2005年03月26日

非常識だけどチャーミング

「ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月」(英)

 お笑いコンビ、インパルスの太っている方(堤下敦)がバラエティー番組で「わがままは女の子にとってオマケみたいなもん」と豪語していた。わがままとセットで生まれてくるのだから、男はそれを開けた時に喜んでみせるものだと。

 スタジオ中が「きもい」とひっくり返った衝撃語録だが、時間がたつとオツな見識に思えてきた。何をやらかしても真意を理解しようと頑張ってくれそうな余裕が、今どき珍しくファンタジックではないか。あれやこれやでぼろぼろな女たちは「理解」というファンタジーを自分だけに向けてくれる人を探して、バカな迷走をするのである。ブリジット・ジョーンズほど非常識ではないにしろ。

 ヒョウ柄パンティーで男を追かけた前作から4年。自分の内面を誰よりも理解し、不器用な優しさで見守ってくれる有能弁護士マークと熱愛中のブリジットだが、今度は幸せへの不慣れと不安から前作以上の迷走(暴走)を始める。

 相手の迷惑を考える、場の空気を読む、なんて言葉は辞書にないブリジット。窮屈な思いをするだろうと弁護士晩餐会に呼ばなかったマークの心配りにむくれ、ムキになって出席したもののやはり浮き上がってむくれる。マークにフラれたと思い込んで元カレとタイに行き、麻薬密輸容疑で留置所送りとなる。「わがままは女のオマケ」の堤下もさすがにキレるだろう。

 それでも、前向きで輝くような笑顔のブリジットは本当にチャーミング。憎めないし、女性目線では「分かる、分かる」となる。レニー・ゼルウィガーは、ブリジットを演じるため今回も10キロ増量し、腹の肉を揺らせてぶざまに走る。今をときめくオスカー女優が、である。日本のラブコメがつまらないのは、ここまで捨て身になれる女優がいないためだと実感する。

【梅田恵子】

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2005年03月19日

宝探しロールプレイング

「ナショナル・トレジャー」(米)

 文化人類学的見地から人間を3タイプに分ける。(1)「ドラクエ」は攻略本に頼る人(2)「ドラクエ」を独力でクリアする人(3)そもそも「ドラクエ」で遊んだことがない人。

 ん億ドル相当の宝を探し求めるディズニー印の謎解きロマンは、実にロールプレイングな映画だ。手がかかりが手がかりを呼び、その手がかりがまた手がかりを呼び、その手がかりがまた…。「いつになったら宝に行き着くんじゃい」と突っ込んだり「大味すぎるぞ」と立ち止まって憤るのは大人げない。

 ニコラス・ケイジふんする主人公が、歴史うんちくと憎めないキャラを武器に順々に謎を解いていく。地道に経験値を稼ぐ必要もない。そう、ニコラスが「ドラクエ」の攻略本役なのだ。タイプ(1)プレーヤー(せっかちな筆者を含む)にはド真ん中の絶好球なのだ。

 「レイダース」「グーニーズ」「ロマンシングストーン」「ハムナプトラ」「トゥームレイダー」。名作迷作混合のドラクエ系ムービーは麻薬だ。伏線が粗いことが多いし、静かなる感銘も少ない。でも、少年の世界観がある。勇者になりきり、じゅ文や小道具やダンジョンでトリップさせてくれる。その精神作法を正統に受け継ぐ本作。攻略本に頼りたくないタイプ(2)プレーヤーでもニコニコだろう。

 そしてどん欲なサービス精神。フリーメーソンの謎はベストセラー「ダ・ヴィンチ・コード」を意識しているに違いなく、本好きのツボを刺激する。「トロイ」の浮気おバカ姫役ダイアン・クルーガーが、聡明(そうめい)教授を演じるサプライズは金髪好きにはたまりまへん。犯罪もの好き、アクション好きにもヤマ場がいっぱい。ディズニーランドの全アトラクションを行列なしで食事も取らずに乗りまくるようなもの。ほら、タイプ(3)の人もプレーしたくなったでしょ。【高田博之】

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2005年03月12日

戦争+ファンタジー+人間愛…

「ローレライ」(日)

 今まで何度、原作と映像のギャップに肩を落としてきたことでしょう…。キャスティングはイメージとほど遠く!、ストーリーはズタズタ!! 「なんじゃこりゃあぁぁ」と叫ぶ気力もなく、またか…という心境になること多数。踏みにじられた大ヒット原作は、死屍(しし)累々と映画史上に横たわっています(大げさ?)。

 第2次世界大戦末期、謎の戦闘システムを搭載した潜水艦の物語。原作「終戦のローレライ」が、初めから映画にするという目的で書かれたこともあって、原作をただ削ぎ落として2時間にしました、というだけの作品ではないことは確かです。原作ファンの怒りを気にしすぎた、単なる「エピソードのパッチワーク」でもありません。本を読んでいる時にはイマイチ想像できなかったものが、映像になって初めて「なるほどね」と思った部分もあったり。

 ただ、どうしてもCGの部分で、まだまだという感が…。ぐいっと入り込んでいけそうだったのに、ぱっと呼び戻されてしまったところもいくつか。ハリウッドの技術に慣れている映画ファンの中には“絵”を見てしまった感を持つ人もいるのではないでしょうか。

 退屈はしないでしょう。ベッタベタの潜水艦ものではなく、戦争+ファンタジー+人間愛…と、いろんな要素があるので。水圧にきしむ音におびえて息止めっぱなし、ということもありません。息は吸えます。とりあえず「もう1回、原作読んでみよっかな」と思わせてくれました。

【小林千穂】

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2005年03月05日

独身中年男2人に母性本能くすぐられる

「サイドウェイ」(米)

 「人生は極上のワインのようにピークを迎えるまで日ごとに熟成し、複雑な味を増す。それからはゆっくりと坂を下るけど、ピークを過ぎた味わいも捨てがたいわ」。

 ウエートレスのマヤ(バージニア・マドセン)のセリフが、この作品のすべてを言い尽くしている。ありがちな言葉だが、見た人の口中に希望と癒やしという味をほのかに残してしまう確かな力がある。アカデミー賞5部門ノミネートはだてではない。

 力は、実にリアルな人物像からきていると思う。1週間のワイナリーめぐりをする独身中年男2人のロードムービー。1人はハゲ、太鼓腹、三枚目と3拍子そろった、うんちくオヤジ(ポール・ジアマッティ)。相棒は女しか目に入らないスケベオヤジ(トーマス・ヘイデン・チャーチ)。はっきり言ってみにくい。

 だが、これをディカプリオとクルーズに演じられても、世のオヤジは見向きもせず、女からみても絵空事になっただろう。ここだけの話だが、私の周囲にも2人そのもののオヤジが大勢いる。あなたの周りにもいるでしょ? 物語とともに、その「いる、いる」感が強まっていく。珍道中で披露されるエピソードは、年齢的な焦燥感、うんちくオヤジの離婚した妻への未練や、ナンパオヤジの結婚への戸惑いだったりする。

 並べると辛気くさい話だけど、目を見張る映像美、なまけ心をくすぐるようなお気楽な旅の様子、2人がちらりとみせる男心のハーモニーが心地よく、スクリーンに引きずりこまれていた。これって、母性本能をくすぐられたってことか? そして、自分が日ごろいかに人を見ていないかということにも気付かされた。

 見終わったとき、ふと「これならオヤジとデートで見てもいいな」と考えていた。しまった。相当な不覚だ。どうやら極上のワインにほろ酔いかげんになったようだ。

【近藤由美子】

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