2007年10月 6日加賀武見調教師はやはり「闘将」
1度取材した人はほとんど忘れないが、抱いていたイメージとのギャップが大きい人というのは強烈に印象に残る。中央競馬の元トップジョッキー、加賀武見調教師(70)もその1人。騎手時代に取った異名が「闘将」。ガッツにあふれ妥協なき騎乗ぶりからそう呼ばれたのだが、馬を下りても怖い印象があった。先輩記者からは「昔は、怒ったら近寄れないほど怖かったね」とも聞いていた。
でも、実際は「やさしい先生」「いい人」(別に怒らない人=いい人という意味ではないが…)だった。初めて取材したのは91年夏。こちらは記者としてペーペー。加賀師といわば怖いのイメージが頭から離れない。おまけに見た目もちょっと、いかつい。その年はほとんど話しかけられなかった記憶がある。気兼ねなく取材できるようになるまで数年かかったが、話を聞くと実に懇切丁寧に馬の状態など説明してくれた。調教スタンドでコーヒーをごちそうになった際は、わざわざ先生が私のカップまで運んで来てくれた。
9月に70歳になり、来年2月に調教師としても定年を迎える。そのため、北海道開催は先週9月29、30日がラストウィークだった。先週半ばの朝、話を聞いていると、「あ、時間だ。これ見ないとな。ハハ、いいか?」とやんわりと遮られた。師が笑顔で見入っていたのはNHK朝の連続テレビ小説。ハハ、好々爺(や)みたいで、「闘将」というイメージとはどうにもダブらない。
まあ、一方的な面ばかりを取り上げてきたが、厳しい表情だって見せる。「われわれは歌舞伎でいえば役者。芝の長距離戦なんて、騎手と馬の一体感をアピールできる舞台だった。今の競馬はそういうのも含めて見せられる騎手、競馬が少なくなってきたのが残念だね。人がなんと言おうと、昔の馬の方が強かったよ」。往年のトップジョッキーとしてのプライドを感じさせてくれたこの言葉、やはり「闘将」です。