2007年7月12日下柳投手と手羽先
阪神下柳剛投手が6日、史上最も遅い39歳で100勝に到達した。ワイルドな風ぼうで人気の同投手。このニュースを見て9年前、たった一度だけ、並んで食事をしたことを思い出した。場所は名古屋の居酒屋。名物、手羽先のから揚げがおいしい店だった。
開店直後の夕方5時、客のまばらなうちに私は店に入った。瓶ビールと手羽先2人前を頼んでカウンター中央に陣取る。一時間後ぐらいだったか、体格のいい男性2人組が来店した。私の隣にはヒゲともみあげを蓄えた「コワモテ系」、その向こうには目が大きい「ちょっぴりオリエンタル系コスモ」が座った。
数分後、仲間の男性がもう1人合流。店員の指示でやや左にずれると、さらに4人目が加わった。「どうもすんませ~ん」。4人目はとても腰が低く、声が甲高くて関西芸人のような口調だった。私はさらに左へ移動。入店時は堂々とカウンター中央に居座っていたのが、いつの間にか一番左端で、壁に半分もたれるような格好で食事をしていた。
私のすぐ右から、1メートル80を超える大男がずらり4人並んだ。当時日本ハムの岩本勉投手、下柳投手、芝草宇宙投手、上田佳範外野手。下柳選手が野太い声で注文する。「とりあえず手羽先50人前」。妙な脅威を感じた。野球選手と並んで食事をしたのはこれが初めて。面識はない。早く店を出よう…そう思った私の前に追加注文した自分の手羽先とビールが運ばれ、出るに出られない状況になってしまった。
真横にいた「ガンちゃん」こと岩本選手に恐る恐る話しかけてみた。「日本ハムも名古屋で試合あるんですね…」。「いやぁ、近鉄の主催試合が名古屋で行われることがあるんですわぁ。応援よろしくお願いしますぅ」。結局、これが私のプロスポーツ選手への“初取材”になった。下柳選手はひたすら食べていて、直接話す機会はなかったが、あのイカツイ顔を見ると、なぜか今でも皿いっぱいに並んだ手羽先を思い出す。
ちなみのこのときの近鉄とのナゴヤドーム3連戦で日本ハムは3連敗。芝草投手が初戦に先発し5回2/3を投げ6失点、2戦目先発の岩本投手も8回5失点とそろって敗戦投手になった。3戦目に3番手で登板した下柳投手も1回1/3を投げ1失点と、煮え切らない結果に終わった。
日本ハム選手には珍しい名古屋遠征。試合前夜の景気付けに食べたであろう、おいしい「手羽先50人前パワー」はすぐに効果が出なかったらしい。それから8年後、下柳選手以下4選手は既にチームを去っていたが、同じ名古屋で日本ハムが44年ぶりの日本一をかけた熱い戦い繰り広げた。パリパリッと揚げられた手羽の小さな「翼」がようやく羽ばたいた?のだろう。