2006年05月19日

限界と戦い続ける鉄人・室伏の「金言」:八反誠

 鉄人の言葉である。そのまま記す。

 「ある所を超えると、そのトレーニングではその上には行けなくなるところがある。結局は自分自身が編み出す以外ない。最近は自分でつくった練習以外、効果がなくなってきた」

 

 アテネ五輪男子ハンマー投げ金メダルの室伏広治(31=ミズノ)が16日、会見で独創的な練習の意味を問われ、こう答えた。16 ポンド (7・26キロ)のハンマーを80メートル以上も遠くへ投げる鉄人は、自らの発想と感性を頼りに1センチでも遠くに目をむけていた。

 公開されたウエートトレ。そのすべてが初めて見る一風変わったものだった。バーベルのシャフト、体をねじる動作で抱えるプレート、すべてのトレーニングで使用する器具にハンマー(鉄球)がつり下げられていた。室伏は「全部が意味のあること」「筋力を鍛えるより、感覚を磨く」とその理由を補足した。充電期間中に編み出し、昨年取り入れたものだった。

 単純に飛距離はパワー=筋力に比例する、と考えるトレーニング法もあるという。「●メートルを投げる選手ならばフルスクワットで最低□キロ」といった具合。だが、室伏はそれはあくまで目安でしかないと考えているようだ。

 「奥底に眠っている可能性をどうやって目覚めさせられるかがウエートトレーニング。方法を開発していくことが大事」

 さまざまな競技に科学的なアプローチがなされ、どの競技でもウエートトレーニングは身近になった。だが鉄人と呼ばれる最強のアスリートは、器具よりも自らの体と向き合う姿勢を何より重視していた。
 五輪で世界の頂点に立ち、土台となる筋力を極限まで鍛え上げた室伏の理論を、他のすべての競技の選手に当てはめるのは無理があるし、何より失礼だ。だがその姿勢からなら、だれでも真似ができるのではないだろうか。

 さらに、冒頭のフレーズにはスポーツという枠を超えて訴えかけてくる重みがあるようにも感じた。

 これを「金言」といわずして、何という。

May 19, 2006 10:50 AM 投稿者:八反誠