2007年3月 5日日本ハムの「13コンビ」に期待
野球日本代表の星野仙一監督、大相撲の高見盛、安倍内閣の麻生太郎外務大臣…。縁もゆかりもない? 3人の著名人に共通の愛読書がある。劇画「ゴルゴ13」である。
02年10月に第1巻発行の文庫版(リイド社)は、2月発売号で100巻を突破した。表紙の帯に顔写真付きで登場した麻生外務大臣は「これほど国際情報に通じた作品があるだろうか。俺は知らない」と、ハードボイルド調のコメントを寄せている。一国の大臣を絶賛させる超A級のスナイパー(狙撃者)、ゴルゴ13恐るべし、である。
「ゴルゴ13」は68年、漫画誌「ビックコミック」(小学館)の創刊号に初登場した。連載期間39年あまり。最新号で469話掲載の「長寿作品」であり、単行本および関連書籍で累計2億冊以上発行の「人気作品」である。
主人公の通称ゴルゴ13、自称デューク東郷は、冷戦の終えん、ベルリンの壁崩壊など、激動の時代を乗り越え、寡黙に仕事をこなしてきた。本名、国籍、年齢不詳、住所不定、職業スナイパー。ルールと報酬に見合った依頼ならば、99%以上の成功率で任務を遂行する。各国の要人、大富豪から一般人まで、コンタクトは後を絶たない。
作者のさいとう・たかを(70)は日刊スポーツの1月29、30日付紙面で「ゴルゴ13」の美学を語っている。
「男は我慢ということを実践していることだ。喜怒哀楽を表さないというのは、その我慢の1つに過ぎない。笑ったり怒ったり、それは仕事の邪魔だ」。
「『おれの後ろに立つな』と言い放つのも、それだけ自分で生きようとする者の厳しさだ。臆病にならざるを得ない」。
「ゴルゴはオレの言うことを、よく聞く名優だが、どこかオレに似る。オレにも彼にも物欲がない」。
「最後まで勝ち抜く人間はみんな、勝負は脳みそでしている。しょせん脳みそがなければ成功しない」。
冷静沈着、神出鬼没、用意周到、完全無欠…。たぐいまれな精神力と強じんな肉体を兼ね備え、世界各国の言語を操り、比類なき戦闘能力を秘め、個人資産数兆円とされる、ゴルゴ13の魅力は尽きない。
ビッグコミック創刊から数年後の70年代前半だった、と記憶している。プロ野球巨人のレプリカユニホームを購入する際、父親に希望の背番号を問われ、迷わず「13」と答えた。理由は単純だった。当時最強、V9真っただ中の巨人に2人のスーパースターがいた。長嶋茂雄と王貞治。ミスターの「3」と世界のホームラン王の「1」。3+1の「13」で並び立つ両雄に敬意を表した。
当時、3歳年上の兄は「赤い手袋」で人気の1番打者、柴田勲の「7」を選択した。30数年後のこの春、日本ハムの沖縄・名護キャンプ取材時になつかしい名前を耳にした。淡口打撃コーチがV9時代の巨人打線を引き合いに1、2番打者の役割を説明してくれた。
「柴田さん、高田さん(2番)の存在は大きかった。2番は特に重要。野球をよく知っているか、臨機応変に状況判断できるか、いかに自分を殺せるか…。バントも右打ちも勝負強さも求められる。ファウルを打つのも仕事の1つ。相手投手はいやがるでしょ」。
そしてこう付け加えた。 「大砲はつくれないけど、1、2番はつくれるからね」。
44年ぶりの日本一に輝いた昨季、日本ハム打線に待望の1、2番コンビが誕生した。森本稀哲外野手と田中賢介内野手である。昨季オールスター初出場でブレークした森本は、引退した新庄氏から背番号1を受け継ぎ、今季チームの顔となる。打率3割1厘、パ・リーグ最多の34犠打をマークした田中賢は、日本代表入りを熱望する。
現役時代に巨人、近鉄で活躍した淡口打撃コーチは「可能性はある。近づきつつあるかな」と、森本・田中賢を柴田・高田の史上最強コンビに重ね合わせる。そういえば…。背番号1の森本と背番号3の田中賢。ON砲ならぬMTマシンガン。日本ハムの「13コンビ」が07年シーズンのカギを握る。ゴルゴ13同様に狙った獲物=連覇は逃さない、はずである。