2008年05月08日
船場吉兆シンドローム
今年の1月、偽装料亭船場吉兆が営業再開した直後、
エントリー「菊水丸を手玉にとった吉兆女将」の末尾で、
私は次のように書き終えた。
お客様を表から入れて裏から出すようでは、
偽装精神は、まだくすぶっているぞ。
やっぱり・・・
船場吉兆の女将(おかみ)たちの偽装精神は変らず「健在」で、
それもよりによって、客が残した料理を使いまわしていたのだ。
その期間は長く、
「ここは料亭の割にゴミが少ないなあ」
と、思ったごみ収集の人たちと、使われた器だけが知っている。
使いまわしした料理も広範囲だ。
回数も数知れず、「偽装精神」と「もったいない精神」が合体すると、
使いまわしという「エコロジー」「リサイクル」になってしまって笑える。
今回の新たなやり口の発覚は、すでに予想されたことなのに、
残念ながら、ただ証拠がないので、
私は「使いまわし」と具体的な表現ができなかった。
それで、「偽装精神は、まだくすぶっているぞ」と記述したに過ぎない。
また「吉兆でハンガーストライキ!」のエントリーでは、すばり、
あの料理は、まちがいなく、
仲居さんたちが食したにちがいない、
それとも電子レンジでチンをして次の客に回したのか、と思った。
と、私はすでに去年11月10日に表現している。
★なじみ客激励の意味――★
「使いまわし」とは、結局、
数万円を支払って、客は「残飯処理」をさせられていたことになるわけで、
温め直した鮎の塩焼き、二度揚げてんぷら、
何時間も放置したさしみのブヨブヨ味はカンベンしてよ。
会社の金やあぶくゼニを使って飲み食いしている美食客の舌も、
この程度のシロモノだとわかって愉快じゃないか。
私が興味を覚えたのは、そういうことだけではなく、
1月に営業再開した日、あちこちの常連客から、
次のような声がかかったことだ。
おかみも、大変やったなあ。
心機一転、がんばりや。
だまされた客がだました女将に同情する現象が起きた。
本来なら、だました料亭の料理など二度と口にしたくないはずだし、
吉兆と名のついた店には二度と足を踏み入れないぞ、
なめるな! という「気骨」ぐらいは持つのではないか。
にもかかわらず、だました側に同情してしまう常連客の一部。
私は、この現象をとりあえず五つの理由で説明してみたい。
その一。
吉兆の味に慣らされると、
情けないことに、たとえ偽装料理を出された過去があっても、
自分の口のいやしさに負けて、だました側に共感しておかないと、
料理を再び食べられないのは淋しいなどと、
強迫観念を抱いてしまうようだ。
その二。
「許してあげる」という姿勢を女将の前であえて見せつけ、
その姿勢を心の広い馴染み客として再評価してもらいたいのではないか。
中途半端な馴染みの哀れさと言えよう。
★特殊な依存心理――★
その三。
いわゆる「ストックホルム症候群」にどこか似ている感情と言えないか。
この症候群とは、
犯罪被害者が犯人に対して抱く特殊感情で、
犯人と一時的に時間・場所を共有することにより、
過度の同情や好意といった特殊な依存心を持ってしまうこと。
客は、偽装料亭の女将と一緒に「美味しんぼ空間」を共有することで、
特殊な依存心を女将に抱くようだ。
「菊水丸を手玉にとった吉兆女将」のエントリーで、
女将が、菊水丸さんに裏口から出ることを勧めた時、
それに簡単に応じてしまったことを書いたけど、
菊水丸さんの判断で、女将が「何かをたくらんでいる」かも・・・
とまで読めなかったのは、この依存感情によるものかの知れない。
この依存症を「船場吉兆症候群」(C)と名づけておこう。
その四。
数万円の料理を食べられるのは、一部の富裕層といえるだろう。
ところがいくら富裕層だからと言っても、一見はお断りが高級料亭の本分。
女将から見ると、客など、値踏みの対象に過ぎない。
(少なくとも偽装事件が発覚するまで)
ところが、事件が世間に知れてしまうことによって、
女将と客のポジションが逆転する結果になった。
客は女将に同情することで、彼女より優位なポジションをとることができたのだ。
その五。
客もまた自分の仕事や人生の領域で、
大なり小なり、人をだました経験をもっている。
また現在もだましている者もいるから、
女将を自分たちと同類とみて、その境遇を哀れみ、
「がんばれや」というような口のきき方をして共感を持つ。
そやそや。だまされる方が悪いのや。
もっと舌を肥えさせて、だまされんようにせなあきまへんな~。
そんな風に、自虐的結論に達するのだ。
いずれにしても、船場吉兆シンドロームなど、
美食に興味のない目から見ると、
今日食べた物は、明日のトイレで終わってしまう愚だと思える。
●コメント更新情報
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May 8, 2008 08:02 PM
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コメント
「吉兆でハンガーストライキ」の傑作記事で、既に社主さまは、
「私たち(社主さまとその連れ合いの奥様の方)が料理を手つかずで残したから、吉兆は喜んでいるようでした」
と吉兆の悪事を見抜いてしまっていた!!!!!
いやはや、最近のコギャル言葉で言うなら「ちょっとあなたはあ、チョウチョウどんだけェェェェ鋭いのぉぉぉぉぉぉテかぁ!!!」
といったところでしょうか。
あのハンガーストライキの時の不倫親父も今頃吉兆女将に慰めのお言葉をかけてストックホルムシンドローム三昧なのでしょうな(笑)
・・・・・・・
ベビーコメ
ご愛読ありがとうございます。
上のコメントを見た後、エントリーを加筆しておきました。
>不倫親父
もう家族ばらばらですよ。
2008-5-9 19:00
投稿者 夫名無しですが : 2008年05月08日 23:55
店と客の間に、ご指摘のような「なあなあ」「ゆるゆる」の関係が成立していたから偽装がいつまでもバレなかったんでしょうね。
二度揚げの天ぷらや二度焼きしてばさばさになった鮎の塩焼き(焼き加減がとても大事なのに)を出しても客に気づかれなかった、ということは、客が食べていたのは金額であって料理の味ではなかった、ということですね。日本の富裕層なるものがブランドに弱いだけのやわな消費者だということがわかったのは、今後、さまざまな局面でブランドマーケティングに生かせるかもしれません。
湯木貞一が存命で、辻静雄が毎日のように通った頃の吉兆だったらそもそもこんなことはありえなかったのか、それとも、特別な料理を出すのは相手が辻さんだったからで、実は他の客には二度揚げした天ぷらや使い回しの刺身が出ていたのか…
投稿者 ご隠居 : 2008年05月09日 02:46
見知らぬ他人に一度出された料理を再利用するとは、考えただけでも気持ち悪いですね。また、女将さんの発言がとても腹立たしく感じるのは、私だけでしょうか?中国からの食品の安全性が問われていた世の中ですが、この料亭もそれに匹敵するくらい悪質な営業(経営)をしているように思えます。このような料亭は、無期限の営業停止が必要かと思います。
・・・・・・・
ベビーコメ
ご愛読ありがとうございます。
この間、「歯型」のついた「から揚げ機内食」を出してしまった、
航空会社がありましたよね?
一部のスッチーさんらは乗客の機内食事を「エサ」と表現
するそうですが、業界内の方ってどう思われますか?
2008-5-9 19:00
投稿者 外資系客室乗務員 : 2008年05月09日 11:10
高級かどうかは別として、『この店で、俺は特別』という気持ちにさせてもらってうれしくない人はいないでしょう。
なじみの店を作りたい気持ちになること、あるいは気に入った店に通って店主と馴染みになり、快い気分に浸ること自体、責められることでは無いように思います。
ただ、なけなしの小遣いから自腹を切って分相応の金遣いの末に、おつまみのひとつも余分にもらっていい気分になる人もいれば、一晩数万、数十万と散財の挙句に会社のゴールドカード(はたまたプラチナ、ブラックか)で支払を済ませる日常の果てに、女将から『特別扱い』されて優越感に浸る方もおられる。
後者に縁なき衆生としては、昨年初めてこの件がマスコミに取り上げられた時、記者会見で顔を歪めて『パートが・・・』と繰り返していた若いヒト、たぶん次男坊かと思われますが、その、なんとも人を見下したような不遜な態度、雰囲気が今でも後味悪く記憶に残っています。
『船場のボン』。彼をちやほやしていたヒトもたくさんいたのでしょうね。
ああいうヒトが控えている限り、これで収まるはずがないと思います。
バッシングと見る向きもあるようですが、弁当のパセリじゃあるまいし(?)洒落になっていません。
もっとずっと安く、経営も苦しい店で、真剣に取り組んでいるところがいくらでもあると思います。
社主の分析では、その二その三とその四に共感します。
こういう辛口分析、これからも続けてください。
・・・・・・・
ベビーコメ
ご愛読ありがとうございます。
あえて女将になり切って手口を考えると:
残った日本酒、あれは少なくとも調理用に・・・
(醤油でも使いまわしする以上、これはあり得ます)
前夜の残り物は、翌日お昼の弁当向けに・・・
(だから同じ内容でも昼の方が安めの設定料金?)
デザートのフルーツ残り物は、ムース、ゼリーに。
あるいは、料理に使える・・・
「残飯」を細かく切ってかき揚げに入れられたら、わからない・・・
濃い味の炊き合わせで「茶巾ずし」の具に、生まれ変わることも可能だし
見た目ではまったくわからない。
今は、和食とは言っても、創作料理ですから、
どんな材料(残飯含む)でも自在に再利用,整形するでしょうね。
2008-5-9 19:00
投稿者 閑人 : 2008年05月09日 11:31
相変わらず、まったく共感できませんでした。
過去に言い当てたからといってそれが何なのでしょうか?
・・・・・・・
ベビーコメ
ご愛読ありがとうございます。
>過去に言い当てたからといってそれが何なのでしょうか?
私の「世界ー」以外でどこか当てている記事、ありました?
占いだって、当たらないですけど・・・
野球評論家によるペナントレースの予想もはずれが多い、
新年の為替レート予想で、誰がドルの100円ワレを予想しましたか。
安倍さん、健康が命取りになるよ、とエントリーしたのも、
当たりました。
2008-5-9 19:00
投稿者 : 2008年05月09日 15:20
使い回しって・・・こんなに大騒ぎすることなんでしょうか
庶民の一ヶ月分の食費を一晩で浪費できる世界の人間達の話で
彼らが何を口にしようとも、大多数の庶民には無関係と思いますが? 何か実害がありましたか
モラルの低下は槍玉にあがってる吉兆だけとは到底考えられません、世の中のあらゆる分野に蔓延中でしょう
お叱りを覚悟で
投稿者 itibiri : 2008年05月09日 20:40
ゆるゆるの老舗が多くなってきましたね。わたしは料理自慢をうたう旅館に行く時は必ず月替わりに2泊する事にしています。さあ、食べるぞと気合いを入れて行く訳なので、メニューが変わるはずなのに前日と同じものが出て来たことが1度からずあって、かなりがっかりした事があります。
2度揚げの天ぷら、すかすかの鮎の塩焼き、ぬるい刺身、
わたしなら一発で下げさせます。
でも吉兆だったら文句の言われそうもない客に3度目、4度目でも平気で出していたのでしょうね。
投稿者 くいだおれ : 2008年05月10日 02:08
使いまわしなんて事は、昔っからその辺の飲食店?やビヤガーデンでは当たり前の事だったでしょ?
安サラリーマンが行くような店なら、しょうがないか、で済ませられるかも知れないけど、あの吉兆で?という事で大騒ぎなんですよね。
このニュウスで「うちら、もう止めよー」と慌てた飲食店もあるだろうと思ったのは私だけでしょうか。
世界に名だたる吉兆ですよ。日本が汚されたようなものですよ。あの三ツ星だか五ツ星だかの調査は入ったんだろうか。
大手製紙会社の誤魔化し再生紙と同じで、人として可笑しい。
・・・・・・・
ベビーコメ
ご愛読ありがとうございます。
>世界に名だたる吉兆ですよ。
これは褒めすぎというより、日本の外からの評価って、
料亭の料理に関しては、どうでしょうか。
吉兆は料亭としては、歴史は浅いですし、
その料理は、71年の東京サミットで公認となって、
「高度成長」をしましたね。
「岡崎つるや」さん、「招福楼」さんのほうがレベルは、
上でしょう。
2008-5-10 20:30
投稿者 ひまわり : 2008年05月10日 06:26
お客さん達の心の広さに感心しました。
やはり、お金持ちの人は懐が深いですね。
文句言ってる人は「やっかみ」が入っているのだと思います。
投稿者 : 2008年05月10日 10:36
>相変わらず、まったく共感できませんでした。
>過去に言い当てたからといってそれが何なのでしょうか?
それは過去を見直して学習できない方の台詞ですね。
こういう方がトップのコメントなら考えますが、
発想の貧困度合いから考えて低層の人であることは間違いないでしょう。
そんな方の意見にも耳を傾けないといけないと言うのも大変ですね。
投稿者 : 2008年05月10日 12:38
当たったから社主さんもテンション高いんですね(笑)
今回は「ベビーコメ率」がいつもより高いような気がします。
いつも楽しく拝見させてもらってますよ。頑張って下さい!
投稿者 shoh : 2008年05月10日 13:17
吉兆流「食べ残し」と「手つかず」は、違うらしい。
もったいないという言葉が、
変な意味で一人歩きしそうで心配。
個人的には・・・、
老舗吉兆が、いつから、どういうところから、
こういう風になっていったのか、
お金の為だけなのか、
それに一番興味がある。
投稿者 14番目の月 : 2008年05月10日 19:04
>相変わらず、まったく共感できませんでした。
>過去に言い当てたからといってそれが何なのでしょうか?
きちんと社主様の記事を読みましょう。
それから自分の意見があれば、それを述べなさい。
相手の言うことに耳を傾けようともできない人間には誰も共感してくれませんよ。
それが世の中というものです。
投稿者 むさし : 2008年05月11日 16:05
