2006年09月02日

コンテンツとしてのスポーツの魅力:上野竜一

 先日、新幹線に乗った時のこと。前の座席からこんな会話が聞こえてきた。「再試合見た? 最後は泣けたよなあ」。見た感じ30代半ば、出張帰りのサラリーマン同士といったところ。早実が駒大苫小牧を破り、初優勝を飾った夏の高校野球、再試合となった決勝戦の話らしい。

 心の中で「俺も見た」とうなずきつつ、しばらく聞き耳を立てたところ、そのサラリーマン、会社で勤務中でもお目当ての試合を見逃さぬよう、大会前にワンセグ対応の携帯電話をわざわざ購入。大一番はケータイで観戦したのだという。

 ワンセグは今年4月にスタートしたサービス。携帯電話などのモバイル機器向けの地上デジタル放送で、通常のテレビ番組以外にデータ放送や他サイトへの接続機能などを使い、常時関連情報やニュース、天気予報などの情報を得ることができるといったものだ。

 ワンセグ対応ケータイは2010年には利用台数が2500万台に達するとも見られているが、現状ではまだ数が少なく、利用者の使用法も通常のテレビとして視聴するだけで、積極的に通信と連動させるところまではいっていないようだ。配信する各放送局は、今を普及のための投資の時期として、魅力的なコンテンツや通信と連動した仕掛けを模索しながら、投資したコストを回収し、今後の収入となり得るビジネスモデルの構築に取り組んでいる。

 そんな中、CBCが7月末に自局で中継した中日対巨人戦で、東海地区初の試みとしてワンセグのデータ放送を利用したプロ野球の番組連動放送を実施した。中継映像下のデータ放送部分でスコアや試合経過、他球場速報をリアルタイムに更新し、引き出せるようにしたもの。制作した同局テレビ編成局メディア・コンテンツセンターの加藤直次メディア・コンテンツ部長は「もともとスポーツ中継とワンセグの親和性は高いと見ていたが、今後もやる価値があると改めて思った」と話す。

 サッカーW杯、王ジャパンが世界一に輝いた野球のWBC、夏の高校野球…。移動中でも、時には会社で勤務中に隠れてまで見たい、気になる試合というものは確かにある。プロ野球だって、巨人戦の視聴率低下で地上波中継から撤退する局が出る一方、年間通じて全試合終了まで中継するCS放送の加入者は増え続けている。ファン離れというよりは、ニーズが細分化され具体的になったということだ。

 「場所を問わずどうしても見たい。そう思わせるものにはコンテンツとして高い価値がある」と加藤部長。スポーツにはそれだけの魅力がある。ケータイ片手にこっそり胸を熱くしたそのサラリーマンの姿をもう1度想像した。

September 2, 2006 01:13 PM 投稿者:上野竜一