このページの先頭

北海道発・記者ブログ

2007年1月 3日ディープはつらいよ

 言葉をしゃべることができたら、なんと言うのだろうか。「いい子を残すために励むぞ~」か? それとも「気持ちイイ~」か? いや、「男はつらいよ」ではないだろうか。ディープインパクトのことである。2月から種牡馬生活に入る。シンジケート総額は国内史上最高の51億円、1株8500万円×60株。本株分の60頭に、「余勢」と呼ばれる1年限りの種付け権利が加わり、相当数の種付けをこなす。

 近年の活躍馬の初年度の種付け頭数を見ると、04年シンボリクリスエス216頭、05年キングカメハメハ244頭、06年ゼンノロブロイは216頭と、いずれも200頭超の牝馬の〝お相手〟をしている。この数イコール種付け回数ではない。人間でも百発百中とはいかないでしょう。受胎しない場合は、再度チャレンジとなる。200頭以上をこなす馬なら、相手の延べ頭数は300頭を超えることも珍しくない。

 馬の交配シーズンは、2月から7月中旬まで。単純計算では5カ月(150日)で300頭、1日平均2頭になる。最近でこそ、あまり気にされなくなったが、馬産地ではかつて「6月生まれはダービーを勝てない」というジンクスがあった。種付けから出産までの期間は11カ月。だから、種付けはなるべく6月までに済ませたい。実際、7月に入ってからは大半が「再チャレンジ組」だ。というわけで、人気種牡馬は、1日4~5回も、”お務め”をしなければならない。

 1日に4頭も5頭も相手にするって、こりゃあ、すごいこと。若い女性ばかりなら頑張る気にもなろう(あくまで一般的な男の一般的な感想です)が、そうはいかない。馬の年齢は、4を乗じた数が人間の年齢といわれる。15歳の牝馬なら、人間ではいえば60歳…。「今日はあまりしたくない」と思っても、発情した牝馬が来れば、”立ち”上がらなければならない。

 馬の世界での”いい仕事”は、早いこと。「じっくり時間をかけて」はバツ。ただ、体高1・6~1・7メートルの牝馬に乗っかるんだから迫力はある。昔、有名な女優さんが馬の種付けを見て腰を抜かしたという話もある。私が初めて種付けを見たのは十数年前。現役時代に人気があったスターホースの種付け。緊張する中、「ブヒヒーン」という牝馬のいななきに、妙な妄想を覚えたものだ。

 「競馬」イコール「ブラッドスポーツ」といわれるように、優秀な血を後世に残さなければならない。いろいろ書いてはみたが、そもそも人間に置き換えるのは馬鹿げた話だ。でも、ディープは競馬好き以外にもファンが多いので、あえて取り上げた。厳しい種牡馬の世界を生き抜くディープの成功を祈って、2世に期待しましょう。

大滝 貴由樹(おおたき たかゆき)

 北海道新ひだか町(旧静内町)出身。90年北海道本社に入社。編集部、総務部を経て、再び編集部に。中央競馬を中心にギャンブル全般を担当。現在は出稿デスクを務める。1966年4月生まれ。

このページの先頭へ