2008年05月22日
夫婦ってこんなもの?
「妻はアルツハイマー病患者」から続く。
妻がある部分の記憶を欠落させることで、
一種、夫への復讐をしている結果になっているのが、
深刻な題材を取り上げつつ、ちょっと軽めで、気味良い。
しかし、このグラントという男、なんとかならないか。
すでに70歳を過ぎているのに、女好きの「病い」は昔のまま、
同じアルツハイマー病患者を配偶者にもつという身の上からのつらい者同士意識で、
オーブリーの妻との浮気を正当化してしまう。
北米での映画評価はかなり高いことを考えれば、
夫婦間の倫理基準に沿っているのだろうが、
私は、皆目このグラント爺の浮気行動が理解できなかった。
北米の夫婦は、アルツハイマー病で人格が崩壊する危機を目の当たりに見ても、
性的なものにここまで執着するのだろうか、
と思うと、なんだか、この映画が「夫婦ホラー」に覚えてきた。

映画にはあまり動きがない。
グラントもフィオーナも緩慢に動くし、
グラントは病魔に苦しむ妻が回復する手助けをしないで、
傍観者的だ。
これでは、日常的に脳への血流は少なくなって、
脳が萎縮するのも当然だ。
「二人でジョギングぐらいしてやれよ」
「脳の血行をよくするように、音楽を聞かせたりゲームをしてやれよ」
などと非常に不満を覚え、
やがて私はフィオーナに感情移入をしてしまった。
夫への記憶が欠落したことを逆に「幸せ」と感じ、
オーブリーと施設で一緒に暮らす「新しい個人」として
生れ変わったと思えばよい。
と、エールを送りたくなった。
しかし、脚本家はそのような、まことに奇妙なハッピーエンドにもしなかった。
どんな風に?
そこまで明かすのはいけないだろう。
ただ、この結末は、まったくいただけないものだった、
とだけは言っておこう。
そして他にもいくつか映画への不満を表明しておく。
アルツハイマー病が1月や2月の短期間で、
あそこまで人格が崩壊するものか。
アルツハイマー病の診断を仰ぐ時、
MRIとかCTスキャンなどのグラフィックを見せてほしかった。
どうしてかというと、老人たちは静かに取り乱すこともしないで、
現実を受け入れていく。
でも実際は、あんな平坦なものじゃない。
脳の崩壊に対して危機感や不安を切実に覚える人々には
この映画からは、何の役立つ情報も得られないからだ。
観客を脅かしてもいけないが、
情感に流されず、しっかり細部のリアリティを描いてほしいと想った。
名医を探すとか、医師と連絡を取り合って、
自宅で訓練をするとか、彷徨のリスクを考えて、
ポケットベルを持たせるとか、もっともっとあきらめないで、
やることがあるに違いない。
この切実さが、フィオーナの記憶が欠落しているように、
グラントの意欲も欠落しているように見えて、鼻白むのだ。
今週土曜日からロードショーになる「アウェイ・フロム・ハー君を想う」。
北米で、抜群の評判をとっている。
宣伝パンフには、米国の数々の批評家賞を受賞した実績が明記され、
厳しい批評家にも高い評価を受けている。
監督・脚本はサラ・ポーリー、
「スウィート ヒアアフター」で人気がある若い女優が、
自分とは年齢的に距離がある老夫婦を描いた作品だ。
さらに製作総指揮をしたのが、
「スウィート ヒアアフター」を監督したアトム・エゴヤンだから、
若いサラ・ポーリーの感性が
老夫婦のドラマにうまく生きたに違いない、
と期待できるはずだったのに、ちょっと残念な気持ちが残る。
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アウェイ・フロム・ハー君を想う(ヘキサゴン・ピクチャーズ提供)
監督:サラ・ポーリー
出演:ジュリー・クリスティ、ゴードン・ピンセント、オリンピア・デュカキスら
5月31日(土)から全国ロードショー
●アルツハイマー病関連記事
「私は壊れていない?」
「新説発見、急激な体重減がシグナル?」
(追加)
コメントが一杯溜まっています。超多忙なため、アップ困難です。
順次上げていきますので、しばらくお待ちください。 (2008.5.23. 13:40更新)
May 22, 2008 10:18 PM
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コメント
私の知り合いでたまたまこの映画の試写を見た人いまして、彼女によれば
「この夫婦が子供を作らなかった或いは作れなかったという辺りに夫婦の不仲の原因があるようだった、それを暗示するシーンあったし」
とのこと。
具体的に暗示するシーンがどことかは聞かなかったのですが、彼女の言うことが万が一本当なら、子供の出来ない或いはいない夫婦に対する偏見があるみたいで気に入らないなあと思いました。
僕としては、不倫という犯罪行為を肯定してしまっているだけで、駄目ですね、いろんな意味で。
エセインテリはこういうの好きだから、「いやはやちょっとアナタはあ、不倫には深い意味があるのですよ」
とか言うのでしょうか。
・・・・・・・
ベビーコメ
ご愛読ありがとうございます。
>暗示するシーン
言われてみれば・・・レベルですね。
あえて言えば・・・というのは二、三箇所でしょうか。
2008-5-25 18:00
投稿者 夫名無しですが : 2008年05月23日 00:19
アルツハイマー病を治す名医がいるとは僕には到底思えませんが、もっともっとあきらめないで、やることがあるに違いない、という事であれば、一応、アルツハイマーには「治療薬」があります。効果が出れば、病気の進行を数年間分遅らせることができます。
ちなみに、「配偶者の浮気」「盗難被害」は認知症で非常に良く見られる典型的な妄想です。
僕が普段感じるのはむしろ、世界には決して平等になるようなバランスというものは存在しないということですね。浮気を繰り返す旦那の方が認知症になって、妻が孤独に介護をするうちに心をわずらい、夫を殺して自殺を図る、ところが病院で目覚めて、警察がやってきて…という感じの救いのない話が世間には結構あると思います。
・・・・・・・
ベビーコメ
ご愛読ありがとうございます。
映画って、フィクションとわかりつつ、観客はある種救いやカタリシスを求める
性質の娯楽ですから、ストーリーの中で観客の気持ちが逆行されることが起これば、
それなりに批判をされるのでは?
とりわけ、アルツハイマー病患者に興味をもって物語に救いを求める人は、
今回の映画のように、間に合わせ、付け焼刃の終章を準備されると、
「何やねん!」という気持ちになるのも自然だと思いますけど。
2008-5-25 18:00
投稿者 じゃっく : 2008年05月23日 04:16
ぶっちゃけると、セックスレスですね、それは。
故・田中角栄氏は秘書であった早坂茂三に
「お前、夜のお勤めはちゃんとやってるか?あれは大事だぞ、ちゃんとやっとかないと夜ハサミでチンチン切られちまうぞ」
と助言したとのこと。
「アレ」がやっぱ大事っつーのは洋の東西問わず、ですな。
投稿者 吉田世界一 : 2008年05月25日 11:49
アメリカ在住です。この映画、確か昨年機内放送で見たと思います。決して誹謗中傷が目的ではないということを前提に、これから封切りの映画のストーリーをこれだけオープンにして一方的に批評するこの記事には映画好きとして正直がっかりしました。(最近このWEBサイトを見つけて面白いなあと思っていた矢先でしたので。)単なる感想です。失礼しました。
・・・・・・・
ベビーコメ
ご愛読ありがとうございます。
映画記事掲載の場合は、実際、決して安くない映画代金を
支払う価値があるかどうかを考えて批評することを
原則として、おすすめ記事を書いてきましたが、
今回この映画は、残念ながら厳しく書かねばならないと思い、
実際厳しく批評をしてみました。
過去の記事もお読みいただけると幸いです。
「姉歯ファイヤーウォール」
http://blog.nikkansports.com/general/yoshida/2006/04/post_3.html
「ヒデ俊輔、フーリガン魂だ!」
http://blog.nikkansports.com/general/yoshida/2006/06/post_67.html
「少女ハイジの愛し愛され方」
http://blog.nikkansports.com/general/yoshida/2006/07/post_94.html
「UA93便、応答せよ!」
http://blog.nikkansports.com/general/yoshida/2006/08/post_121.html
「アメリカから見た硫黄島」
http://blog.nikkansports.com/general/yoshida/2006/10/post_188.html
「悲しみの愛蘭土にだぶった朝鮮」
http://blog.nikkansports.com/general/yoshida/2006/11/post_203.html
「知らない間にごちそうさま」
http://blog.nikkansports.com/general/yoshida/2007/01/post_258.html
など
2008-5-25 18:00
投稿者 MACK : 2008年05月25日 13:23
