたるシナプス膜にDHAがたくさん含まれていることも分かってきました」と近藤教授。

 n-3系脂肪酸だけでなく飽和脂肪酸(動物性脂肪)、n-6系脂肪酸、コレステロールも体内で大切な役割を果たしている。そのバランスこそが大事で食生活の基本である。

 不飽和脂肪酸は、赤血球の細胞膜を調べたところ、高齢者ではその量が減っていることが確認されている。アンチエイジングのためにも不飽和脂肪酸は大事な栄養素といえる。ただ不飽和脂肪酸は酸化しやすい面がある。過酸化脂質は動脈硬化の元凶ともなる。「抗酸化物質をいかに体内に取り入れるも食生活のカギになります」(近藤教授)。

【ジャーナリスト 小野隆司】

 ◆プロスタグランディン n-3系、n-6系脂肪酸から体内でつくられる物質。血圧の調整、消化液の分泌コントロール、細胞分裂の促進などさまざまな活動に関係している。多種類ありプロスタグランディン同士のバランスも大事。n-3系が原料となるものが不足しがちとの研究もある。

July 30, 2005 10:10 AM | トラックバック (0)

2005年07月29日

2005年07月29日

【第17回】食べすぎは老化促進

「食のアンチエイジング」

 医食同源、食源病などの言葉があるように、食生活と健康は切っても切れない関係にある。抗加齢医療にとっても食事療法は大きな柱になっている。<1>生活習慣病の予防<2>成長ホルモンの効果をいかす<3>免疫機能を高めるなどが目標になっている。

 摂取エネルギーの過不足、栄養バランスの悪さは、糖尿病など代謝性の生活習慣病を招きやすくなる。動脈硬化の促進因子でもある。成長ホルモンは30歳ごろから分泌が低下するが、細胞へのアミノ酸の取り込みを促し、代謝を促進するなど一生の間、大切な役割を果たしている。

 がん発生も抑制する免疫機能の重要さはいうまでもない。アンバランスな食生活は免疫力を落とす。

 赤ワインのポリフェノール効果の研究で世界的に知られる近藤和雄・お茶の水女子大生活環境センター教授は「栄養のバランス以上に今、考えるべきは摂取エネルギーの量かもしれません」と言う。

 従来の栄養調査では日本人の1日摂取エネルギー量は戦後あまり変化がなく、変わったのは脂肪摂取量を代表とする栄養バランスであることが強調されてきた。

 近藤教授は脂肪酸の健康効果などいろいろな研究を手がけているが、「1日2300キロカロリーを摂取してもらう条件で行ったところ、全員がやせるという現象がみられたのです。肥満が増えている今の日本人は統計以上に摂取エネルギーが多いと考えるべきではないでしょうか」と説明する。

 食べ過ぎはエネルギーをつくるミトコンドリアでの酸素量が増え、フリーラジカルを生み出す原因にもなる。摂取エネルギー過多は老化を促進する危険因子といえる。

 1日2300キロカロリーでもやせた結果に関し、近藤教授は食事時間の重要性もポイントとしてあげる。「研究では朝、昼、晩と決まった時間に食事をしてもらいました。朝食を取らず寝る前に大食すれば、太るに決まっています。きちんとした食事時間の習慣が崩れてきたことも気になります」と話す。

 まずは適切な食事量を守り、次に栄養バランスを考える。健康長寿の王道だ。

【ジャーナリスト 小野隆司】

 ◆やせ過ぎも注意 美容目的からダイエットに励む10代から20代の女性はやせ過ぎの傾向がある。栄養不足は骨からミネラル分が奪われ、骨粗しょう症を助長し、女性ホルモンを分泌する卵巣機能の抑制も起きる。

July 29, 2005 09:43 AM | トラックバック (0)

2005年07月28日

2005年07月28日

【第16回】期待大も検証これから

「抗加齢治療」

 抗加齢医療はきめ細かく、その人に合わせた具体的なアドバイスをする。栄養バランスを改善するサプリメント療法は、重要な手段となる。

 健康寿命ドックを2年前に開設し、900例を超える治療にあたっている高輪メディカルクリニックの久保明院長(日本抗加齢医学会理事)も「サプリメントを含めた生活改善プログラムは有効性があります」と言う。

 頸(けい)動脈の血管内膜は毎年、0・01ミリずつ厚くなる。エイジング(加齢)や免疫機能もかかわっている。動脈硬化は誰でも進行する現象といえるのである。「内膜を薄くしたり進行を完全に止めることはできませんが、退行度を抑制している例はあります」と久保院長は話す。人は血管から老いる、という言葉がある。動脈硬化は高血圧、高脂血症、糖尿病など寿命だけでなくQOL(生活の質)の低下を招く生活習慣病に深く関係している。

 サプリメントして活用されるビタミン、ミネラル類は生命維持に欠かせない物質である。必要摂取量の基準もある。ただし、病気の予防や治療として使用を規定しているものはほとんどない。「予防、治療効果の研究では必要所要量をかなり超える例も多い。それだけにサプリメント療法は、医者の指導が必要とされているといえます」と久保院長。

 サプリメント大流行の昨今、過剰摂取が心配されている。情報が微妙にずれているケースもある。年齢とともに分泌量が落ちる体内物質は多く、その不足は老化の原因にもなるが、摂取による補給が有効なのかどうかは検証が必要になる。何かと話題のコエンザイムQ10も「組織濃度は確かに落ちますが、血中濃度を測るとそれほど変化はありません。補給すれば組織濃度も上がるかどうかは今後の課題でしょう」(久保院長)。

 アンチエイジング医学はまだ始まったばかり。サプリメント療法も長期的なデータが出てくるのはこれからである。「実証例が少ないから効果がないとはいえません。治療する側とされる側が一緒になって抗加齢に取り組んでいる、ある意味で最先端医学がアンチエイジング医学。期待は大きいはずですよ」と久保院長は締めくくる。

【ジャーナリスト 小野隆司】

 ◆ビタミンDに注目? カルシウム吸収をよくするビタミンDは骨粗しょう症などに関連するが、最近では筋肉とのかかわりが注目され、「加齢によって減少するタイプⅡ筋繊維(速筋)を増やす効果が明らかになり、インスリンの働きを改善する可能性もある」(久保院長)という。

July 28, 2005 09:15 AM | トラックバック (0)

2005年07月27日

2005年07月27日

【第15回】サプリメントにEBMはある

「抗加齢治療」

 抗加齢治療において特徴とされるのが、サプリメント(栄養補助食品)の活用である。日本抗加齢医学会雑誌として5月に創刊された「ANTI-AGING MEDICINE」第1号でも特集が組まれている。

 同学会の理事である久保明・高輪メディカルクリニック院長は、サプリメントの最新潮流をテーマにレポートを寄せている。

 「サプリメントはアンチエイジング医学の重要な治療的アプローチです。それにもかかわらず正確な情報が伝わりにくいのが現状と考えています」と久保院長は語る。

 抗加齢治療にあたっては何よりもEBM(医学的根拠)が選択の基準になる。サプリメントについては、根拠があいまいとの批判も多いが、「サプリメントに根拠がないと考えるのは勉強不足です。EBMはあります。問題はその根拠の質だと思います。正確な情報を伝えていくことはアンチエイジング医学の進展に欠かせない要素」と久保院長は強調する。

 一般的にいってもサプリメントは大流行である。特にエイジング(加齢)をもたらすフリーラジカル、活性酸素から体を守る抗酸化物質は認知度からいってもスターである。

 昨年、サプリメント王国の米国でビタミンE大論争が起きた。今年も継続中である。ビタミンEはCとともに抗酸化ビタミンの代表である。抗酸化作用に関する研究報告も多い。

 「発端はビタミンEを大量投与した11の研究のうち9つの研究で全死亡率が明らかに増加したとの比較研究が発表されたことです」と久保院長は解説する。EばかりでなくビタミンAやC、最近人気のある補酵素のコエンザイムQ10でも否定的な報告がある。

 それぞれが体の中で重要な働きをしていることを否定する人はいない。サプリメントとして摂取する効果が問題なのである。

 久保院長は抗加齢治療として使うなら(1)人を対象とした研究か(2)種類と量は(3)投与期間は(4)何が指標なのか、などを十分に考える時期にきていると指摘する。次回に続く。

【ジャーナリスト 小野隆司】

 ◆健康食品の安全性・有効性情報 国立健康・栄養研究所を中心に、ネット上(http://hfnet.nih.go.jp)で運営されている。基礎知識から安全情報・被害関連情報、話題の食品成分の科学情報、健康食品の素材データベースなどが検索できる。

July 27, 2005 11:01 AM | トラックバック (6)

2005年07月26日

2005年07月26日

【第14回】アディポネクチン高める

「抗加齢治療」

 抗加齢治療の基本はあらゆる角度から身体の状態を把握し、オーダーメード治療を施すこと。健康寿命ドックを開設し、900例以上の治療をしている久保明・高輪メディカルクリニック院長は「最新の医学研究を治療に生かすのもアンチエイジング医学の立場だと思っています」と言う。

 久保院長が最近、特に注目している物質がある。脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンと呼ばれるものだ。標準的な体格の人の血液中に多く存在し、内臓脂肪が増加すると反対に減少するサイトカイン(生理活性物質)の1種である。

 脂肪細胞は単に脂肪を蓄積するだけでなく、いろいろな物質を産生している分泌器官であることが近年、分かってきた。直接、血管の内膜を厚くして動脈硬化をひき起こすサイトカインも分泌している。

 「アディポネクチンは、血管に入り込んで動脈硬化を起こす炎症など、さまざまな細胞現象を抑える働きがあることが分かってきました。健康寿命ドックでも検査していますが、年齢より男女差の方が大きいのです。男性より女性の方が長生きする理由の1つかもしれません」(久保院長)。

 アディポネクチンは糖尿病とのかかわりも確認されている。糖尿病になるとアディポネクチンの血中濃度が下がり、アディポネクチンの濃度が上がると血糖値を下げるインシュリン感受性が高まるのである。

 糖尿病・内分泌専門医でもある久保院長は「アディポネクチンの濃度を維持する、あるいは高める方法があれば抗加齢治療の大きな力になります」と言う。米国での報告には炭水化物(糖質)の取り過ぎは、アディポネクチンの減少につながる、というものがある。

 またラット実験では母乳などに含まれる中鎖脂肪酸が血中アディポネクチン濃度を増加させる働きがある、との研究報告が出ている。「現在、きちんと検証できるのは肥満によってアディポネクチンが減るということ。肥満解消および予防が選択肢になりますね。特に内臓脂肪を減らすことが大事です」と久保院長。

 肥満は摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ると起こるが、原因を探ると事情はさまざま。ストレスが過食につながる例も多い。総合的な治療に向かざるを得ないのも抗加齢医療である。

【ジャーナリスト 小野隆司】

 ◆筋肉とアディポネクチン 筋肉にもアディポネクチンと反応する受容体がある。筋肉がエネルギーを作るため糖分を取り込んだり、脂肪を燃やす働きのあるたんぱく質(AMPK)を活性化するという報告が米国科学誌に掲載されたことがある。

July 26, 2005 09:53 AM | トラックバック (5)

2005年07月25日

2005年07月25日

【第13回】具体的な生活指導

「抗加齢治療」

 最もいきいきとした健康状態、オプティマル・ヘルスの実現を目指すのがアンチエイジング医学である。老化度を測定し、体の状態が分かる。さて、この後どうするのか。

 日本抗加齢医学会の理事も務める久保明・高輪メディカルクリニック院長は「その人に応じた治療や生活指導をすることは、従来の医療と何ら違いません。ただ、きめ細かく、より効果的な方法が選択できるのが抗加齢治療の特長でしょう」と言う。

 アンチエイジング医学における検査項目は多彩である。高輪メディカルクリニックの健康寿命ドックでは約100項目に及ぶ検査が可能だ。02年の開設以来、受診者は900人を超えている。久保院長はデータをもとに総合解析を進め、EBM(医学的根拠)のある診断・治療の基準づくりに取り組んでいる。

 筋肉年齢が分かれば、弱っている部分を強くする具体的なトレーニングメニューも指導できる。ビタミン不足なら1日何ミリグラム摂取するようにとアドバイスも可能になる。野菜を食べてもっと運動しましょう、といったありきたりな生活指導に終わらないのも長所だ。

 1つ1つの検査結果から選択される方法は幅広い。これまで医者が重要視してこなかったサプリメント(栄養補助食品)の使用もアンチエイジング医学では大切な手段に位置づけられている。薬物療法、ホルモン補充療法なども手立ての内に入っている。

 ただし何でも解決可能な“夢の治療”が実現しているわけではない。

 血流速度を測る機械を使えば血液の状態は分かる。しかし「血はサラサラでも動脈硬化が進んでいる人はいるのです。これも検査で分かります。どの部分に着目するのか。その判断が重要ですが、今のところ確立しているとは言い難い」と久保院長は話す。

 EBMのある方法を治療する側とされる側が向かいあって実践し、どんな効果を上げるのか。「模索中だが試す価値はある、というのがアンチエイジング医学の現状でしょう」と久保院長は考えている。

【ジャーナリスト 小野隆司】

 ◆抗加齢治療の目標 関心が集まるのは、がん予防、動脈硬化予防、認知障害予防など。アンチエイジング医学の大きな目標にもなっているが、確立されたものはない。人間を対象とした比較が難しいという面もある。

July 25, 2005 11:27 AM | トラックバック (0)

2005年07月24日

2005年07月24日

【第12回】ビタミン、ポリフェノールなど

「抗酸化物質」

 フリーラジカル(活性酸素)の影響を重要視するアンチエイジング医学では、抗酸化物質のサプリメント(栄養補助食品)療法が広く取り入れられている。紫外線によりフリーラジカルが発生する植物の色素の抗酸化力に注目し、いろいろな成分研究が進んでいる。

 以前から抗酸化物質に着目している吉川敏一・京都府立医科大教授は「抗酸化物質を体内に補給し、フリーラジカルを消去することは老化を防ぐために有効な手段です」と言う。

 体内の抗酸化ネットワークを保つためにも抗酸化物質を摂取することは重要である。その代表がビタミン類。そもそもは欠乏症の研究が主流だったが、最近は抗酸化物質として注目されている。

 「身体への生理・薬理作用がこれまでの研究で分かっていたので抗酸化作用の実証が早かった」(吉川教授)という。

 現在、ビタミンは13種類が認められているが、抗酸化ビタミンとしてはビタミンC、Eの研究報告が多い。血漿(しょう)中では抗酸化酵素のSOD活性が低く、ビタミンCの働きは大切とされている。脂溶性のビタミンEは細胞膜(脂質)の酸化を防いでいる。

 ビタミン以外ではポリフェノールが抗酸化物質として有名になっている。

 吉川教授は「抗酸化作用だけでなく必要な栄養素を十分に摂取していない傾向もみられます。サプリメントの知識は医療効果を上げるために大事な要素になるはずです」と話す。

 動脈硬化予防、心臓の抗加齢対策、糖尿病対策、骨粗しょう症など生活習慣病へのサプリメント療法の導入は進んでいる。糖尿病患者ではビタミンB、C、Eなどの血中濃度がかなり下がる。フリーラジカル発生量が多くビタミン類の消費が激しいため、と推測されている。

 「足りないものを補給するのがサプリメント利用の基本。この病気にはこの成分といった薬的感覚は持たない方がいいでしょう。それとEBM(医学的実証)のあいまいなものは避けるべきでしょう」(吉川教授)。

 効果の検証はアンチエイジング医学進展への基礎になる。

【ジャーナリスト 小野隆司】

 ◆注目のサプリメント 抗酸化作用のあるサプリメントは玉石混交の状況でもある。吉川教授は近著の「不老革命!」(朝日新聞社刊)でビタミンE、C、アルファ‐リポ酸、コエンザイムQ10、イチョウ葉など23種類を取り上げている。

July 24, 2005 10:35 AM | トラックバック (1)

2005年07月23日

2005年07月23日

【第11回】増えているサプリメント

「酸化ストレス度」

 フリーラジカル(活性酸素)による細胞の酸化ストレス度の改善は、究極の予防医学を目指すアンチエイジング医学にとって重要な要素となる。酸素を取り入れエネルギーをつくり出す動物にとって、フリーラジカルの発生は避けられない。

 日本抗加齢医学会副理事長で国際フリーラジカル学会会長でもある吉川敏一・京都府立医科大教授は「酸化ストレス度を診断するのは、アンチエイジング医学の大きな柱。ある程度、測定可能になってきています」という。

 現在、判定マーカーとして8-OHdG、B-イソプラスタン、LPO(過酸化脂質)という物質が分析されている。8-OHdGは細胞中のDNA(遺伝子)の損傷にかかわる物質。「DNAが修復される過程で生み出されるのが8-OHdG。尿中の濃度を測ることで酸化ストレスの大きさが推測できます」(吉川教授)。

 B-イソプラスタンは血管の病変などに深く関連している物質。細胞膜を構成する脂質が酸化ストレスによる過酸化反応によって生じる。LPOも脂質が酸化ストレスにさらされることで生まれる。血中濃度から酸化ストレスの度合いを評価できる。

 酸化ストレス度は総合的に判断する必要がある。加齢による抗酸化酵素の減少のためなのか、フリーラジカルを多く発生させる生活習慣や環境が原因なのか。

 酸化ストレス度が高い人に治療・指導をする際、身体状況だけでなく生活から詳しく知らないと具体的な方法が選択できない。

 「アンチエイジング医学は最近、強く求められているオーダーメード治療に自然となります。そうしないと効果は期待できません」と吉川教授は強調する。

 この病気にはこの治療とマニュアル化しているのが西洋医学。治療効率は確かにいいが、それぞれの年齢における心身とも最も生き生きした理想的な健康状態を目指すには、予防的視点が欠かせない。

 酸化ストレスへの対応として抗酸化物質に関心が集まり、従来、無関心だったサプリメントを利用する医師も増えている。

【ジャーナリスト 小野隆司】

 ◆酸化ストレス度と睡眠 必要とするエネルギーが少ないほどフリーラジカルの発生量は少なくなる。呼吸回数も最低になる睡眠こそ酸化ストレス度を上げない時間といえる。睡眠不足の人は老化が早いともいえる。

July 23, 2005 10:34 AM | トラックバック (4)

2005年07月22日

2005年07月22日

【番外編】老化を抑制し長生き

「寿命の限界」

 アンチエイジング医学の目標は健康長寿。不老不死を目指しているわけではない。寿命には限界がある。人の場合、最大で120~150年ぐらいといわれている。無菌室状態で全く病気をせず、フリーラジカル(活性酸素)で細胞が傷つかなくても不老不死というわけにはいかない。

 そのことを裏付けているのがテロメア理論。テロメアとはDNA(遺伝子)の末端部にある部分の名称で、遺伝子情報が載っている染色体がほつれたり、消失するのを防ぐ働きをしている。

 細胞分裂の際、末端部分にあるため完全に複製されず、分裂するごとにテロメアは短くなり、ゼロになった時に寿命を迎える。人では約50回の細胞分裂でゼロになり、体を構成するほとんどの細胞が分裂しなくなる。

 もっともすべての細胞がテロメア理論に従うわけではない。新陳代謝が激しい消化管上皮細胞などはテロメア活性が続き、短くならない。卵子や精子をつくる胚細胞もテロメアの構造に変化がないことが確かめられている。

 ただ細胞分裂の回数は決まっていても、細胞の老化度は別の問題。実際、テロメアの長さが保たれる卵子にしても20歳代の卵子と40歳代の卵子では明らかに後者の方が衰え、妊娠しにくい状態になっている、という。

 寿命には限界があっても老化度まで決まっているわけではない、と考えるのもアンチエイジング医学の立場。老化をもたらす原因を突き止め、改善することで最高の健康状態を実現することが目標となる。

 近年、目覚ましい成果を生み出している遺伝子研究では、テロメア活性についての報告も多い。長寿魚と知られるゼブラフィッシュ(コイ科)は、体細胞もテロメア活性が高く、細胞老化の抑制している、としている。人の体細胞のテロメア活性を高める試みもある。

 不老不死医学が誕生するかどうかは分からない。

【ジャーナリスト 小野隆司】

 ◆平均寿命 年齢別死亡率から新生児の平均余命を統計的に算定したもの。詳しくみると、平均寿命まで達する確率は60~70%。10人中3~4人は平均寿命を全うできないことになる。年代ごとの生存曲線(対10万人)では、男性は70歳、女性は75歳を過ぎると急下降している。

July 22, 2005 09:57 AM | トラックバック (0)

2005年07月21日

2005年07月21日

【第10回】SOD活性度高いほど長寿

「抗酸化システム」

 老化、病気をもたらす原因として注目されているのがフリーラジカル(活性酸素)。細胞の酸化ストレスをもたらすが、酸化を防ぐシステムも身体には備わっている。代表的なものが抗酸化酵素の働きである。

 フリーラジカル研究で知られる吉川敏一・京都府立医科大教授は「フリーラジカルの種類に応じて働く酵素は決まっています。スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼなどがよく知られる抗酸化酵素です」。

 SODは酸化力の強いスーパーオキシド(活性酸素)を過酸化水素に変え、カタラーゼは過酸化水素を水に還元するなど機能的に抗酸化作用が働いている。SODは86年に発見されたもので、この発見がフリーラジカルの研究を進展させたといわれている。

 「米国国立老年学研究センターがサルの仲間のSOD活性度を調べたところ、その活性度が高い種類ほど長寿であることが判明しています」(吉川教授)という。

 人間のSOD活性は高いが、年齢とも関係し、40歳前後から低下してくる。アンチエイジングのため、ホルモン補充療法のように抗酸化酵素を補充する手もありそうだが「今のところの研究では抗酸化酵素は外から補給できない酵素と考えられています」(吉川教授)。

 体の抗酸化システムの担い手は酵素だけではない。酵素の働きを助ける補酵素も重要な存在。ビタミン類やコエンザイムQ10なども自ら酸化されることで細胞の酸化ストレスを防いでいる。また最近の研究ではたんぱく質も抗酸化作用があることが分かってきている。

 吉川教授は抗酸化物質の相互作用や役割分担を抗酸化ネットワークと呼ぶ。「フリーラジカルはさまざまな原因から発生します。環境も精神的ストレスも関係します。病気になる境目は酸化ストレス度と抗酸化力のバランス次第ともいえます」。

 現代人の酸化ストレス度と体の抗酸化力を調整もアンチエイジング医学の目指す方向である。その具体的方法も実践されている。

【ジャーナリスト 小野隆司】

 ◆尿酸 痛風の原因となる尿酸も抗酸化作用がある。尿酸値の高い動物ほど寿命が長い。痛風に悩んだ歴史上の偉人も多いが、ニュートン(1642~1727)、フランクリン(1706~1790)、ゲーテ(1749~1832)などは80年以上の長寿者。

July 21, 2005 10:57 AM | トラックバック (1)

2005年07月20日

2005年07月20日

【第9回】細胞酸化させ病気引き起こす

「フリーラジカル」

 アンチエイジング(抗加齢)医学には、いくつかのキーワードがある。その中で注目度が高いのがフリーラジカルである。厳密な定義はあるが、一般的には酸化力の強い物質の総称として使われている。おなじみになっている活性酸素もフリーラジカルの仲間だ。

 国際フリーラジカル学会の会長を務める吉川敏一・京都府立医科大教授(生体機能制御学、内科学)は「フリーラジカルは人の細胞も酸化させ、その働きを弱めます。酸化ストレスと呼んでいますが、老化の原因とも考えられています。近年の研究で病気との関連が明らかになっています」と話す。

 フリーラジカルが関与する病気は多い。糖尿病は高血糖状態をもたらすが、この際、正常時では起こらないブドウ糖とたんぱく質がくっつく現象が起こることが分かってきた。この過程で大量のフリーラジカルが発生する。目の毛細血管部分なら網膜症、腎臓なら腎症の危険性が増すことになる。

 糖尿病性網膜症は失明、同腎症は透析を余儀なくされる原因のそれぞれ1位になっている。

 体内のフリーラジカルは、さまざまな化学反応の過程で生まれ、分かっているものだけで数千種類ある。体内の正常な化学反応の触媒となる酵素もフリーラジカルの標的となる。

 また糖・脂質・アミノ酸が酸化ストレスによって変化した物質(低分子カルボニル)は、たんぱく質と反応しやすく障害を引き起こす。核酸(遺伝子)が酸化変性すれば、がんの引き金ともなる。

 「フリーラジカルは病気を起こす実行部隊といえる存在です。健康長寿を実現するにはフリーラジカルの攻撃をいかに防ぐかがポイントになります。アンチエイジング医学に最も期待される部分といえるでしょう」と吉川教授。

 すべての病気にかかわるといえるフリーラジカルだが、体にはフリーラジカルから守る機能が備わっている。それは次回で。

【ジャーナリスト 小野隆司】

 ◆フリーラジカル 化学分野の専門用語で「対(ペア)になっていない不対電子をもっている原子や分子」のこと。安定するため、他から電子を奪う。奪われた物質が酸化された状態になる。体内ではスーパーオキシド・ラジカル、ヒドロキシル・ラジカルなど酸素由来のフリーラジカル(活性酸素)が多く発生する。

July 20, 2005 10:53 AM | トラックバック (0)

2005年07月19日

2005年07月19日

【第8回】健康情報の交通整理

「老化度判定ドック」

 人は年齢とともにいろいろな部分に衰えを感じていく。記憶力が落ち、目もかすむ。皮膚のシワ・たるみが増し、骨ももろくなる。年のせいには違いないが、老化する原因もある。その原因を突き止めて、改善が可能なら健康長寿も保証されたことになる。

 日本抗加齢医学会の理事を務める米井嘉一・同志社大学アンチエイジングリサーチセンター教授は「老化を病気ととらえ、改善していくのがアンチエイジング医学の基本的立場です。老化度を判定することが、改善策を実行する指針になります」と言う。

 アンチエイジングリサーチセンターが、この7月から稼働させている支援システムは、老化度を判定するものだが、肝心なのはそのデータを基にどんな治療、改善方法を選択できるかである。

 米井教授はアンチエイジング医学の療法として∧1∨生活療法(食事療法・運動療法・精神療法)∧2∨サプリメント指導∧3∨薬物療法(ホルモン補充・免疫強化療法・抗酸化療法)などを挙げる。特殊療法として音楽療法やヨガ、呼吸法などの代替医療もアンチエイジング医学の範ちゅうに入る。

 老化にはさまざまな要因が絡む。それだけに確立した療法が多いとはいえない。まだ始まったばかりともいえる。ホルモン検査で足りないホルモンは分かる。更年期障害ではホルモン補充療法が選択される場合もある。

 「女性ホルモンや男性ホルモンを補充すると身体活性が上昇しますが、やはり基礎代謝を増加させる甲状腺ホルモンが相対的に不足することがあります。全体のバランスに目を向けることが大切です」と米井教授は、医学的根拠(EBM)にのっとった治療の大切さを訴える。

 健康ブームもあって巷(ちまた)には、健康情報があふれている。中には動物実験レベルでは実証されたが、人の体でどうなるか全く分かっていない成分が喧(けん)伝されることもある。

 「老化はたった1つの理由で起こるわけではありません。1つの成分だけで老化が防止できるはずがありません。老化度判定ドックの基準が健康情報の交通整理になることを期待しています」と米井教授は話す。

【ジャーナリスト 小野隆司】

 ◆検査の値段 病気治療以外では健康保険の適応がないため、老化度判定ドックは料金が高くなる。検査の数が少ないためコストも高い。支援システムの共有化が進めばコストが下がる分、料金も抑えられるはず。そのためにも「アンチエイジング医学への関心の高まりが鍵」と米井教授。

July 19, 2005 10:15 AM | トラックバック (0)

2005年07月18日

2005年07月18日

【第7回】生活の質保つガイドライン

「老化判定ドック」

 エイジング(加齢)による老化は避けられないが、老化を促進する危険因子も現代社会では大きな問題である。端的な例が長寿県といわれる沖縄にみられる。

 同県の30~40代で企業に勤める人の健診結果を調査したところ、肥満、高血圧、高脂血症、糖尿病といった生活習慣病の割合が、全国平均を上回りワースト5に入ってしまったのである。

 米井嘉一・同志社大学アンチエイジングリサーチセンター教授は、老化度判定ドック支援システムの開発にあたって、老化を促進する危険因子として免疫、酸化、ストレス、生活習慣、代謝の5項目も判定基準に取り入れている。

 「これらの危険因子を測ることは、加齢度の客観的評価に欠かせないものです。今のところ判定基準としてもの足りないものもありますが、アンチエイジングの具体的な療法を行う場合の大事なデータになります」と米井教授は言う。

 老化を促進する危険因子はそれぞれ複雑に絡み合っている。ストレスの過多は免疫機能を低下させ、生活習慣の乱れはストレスを増加させる原因にもなる。過食やバランスの悪い食事は当然、代謝の異常にもつながる。

 生活習慣を尋ねる共通問診票は、体の症状と心の症状について5段階評価でこと細かにチェックしている。生活習慣病は老化への曲がり角といわれる40歳以上から目立つようになるが、「生理的老化と生活環境が及ぼす危険因子が重なり合った結果ともいえます。老化のスピードを抑え、促進する危険因子を取り除ければ、生活習慣病は減るはずです」と米井教授は話す。

 生活習慣病はすべて生活の質(QOL)を落とす病気といっていい。アンチエイジング医学は、QOLを全うすることを目指している。老化度判定はQOLを保つ治療を選択するためのガイドラインなのである。

 「今後、医者は病気を治すだけでなく予防につながるアドバイスが重要になってくるはず。そうした意味でもアンチエイジング医学の知識は不可欠です」と米井教授は強調する。

【ジャーナリスト 小野隆司】

 ◆注目される甲状腺ホルモン 甲状腺機能は一般的に40歳を超えると徐々に低下するが、甲状腺ホルモンの働きの重要性が指摘されている。最近はホルモン分泌の低下が血糖値を上昇させるため、糖尿病との関係が注目されている。

July 18, 2005 10:41 AM | トラックバック (0)

2005年07月17日

2005年07月17日

【第6回】判定システムの進展不可欠

老化度判定ドック

 アンチエイジング医学の進展は、医学に限らず多方面の進歩に負うところが多い。基礎ともなる老化度の判定もメカニズムの解明や検査機器の発達が欠かせない要素となる。医学的根拠(EBM)があいまいなままでは、効果的な対処法も生み出せない。

 アンチエイジングドック支援システムを開発し、この7月から稼動させている米井嘉一・同志社大学アンチエイジングリサーチセンター教授は「老化に関する研究の進歩とともに支援システムもバージョンアップします。検査方法も同じです。その意味ではアンチエイジング医学は常に進歩する分野といえますね」と話す。

 支援システムにおける老化度判定の5項目(骨年齢・筋年齢・血管年齢・精神神経年齢・ホルモン年齢)も検査値および検査方法の進展が期待されている。

 骨年齢は骨密度測定(2重エックス線吸収測定による腰椎の測定)で分かるようになってきたが、筋肉の老化度判定は難しいという。握力などの基準値はデータが豊富だが、年齢とともに落ちる割合は少ない部類に入る。「筋肉の脂肪化率を測る機器が開発できないかとメーカーと研究中です」と米井教授。

 人は血管から老いる、という言葉があるように血管年齢は、老化度を判定する重要な指標になる。動脈硬化度を測定する方法としては、脳波伝播(でんぱ)速度法と指尖(せん)加速度脈波法があり、動脈硬化の血管は脳波や脈派を速く伝えるとの理論から開発された。「これらの検査だけで動脈硬化度が正確に分かるわけではありませんが、共通問診票による生活習慣などから推定できます」と米井教授。精神神経年齢の測定では、高次脳機能検査で用いられるテスト(カードソーティングテスト)を行う。

 ホルモン年齢の測定は、ホルモンそのものの働きと加齢に伴う変化が分かってきたことが大きい。成長ホルモンは30歳ごろから低下し始める。骨の成長や性的能力を高めるだけでなく、免疫システムの強化や記憶力の強化にも作用することが分かってきた。「成長ホルモンの分泌は1日の中で変化が激しいのですが、その刺激によって作られるIGF-Iと呼ぶ物質の血中濃度を調べることでホルモン年齢が推定できるようになりました」と米井教授は解説する。

【ジャーナリスト 小野隆司】

 ◆成長ホルモンの抑制要因 成長ホルモンは加齢とともに分泌が減少するが、抑制要因として運動不足、ストレス、睡眠不足、糖質摂取過多などがある。逆に分泌刺激要因は運動、高たんぱく質、アミノ酸などが挙げられている。

July 17, 2005 10:23 AM | トラックバック (0)

2005年07月16日

2005年07月16日

【第5回】バランスが評価のポイント

老化度判定ドック

 今年4月、同志社大学にアンチエイジング医学の研究機関としてアンチエイジングリサーチセンターが設立された。同医学を扱う大学の専門機関としては国内初という。

 センター長に就任した米井嘉一教授は「老化を病気ととらえ、治療することで健康長寿の実践を目指すのがアンチエイジング医学の立場です。老化度の診断や治療法の開発などが研究目標になります」と話す。

 アンチエイジング医学にとって老化度を判定することがまず出発点となる。米井教授は京都府立医科大学などとの共同でアンチエイジングドック支援システムを開発し、7月1日から稼動させている。

 骨・筋・血管・精神神経・ホルモンの5項目の検査値と老化を促進する危険因子(免疫・酸化・ストレス・生活習慣・代謝)の測定値を総合して老化度を判定する。1000例以上のデータを基につくり上げたものだ。米井教授は日本鋼管病院(川崎市)の内科医長時代にいち早く老化度判定ドックを創設したことでも知られる。

 「それぞれの基準は健診や人間ドックでの基準値より厳しく設定しています。アンチエイジング医学は、最も健康で生き生きとした状態、オプティマル・ヘルスを実現するのが大きな目的だからです」と説明する。

 支援システムは基本的にはドクター向けのものだが、エステやスポーツクラブなどでも利用できるものも用意してある、という。

 「バランスの悪い老化を改善するには、食事や運動、ストレス解消などが大きな力になります。そのためにもいろいろな専門家のアドバイスが必要になってきます」と米井教授は、医師以外のアンチエイジングドック支援システムへの参加を期待している。

 老化度判定では個々の数字よりバランスが評価のポイントになる。年齢以上に老化が進んでいる部分が弱点となり、老化が進展するケースが多く見られる。米井教授のこれまでの経験では、年齢や性別以上に老化度は千差万別。「まず自分の体の状態を知ることがアンチエイジングにつながります」と強調する。

【ジャーナリスト 小野隆司】

 ◆アンチエイジングへの誤解 アンチエイジング(抗加齢)という語感もあって、若返りや不老不死を目指すものとの誤解がある。アンチエイジングの名がつく化粧品も目立つようになったが、皮膚だけ若返らせても健康長寿につながらない。いち早く学会を設立した米国はこうした誤解が強く、研究も不振気味といわれる。

July 16, 2005 09:26 AM | トラックバック (5)

2005年07月15日

2005年07月15日

【第4回】究極目標“ピンピンコロリ”

今なぜアンチエイジング医学なのか

 オプティマルヘルスという言葉がある。それぞれの年齢における心身ともに最も生き生きした理想的な健康状態を意味する。アンチエイジング医学の目標でもある。

 エイジング(加齢、老化)は体にさまざまな変化をもたらす。脳細胞は基本的には減り続け、骨密度も20歳前半をピークに減少していく。太陽光線による光老化で皮膚の張りが失われ、目の水晶体も弾力性を失う。筋力も当然衰え、腸では悪玉菌が増える。

 老化にかかわるフリーラジカル(活性酸素もその1つ)研究で世界的に知られる吉川敏一・京都府立医科大学教授は「人の寿命の限界は、細胞分裂の回数に限りがあるので必ずあります。ただ老化そのものが遺伝子に組み込まれているかどうかは分かりません。確実なのは老化を促進する要素はあることです」と言う。

 老化を促進する要素をできるだけ取り除ければ、死を迎える直前まで元気で生き生き暮らせることになる。アンチエイジング医学の究極の目標は、言葉は悪いが“ピンピンコロリ”を目指すことである。そのための方策がいろいろな角度から研究され、実践され始めているというのが現状。答えは模索中な面もあるが、「科学的根拠が示された方策も出始めているのも確か。実践例を集めて証明する時期を迎えているといってもいいでしょう」(吉川教授)。

 アンチエイジング医学は新しい分野の学問だが、発展を促す背景がある。少子高齢化時代に伴う医療費の高騰、負担増も大きな理由である。厚生労働省の予測では2026年には75歳以上の公的医療保険負担は35兆円を超す。現在の3倍以上である。

 高齢者の多くが健康であれば、その負担は現状の3分の2程度に抑えられるともいわれている。高齢者も社会の第一線で長く活躍し、納税者層となれば、医療費問題も深刻でなくなる。

 吉川教授は「アンチエイジング医学は、時代の要請でもあります。さらに発展するためには広がりが必要です。ぜひ関心を持っていただきたい」と語る。

【ジャーナリスト 小野隆司】

 ◆専門医・指導士 日本抗加齢医学会では、今年6月に学会認定の専門医・指導士の試験をスタートさせた。各学会認定の資格を持っていることも条件になっている。来年1月に日本抗加齢医学会認定の専門医・指導士が誕生する予定。

July 15, 2005 10:36 AM | トラックバック (0)

2005年07月14日

2005年07月14日

【第3回】人間ドックも取り入れ

今なぜアンチエイジング医学なのか

 アンチエイジング医学は、老化に着目した医学である。老化には個人差もある。どのように老化度を判定するのか、その基準はどうなるのか。アンチエイジング医学を実践するスタート点になる。

 6月に京都市で開催された第5回日本抗加齢医学会総会の会長を務めた吉川敏一・京都府立医科大学教授は「ある程度、老化度が判定できるようになってきたことも今後、アンチエイジング医学が究極の予防医学として期待される点だと思います」と語る。

 老化度を計る検査技術はかなり発達している。近年、人間ドッグにアンチエイジング医学を取り入れた老化度判定ドッグも多くなっている。検査方法としては<1>問診<2>基本測定(身長・体重・血圧)<3>血液・生化学検査<4>内分泌検査<5>高次脳機能検査<6>骨密度検査<7>動脈硬化度検査―などを行う。

 「老化度は実際の年齢と比べて若いのか衰えているのかを示します。年齢によって基準値があります。通常の健康診断や人間ドッグより厳しく設定しているのもアンチエイジング医学の1つの特徴です」と吉川教授は強調する。

 アンチエイジング医学が目標とするのが、生活の質(QOL)を高く保ちつつ寿命を全うすることだからでもある。そして新しい分野であるため、老化度判定の基準も今後の進展でより正確にする研究が欠かせない。

 「検査技術の進歩はアンチエイジング医学に不可欠です。動脈硬化度を計る検査方法はありますが、それが正確なものかどうかは現状ではあいまいな点もあります。ただ老化をさまざまな角度から検査することで、生活指導や治療選択のためのガイドラインになり得ることは確実です」(吉川教授)。

 検査データを基にしたアンチエイジング指導は、生活療法(食事・運動・精神療法)、サプリメント指導、ホルモン補充、免疫強化療法、抗酸化療法など幅広い選択がある。具体的目標として動脈硬化を防ぐ、寝たきりを防ぐ、認知症(痴呆症)を防ぐ、がんを防ぐなどが挙げられている。

【ジャーナリスト 小野隆司】

◆加齢度の全体評価
 アンチエイジングドックの検査では年齢による平均値も出るが、その点は重視していない。それよりも検査を受けた個人個人のバランスが問題。アンバランスが老化を推進するためだ。その人に合った治療(テーラーメード治療)がアンチエイジング医学の特長になる。

July 14, 2005 10:18 AM | トラックバック (5)

2005年07月13日

2005年07月13日

【第2回】副作用ないことが柱

今なぜアンチエイジング医学なのか

 エイジング(加齢、老化)の過程をできるだけ遅らせ、老化によって表れるさまざまな症状にあらゆる手立てを講じるのが、アンチエイジング医学である。そのためには生活療法(食事療法、運動療法など)を含めた治療法を提案することが必要になってくる。

 日本抗加齢医学会副理事長の吉川敏一・京都府立医科大教授は「これまでの医学がほとんど踏み込もうとしなかった領域もアンチエイジング医学には必要になってきます。私は副作用がないこともアンチエイジング医学の重要な柱であると考えています」と言う。

 病気を治すことを主眼とする医療では、副作用の問題は避けられない。効く薬ほど副作用があることは半ば常識化している。がん治療を例にとれば、手術を行う外科的治療や抗がん剤を使う化学療法、放射線治療も副作用はある。

 生命にかかわる病気だけにまず病巣をなくすことが第一だが、「すい臓がんのように大きくなって見つかった場合、手術で切除しても、手術しない場合と比較して生存率や生存期間が同じという種類の病気もあります。仮に寿命が少しばかり延びても人間らしい生活ができなければ、何のための医療か、という根本的な問題にも行き着きます」(吉川教授)。

 病気を治すばかりではなく、生活の質(QOL)や健康長寿を目標とするアンチエイジング医学は、治療法についても従来の医学にない発想も可能になる。

 最近のがん治療でもアンチエイジング医学の考え方は注目されている。1つの例はドーマンシー療法。休眠療法と訳されているが、体力の衰えや副作用を伴う無理な治療を避け、病巣を現状のまま保ち、がんと共生しようという治療だ。患者のQOLを保つことを目指す治療法といえる。

 「当然のことですがドーマンシー療法の選択も科学的根拠(EBM)があることが前提になります。がんはすべて取り除かなくてはいけないという強迫観念を一度考え直すことは、治療を受ける立場からも大きなメリットがあるはずです」と吉川教授は言う。

 アンチエイジング医学はあらためて健康観を問いかけている。

【ジャーナリスト 小野隆司】

◆ドーマンシー療法
 がんの増殖には血管新生が必要。血管新生を抑制すると、がんを小さくする力は弱いが、長期間増殖が抑えられることから用いられる治療法。抗がん剤も投与の仕方で血管新生が抑えられることが報告されている。

July 13, 2005 08:55 AM | トラックバック (4)

2005年07月12日

2005年07月12日

【第1回】 アンバランス老化を改善

今なぜアンチエイジング医学なのか

 アンチエイジング医学は新しい学問分野である。エイジング(加齢、老化)がもたらす病的な変化を食い止め、改善することで、元気に長寿を享受することを目指す究極の予防医学ともいえる。

 アンチエイジング医学の学術団体である日本抗加齢医学会の副理事長を務める吉川敏一・京都府立医科大学教授(内科学教室、生体機能制御学)は「これまでの医学は病気を治すことだけに主眼が置かれていました。アンチエイジング医学は病気にならないようにする医療ともいえます。その発想のポイントとなっているのが、老化のメカニズムが分かってきたことにあります」と説明する。

 人の体は約60兆個の細胞から成り立っている。それぞれの細胞が役割に応じた化学反応を起こすことで生命を維持している。老化とは、その細胞が傷つくことで正常な化学反応が阻害されることで起こる。

 また老化にかかわる遺伝子も発見されている。若い時に活性化し、高齢者では不活性化するものとしてアポリポタンパクE遺伝子、異物代謝に関与する遺伝子、DNA複製に関与する遺伝子などがある。

 「アポリポタンパクE遺伝子はアルツハイマー病との関係が研究されているものですし、異物代謝が衰えれば体内に老廃物がたまりやすくなります。DNA複製能力が衰えるということは新陳代謝が少なくなる、つまり老化が進むということです」(吉川教授)。

 若者でオフ状態、高齢者でオン状態になる遺伝子もある。若いマウスと高齢のマウスを対象とした研究では、50種類以上の遺伝子のスイッチ状態が異なっていることが報告されている。

 ここで重要なことは老化にかかわる遺伝子は確かにあるが、その働きには環境要因が及ぼす影響がかなりあることも分かってきたことだ。世界各国で100歳以上の長寿者(百寿者)調査が行われているが、いくつかの共通点がある。

 「長寿者は年齢より若いというよりバランスよく老化していることが特徴として挙げられます。老化現象のかなりの部分がアンバランスな老化です。このアンバランスを防ぎ改善する手立てを理論化、実践し始めているのがアンチエイジング医学の現状です」と吉川教授は言う。

【ジャーナリスト 小野隆司】

◆オヤジ臭も老化の始まり
 中年を過ぎるとオヤジ臭が出る、といわれる。最近の研究によると、40代から毛穴などからにじみ出る皮脂成分が変化する。脂肪酸の一種であるパルミトオレイン酸が急に増える。この物質が酸化して独特のにおいを放つ。男性の方が皮脂が多いので目立つが、オバン臭でもある。

July 12, 2005 11:39 AM