2008年1月 8日宣誓貧語
正月を札幌市内の実家で過ごした。物置代わりになっている8畳ほどの自室で、荷物を整理していた。1冊の本が目に留まり、パラパラとめくってみた。そのまま、一気に読み切ってしまった。《500人の証言 この道 上》(日刊スポーツ出版社刊)-。日焼けしかかった帯に「道に始まりはない。道に終わりはない。人が生まれ、生を営むところすべてに、道が生まれ、道が続く」と、あった▼終戦から50年目の95年、日刊スポーツは、前記タイトルの特別連載を企画、紙面化および書籍化した。力道山、長嶋茂雄、白井義男、美空ひばり、石原裕次郎…。戦後ニッポンを象徴する、スポーツ・芸能分野のヒーロー・ヒロイン26人=上巻収容=の生きざまにスポットを当てた。本人および周辺取材を積み重ねた。計500人=同291人=の証言をベースに、現役当時の秘蔵写真を交え、昭和の時代を浮き彫りにした▼先人たちの実体験に基づくメッセージは、重く、深く、心にひびいた。ヒーロー・ヒロイン誕生の瞬間を間近で体感した、周囲の真摯(しんし)な証言が、その偉業を裏付けた。彼ら、彼女らは、戦争という名の愚行にほんろうされ、疲弊しきったニッポンに勇気と感動を与えた。各人が、一筋の光明であり、万人を照らす光源だった。一節を引用する。【証言114】稲尾和久氏「人の情け、痛みを知ってこそ人間は大きくなれる」-。神様・仏様と並び称された「鉄腕」は昨年11月、70年の生涯を閉じた▼「この道」ならぬ、このブログは06年12月にスタートした。今回で通算30タイトルの節目を迎えた。過去29題の徒然(つれづれ)話を振り返ってみた。取り上げたテーマは、野球関連(計6)、映画・音楽関連(計7)、サッカー・陸上など一般スポーツ関連(計8)、飲食関連(計4)など。主たる話題の、現在・過去・未来に自身の興味と体験を強引? に絡め、1本の糸で紡いだ、つもりだった▼その中で、とりわけ、印象に残った「言葉」がある。世界陸上大阪大会の男子100メートルを制したタイソン・ゲイ『アサファ(パウエル)らライバルあっての僕。今後も彼らとのレースを通じて成長していきたい』-。知内高野球部の故山本鉄弥前監督『(末期がんに冒されながら、病床で)どうしても卒業式に出たいんだ』-。サッカー日本代表のオシム前監督『私の言うリスペクトとは、「すべてを客観的に見通す」という意味である。すなわち、「客観的な価値を見極める」ということだ』(自著「日本人よ!」=新潮社刊、長束恭行訳=から)▼30題目の節目であり、08年年頭に「30の誓い」を立ててみた。【1】約束を守る【2】仲間を大切にする【3】年配者をいたわる【4】子どもを思いやる【5】感謝する【6】命を尊ぶ【7】謙虚に生きる【8】あいさつする【9】ありがとうと口に出す【10】気配りする【11】うそをつかない【12】ねたまない【13】食べ物を粗末にしない【14】後悔しない【15】努力を怠らない【16】怒らない【17】ルールを尊重する【18】イライラしない【19】ごまかさない【20】執着しない【21】欲張らない【22】他者を気遣う【23】反省する【24】頼らない【25】威張らない【26】恨まない【27】おごらない【28】こびない【29】ひがまない…。そして【30】家族を愛する、である▼6日間ほど、実家でのんびりした。久々の「雪かき」で腰に張りが出た。かかりつけの鍼灸(しんきゅう)院でハリを打ってもらった。旧友宅での新年会に参加した、3家族6人の子どもが、すべて女の子だった。最年長の16歳で、本ブログ専属サッカー評論家ウメダの長女は、母校の1年生として、学年トップの成績を残した。数年ぶりに再会した高校1年時の恩師は、J1札幌の大ファンだった。カラオケでコブクロに挑み、あえなく散った。20年以上担当してもらっている美容師さんに「う~ん、やばいね」と、指摘された。72歳の母、兄夫婦と数日間過ごし、3歳のめいっ子が、地球の中心で元気いっぱい叫んでいた。皆、つつがなく、新年を迎えた▼休暇中、もう1冊、心にしみいる本と出会った。《未来をかえる イチロー262のNextメッセージ》(ぴあ刊)-。ベストセラーとなった《夢をつかむ イチロー262のメッセージ》(同)の続編である。5章構成で05年から07年にかけての発言をまとめている。あとがきに「(イチローは)ひとつひとつの言葉を大事にする詩人」とある。その感性を一部紹介する▼37「いつも、さらに、上を目指している姿勢がある。そういう人に、魅力を感じるんじゃないかなぁ」-。81「かがやいている人は、だれにも、対等なんじゃないですか。上とか下とかっていう価値観すらない」-。131「失礼ですけど、魅力のない人って、上から、モノをいってきませんか?」-。169「否定されて、反発してばかりでは、成長できないこともありますよね」-。170「失敗のなかには、可能性がふくまれています。これも、野球をつづけるおもしろさなんです」-。けだし、共鳴である▼40歳を越えながら、当たり前の行為が、なかなかできない。「30の誓い」は、上げ膳(ぜん)据え膳(ぜん)の1週間で、すでに風前のともしびである。いつか、イチローの境地に近づけるのだろうか。いつか、「この道」は、開けるのだろうか。デンマークのことわざに「卵と誓いはすぐに壊れる」とある。そうならぬよう、先達の皆さま、日刊スポーツの皆さま、読者の皆さま、友人・知人・家族の皆さまに、あたたかく、厳しい目で見守っていただきたい。あらためまして、謹賀新年。今年もよろしく、お願い申し上げます。