2008年02月12日

WGAストは終わりそうだが…残った大きな傷跡

 昨年11月から始まり3カ月を超えた米脚本家組合(WGA)のストライキが、ようやく終結の時を迎えることになりそうです。インターネット配信や他の新しいメディア、DVDの売り上げによってもたらされる収益の配当金を巡って始まったストライキは、過去20年間で初めての大規模なものとなりました。その影響は計り知れず、テレビ、映画業界を巻き込んで多大な損失を生んだ3カ月となりました。映画やテレビが製作されるロサンゼルスが被った経済損失は、ロサンゼルス・タイムズ紙によると、3億8000万ドルから15億ドルにのぼると算出されています。

 テレビ業界では、「24」や「HEROES」など人気ドラマが次々と製作中止に追い込まれ、スト開始直後から深夜の人気トーク番組は再放送に切り替わる事態に陥りました。映画の宣伝をかねて出演予定だったスターのスケジュールは白紙となり、映画の宣伝にも多大な影響が出ました。痺れを切らせたNBCテレビの人気トーク番組「ザ・トゥナイト・ショー」が脚本家なしで放送を始めると、司会者のジェイ・レノに脚本家たちから避難の声が集中しました。お茶の間には台本のいらないリアリティ番組やドラマの再放送があふれ、広告収入の激減などテレビ各局も大きな損害を被りました。

 テレビに比べて影響が少なかったと言われる映画界ですが、脚本の手直しが出来ないために撮影が中止される作品が続出しました。トム・ハンクス主演の「天使と悪魔」やジョニー・デップ主演の「Shantaram」など大作がその影響を受けて、製作が延期。その結果、大物スターのスケジュールが空白となる異常事態に。また、脚本の書き直しができないことでブラッド・ピットが「ステイト・オブ・プレイ」から降板するアクシデントにも見舞われました。

 しかし、ジョージ・クルーニーら大物スターが次々とWGA支持を表明。その結果、スターの多くがWGA会員がピケを張る授賞式に出席することができず、各種授賞式が中止になる最悪の年となりました。特にアカデミー賞の前哨戦として知られるゴールデン・グローブ賞授賞式の中止は、業界全体に大きな影響を及ぼしたことは言うまでもありません。一時はグラミー賞授賞式の中止も噂されたほど、今年の授賞式シーズンは最後の最後まで何が起こるかわからない波乱万丈なものとなりました。ゴールデン・グローブ賞授賞式の独占放映権を持つNBCテレビは、2000万ドルと言われる広告収入を失い、授賞式主催者も500万ドルの放映権を失う結果に。さらにこれら賞レースに関わる作品の興行にも大きくな影響が出たことは言うまでもありません。

 各授賞式が中止になっていることで、例年のようなアフターパーティーが開催されず、イベント会社や会場となるレストランなどにも多大な損失が生まれました。毎年多くのスターを集めることで知られるアカデミー賞のアフターパーティーとしては最大のヴァニティ・フェアが主催するパーティーも早々に中止が発表されました。こうした損失だけでも、250万ドルはくだらないと試算されています。

 解決の糸口が見つからないストライキに苛立つスタジオは、社員やプロデューサーらを解雇する苦肉の策に出て、映画関連の仕事をする人々の生活が窮地に追い込まれたことも忘れてはいけません。1月初めにワーナー・ブラザースが1000人の社員を一時解雇することを発表。ABCスタジオがお抱えの脚本家やプロデューサーを解雇したのを筆頭に、各スタジオも契約するプロデューサーを放出。被害を被ったのはスタジオで働く人々だけではありません。ロサンゼルスには小道具や衣装を貸し出す会社や撮影時の食事を提供するケータリングなど間接的に映画製作に関わる職に就いている人が大勢います。当然ながら、テレビや映画の製作が中止になると彼らの職も失われることになり、結果的に彼らが普段利用しているレストランも閑古鳥が鳴いて休店開業状態に陥いるなど、ロサンゼルス全体がストライキの影響を受けたといえるでしょう。

 ハリウッド全体が大きな痛手を負ったストライキですが、非常に意義のあるものだったと言う意見が多く聞こえています。果たしてこのストライキは、メディア構造の変革に繋がったのでしょうか。ハリウッドが再び、活気付く日は、もうすぐそこです。

(このコラムの更新は毎週火曜日です)

February 12, 2008 01:04 PM

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