2007年2月 5日時代を象徴する卒業ソング
札幌市民会館の「卒業ソング」は豪華セッションによる「I Shall be released」だった。1月31日に「札幌市民会館 最後の日」と題するコンサートが行われた。山崎まさよし、佐野元春、奥田民生ら8組の人気アーティストが、リレー形式で登場した。フィナーレで全出演者が顔をそろえ、ボブ・ディランの名曲を奏でた。さながら同会館大ホールの「卒業式」だった。
急きょ駆けつけた忌野清志郎のパワフルなステージにしびれた。正直、感動した。RCサクセション時代の盟友、仲井戸“CHABO”麗市をバックに「トランジスタ・ラジオ」「スローバラード」「雨あがりの夜空に」を披露した。腰をひねり、足を振り上げ、シャウトした。スパンコール仕様のマントに真っ赤なスーツ。黄色のブーツにわざわざカタカナで「ブーツ」と印字していた。55歳。ちゃめっ気たっぷりな演出にエンタテインメント精神を垣間見た。
約30年前の春にタイムスリップした。中学3年時に同会館大ホールのステージに立った。同級生と即席バントを組み、予餞会(3年生を送る会)のオープニングアクト? を務めた。全校生徒を前にサザンオールスターズの「気分しないで責めないで」とディープ・パープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」を演奏した。初体験のスポットライトに目がくらんだ。心臓をばくばくさせながら、声を張り上げ、ギターをかき鳴らした。にきび顔の15歳当時が頭をよぎった。
卒業時の思い出は、なぜか心に残る。オリコンの「定番の卒業ソング・ランキング」(06年3月調べ)によると、上位5曲は【1】贈る言葉(海援隊=79年)【2】卒業写真(松任谷由実=75年)【3】卒業(尾崎豊=85年)【4】My Graduation(SPEED=98年)【5】さくら(森山直太朗=03年)。さらに【9】春なのに(柏原芳恵=83年)【14】蛍の光=不明)【20】なごり雪(イルカ=75年)などが続く。時代を象徴する卒業ソングは決して、色あせない。
同ランキングで8位にランクインした「桜」(コブクロ=05年)に心ひかれる。昨春、ある高校の卒業式を取材した。卒業生の退場シーンで流れ、耳に残った。切なく、流れるようなメロディーと黒田俊介の優しく、力強いボーカルが、胸に響いた。学舎を離れる18歳の涙と笑顔を温かく、包み込んだ。作詞・作曲の小渕健太郎による、生きるための応援歌…。コブクロはオリコンの「卒業式で歌ってほしいアーティスト・ランキング」(同)で1位に輝いている。
また、旅立ちの季節が巡ってくる。この春、道内で約10万7000人の中高生が卒業式を迎える。卒業生の数だけ、思い出が生まれる。送る側にとっても、忘れられない1日となる。1月26日に他界した知内高野球部の山本鉄弥前監督(享年60)は、その日を心待ちにしていた。末期の肝臓がんに冒されながら、病床で「どうしても卒業式に出たいんだ」と言い続け、帰らぬ人となった。今年度限りで定年退職する予定だった。
知内高の卒業式は3月1日に行われる。最後の教え子たちの晴れ姿、そして最後の卒業ソング…。天国で見守る山本前監督の柔和な笑顔が、目に浮かぶ。