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北海道発・記者ブログ

2007年4月22日ハートフル

 会社の先輩に「君はなんてハートフルな男なんだ」と言われた。額の話だ。生まれつき富士額だったが、20代後半から少しづつ額の左右が浸食されて「M字」に変わった。30代に入りMの“角”が取れ「ハートフル」=写真=になった。アニメ「ドラゴンボールZ」に登場するサイヤ人「ベジータ」というキャラクターの額に親近感をおぼえるようになった。

 遺伝だろう。父も額の両脇の分け目から“後退”していった。還暦を越えた今は両サイドに気持ち程度蓄えたほか、頭頂部は数えるほどしか残っていない。小学生のころ、家にこんな電話がかかってきた。増毛育毛AN社から“お宅の電話番号をいただけないでしょうか”という申し出だった。実家の電話番号の下4ケタが「2323」。同社からは番号との引き替えに、どこで調べたかは知らないが、父の頭皮への施術をサービスするという見返り案まで出してきた。父はいらっとした顔を押し隠すように「結構です」と受話器を置いた。怒りで頭のバーコードが波打っていた。その光景を見ていた母親と私たち兄弟3人は苦笑い。当然、自分が同じ道をたどるとは想像だにしなかった。

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 父方の親戚で私より年上の男性は、伯父も従兄弟もみな30代半ばには明らかに“砂漠化”が始まっている。先日、祖母の葬儀で撮った親族一同の写真を見て、記者の額のことも含め実に気の毒になった。直系の親類に「白髪系」はゼロ。そして“クリリン”タイプもいない。少なからず残してはいるが、全員が「ちょっと来てるねぇ」みたいな中途半端ぶりがたまらかった。自分が食事しているときに母親に撮られた1枚などは、下を向いてる分、額のスペースが際立ち、気分が悪くなった。薄くなっていく父の頭を冷笑していた私の兄弟も似たようなものだ。2歳上の兄も粘っている方だが前髪でフェイクした完全な予備軍。3歳下の弟は逆に短髪でカモフラージュしているものの、生え際の元気さは徐々に失いつつある。

 2月に急死した米国の元有名モデル、アンナ・ニコル・スミスさんの娘ダニエリンちゃんの親権をめぐる問題で、バハマの裁判所が10日、写真家ラリー・バークヘッドさんが父親だと認定した。石油王の遺産5億ドル(約595億円)をめぐる“パパ争い”は世界の注目を集めていた。宝くじが当たった人みたいに「やった!」と両手を突き出し喜ぶバークヘッドさんの姿は本紙社会面でも大きく掲載された。この写真を見て実家の電話番号が妙に気になった。いまだにAN社は電話番号と引き替えに増毛サービスをしてくれたりするのだろうか。実家の電話番号の下4ケタだけは今も父のかなわぬ願いをこめて「フサフサ」でいる。30年後ぐらいに永野家の兄弟間で、この電話番号が意外な「遺産」騒動を引き起こすかもしれない。勝ち取った誰かが焼け野原のようになった頭の上に「2323」の札を掲げ「やった!」と喜ぶ…。

 長崎、町田と拳銃による殺人事件が続いた。怖い世の中になったものだ。街頭で人が簡単に殺される。頭髪をめぐる醜い争いだけは避けたいところだ。いずれみんな老いていく。「ハゲだ」「偽装だ」と言い合うぐらいはまあ愛嬌としたいところだ。お互いハートフルに。

永野 高輔(ながの たかすけ)

 茨城県水戸市出身。06年北海道本社に入社。編集部東京駐在で整理業務担当。学生時代は両親が指導者だった影響でフェンシングに熱中。競技歴15年。00年富山国体出場。好きな食べ物は札幌・カリー軒のハンバーグカレー。1973年7月生まれ。

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