2007年1月15日「ベッカム飼い殺し通告」を出したカペッロ監督
14日付け日刊スポーツで「ベッカム飼い殺し通告」という見出しの記事が躍りました。要約すると米MLSロサンゼルス・ギャラクシーへの移籍が決まったRマドリードのベッカムが、練習でチーム本隊とは別メニューでの調整を命じられ、更に今後の試合での起用を拒まれたというものでした。
この非情な通告を出したのがRマドリードのカペッロ監督。ACミラン、ローマ、ユベントスなどで指揮を執り、セリエAで7度優勝した世界的名将です。それでも相手がベッカム。1人で300億円動かす男ですよ。普通の人なら世界のスーパースター相手にビビってしまい、こんな仕打ちはできません。でもあの監督ならあり得るかなと思ってしまいました。

記者は00年に約1カ月、ローマを取材しました。当時所属していた元日本代表MF中田英寿氏を追いかけるためでした。その時の監督がカペッロでした。まず、顔つきが怖い。写真を見てください。この不敵な面構え。闘犬のようです。初めて顔を合わせ、目が合ったときに“あそこ”が縮み上がってしまった記者を誰が責められましょうか。ローマ滞在中に笑った顔を見たことは1度もありません。
やることも徹底しています。普段の練習をマスコミに公開するのは、最初の15分間。それもクラブハウスの屋上に連れていかれ、ず~っと奥にいる米粒のような選手のフィジカルトレーニングを見るだけ。ボールを触り始める時間になると撤収を余儀なくされます。試合前日になると完全非公開。練習が終わるまでプレスルームに「軟禁状態」にされ、少しでも変なところをうろつこうものなら、間違いなくスパイ扱いされます。
それでも週に1度は監督会見が行われ、直に質問することができます。記者の質問はただ1つ。中田氏についてです。しかし、当時の中田氏はトッティの控え。ベンチさえ外れる試合もありました。そんな時のカペッロ監督の日本人マスコミへの態度といったら。江原啓之さんじゃなくても、いとも簡単に最上級の「聞くなオーラ」を発見できるでしょう。
そのぐらいの強烈なカリスマ性を発揮しないとビッグクラブを率いられないのも事実です。ACミラン時代はバッジョを冷遇しました。同様にRマドリードでもベッカムやロナウドに定位置を与えませんでした。本当は心優しい人物なのかもしれません。家庭ではとびっきりの笑顔を見せるかもしれません。それでも、ひとたびピッチに立てば、自分を押し殺し、非情な通告、采配で権威を保ちます。
そういえば、カペッロ監督は96年シーズンにもRマドリードを優勝に導きました。しかし、守備重視のサッカーにサポーターからは「つまらない」とやゆされて1年でイタリアに戻りました。心を鬼にしてチームを変革しても支持されない時もある。監督というのはつくづく因果な商売なんです。