2007年5月27日「コラボレーション」
ある日の午後、自宅マンションのベランダで、たばこをふかしていた。眼下に建つ築地本願寺から、聞き覚えのあるピアノのイントロが流れてきた。韓流ブームを巻き起こした人気ドラマ「冬のソナタ」の主題歌だった。条件反射的に、遠くを見つめ、白い歯をこぼしていた? 気がした。ふと我に返り、お寺とヨン様の意外な「コラボレーション」を探るべく、境内に足を踏み入れた。
まか不思議な空間だった。荘厳な本堂内が、ライブ会場と化していた。黄金色に輝く本尊「阿弥陀如来」や「親鸞聖人御影像」をバックに従え、女性アーティスト3人が、心地よいハーモニーを奏でていた。3曲目にチョン・ウソン主演の映画「私の頭の中の消しゴム」の日本語版テーマ曲「A moment to remember」を披露した。ヨン様より断然イケてるチョルスになりきり、愛らしく、いじらしいスジンをギュッと抱きしめた? 気がした。
5月20日、東京・築地本願寺で浄土真宗の宗祖、親鸞聖人の「降誕会(ごうたんえ)祝賀コンサート」が行われた。要するに「親鸞さんの834度目のお誕生会」だった。雅楽の演奏や高僧の法話に続き、女性ポップグループ「September」と男性ソウルユニット「PHONES」がステージを彩った。パンフレットを配布する女性職員から「イベントだけじゃなく、気軽に参拝にいらしてください」と笑顔で逆ナンされた? 気がした。
「コラボレーション」といえば、最近、ファッション界の「ダブルネーム商品」にはまっている。セレクトショップ「アメリカンラグシー」が別注するアメリカの老舗ブランド「リー」「ラングラー」「ディッキーズ」のパンツを愛用。先日はデザイナーズブランド「コム・デ・ギャルソン」とスポーツブランド「スピード」(5月から商標が変わった、らしい)による、コラボTシャツを衝動買いした。伝統と革新、洗練と機能美…。オリジナル商品の持つ「価値観」に現代風の味付けを施し、新たな魅力を引き出している。
とりわけ、デザイナーズブランド「ジュンヤ・ワタナベ・マン」の独創的なアプローチに心引かれる。近年は「ダナー」「ノースフェイス」「ラコステ」「モンクレール」など歴史あるアウトドアブランドおよびスポーツブランドとタッグを組み、ざん新なコレクションを展開している。07年春夏ラインで「チャンピオン」「リーバイス」「ナイキ」とコラボ。チャンピオン独特のスエット素材を料理したライダースジャケット、リーバイスのエッセンスを巧みにアレンジしたセットアップスーツは、秀逸である。
今季のプロ野球パ・リーグ開幕シリーズ、ロッテ対日本ハム2連戦を取材した。雨天コールドゲームとなった第2戦終了後、木元邦之内野手の素顔に触れた。足早に帰りのバスに向かう中、野球の話を持ち出す前に「(オープン戦で札幌)ドームにいましたよね」と機先を制された。さらに「ジュンヤのダウン着てたでしょう」と突っ込まれた。数分間のファッション談義。背番号10は「ジュンヤのダブルネームはいいですよね。あのライダース? 買っちゃいました…」と明かした。
開幕8試合終了時で27打数1安打、打率3分7厘と不振の木元は4月13日の楽天戦後、2軍での再調整を余儀なくされた。開幕前、日刊スポーツ評論家の岩本勉氏は「サードの木元くんに元気でいて欲しいんや。去年、おととしと泥水飲んでる。だからこそ、リーダー格として台頭するレベルに早くなってもらいたいんや」と期待していた。ポスト小笠原の最右翼が、雌伏のときをエネルギーに転換する。
木元の出身校、龍谷大は浄土真宗西本願寺の「学寮」を起源とする。建学の精神は(1)平等(2)自立(3)内省(4)感謝(5)平和。宗祖親鸞聖人の教えである、らしい。日本ハムは5月26日現在、交流戦負け知らずの4連勝を含む6連勝と調子を上げている。若手の台頭に加え、中堅、ベテランが持ち味を発揮。投打の歯車がかみ合い、絶妙な「コラボーレーション」で白星を重ねている。
チャンスは「平等」に訪れる。26日のヤクルト戦で1軍復帰した木元は8番・三塁で先発出場。3回の第1打席で開幕戦以来26打席ぶりに安打を放ち、反撃の起点となった。真っ黒に日焼けした天才肌のスラッガーが、復活ののろしを上げた、気がする。