2007年1月14日1番うれしくて1番ショッキングな1勝
今年4月からホッカイドウ競馬の調教師としてデビューする岡島玉一師(51)は「97年の道営記念が31年間の騎手生活で最高のメモリアルレース」と語る。
道営記念で史上最多5勝を記録した名手。騎乗するのさえ難しい伝統の大一番での記録だけに重みがある。その97年道営記念の勝ち馬は人気薄のマサノチャーミング。凡走続きですでにピークは過ぎたと思われていた。当日は極端な不良馬場。5番人気、紅一点のチャーミングは最後の直線、人馬とも泥まみれになりながら強烈な末脚で牡馬を蹴散らし、1着でゴールした。
このレースの発走とほぼ同時刻、入院加療中だった長女リサさん(享年9)が息を引き取った。急性骨髄性白血病だった。妻ひとみさんの気遣いで、父はレース終了まで訃報(ふほう)を知らなかった。亡くなる前日には、話すこともできなくなっていたリサさん。それでも病床で人さし指を1本立て、父の勝利を願っていたという。
周囲への配慮に感謝しつつ「数日後に控えていたクリスマスで、プレゼントを贈れなかったことが今も悔やまれる」という岡島師。
「あとで後悔するようなやり方だけはしない」を、厩舎(きゅうしゃ)の、そして自身のモットーにするという。
現役時代には「剛腕、追い込みの玉ちゃん」とファンや関係者に慕われた。最年長ながらパン1個の重みにもこだわり続け、軽量馬に騎乗し、結果を出してきた。生粋の職人が選んだ新たなスタートに、心からエールを送りたい。