2007年04月24日

ハリウッドの救世主となるか3D映画

 ハリウッド映画が今、大きな変革期を迎えようとしています。立体映像を体感できる3次元(3D)映画の普及が、米映画の将来を変えるかもしれないのです。
 米映画業界はこれまでの平面映像から立体映像を体感できる3D映画へと目を向け始めており、それに伴い、各スタジオとも生き残りをかけた激烈な争いを繰り広げています。携帯電話やiPod、ユーチューブ、ホームシアターの普及で近年、映画館に足を運ぶ観客数が激減。興行収入減少に悩む米映画業界にとって、デジタル技術の発達により実現可能となった3D映画は最後の砦となり得るのでしょうか。

 「タイタニック」で知られるジェームス・キャメロン監督は数年前から、「映画館に観客の足を向かわせるには3D映画の存在は不可欠だ」と、3Dデジタル映画を推進し、劇場に3D映写機を導入するよう訴え続けています。家庭では体感できない迫力満点の映像を体感できる3D映画は、これまでも一部の作品で限定公開され、大きな成功をあげてきました。特に05年に公開されたディズニーのアニメ「チキン・リトル」は、通常の2次元映画と比べて平均で3倍の売り上げを記録しており、この成功をきっかけに業界内では3D映画の需要が一気に高まったと言っても良いでしょう。

 現在、全米で3D映画が鑑賞できる劇場は約700ですが、09年までに約6倍の5000館に増えることが決まっており、3D映画の導入が本格化します。それにあわせて各スタジオは3D映画制作に全力を注いでいますが、早くも09年夏に3D大作公開を控える大手スタジオ2社による、劇場の争奪戦が勃発しています。

 09年以降のすべての作品を3Dで制作すると発表しているアニメ映画大手のドリームワークスは、09年の目玉として「モンスターズvsエイリアンズ」を制作しているのに対し、20世紀フォックスはキャメロン監督のSFスリラー「アバター」を公開することを決めている。米ロサンゼルス・タイムズ紙によると、両スタジオとも同時期に上映可能な5000館全てを使っての大規模上映を狙っており、劇場確保と公開日を巡る激烈な争いが水面下で続いているというのです。劇場側は両作品とも公開できるよう、日程の調整などを求めているようですが、現時点で両スタジオとも公式なコメントは発表していない。キャメロン監督は、3D映画を上映できる劇場の少なさを嘆いていましたが、今後3D映画が急増する中で劇場数の不足が大きな問題となりそうです。

 3D映画の本格導入を目前に、劇場数の不足以外にも通常の映画よりも割高になる入場料も課題の1つとなっています。現在、ハリウッドのエル・キャピタン・シアターで3D上映されているディズニーアニメ「ルイスと未来泥棒」の入場料は大人13ドルで、2D映画よりも平均で10~20%ほど割高。09年には各劇場とも、3D導入に伴い入場料を値上げすることが検討されており、入場料の高騰も今後の問題の一つとなるでしょう。しかし、キャメロン監督は「3次元を体験できるのであれば、観客はお金を出すでしょう」と力説。映画人口増加の起爆剤となることが期待されているのです。

 3D映画の制作コストは通常の映画よりも5~15%増しとされていますが、その倍以上の売り上げが見込めることから、3D映画化はスタジオにとっても大きな利益を得るチャンス。今後ますます、3D映画が増えていくことでしょう。

 かつては作品の途中でアナウンスされるとメガネをかけて立体映像を楽しむといった、単に注目を集めるための仕掛けが多かった3D映画ですが、09年以降は実物にそっくりな立体映像を体感できる大作が次々と公開されることになります。ドリームワークスのプロデューサー、ジェフリー・カッツェンバーグ氏は、3D映画はビデオゲーム世代の若者層の獲得に効果があると話し、「映画業界にとって最高のチャンス」と3D全面導入に大きな自信を見せている。

 ハリウッド映画業界内でも、著しく進化するホームシアターへの対策として、映画の生き残る道は3D化しかないとする意見が多く、3D普及が観客数増加へ繋がると確信する声が多いのも事実です。全ての映画が立体映像になる日も近いかもしれません。【千歳香奈子】

(このコラムの更新は毎週火曜日です)

April 24, 2007 09:58 AM

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