2007年08月21日

尾崎英二郎のハリウッド挑戦インタビュー

 ハリウッドにおける日本人俳優の需要が急増しているという話題は、先週号で触れたとおり。そんな中、今秋からハリウッドを拠点に活動を始める俳優・尾崎英二郎に、ハリウッド映画への挑戦や魅力、日本人として役を勝ち取るための苦労などをたっぷりと語っていただきました。

 「ラスト・サムライ」ではスタントチームの一員として侍役で合戦シーンに出演。「硫黄島からの手紙」では、伊原剛志演じるバロン西から部隊を引き継ぐ大久保中尉役を演じており、すでにハリウッド映画は経験済み。

 このたび、約1カ月かけて100社を超えるエージェントに履歴書を送り、その中から約20社と面接してエージェントが決まり、人気ドラマのオーディションにも挑戦。今秋からのハリウッド移住に向けて順調なスタートを切ったばかり。

 「10年、15年に1本あるかないかの作品。絶対に出たかった」と、並々ならない執念で両作品への出演を勝ち取り、それを踏み台に本格的にハリウッド進出を実現させることができた。

 「ラスト・サムライ」では渡辺謙演じる勝元の息子役のオーディションを受けるも、選に漏れる。それでもあきらめきれずに問い合わせたところ、主要なスタントマンとそれに順ずる100人のアクションをやる俳優のオーディションをまだやっていることを知る。「アクション俳優ではないので、迷いました。恥をかいても仕方がない。“だめもと”で挑戦したんです」。

 アクションクラブに所属するアクション俳優らと共に受けたオーディションに合格して、ハリウッド映画出演のチャンスをつかんだ。「どういう採用基準か完全には明かされませんが、英語力とかを買われたりして100人の中に滑り込むことができました。立ち回りの実力だけ見たら100人の中で底辺にいたと思います。でも、いざ撮影の現場に行ったら、貢献度の高いトップの20人に数えられたいと目標を設定して撮影に挑みました」。

 その言葉通り、100人を代表するリーダー的存在となり、撮影後もスタント・コーディネーターやスタッフらと連絡を取り合うほど密な関係を築いた。

 「ハリウッド映画に出た。トム・クルーズの映画に参加した。そんな箔(はく)付けで終わってしまう人が多く、そこをステップに次へという人はほとんどいなかった。僕にとっては、(「ラスト・サムライ」は)ようやく米映画界の扉に手をかけただけでしかなく、その先へと思っていましたから」。

 しかし、この作品では米俳優組合(SAG)の登録資格は得られなかった。その後は日本でドラマに出演しながら、次の機会をうかがっていたという。そんな中で、「硫黄島からの手紙」が製作されることを知り、日本のトップ俳優たちが会した極秘オーディションの最終日にテストを受ける機会を得た。最終審査の数名まで残ったが、一旦は選考から外れてしまう。それでも「他にもまだ重要な役があるはず」と、再びあきらめずにLAのキャスティングチームと直接連絡を取り合い、再度のオーディションで見事に大久保役をつかみ取った。「奇跡的でしたね。絶対にあきらめたくないという一心でした」と振り返る。

 「硫黄島からの手紙」はアカデミー賞作品賞にノミネートされた。「全編日本語の作品がノミネートされたことは、1つの金字塔になったというか、画期的だったと思います。認識を少しだけ塗り替えたんじゃないでしょうか。アメリカ人の監督が外国語で撮影して字幕でも、これだけ質の高いものが生まれるという」。

 数年前まではこのような作品がハリウッドで製作されることは誰も予想もしていなかった。「クリント・イーストウッドが日本人俳優を大勢使って演出して、日本語で映画を撮るなんて考えもしませんよね。この成功例があるので今後またこのような作品が生まれる可能性が増すと思います」。

 「ブラックレイン」から15年以上も経過して、ようやくまともに日本が描かれたのが「ラストサムライ」だった。「まだ演技の勉強を始める前ですが、留学中に観た「ブラック・レイン」が衝撃的でした。松田優作さん、高倉健さんらがすごい存在感を放っていて日本の俳優がこれだけ対等にハリウッドでやれるんだなと。それがあったから、ゆがんだ形のアメリカ人が思い描くステレオタイプの日本人ではなく、日本人が見ても納得できるような日本人像というものをちゃんと演じていきたいと思い始めた。役柄は少ないでしょうが、そういう役を演じていきたい」。

 これらの作品や、日本人のオタクが活躍するドラマ「ヒーローズ」の大ヒットで、ハリウッドの日本人に対する見方は確実に変化している。「マシ・オカが本当に人気キャラクターの1人ですよね。これによって日本人にとってのハードルが下がった。実際にエージェントが日本人の俳優に触手を伸ばしていると感じます」。

 オーディションではハリウッドの「フェア」な一面も体感した。「(「ラスト・サムライ」で)僕が最初にオーデョションした役は、結果的に当時まだ無名だった若者に決まりましたよね。渡辺謙さん、真田広之さんのようなスターと共に、あの役に無名の俳優がキャスティングされた。誰でも勝ち取れるチャンスがあるんだとその時に知ってとても刺激になりました」。

 ハリウッドで生き残るには今後は日本人だけでなく、日系人やアジア系の役も演じていかなければならない。「日本人の役柄だけを演じているのでは絶対数が少な過ぎます。謙さんの功績によって、日本人の役は日本人が演じるという風になってきましたが、悔しいのは中国系の人が芸者の役を演じてしまうようなケースが依然多いということ。我々日本人も逆にアジア系アメリカ人と競って役を奪っていく図々しさがないといけない。そうしないと、本当にこの業界の土俵に立ったことにはなりません。英語を根気よく磨かないと負けてしまう厳しい闘いです。でも役柄によっては、良い競争ができるはず」。

 「演技力と英語力で国境を越えて仕事がしたい」という夢を叶えるため、大学時代の交換留学を含めて英語は若いころから勉強し、英語学校の教師を務めたこともあるほど。「撮影は時間との闘いなのでその場で指示がパッと分からないとついていけない。クリントにも質問したい時は直接聞きました。専属の通訳がいなくても撮影をこなしていけたことは大きな自信になりました」。

 渡辺謙や工藤夕貴らハリウッドで成功した日本人とは、違った角度でハリウッドに挑戦していきたいという。「ついに扉の中まで足を踏み入れました。失うものはないので、どんな役でも挑戦できる。台詞が1行だっていい。そこからどこまで行けるかとても楽しみ」。

 ハリウッドへの挑戦はまだ始まったばかり。【千歳香奈子】

(このコラムの更新は毎週火曜日です)

August 21, 2007 09:43 AM

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.nikkansports.com/mt/mt-tb.cgi/12254