2004年09月25日
見たことのないロボット映画
「アイ,ロボット」(米)
科学を過信した人類と、反乱を起こしたロボット群の対立。設定自体は描かれ尽くした近未来SFなのだが、とんだみっけもんだった。笑っちゃうほど過去のSF映画の名演出を拝借しまくっているにもかかわらず、物語のカギを握るロボット、サニーの存在がオリジナリティー抜群で「見たことのないロボット映画」として楽しませてくれる。
サニーは、量産型ロボットNS-5の生みの親から感情機能を埋め込まれたスペシャルロボット。スペシャル、というと聞こえはいいが、鉄腕アトムと同じで、要は人間の都合で生み出された“化け物”である。
なぜ自分だけこんな力を、という孤独や悲しみが、無表情なメタルボディーから伝わってきて切ない。覚えたての不安定な感情を、頭脳と論理性で乗り越えようとする“機械”ならではの一直線ぶりもけなげで、敵か味方かも分からないまま「サニー君がんばれ」の気分。クライマックスの大活躍が自慢のCGによって大スケールで描かれ、論理の壁を超えた最後の決断に泣かされる。
アトムやドラえもんになじんだ日本人にとって、ロボットは人格のあるお友達感覚。アシモ(ホンダ)やアイボ(ソニー)などロボット開発で世界を独走する背景にもなっているが、ロボットに“感情ある友達”として夢やロマンを託したがるのは日本人特有の発想らしい。パックンマックンのパックンも「ロボットに感情? ないよー。機械だもん」とドライに言っていた。サニーのデザインは日米のロボット観の違いそのもの。ドラえもん型ロボットと暮らす友好的な未来を夢見たいが、リアルなのはこちらの方かも、と思えてくる。
【梅田恵子】
2004年09月18日
大ヒット作の続編は…当たった
「インファナル・アフェア 無間序曲」(香港)
大ヒット作の続編は当たらない、という説を覆しそうな作品に久々にお目にかかった。香港では既に実証されている。「1」に続き、この「2」も観客動員記録を塗り替え、各賞を総なめにした。2作連続で米アカデミー賞を受賞した「ゴッドファーザー」を思い出させる現象だ。テイストも似ている。
アンディ・ラウ、トニー・レオンの2大スターが競演した「1」に比べ、キャストは地味だ。しかし、それが成功している。「1」は警察とマフィアの双方から送り込まれた潜入者2人の対決を描いた02年の物語。「2」は「1」に至る過程を描いた91~97年の物語。既に結末が分かっているのだから、ハードルは高い。それを登場人物がもつれ合う、複雑なストーリーでクリアした。大スターがいない分、観客は人間模様に入り込んでいける。
いったん物語に引き込んでしまったあとは、丁寧なつくり込みで最後まで決してあきさせない。カット、セリフ、エピソードの1つ1つが実に周到に計算され、効果的に配置され、むだがない。特に「1」との整合性は完ぺきで、あらゆるシーンで観客に「1」を思い出させる仕掛けはまさに職人芸。見る人に、いくつ2作のつながりを見つけられるか、挑戦しているかのようだ。
香港では「3」も公開され、大ヒットを飛ばした。きっと「3」にも、「1」や「2」を思い出させる仕掛けが充満しているのだろう。そして3部作を通して見た時、そこには壮大なタペストリーのような全体像が浮かび上がるに違いない。
【近藤由美子】
2004年09月11日
ニューヒ-ロー誕生“ヴァン・ヘル”
「ヴァン・ヘルシング」(米)
シルエットだけで分かるヒーローってどれくらいいるんでしょう。スーパーマンにスパイダーマン、インディ・ジョーンズ…。コスチュームものだけに限らず、裸のブルース・リーやジェームズ・ボンドも分かりそう。タイトルでシルエットが映っただけでワクワクする、そんなヒーローっていいじゃないですか?
さて、今作のヒーローは、モンスターハンターのヴァン・ヘルシング(ヒュー・ジャックマン)。独断で、シルエットで分かるヒーローに認定いたしましょう! つばの広い帽子にゆるいウェーブのロングヘア、すそを引きずるほど長い革のコートにブーツ。ボーガンや手裏剣のような武器はシルエットでも十分映えます。コートをひるがえす、どことなくエレガントな雰囲気は、19世紀末の欧州という、物語の舞台ともマッチしています。
エレガントな“ヴァン・ヘル”だけに、怪物と戦った後、わざわざ帽子をかぶり直すシーンがあるんですよね。「そんなことしてる場合!?」と一瞬、ツッコミたくなりましたが、この衣装がそろってこそのニューヒーロー誕生です。帽子をかぶってないときの彼、何となく物足りなく見えたくらいでしたもん。
シリーズ化も予定されているそうですし、“ヴァン・ヘル”に期待大、でございます。そうそう“ヴァン・ヘル”なんて省略できるのも、世に受け入れられる1つの要素かな。
【小林千穂】
2004年09月04日
チャン・ツィイーに振りまわされたいっ
「LOVERS」(中)
男のマゾっ気を刺激する女っている。確かにいる。良く言えば燐(りん)としいる。悪く言えばツンとしている。ド派手ではないがジミ派手美女。「陽気な慕情ひまわり」というより「内なる劣情ゆりの花」。特殊な性癖を持った殿方でなくとも、恋愛ゲームで振り回されたいっ、いじめられたいっと思う女性ですね。
本作のヒロイン、チャン・ツィイーこそ、マゾっ気刺激世界女王だ。一見ロリ顔だがだまされてはいけない。彼女が演じるのは中国・唐の時代の盲目ダンサーにして反政府組織構成員。身分を隠して近寄る官吏・金城武と、その同僚アンディ・ラウとの○○関係。ツィイーと金城が○○で○○する。ラウがツィイーの○○を○○する…。危ない危ない。ネタバレ注意、物語は語るまい。言えることは、盲目美女に美男2人が喜々として振りまわされるってことだけ。
横顔超アップ(虫めがね級)決闘超スロー(ジョン・ウー級)極彩色の舞い(アステア級)入浴(由美かおる級)空飛ぶ小刀(ベッカムのFK級)。どのシーンも、マゾ心をくすぐる。間違った映画の見方だが、そう感じてしまうのだから仕方ない。
そういえば、チャン・イーモウ監督のアート系巨匠時代の名作群にはコン・リー(私生活で交際していたとか)が君臨していた。逆境に耐える役が多かったが、なぜかそう見えなかった。誰にも見られていない時に漏らす笑みがよかった。あっさり顔と勝ち気な色気。容ぼうとオーラがツィイーと共通する。好きなタイプは変わらないのね。男って単純。振りまわされたいっ。
【高田博之】