2007年9月26日伝世貧語
もう、死語の世界だろうか。80年代の流行語「しょうゆ顔」「ソース顔」を思い出した。先日、東京都内で日本バスケットボールリーグ(JBL)のイベントを取材した。新規参入するレラカムイ北海道のエース桜井良太は、元同僚のトヨタ自動車・渡辺拓馬と握手を交わし、カメラに納まった。「しょうゆ顔」の桜井と「ソース顔」の渡辺。対照的な顔立ちが、印象に残った▼10月1日は「しょうゆの日」である。しょうゆ発祥の地とされる、和歌山・湯浅町は10月下旬に「全国醤油(しょうゆ)サミット」を初開催する。北海道の本別市から熊本の芦北町まで、醸造所を有する国内19市町が参加する。湯浅町の担当者は「しょうゆを活かした町おこし、ネットワークづくりにつなげていきたい」と話す。日本の食卓に欠かせないしょうゆがわき役返上? でスポットライトを浴びる▼昨年2月、高校野球の取材で同町を訪れた。和歌山市から電車で30分ほど。紀伊半島の西部に位置する、人口1万5000人あまりのしょうゆのふるさとは、温暖な気候風土と相まって、美味と人情味にあふれていた。箕島高時代に甲子園春夏連覇を達成した中本康幸さんの案内で町内を巡った。室町時代から続く、しょうゆの醸造元が軒を連ね、往時をしのばせた。しょうゆのルーツであり、特産品の「金山寺みそ」は、具だくさんで甘辛く、酒のさかなにぴったりだった▼現在、国内で約1600社の醸造メーカーが年間約95万キロリットルのしょうゆを生産・出荷している。国民1人当たりの消費量は約8リットルになる。日本農林規格(JAS規格)で「こいくち」「うすくち」「さいしこみ」「たまり」「しろ」の5種類に分類され、「こいくち」が国内消費量の約80%を占める。しょうゆ技術センターのJAS審査員はしょうゆのよしあしについて「香り、味、色の三拍子がそろってないとダメですね。なかでも、香りが命です」と説明してくれた▼高校時代の思い出が頭をよぎった。当時のテレビドラマ「ミセスと僕とセニョールと」で主演の郷ひろみが目玉焼きにソースをからめ、おいしそうに食べていた。カルチャーショックだった。目玉焼き・卵焼きの調味料はしょうゆと決めつけていた。その後、朝食の目玉焼きを前に、しょうゆにすべきか、ソースに浮気するか、真剣に悩んだ。友人にリサーチした上で「ごはんのときはしょうゆ、パンのときはソース」に落ち着いた。決め手は米飯のうまみを際だたせる、しょうゆの香りだった、と記憶している▼バスケットボール界の「しょうゆVSソース」の結末は…。レラカムイ北海道は21日、JBLの前哨戦となるチャレンジカップ第1ラウンドで昨季王者のトヨタ自動車に挑み、86-97と惜敗した。司令塔の桜井は18ポイント9アシストをマーク。16ポイント1アシストのトヨタ・渡辺に一矢報いた。「移籍して良かったと思った」。地元北海道立総合体育センターに集まった4000人超の声援をエネルギーに転換した▼バスケットボールを題材にした漫画「SLAM DUNK」の最終話だった。高校総体初出場の湘北(神奈川)が2回戦で全国3連覇中の山王工(秋田)を下す、番狂わせを演じた。1点ビハインドの試合終了間際、しょうゆ顔? の桜木花道が逆転のブザービーターを決めた。山王工の監督は「はいあがろう。負けたことがある、というのが、いつか大きな財産になる」と、選手の肩を抱いた。世阿弥の教えに「ただ、返す返す、初心を忘るべからず」とある。JBL初参戦のレラカムイ北海道は10月11日開幕のリーグ戦に臨む。