2006年06月24日
ツッコミどころ満載の「Bックリ級」
「ウルトラヴァイオレット」(米)
「B級」の定義が変わってきている。低品質、低価格な「Bンボー級」的蔑称(べっしょう)が、いつの間にか褒め言葉として使われ始めた。例えば、彦摩呂が下町の定食店でメンチカツを食べて「たった500円でフルオーケストラのようなハーモニー」と表現するようなB級グルメ。超一流じゃないんだが、楽しまそうとする心意気があっぱれな「Bックリ級」。ミラ・ジョボビッチがナイスボディー全開で暴れ回ることに特化した、このSFアクションも愛すべきB級映画だ。
冒頭30分のアクションが素晴らしい。重力制御装置でタテヨコナナメに近未来都市をバイク爆裂。超人間のヒロイン強過ぎ。相手弱過ぎ(ショッカー戦闘員なみ)。動き速過ぎ。独創的な空想武器で人殺し過ぎ。新体操を取り入れたガンファイトで、5秒に1度のキメポーズはカッコ付け過ぎ。「過ぎたるは及ばざるがごとし」などクソクラエ。メリハリよ、さらば。少年との母性を描いたドラマ部分が、ものすごく眠いが気にしない。心の広さもB級を楽しむコツだ。
そもそもジョボビッチ自体にナイスなB級感が漂う。身長173センチ(和田アキ子と同じ)の体を張った開き直り。大量ゾンビ虐殺映画「バイオハザード」は、彼女のおかげで青少年に悪影響必至な青少年必見作に仕上がっていた。超大作「ジャンヌ・ダルク」では輝いていなかった。青少年は見ても見なくてもいいA級映画だった。特化されてこそのジョボビッチなのだ。
ちなみに製作費は約30億円。ハリウッドならば標準的な額だが、邦画なら超大作級。だからBンボーというワケではない。ツッコミどころ満載のBックリが楽しい。この漫画のごときSFを彦摩呂なら、どう表現するだろうか。【高田博之】
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2006年06月17日
不完全燃焼!?寅さん感覚で続けて
「トリック 劇場版2」(日)
俳優にとって、コメディーセンスは生まれつきのもの。文字(台本)を笑いに転じる喜劇では、きっちりとそのセンスが出る。6年前に深夜ドラマからスタートしたTRICKの成功は、仲間由紀恵と阿部寛のセンスを見抜き、キャスティングした時点で決まっていたのだと思う。
特に今回は阿部寛におんぶにだっこの印象で、阿部もそんな台本を全力で受け止めている。誰よりも激しくゆーとぴあのギャグ「よろしくね」をキメ、ブリーフ一丁で海底で船を担ぎ、北斗の拳の自虐ギャグまで披露する。
TRICKスタート当時、彼はテレ朝の番組対抗まばたき我慢選手権で2分以上目をむいて圧勝していた。どんな場でもベストを尽くすオツな骨太男は、今や「ドラゴン桜」「空中ブランコ」など観る人に強烈な印象を残す硬軟自在なトップ俳優になった。それは「ごくせん」や、大河ドラマ「功名が辻」の主役を張る仲間由紀恵も同じ。マニアには早くも「期待はずれ」の声も聞かれるが、2人の千両役者のブレークの原点を見るだけで十分に楽しく、ゴージャスだ。
飽きないけれど、小ネタの寄せ集めという印象はぬぐえない。いつものサブキャラたちも主役とからまない。強引な企画や俳優のスケジュール調整などの裏事情の方が「まるっとお見通し」になっている。私にとってのTRICKの神髄は、笑いのスパイスで際立たせたこの世の暗さ。第1シリーズのミラクル三井の回(知らない人、すみません)なんてそのバランスが絶妙だったけれど、今回はお笑い上等のドタバタに偏った作り。奈緒子&上田コンビのビミョーな関係も、4年前の劇場版ラストの方がグッときた。不完全燃焼なので、今回が最終章なんて宣伝は忘れて、寅さん感覚で続けてください。【梅田恵子】
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2006年06月10日
「超あっさり」でもまとまりあり
「ポセイドン」(米)
名作&元祖パニック映画「ポセイドン・アドベンチャー」(72年)のリメークと聞けば、オリジナルより面白いハズがない、ズタボロにされちゃったんでしょ、と決め付けていました。でも「超あっさり風味」の新感覚パニックムービーに仕上がって、ある意味、まとまってました。
人情、恋愛、親子愛はいらなかったみたい。1時間38分ですから。そりゃあ、波に襲われて、転覆して、脱出して…なんてやってたら、そんなものはいらないですよね。足手まといになりそうな人や、ギャーギャーとうるさい人は、どんどん切り捨てられていく(つまり死んでいく)。そこまで割り切っちゃいますか。
オリジナル版では、ジーン・ハックマン演じる牧師が「全員で脱出するんだ」と力説して、死者が出れば、やるせなさに怒りモード全開だったのに、こっちは「助かるメンバーだけで十分でしょ」みたいな。見てるこっちだって「こんなもんでしょ、人間は」ってな感じになるわけです。「-アドベンチャー」と「タワーリング・インフェルノ」(74年)みたいに、トラウマになるくらい怖い映画よりはいいかもしれません。
脱出グループのリーダー、カート・ラッセルの役どころは消防士出身の元ニューヨーク市長。ん? 消防士ってことは「バックドラフト」(細かく言えば、舞台はシカゴでしたが)から、市長になって、ポセイドン号に乗っちゃったわけか。カート、偉くなったんだね、君の熱い消防士時代が懐かしいよ。何だかつながってる感もあったりして、ちっちゃく楽しめます。【小林千穂】
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2006年06月03日
整理できないまま怒とうの一生が終わる!?
「嫌われ松子の一生」(日)
分類が難しい。女性の愚かさ&したたかさは「風と共に去りぬ」的で、終わりなき不幸スパイラルは「フランダースの犬」を思わせ、一見健全なファンタジー歌曲は「メリーポピンズ」みたいだし、リピート感は片平なぎさの2時間ドラマ絶壁シーンで、理詰めな謎解きは松本清張チック、シュールな笑いはダウンタウンの松っちゃんに通じ、鋭い映像テンポはトヨエツと山崎努の温泉卓球CM(監督は同じ中島哲也)だ。
うわぁ~。混乱である。頭の中で整理できないまま、松子の怒とうの一生が終わってしまう。「クイズグランプリ」(70~80年放送)で自暴自棄にノンセクション50点のパネルを開ける解答者の気分である。クイズは正答。ラストは感涙。でも、何の涙なのか分析不能。ドラマツルギー(作劇術)のごった煮が、脳みそを直接ツンツンする。
1つ確かなことは、松子を演じる中谷美紀がブッ飛んでいること。パワハラで犯され、トルコ風呂(昭和の話です)に沈められ、ヒモを殺して服役し、捨てられて捨てられてデブデブになる女。あまりに悲惨な人生をミュージカル仕立てにしたアイデアはさすがだが、それもガッツで演じる美女がいてこそ。売れっ子ソープ嬢になるべくヒンズースクワットにいそしむ姿は、「電車男」のエルメスと同一人物とはとても思えない。映画は女優を変える。
人間、突き詰めればノンセクションだ。笑って泣いて憤慨して許容する松子。その「ごった煮人生」の末尾に見上げる鮮やかな天の川は、スカーレット・オハラが見た米国南部の夕焼けに通じる希望がある。不幸という型にはめるな、明日には明日の風が吹くのだよ、と。【高田博之】
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