2007年5月19日焦らずじっくり
1歩づつ、ゆっくりでも着実に事を成し遂げることの素晴らしさをあらためて知った。
日本ハム田中幸雄選手が17日、史上最も遅い実働22年目での2000安打を達成した。03年9月に「1900」になってから3年半。1シーズンで200安打放つ選手がいることを思うと、幸雄選手のスローペースは際立っている。
我が家にも、ある目標に向かい、ゆっくりだがひたむきに頑張っている男がいる。今月で8カ月を迎えた長男が、つかまり立ちをするようになった。親の勝手なエゴで無理やり、歩行練習をさせてみた。両手を持って右、左、右、左…左、ズルズル…。足を前に出すことは分かってきているようなのだが、2、3歩進むと途中で足が出なくなって前のめりになる。体を支えることができないから手を離すと倒れてしまう。
「無理させないで」と妻にしかられた。半年早く生まれた弟の長男は、6カ月目で歩き出した。超ハイペースで進む“ライバル”の成長に、親の方が焦って、強引に歩かせようとしていた。息子にとっては大きな迷惑だろう。ひきづられながら出す1歩が、きっと、ものすごく大変な動作なのだから。
2000安打のプレートを掲げ恥ずかしそうに微笑む「ミスターファイターズ」の姿が、不格好だけど必死で前に踏み出そうとする息子と重なった。先日、一足先にヤンキース松井選手が大台に到達した。こちら実働15年目。幸雄選手は達成までに7年も遅れをとってしまった。だが、レギュラーだった87年から02年まで、ケガで戦線離脱した92年を除くと、15年で1831安打。1シーズン平均122安打を放っていたことになる。コンスタントに続けていれば松井選手と大差ない17年目前後で到達するペースだった。代打起用が増えたここ4年の厳しい状況が響いて、記録への曲線も横ばいになっていった。
忍び寄る肉体の衰えと「引退」の2文字。名球会史上最も長い“陣痛”に耐えてつかんだ大記録達成に、松井選手とは違う輝きを見た気がした。つまずいたり、回り道しながら目標にたどり着いた方が、ちょっぴり感慨深かったりすることもある--。
いつか我が子も歩ける日が来る。誰より遅くても、その日まで焦らずじっくり待って、できたときには“よくやった”と目一杯ほめてあげようと思った。