2006年07月08日

父親の背中見て同じ競艇界志す娘:山本善憲

 親子の絆が希薄になったと言われて久しい。親が子を、あるいは子が親を、互いを殺める嫌な事件が後を絶たないが、親の背中を見て育った子どもが同じ道を志す。そんな世界が競艇界には残っている。先日、デビューを飾った鈴木祐美子(20=三重)は父の光男(52=三重)が現役の競艇レーサー。ただ、子どもの頃から競艇選手を夢見ていたわけではなかった。

n-sp-060708-03.jpg 三重から新たに誕生した競艇の父娘レーサー鈴木光男(右)と娘の祐美子

 「幼い頃から父が舟に乗っているのは何となく分かっていたけど、魚でも獲っているんだと思ってました(笑い)。競艇選手だと分かってからも、たまに優勝戦に乗って、テレビのインタビューに出るのを見るのが楽しみなくらいで、特にレースを真剣に見ることはなかったですね」。

 それより、兄姉の影響で小学校から始めたバスケットボールに夢中になった。中学は愛知の名門中学に越境入学、高校は推薦で大阪の強豪校へと進学した。学生時代はバスケットに明け暮れたが、高校3年の時に「体も小さいし、このままバスケットを続けても…」と将来のことを考え始めると、ふと競艇選手の道が頭に浮かんだ。その思いは母を通じて、父にも伝えられた。

 娘が自分と同じ職業を選んだことを父は「うれしかったですね」と喜んだ。自分が長年、魂を注いできたことを、娘が認めてくれた証でもあった。しかし、現実に選手を目指すとなれば心配ごとの方が多い。「危険をともなう仕事だし、生半可な気持ちで選手を目指してもらっても困りますからね」。父として娘の決断を喜びながら、厳しい世界に飛び込む決意を求めた。

 「一生懸命やるのは当然ですが、まずは人として立派になって欲しい。陸の上では労を惜しまず、何でも進んでやって欲しい」。レーサーとしての大成より、まずは一社会人として恥ずかしくない人間になって欲しい。その目は厳しかったが、父親としての優しさにあふれていた。

 「たまに家に帰ってきても、父がプロペラを作っている姿を子どもの頃からずっと見てきました。そんな父を尊敬していますし、私も立派な選手になれるよう頑張りたいです」。父の思いは娘の心にも、しっかりと届いている。

July 8, 2006 10:48 AM 投稿者:山本善憲