2008年05月15日
杜甫・成都・略奪
「地震・パンダ・杜甫」から続く。
今回の大地震で家族や家を失い、
ライフラインが閉ざされた避難民を見て、私が思い出したのは、
杜甫の長詩「茅屋為秋風所破歌」(茅屋(ぼうおく)の秋風の為に破られし歌)だった。
詩の舞台は、大地震で一躍名が知られた四川省の省都・成都。
その郊外、浣花渓の川沿いに杜甫一家が住むかわぶきの草堂があった。
ある年の8月(陰暦)、台風に屋根のかやが無残に吹き飛ばされたことがある。
飛び散ったかやは、向こう岸の森のこずえに引っかかったり、
水溜りに沈んでしまった。
そこに現れた浮浪の少年たちが、
たちまち、かやを拾って持ち去ってしまった。
これは盗賊のしわざと言うしかない。
声を枯らして叫ぶが、戻ってくるわけもなく、
ツエによりかかって深いため息を吐くばかり。
夕刻、嵐がようやく止んだが、
今度は大雨、かやが吹き飛んだ屋根から
雨が容赦なく降り込んでくる。
ぼろぼろの布団をかぶって身を守ったところで、
その大雨から逃れることはできない。
この時、杜甫は、次のように嘆き詠うのである。
いずくにか得るものぞ千万の間ある広き廈(いえ)
大いに天下の寒士を庇(かば)いて倶(とも)によろこばしき顔せん
風雨にも動かず山の如く安し
ああ何の時か眼前に突兀(とつこつ)としてそのことき屋(いえ)を見ん
吾が廬(いおり)は独り破れ凍りを受けて死すとも亦(ま)た足らわんものを
つまり、おおまかに言えば、杜甫は、
私たちのような貧民を収容してくれる大きな家があればなあ・・・
いつかそんな家が忽然と現れることなどはあるのか、
もしそれが実現したら、私の草堂など吹き飛んでもかまいやしない・・・
というような想念を抱いたのだ。
1300年前のこの杜甫の想念は悪意の蔓延する唐衰退期に現れたこと自体、
私には、ひとつの救いのように思えてならない。
これに限らず彼の詩には、
強い「正義感」と「ヒューマニズム」が貫かれているものが多い。
そして1300年後、今朝のウエッブニュース(読売)によると、
【綿竹(中国四川省)=牧野田亨、都江堰(同)=竹内誠一郎】
中国の四川大地震から3日目となる14日午後、
多数の死傷者が出た四川省綿竹市の農村地区で住民たちが
支援物資を積んだトラックを止め、荷台の物資を奪い合う事態が発生した。
杜甫がこのニュースを聞いたら、
どのような詩を我々に聞かせてくれただろうか。
●コメント更新情報
「あるレストラン物語」車椅子乗りさん
「ナンパに年齢制限なし」まささん
「奴隷の子は学校へ行けない」aiueoさん
「癒しの哺乳ビン」ありえむさん他
May 15, 2008 07:46 PM
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コメント
四川省の友よ 空(むな)しゅうする事 莫(なか)れ
古今 四海 皆 兄弟 惻隠の情 無きにしも 非(あら)ず
投稿者 鄭 成功 : 2008年05月16日 04:30
>支援物資を積んだトラックを止め、荷台の物資を奪い合う事態が発生した。
深夜ニュースで救援物資を積んだトラックに並んだ人民が、
「役人に救援物資を奪われるな」と叫んでいたのが印象的だった。
大地震ではあるが、老朽化した建築家屋などから考えて、
人災も加わった面もあります。
中国側の報道では、温首相が現地へ出向き迅速な対応をしているように見えるけど、
全然物資も足りないし、最低限の復旧さえままならない状態なんでしょう。
最近、中国絡みでいいニュースがありませんね。
投稿者 浪速の射漏士(有資格者) : 2008年05月16日 08:53
「プレート」と言う名 の 大歯車の上で 生存する 『 ホモサピエンス 』 よ!
今 こそ 武力衝突 と オサラバ して 軍事費 をゼロ にして 災害復旧費 に充(あ)てよ!
真 の「共存共栄」精神の下に 万事 も一事 も 合議 せよ! 解決 を図 れ!
人類 の 未来永劫 の 存続 と進化 の ために! 人類 の知力 よ 永遠 なれ!
投稿者 東京原人 : 2008年05月16日 12:13
杜甫の歌、そして社主さまの深い考え、涙が止まりません
投稿者 三浦 : 2008年05月16日 14:07
今の高校では漢文を教えないそうですね。
外国語の作品を原文で読む。
日本古来のすごいアイデア。
捨ててほしくない文化だと思うのですが。
投稿者 山奥 : 2008年05月16日 23:27
頑強な建築がフィクションであった当時と異なり、今ではそれは現実にあるのです。正確に言えば、あったのですが、学校など被災者を受け入れられた筈の施設の多くは倒壊してしまいました。
世界の地震の発生状況です(http://j-jis.com/data/plate.shtml)。お分かりの通り、中国国内では北京や上海よりも四川省など内陸部、特に南部で地震の発生率は高くなっています。それにも関わらず、建造物の耐震構造の基準は都市部(沿海部)の方が農村部(内陸部)とくらべて厳しいそうで、公共の建物においても同様みたいです。僕が杜甫ならばこう詠うでしょう。
>いずくにか得るものぞ千万の間ある広き廈
>大いに天下の寒士を庇いて倶に歡ばしき顔せん
>風雨にも動かず山の如く安し
>ああ、何の処か眼前に確然としてその屋を見ん
>吾が廬の破れ凍りて死すも亦た運命だろうか。
投稿者 : 2008年05月17日 11:50
こんにちは。
投稿者 エロバニー : 2008年05月17日 19:11
今回の地震だけでなく、被災された方を見て、いつも思う事が二つある。
1、写真や映像で見ると心が痛むが、それもそのときだけ。私が冷たい人間なのか?それとも、人間は所詮他人の痛みが分からないから生きて行けるのか?
2、被害者が10人くらいでもこんな大々的なニュースになるだろうか?個々の被害者からしたら自分一人だろうが10万人だろうが、受けた被害の大きさにに変わりはない。世の中には、ニュースにはならないが死ぬような苦しい目に合ってる人は大勢いる。そして、自分がそうなる可能性もある。
今回の惨状に比べたら、杜甫の詩なんて、場違いな感すら受
ける。
・・・・・・
ベビーコメ
ご愛読ありがとうございます。
人に対する「共感」が弱いのでしょうね。
今被災者の人々は大きなテントが欲しいと言ってます。
杜甫の長詩をもう一度読むと理解できるでしょう。
2008-5-19 22:00
投稿者 一麿 : 2008年05月17日 23:30
>人に対する「共感」が弱いのでしょうね
あなたは生き埋めを「共感」できるのですか?
>今被災者の人々は大きなテントが欲しいと言ってます。
死んだ人にテントなんていらないよ。
本当に「共感」してるなら、杜甫の詩ひけらかすよりやることあるんじゃない。
・・・・・・・
ベビーコメ
匿名だからって
何を書いて寄越してもよいわけじゃないですよ。
大人だったらね。
2008-5-25 18:00
投稿者 一麿 : 2008年05月18日 23:09
>人に対する「共感」が弱いのでしょうね。。。。 that I can see...
投稿者 MA : 2008年05月19日 22:25
阪神大震災の時も、ドサクサ紛れに公衆電話機(当時テレホンカード偽造がはやっていた)や倒壊した商店での商品略奪があった。
大地震が起きれば、治安は急速に悪化する。
社会常識など通用しない事を肝に銘じよ。
投稿者 やっちゃん : 2008年05月20日 11:34
テレビを見ていたら中国人の一級建築士の方が「中国の建物には欠陥住宅ではないものは一つもない」という趣旨のことをおっしゃっていました。
その後、他の人が「一般の家屋は全壊したが役所は全く壊れていない」と言っていました。
いずれにしても中国の建築に関する法律ってどうなっているんだろう?と思う出来事でした。
投稿者 綾小路麗禍 : 2008年05月24日 08:27
