2006年09月23日
藤田さん、史上3人目はアナタでした:北村泰彦
横浜戦に向けた練習を終えた名古屋MF藤田俊哉(34)から、何気なく尋ねられた。「この間ニッカンにさあ、(磐田の)中山さんがJ1で13年連続ゴールって書いてあったでしょ。あの記録って途中で(日本を)離れたりするとダメなのかな?」。言わんとすることは理解できた。が、念のため中山が今季初得点を決めた9月18日付の日刊スポーツを読み返してみた。13年連続は現J2横浜FCのFWカズ、元清水MF沢登に続く「3人目」のJ1タイ記録と書いてあった。
大事な名前が抜けている。実は、藤田も8月27日のG大阪戦(瑞穂陸)で今季初得点となるPKを決め、磐田時代の94年から続く連続ゴールを13年に伸ばしている。03年後半にオランダ1部ユトレヒトに在籍したが、それはJ1連続ゴールを打ち消す材料ではない。「ま、これも記録と呼ぶのか難しいとこだけどね」。弊紙のミスをかばうかのように気づかってくれたが、偉大な記録ホルダーです。お詫びと訂正、そして敬意を込めて…。「3人目」は藤田。中山は「4人目」です。
その13年連続となった今季初ゴールを決めるまで、20試合を要した。ずいぶん時間がかかった裏には、主に2つの理由がある。4月初旬に右ひざ内側じん帯を損傷した。「きついね、左足1本でやるのは」と言いながら出場を続けた。右足で蹴れば、激痛が走る状態。本来のプレーをできるはずがなかった。もう1つは戦術上、守備的な役割を任される機会が多くなったことだ。ゴールに遠い位置にいれば、当然得点チャンスも減る。ただ、そんな逆境を乗り越える過程にベテランの妙味が詰まっていた。
右ひざを痛めていた時期。初夏の気候でも冬用の長いジャージーを履いて練習に臨んだ。ひざに巻いたテーピングを隠すためだった。故障を言い訳にしてたまるか-。プロ13年目のプライドを見るようだった。得点力を生かしづらいボランチで起用されたり、控えに回されても「若い時だったら反論してたかもしれない。でも今は違う。オレの力が必要になる時が必ず来る」と耐えた。先発に本格復帰してからチームは5勝2分け1敗。この数字が何より存在感を物語っている。
G大阪戦でPKを決めた後、何度も振り下ろした拳には魂がこもっていた。あと3回、ガッツポーズを繰り返せば、今度はJ1史上「3人目」の通算100ゴールだ。10月4日で35歳。円熟味を増した藤田のプレーからますます目が離せなくなった。
September 23, 2006 12:27 PM 投稿者:北村泰彦
2006年09月08日
出てこい!競輪界の「佑ちゃん」:川尻将志
たった1人、傑出したスターの出現が大きな流れを作る。今年夏の高校野球は早実のハンカチ王子こと、斎藤佑樹投手(3年)が大ブレーク。大会終了後も連日ワイドショーに取り上げられるフィーバーぶりで、これまで高校野球には無関心だった主婦層からも幅広く支持され、いまだに一大ブームを築いている。
スポーツ界だけでなく、人気低迷が続く競輪界にとっても、巻き返しの起爆剤としてスターの出現が必要不可欠。強さはもちろんだが、それ以上のプラスアルファを持った存在。車券の勝ち負けを度外視してでも応援したくなる選手がいれば…。ここ数年はF1先行の吉岡稔真以来、それだけの存在感を持った選手は見当たらない。
しかし、スターの出現を指をくわえて待っているわけにはいかない。日本競輪選手会主導で今年7月から「スター選手養成セミナー」が始まった。89期生、90期生のデビュー間もない選手のなかから才能豊かなスター候補生12人を選出。年3回、合同練習や、講習会を行って、脚力、精神面で重点的に英才教育をほどこすのが目的だ。
競輪の専門的なトレーニングはもちろんだが、元Jリーガーの相馬直樹氏の講演会や、フランス料理のテーブルマナーの講義まで、セミナーの内容は多岐にわたる。実際に参加した菊地圭尚(26=北海道)も「他分野で活躍する人の話も聞けたし、色々と勉強になりました。また機会があれば参加したい」と話すなど、選手サイドにとってもプラスになることは多い。
傑出したスターとは生まれながらにその素質を持っていたり、時代が作り出すものかもしれない。「スター選手養成セミナー」がどれだけ実質的な成果を上げられるかは未知数だが、誰もがスターの出現を待ち望んでいることだけは間違いない。たった1人でいい、競輪界に特別な存在が現れる日を待ちたい。
September 8, 2006 01:33 PM 投稿者:川尻将志
2006年09月02日
コンテンツとしてのスポーツの魅力:上野竜一
先日、新幹線に乗った時のこと。前の座席からこんな会話が聞こえてきた。「再試合見た? 最後は泣けたよなあ」。見た感じ30代半ば、出張帰りのサラリーマン同士といったところ。早実が駒大苫小牧を破り、初優勝を飾った夏の高校野球、再試合となった決勝戦の話らしい。
心の中で「俺も見た」とうなずきつつ、しばらく聞き耳を立てたところ、そのサラリーマン、会社で勤務中でもお目当ての試合を見逃さぬよう、大会前にワンセグ対応の携帯電話をわざわざ購入。大一番はケータイで観戦したのだという。
ワンセグは今年4月にスタートしたサービス。携帯電話などのモバイル機器向けの地上デジタル放送で、通常のテレビ番組以外にデータ放送や他サイトへの接続機能などを使い、常時関連情報やニュース、天気予報などの情報を得ることができるといったものだ。
ワンセグ対応ケータイは2010年には利用台数が2500万台に達するとも見られているが、現状ではまだ数が少なく、利用者の使用法も通常のテレビとして視聴するだけで、積極的に通信と連動させるところまではいっていないようだ。配信する各放送局は、今を普及のための投資の時期として、魅力的なコンテンツや通信と連動した仕掛けを模索しながら、投資したコストを回収し、今後の収入となり得るビジネスモデルの構築に取り組んでいる。
そんな中、CBCが7月末に自局で中継した中日対巨人戦で、東海地区初の試みとしてワンセグのデータ放送を利用したプロ野球の番組連動放送を実施した。中継映像下のデータ放送部分でスコアや試合経過、他球場速報をリアルタイムに更新し、引き出せるようにしたもの。制作した同局テレビ編成局メディア・コンテンツセンターの加藤直次メディア・コンテンツ部長は「もともとスポーツ中継とワンセグの親和性は高いと見ていたが、今後もやる価値があると改めて思った」と話す。
サッカーW杯、王ジャパンが世界一に輝いた野球のWBC、夏の高校野球…。移動中でも、時には会社で勤務中に隠れてまで見たい、気になる試合というものは確かにある。プロ野球だって、巨人戦の視聴率低下で地上波中継から撤退する局が出る一方、年間通じて全試合終了まで中継するCS放送の加入者は増え続けている。ファン離れというよりは、ニーズが細分化され具体的になったということだ。
「場所を問わずどうしても見たい。そう思わせるものにはコンテンツとして高い価値がある」と加藤部長。スポーツにはそれだけの魅力がある。ケータイ片手にこっそり胸を熱くしたそのサラリーマンの姿をもう1度想像した。
September 2, 2006 01:13 PM 投稿者:上野竜一
