2006年10月03日
ファンも支持、阿波の「大外一本」:山本善憲
勝負にはさまざまな戦い方がある。それが個性を生み競技に深みを与えるが、競艇には不利な戦法をあえて選択し続ける選手が何人かいる。阿波勝哉(33=東京)もその1人だ。
競艇は6人が横並びでスタートするが、常に左回りで走るので、コーナーに1番近い「イン」と呼ばれる左端のコースが最も有利。逆に、右端の1番外はコーナーまでが遠い。競艇場の形態で異なるが、一般的に選手の誰もが「大外」を嫌う。しかし、阿波は基本的に大外からしか走らない。
趣味や遊びならともかく、競艇は立派なプロ競技。職業である以上は結果がすべてだ。なのに、不利な状況を選択する意味とは? 「みんな不利だって言うけど、自分ではそんなに不利とは思わない。それより僕はコース争いなどの駆け引きの方が苦手。だったらレースに集中する方がいい」。有利な戦い方を探ることに神経を使うよりは、自分の力を出し切る方を重視したい。そんな思いが「6コース一本」を決断させた。
大外から勝つには人よりも早いスタートを行く必要がある。ただし、フライングを切ると、一定期間の出場停止処分を受ける。若い頃、阿波はフライングを多発し、1年間で3カ月間ほどしか走れないことがあった。当然、収入はストップし、仕方なくアルバイトで汗を流す日々。だが、皮肉にもそんな苦い経験が、現在のスタイルを生んだ。
「実はあの頃、6コース以外のコースから立て続けにフライングを切って…。不本意でしたよ。だから、これからは全部6コースで行くと決めたんです」。
時間はかかったが、最高ランクのA1級にまで登りつめた。SGと呼ばれる大レースにもファン投票で出場した。公営競技とはいえ面白いレースを見たい。大外から健気に走り続ける阿波を、多くのファンが支持した証だった。
その後もフライングの多発をはじめ、極端な戦法ゆえ、成績の浮き沈みは大きい。それでも、何度も這い上がってきた。「僕はこのやり方でここまでやってこれた。これからも大外をやめるつもりはないです」。幾多の逆境を力に変えてきた男の言葉は熱い。近年は誰でも内のコースを狙う単調なレースに、退屈さを感じる競艇ファンは多い。だからこそ阿波の超個性的な走りは、より異彩を放つ。
October 3, 2006 03:17 PM 投稿者:山本善憲
