2007年06月12日
ハリウッド注目の渡辺謙インタビュー、次の作品は
渡辺謙主演の「明日の記憶」が8日、ロサンゼルスで公開されました。「ラスト・サムライ」でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされ、「SAYURI」「硫黄島からの手紙」などハリウッド映画に出演しているKen Watanabeはアメリカでの認知度は高く、この作品への注目度もうなぎ登り。ロサンゼルス・タイムズ紙をはじめとする米メディアも渡辺の演技を絶賛し、前売券が完売する大盛況のようです。
先日、ロサンゼルスでインタビューする機会に恵まれ、ハリウッドで日本映画を売り込む難しさや作品への熱い思いを語ってくれました。
一番苦労したのは、字幕文化のないアメリカでの公開だったそうです。
「今までは任せっぱなしっていうのも変ですが、本当に伝わっているかどうか分からないままポンと投げちゃっている部分があった。でも今回はすごくコンテンポラリーな話題ですし、医学用語も出てきますから、今生きているリズムの言葉をそれぞれのキャラクターで使いたいということもあったので、まず字幕作りには苦労しましたね」。
字幕作りには自らも参加し、積極的に意見を出したりもしたと言う。
「やっぱり、現代社会の話なので、ちょっとした習慣の違いでぜんぜん台詞の意味をなさいところとか、スラングのようなもの、例えば「びしっと行こうよ」って何て訳するんだよ? っていうみたいな。その辺のフィーリングも含めて時間をかけて作らせていただきました」。
言葉や生活習慣は違ってもこの作品が訴えるメッセージはアメリカ人にも同じように届いたという。
「何回かスクリーニング(試写)をしているんですけど、(反応は)まったく日本と同じなんですよ。泣き所も一緒だし、ちょっと笑ってみるところも同じ。字幕だから理解度は(文字から)入っていく部分で何割かは減っているかもしれないけど、深いところまで届いているし、まったく違和感がない。会社のあり方、男女のあり方は(違和感を)感じているかもしれませんが、心情の深いところは変わらないですね」。
アメリカでも日本と同様にHand to hand(手渡し)によるプロモーションを行ってきました。
「どういう形で配給するのかというのも含めてこういう映画をやるとき、丸投げしてバンと渡してしまうやり方もあったんですが、やっぱり日本でやったのと変わらない僕たちが温めてきたものをそのままHand to handで渡すような、そういう、手渡しできるようなものをプレゼントしたいと思いました」。
かつて病に倒れた自身と重ね合わせるように、若年性アルツハイマー認知症と言う病に直面した佐伯を熱演しています。
「日本でプロモーションしたときに感じたのは、僕たちは社会通念として病気と健康と線を引いてしまう。若い、年をとったでまた線を引いてしまう。でも、その境って一体何なんだろう。病気になってもすごく健康的な精神状態を保って前向きに生きている方もいるし、全然体に支障はないけれど精神的にダウンしている人もいる。どっちが良いのか悪いのか分からないんじゃないですか。僕はこういう病気を得たというふうに言いたいんですけど、それでも一生懸命生きていることには変わらない。そのことで、逆に心配をすることで線を引いてしまうことも多々あると思う。病気は人生の大きなファクターではあるけど、人生そのものではない。だから、僕たちはこの映画でアルツハイマーを描きたかったわけではなく、佐伯という夫婦がアルツハイマー認知症という病気を得たことで、何を得て、何を失い、何を感じていくのかという人間ドラマを描きたかったので。だから、そういいう意味では自分が病気をしたという経験が、それだって普通に生きているじゃないかっていう、そのことだけが特別なんじゃないということを、この映画を通じて伝えたかったのかもしれませんね。やっぱりね患者だって24時間病気のことばかり考えているわけじゃないんですよ。笑いたいと思っているし、和みたいと思っているし、冗談も言いたいし、忘れたいと思っているし。ドラマチックな後、どうやって日常に戻るのか。それだって、腹は減るし、疲れたりもするし。そういった日常感をどうやってだしていくかというのが我々の大きなテーマでした」。
著書「誰?-WHO AM I?」の中で、この作品のモデルは実は両親だったと明かしている。
「だったんですね。お前はまったくそんなことを分からないでやったのかと言われちゃうんですが、途中くらいまでは自分でも気が付かなかったですね。そういうものって目には焼きついているじゃないですか。ケアをしている風情というのかな。お袋の大変さも知っているし、親父のいら立ちも分かるし。そういう部分っていのは、どこか残像として、演じたいこのシーンをどうしようというときにものすごく大きなヒントになったと思いますね」。
「明日の記憶」「硫黄島からの手紙」という思い入れの深い2作品を終えた現在、次に何をするか模索中だという。
「明日の記憶」と「硫黄島からの手紙」という、僕にとってはすごく大きな、俳優のキャリアの中でもエポックになるような作品が続いたので、本当に次、何をしたら良いのか模索している段階です。僕自身も、この作品は、ある時ふらふら横丁を歩いていたら、角を曲がったらボンとぶつかったような話しだったんですよ。そのためには町をいっぱいさまよわなければならないと思うですけど、穴を掘るような作業で見つけた金鉱よりも、そいってポンと出会ったものには素敵なものがたくさんあると思うので、そういう風にまた作品と出会いたいなあと思いますね」。
ハリウッドスターとしての地位を確立した今だからこそ、これからハリウッドを目指す後輩たちに言えることもある。
「ものすごい繊細な部分とものすごい図太い部分の両方を持っていないと大変な部分はありますね(笑)。その両面を自分で鍛えたいなと思いますね。逆に言うとあまりセンシティブにならず、あまりルーズにならずという。あまり、しんどいなとか苦労しているなあと思うタイプならだめだと思います。へへへってやれているタイプの方が良いと思いますよ。そうだよね? (笑)」。
現在は仕事で日米を行き来する生活ですが、「家族のいるロサンゼルスにいるのが一番楽」と家庭人の顔ものぞかせた渡辺。「俳優って変なものなんですよ。家があってないようなもので」とおっしゃった言葉が一番印象に残っています。「仕事があればどこにでも行きます」と話していただけに、次回作はハリウッド? それとも日本になるのでしょうか? 今後の活躍がとても楽しみです。【千歳香奈子】
(このコラムの更新は毎週火曜日です)
June 12, 2007 01:17 PM
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