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北海道発・記者ブログ

2008年1月29日福士にまた挑戦してほしい

 日本人はマラソンが大好きだ。世界でも最も好きな国民なのではないだろうか。シドニー五輪の高橋尚子、アテネ五輪の野口みずきの両金メダリストは国民的ヒロインだ。テレビでも中継は軒並み高視聴率を記録する。レースという意味では、派手な動きもなく、驚くような番狂わせがあるわけでもないが、2時間強を飽きもせず見てしまう。

 その2時間強に我々は何を見ているのだろうか。選手たちの息づかいなのか。レースの駆け引きか。いや、マラソンというスポーツそのものだけではない。その2時間に選手であったり、時には自分であったり、他人であったり、いろいろな人の人生を投影させているのだろう。

 だからドラマチックな展開になればなるほど、盛り上がる。1月27日に行われた大阪国際女子マラソン。福士加代子が4度も転倒した末に、フラフラになりながらゴールした。壮絶なフィニッシュにテレビの前にくぎ付けになった人も多いはずだ。彼女のゴールを目指す姿勢に感銘を受けた人も多いはずだ。

 しかし、どうしてあのようなゴールになってしまったのかまでなかなか考えが及ばない。過酷なスポーツだけに本来は1年も2年もかけて準備するはずが、福士の場合はわずか1カ月。しかも、30キロ以上を走る練習しかしていなかった。これで結果を出せばマラソンの常識を覆しただろうが、ギャンブルに失敗した。最後は脱水症状を起こしていたようだ。一歩間違えば選手生命にも影響を及ぼす重大な事態になったとしても不思議ではない。

 棄権が相次いだ今年の箱根駅伝もそうだが、今回の福士のようなアクシデントに襲われながらも、俗に言う根性走りするのを礼賛する風潮があるような気がしてならない。そこには明らかな練習不足だったり、不調の選手を無理に出場させたりと、何らかの原因があるものだ。

 心配なのは福士の肉体的ダメージより精神的なダメージ。北京では5000メートルか1万メートルでの出場を目指すことになるが、次のロンドン五輪ではもう1度マラソンに挑戦してほしい。次こそ所属先のワコールは、福士が万全の状態でレースに臨めるよう、しっかりとした準備をする責任があると思う。ロンドンまでは4年。時間はある。ギャンブルは必要ない。

小林 明央(こばやし あきお)

 北海道旭川市出身。92年北海道本社入社。主にサッカー、冬季スポーツを担当。五輪は02年ソルトレークシティーと06年トリノを現地で取材。2大会連続で五輪に行きながら、1度も日本人のメダル獲得を見ていない、日刊スポーツでも唯一の記者。1969年2月生まれ。

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