2007年09月18日
ハリウッドの秋は政治色濃い映画が目白押し
米大統領選を来年に控え、ハリウッドでは政治色濃い映画が続々と公開を控えています。大統領候補者たちを通じてイラク戦争の是非を問う論議が連日メディアで取り沙汰されているだけに、ハリウッドでも中東問題を扱った作品は注目度が高い。大作の続編続きだったサマームービーもひと段落した今秋は、そんな世論を後押しするかのように、イラク戦争やテロを題材にした作品が目立ち、来年のアカデミー賞を見据えた賞レースにも影響を及ぼしそうです。
先陣を切って9月28日に全米公開されるオスカー俳優ジェイミー・フォックス主演の「キングダム/見えない敵」は、96年にサウジアラビアで起きた爆破事件をヒントに、ハリウッド史上初めてサウジアラビアの真実に迫った作品として話題。キングダムこと石油王国サウジアラビアを舞台に、4人のFBIスペシャリストが見えない敵、テロリストを追い詰める闘いを描いたもので、9・11同時多発テロ以降続く緊迫した社会情勢に挑んだ作品として注目を集めています。
イラク戦争での実話を元にした作品も多い。「クラッシュ」でアカデミー賞を受賞したポール・ハギス監督の新作「エラの谷」は、早くもアカデミー賞の呼び声も高い注目作。プレイボーイ誌に掲載された実話を元にした作品で、イラク戦争の最前線から帰国した直後に脱走した息子を探す父親が、ある秘密にたどり着くという物語。息子を探す父親の視点からアメリカの闇に迫る作品は、ベネチア国際映画祭やトロント国際映画祭でも好評価を得ています。
同じくイラク戦争を描いて大きな論争を巻き起こしているのが、ブライアン・デ・パルマ監督の「リダクティッド」。ベネチア映画祭で銀獅子賞を獲得し、パルマ監督のアカデミー賞ノミネートの声も高い同作は、イラク戦争がイラクとアメリカ国民に及ぼす悲劇をドキュメンタリータッチで描いた問題作。米兵士が14歳のイラク人少女を強姦し、殺害するという実際に起きた悲劇を題材にしています。映画的な脚色は一切排除して、カメラは常に兵士の目線にあるため、戦争の悲惨さがより深刻に伝わってくる衝撃的な作品として、米メディアでも賛否両論の声が挙がっています。またイラク戦争、そして戦争を報じるメディアの姿勢までも痛烈に批判しているだけに、公開後の世論も気になるところ。
オスカー女優リース・ウィザースプーンとジェイク・ギレンホールが共演する「レンディッション」も中東を舞台にした政治スリラー。9・11同時多発テロ事件の影響で、政治犯に間違えられる家族の悲劇を描いた物語です。
トム・クルーズの新作「ライオンズ・フォー・ラムス」は、アフガニスタンで戦う米軍兵士を描いた政治ドラマ。ロバート・レッドフォードがメガホンを取った同作で、トムは政治家、メリル・ストリープがジャーナリスト、そしてレッドフォードが大学教授を演じている。アメリカのアフガン侵略をめぐる3つのストーリーが絡みあう社会派の作品として、こちらも今秋の話題作となりそうです。
ブッシュ大統領が、イラク駐留米軍の早期撤退を否定したばかりですが、映画の世界では反イラク戦争の風向きが強いようです。映画を通じて、観客に戦争の是非を訴えることができるのでしょうか? 大統領選への影響はいかに? この秋は映画を通じて政治に大きな関心が集まりそうです。【千歳香奈子】
(このコラムの更新は毎週火曜日です)
September 18, 2007 10:18 AM
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