2005年12月31日
剛速球にねじふせられた
「キング・コング」(米)
33年対決である。一見、似ても似つかぬ2本の映画に同じにおいを感じたのは私だけか。西暦1933年に作られた特撮映画の金字塔「キング・コング」の完全リメーク版と、昭和33年の東京の下町を再現した「ALWAYS 三丁目の夕日」。西暦と昭和。ともにCGを駆使して、ベタな人(猿)情劇で泣かせる。
「三丁目」を野球に例えるなら消える魔球だ。建設中の東京タワーを背景に、本物のセットとCGをとけ込ませノスタルジーを擬態した。かたや本作は時速180キロの剛速球。南海の孤島IN恐竜大戦争(クリーチャーうごめくジャングル再現)から、ニューヨークIN文明大戦争(大恐慌時代の街並み再現)まで、圧倒的なカネ(史上最高248億円)と最先端特撮技術の電車道で、上映時間3時間8分を体感時間30分にねじふせる。
究極のオタク巨編「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソン監督にとって、コングはサエない男たちの代弁者だ。それだけに思い入れは深い。コングが見せる涙目、怒り目、あきら目。カネとCGだけでなく、オリジナル版への敬意と映画愛なくして、あんな瞳は表現できない。
3時間待って訪れる有名な悲しきラスト。1時間は短縮できる上映時間を、あえて短くしないのも、オタク的細部へのこだわり(わがまま?)ゆえだ。エンパイアステートビルのてっぺんから見るCG朝焼けの美しいこと。「三丁目」のラストのCG夕焼けもシミジミ泣けたが、「キングコング」には剛速球にねじふせられた気持ちよさがある。
33年対決の勝者は、西暦、昭和、さてどっち?【高田博之】
2005年12月24日
「生きろ」のメッセージ感じる
「男たちの大和/YAMATO」(日)
「人の後光が見える」という映画界のカリスマ、角川春樹氏と、歌手というより教祖に近い長渕剛(主題歌)のマッチョなコラボ。どんな神がかり映画かと思ったら、意外なほど右にも左にもブレず、きまじめな人間賛歌になっている。
この映画の主演俳優は戦艦大和そのもの。軍上層部の理不尽な決定のもと、援護もなく、片道だけの燃料を積んで海上特攻に向かうことになった姿は「男の背中」を思わせる。大群で来る米軍機の波状攻撃を受け、船全体が黒煙を噴いてもなお横っ腹に十数発の魚雷を撃ち込まれる轟音(ごうおん)は、のたうち回る生き物のようだ。
大和には6億円が投じられ、艦首から艦橋までが原寸大セット(全長190メートル)として再現された。外部では対空機銃で応戦する兵士が次々と被弾し、内部では主砲、副砲の装填(そうてん)兵が次々と爆死。手足のちぎれた血まみれの体が爆風で鉄壁に打ち付けられて重なる。原寸大セットならではの質感、スピード感で、ここにケチらずカネをかけた角川氏はさすがだ。
セカチューのヒット以来、映画もドラマも不治の病ネタや、よみがえった死者との奇跡的なファンタジーなど美しい死で泣かせる路線ばかり。都合よく生き返って「ああすればよかった」という後悔の数々を修復してから死に直せるほど、人の命はおめでたくない。人間の愚かさをすべて受け止めて沈んだ大和の“死ニ方用意”の沈黙にこそ「生きろ」というリアルなメッセージがある。
そのせいか、戦闘シーン以外の描写がみんなどこかで見たようなものがとっ散らかった印象で残念。中村獅童の一本調子なキメ顔といい、音楽も俳優も肩の力がすごくて参った。そもそも、タイトルにわざわざ「男たちの」なんてつける発想が残念。男権主義のミリタリーおたくじゃないんだから。【梅田恵子】
2005年12月17日
ファンタジーを楽しもう!
「SAYURI」(米)
まずは日本人ということを忘れてほしい。なかなか無理な注文なのは分かっているが、せっかくのハリウッド大作、思い切り楽しまなくては損だ。原作も演出も米国人が手掛けた、日本の芸者の話。日本人の目で見ていればつい、あら探しをしてしまう。そんなのはもったいない。
「シカゴ」でアカデミー賞を獲得したロブ・マーシャル監督は動機をこう語っている。「日本の文化や習慣をリアルに映像化するのではない。日本の文化に敬意を払った上で、ある場所で、ある女の子がすごい人生を歩むファンタジーを描きたかった」。言葉通り、敬意は払われている。日本より日本らしい豪華な庭園や大邸宅。ロサンゼルス郊外の広大な牧草地を見事に花街に変えて、撮影された。
そこを舞台に繰り広げられる主要キャスト3人の演技と美しさが、なかなか日本人の目を捨てきれない人をも圧倒し、物語に引きずり込んでいく。愛する人に会いたい一心で苦境に立ち向かう、さゆり(チャン・ツィイー)の孤独な闘い。さゆりをいじめる初桃(コン・リー)と擁護する豆葉(ミシェル・ヨー)の対決。ぎこちない着物の着こなしや「シカゴ」のダンスシーンを見ているかのような舞も、ファンタジーとして自然に受け止めさせてくれる。
内容とは別に実は一番ツッコミたかったことは、なぜ日本人がヒロインや女性主要キャストに起用されなかったのかということ。ぜひ、日本の女優さんの演技でみてみたい。【近藤由美子】
2005年12月10日
宇宙舞台にした「ジュマンジ」
「ザスーラ」(米)
サイコロ振ってスタートです! すごろくゲームのコマが盤上を飛び出すどころか、宇宙まで飛び出しちゃうというリアルボードゲーム、略してRBG…って初めて聞いたっての。動物がゲームから飛び出してくる「ジュマンジ」(95年)の姉妹版。原作者は同じで、舞台が宇宙に変わったってだけです。最初のこの段階で非現実的な世界にどっぷり浸れるかどうかで、あなたの少年少女度が分かります。もしかしたらその少年少女度は、疲労度、逃避行したい度と比例するかも…。
2マス進む 重力や気圧、無酸素状態を無視した宇宙での展開、いいですね。忠実にやってたら、いちいち進まないもんね。宇宙服着た子供たちなんてあんまりカワイクないし。展開が早いのもいいなあ。ドア開けたらそこは既に小惑星の中。ハレー彗星(すいせい)を見るために天体望遠鏡を買ってもらった身にとっては、かなりそそられる映像です。
3マス戻る 「ジュマンジ」には、少年時代にゲームの中に閉じこめられちゃったロビン・ウィリアムスという切ないプロローグが背景にあった。発見した子供たちや昔の幼なじみと一緒にすごろくを進めていくあたり、何となく目的があった。今作にも、ホロリの背景があるんだけど、ちょっといきなりな感じ。中途半端に涙なんて誘わず、むちゃくちゃなままで良かったような。
5マス進む 冒頭10分と、ラスト3分に登場するパパ役のティム・ロビンスがいい。最近はキレた役か、まゆ毛が段違い平行棒になるしかめっ面しか見てないティム。気合の入ってないパパぶりにちょっと安心。気合の入ってない映画だと、こうも優しげな表情を見せてくれるのだ。
1回休み 頭のスイッチを切って、見に行ってください。ということで、1回休みなのです。地球には…多分戻れます。【小林千穂】