2008年04月22日
「イチローさん」続きですよ
コメンテーターのIchiroさんから、「名前」について質問が届きましたので、
少し議論を続けてみたいと思います。
Ichiroさんは次のように話しておられます。
中華思想で育った誇り高い中国人のこと、
プライドを捨てて本位でない名前を使っているとは考えにくく、
単に名前に対するこだわりがないのかなと感じてました。
命名に対する歴史的、文化的な背景の違いが
関連しているのかもしれません。
興味深いですね。
私はそっちの方面はからきし駄目なのですが、
よしだまさゆき様、何かご存じないでしょうか?
(2008年04月21日 16:00)
20日(日曜日)の私のエントリーは――。
日本人が、中国人農民に日本名を名乗らせ、
日本人にとって難しい中国名を発音したり覚えたりする手間を省くことは、
一種の人格権侵害に当たり、
日中友好の観点からも、敬意を表してできるだけ
相手の名前を覚え、それを使ってあげるのが、
大切ではないか、という考えを私は述べてみた。
ところが、中国人は中国名の他に英語の名前を持っている人がいる。
またアメリカに移住すると、そこで自分を呼ばせる時に、
英語名を好んで使い、そのことにこだわっていない、という
意見が多数寄せられた。
まず、中国人が日本へ働きに来て、日本名を名乗る点に注目したいと思う。
研修の送り出し側期間が、日本人に配慮して、
受け入れ先の日本人農家のために、日本語名を中国人につけたと言っても、
研修を終えて、本国へ帰った時に、
もし先日あった栃木県のいちご生産農家と研修生間の支払い
トラブルのような事件が起きたら、
中国人は日本人のことを「日本名を私たちにつけて、侮辱をした」
と言って、非難する材料に使われることは、十分あり得る。
韓国人の例を引くが、制度的に「創氏改名」は韓国人も納得して、
行われたとされるにもかかわらず、
未だに、日本側の強制によって行われた、と主張され、
名前は人格にかかわる以上、政治的に利用されることにまで発展してしまう。
英語圏で中国人が自分のことを「ジョン」「チャーリー」などと
呼ばせて喜ぶのとはわけが違うことを認識すべきだろうと思う。
まず上記の点は押さえておきたい。
次に考えたいのは、
なぜ中国の人は、あまりこだわらなくて、英語名を使えるのか。
これについては、いくつか理由が考えられるだろう。
まず、その国が「名前に関して開放的社会であるかどうか」だ。
中国と日本を比べると、中国は「閉鎖的社会」、
日本は「開放的社会」と言える。
私は二つの社会類型を設定しようとしているのだけど、
「閉鎖的社会」とは、名前の種類と数が限定され、
一定の名前のストックが存在し、新生児の名前は、
その子供の出産状況や社会的地位に従って、
そのストックの中から選択されて命名される社会だ。
名前のストックは特定個人の生死にかかわらず存在して、存続する。
この社会には、同姓同名者が多く、
名前の特定機能は低い。
この社会の典型が、イヌエット社会といわれる。
イヌエット社会には個人に先んじて、人名の体系が存在し、
子供には用意された名前のリストから、
子供の心理的特性や身体的特性に応じて選択し、
死者の名前を命名するのが一般的だ。
新たな名前が創作されない社会と言える。
一昨年の9月、秋篠宮家に悠仁親王のご誕生をみた時に
エントリーした「「悠仁」という名に願いを込めて」で、
中国の命名システムに25個の「輩字」(バイツゥ)というものがある
と話した。
各親族集団ごとに配列が決められたもので、
各世代ごとに共通する個人名の最初の一字のことで、
遠く祖先信仰を含意する大規模のせぢ序列を示す機能を果たしている。
だから、中国の命名システムでは、
姓は、単系親族組織、個人名に含まれる輩字は、
その組織内での世代を表示することになる。
また中国人の姓はたいてい漢字一字だから、
漢字リストから漢字を拾う。
そうすると、人口の割に姓が少なすぎる事態が現実にある。
だから、実際、政府では「複合姓」の検討が始まっているそうだ。
名前に関しては、イヌエット社会に見るレベルの「閉鎖的社会」ではないけど、
中国も非常に少ない名前から選択され、
広がりに乏しいところから、また「輩字」の存在から見て、
「閉鎖的社会」とみなしてよいと思う。
他方、日本社会に見る名前の「開放的社会」とは何なのか。
(次号に続く)
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April 22, 2008 10:55 PM
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コメント
日本人が韓国人に対して創氏改名を施したことを引用されてますが、一括的にほぼ強制された韓国人と、自らの希望で(色んな理由はあるでしょうが)日本の農家に働きに来た中国人では、事情が大きく異なると思います。
投稿者 kazumaro : 2008年04月23日 00:28
日本は確かに名前の『開放的社会』だとは思いますが、そうはいっても、戦後の日本では人名につけられる文字が制限されているので、完全開放というわけでもありませんね。
ところでフランスでは、少し前まで子供の名前は365ある聖人の名からつけなければならないと、法律で定められていたとか。1993年にその法律が廃止されて、自由に名前をつけられるようになったそうですが、法律を廃止するくらいですから、『命名の自由を!』みたいな運動があったのかもしれません。
しかし、それまで枠がはめられていたものが急に自由ですということになって、フランスでは一体どんな変化があったんでしょうね。昔どおり聖人の名前からつける人が多いのか、それとも百花繚乱状態になったのか。フランスは名前の『閉鎖的社会』から『開放的社会』にどのように移行したのか、ちょっと興味のあるところです。
投稿者 てん秤 : 2008年04月23日 12:38
外資系で勤めています。香港オフィスの中国人(いわゆる本土系ではない人達)は英語名を持っていますが、全員勝手に自分で命名したそうです。パスポートとかには正式な中国名が漢字で書かれていますが、日々のやり取りは英語名でやっています。
おまえのどこがサイラスだ?と聞きたくなったり、ハッピーはないだろう?と心の中で思う時もありますが・・・キャンディだのラブだのが来た時にはもうどうでも良くなりました。
・・・・・・・
ベビーコメ
ご愛読ありがとうございます。
英国にいた時、同僚の台湾人研究者に女の子が誕生して、
「ベビーの名前は?」と聞いたら、
「マーガレットだ」
「英王室の名前をつけてやった」と誇らしげに答えていました。
「働く主婦」さんのコメントを読んで、
おもわずその時のことを思い出して、愉快になりました。
2008-4-23 22:00
投稿者 働く主婦 : 2008年04月23日 13:50
ドイツにも名前のストックはあって、変わった名前をつける場合には困難が伴います。例えば生まれた自分の子に日本の名前をそのままつけようとしても普通は許可されません。その場合はミドルネームをこちらのものにします。
さてこちらのひとたちは「名前に関して閉鎖的社会」でありながら自分の名前に関して非常にこだわりがあるように思えるのですが、いかが?
また昨日のコメントで気になったのですが、、、
欧米人が、明らかに違う文化圏から来た人に対して自国の名前で呼びかけたりあだ名をつけたりすることは、礼儀上ありえないし、もしそうされた場合はきっちり喧嘩をしてかたをつけるべきです。自分から名乗るなんてひどすぎる。古いアメリカ映画に登場する南部の黒人奴隷は、ものすごくありふれた名前でしかもそれを略した形でしか呼ばれていません。
相手の名前をきちんと正確に言えるということは、それだけで尊敬とか親密とかいったポジティブな印象を相手に伝えることができます。
・・・・・・
ベビーコメ
ご愛読ありがとうございます。
同感です。礼儀、信仰、尊敬、敬愛、親密・・・そういった微妙でかつ価値あるものと
名前は密接に関係しているから、大事なんですよね。
ドイツでもフランスでも、有力紙でさえ、日本の首相は名前を間違えられたり、
顔写真を取り違えられますが、首相としてのプレゼンスが低いのか、軽んじられているようで気分悪いですね。
2008-4-23 22:00
投稿者 ビスマルク : 2008年04月23日 17:07
名前は他者と区別するための記号ともいいます。
帰化した外国人が日本に馴染むように日本風に登録する人もいますよね。
香港人なんか生まれたときから英国風の名前をつけますし、
名前への愛着が薄いんでしょうねぇ。
韓国の「創氏改名」って、もともと中国人風の名前だったでしょう?
日本書紀によると韓国にも独自の苗字と名前があったようです。
中国に統治されて中国人になりきろうとしたから、
元々の苗字と名前を捨ててしまったとか。
そして日本に統治されて同じことが繰り返されてた。
日本が戦争に負けたとき、中国人風の名前でなく、
元々の苗字と名前を復活させなかったのはなぜなんだろう?
まぁ名家といわれる家筋に生まれない限り、
あまり気にならないもんかもしれませんねぇ。
投稿者 浪速の射漏士(有資格者) : 2008年04月23日 18:30
カナダに留学していたことがありますが、同僚の中国人は単に
中国名だとカナダ人にちゃんと発音してもらえないし、
なかなか覚えてもらえないから、英語の名前を名乗っている
と言っていましたよ。
私も同じような理由で、英語のニックネームを欲しいなと思ってました。
まさゆきさんもイギリス留学中そう思いませんでした?
たとえばマーク・ヨシダみたいなかんじで。。。
・・・・・・
ベビーコメ
ご愛読ありがとうございます。
>たとえばマーク・ヨシダみたいなかんじ
これはありませんでした。
同僚の台湾人、中国人も本名で呼ばれていました。
私は「まさゆき」を略して「マサ」と呼ばれていましたけど
これなら何も問題はないでしょう。
2008-4-24 22:30
投稿者 猿 : 2008年04月24日 18:41
