2007年12月09日

紛争から12年ボスニアの“今”描く

「サラエボの花」(ボスニア)

 正直、ボスニア紛争っていつごろだっけ、どう終結したんだっけという状況でした。サッカー日本代表前監督のオシム氏が、倒れる3日前に、生まれ育った地区を舞台にした今作にメッセージを寄せていたというので調べてみると、紛争は92~95年。学生で遊んでばっかりいたころです。

 作品は紛争から12年後の今。戦争シーンがあるわけでも、過去の記憶の忌まわしい残像が差し込まれているわけでもありませんが、雪がちな灰色の空や景色、弾丸の跡が残る建物を見ていると、心底、寒々しくなってくるような。さらに「父は殉教者よ」と叫ぶサラや、「41人クラスの同窓会に11人しか集まらない」と嘆くエスマの友人の言葉が、直接的なシーンがなくても、戦争は近くにあったこと、まだ生々しいことを十分に感じさせるのです。物理的にも、精神的にも。

 母娘の自宅は温かさに満ちている…ように見えるのですが、そこにも危うさは潜んでいます。ささいなことで互いに口を閉ざしたり、反発し合ったり、見ていてもどかしくて、危なっかしく、強く思い過ぎて傷つけ合う感じが痛々しくて。

 それでも、最後には本当に小さな小さな希望を感じさせてくれ、終わってみると、いくつかのシーンがずーっと心に引っ掛かっているような、そんな作品です。

 わたしと同い年の女性監督が体験や記憶をたどってつくったという作品。何がどう違って、自分の今のこの環境があるんだろうと、思わずにいられません。【小林千穂】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)

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