2007年02月27日

アカデミー賞とスキャンダル、勝ったのは…

 マーティン・スコセッシ監督が悲願のオスカーと作品賞を受賞して、幕を下ろした今年のアカデミー賞。大きなサプライズと言えば、受賞が確実と思われていたエディ・マーフィーが助演男優賞を逃し、「ミス・リトル・サンシャイン」のアラン・アーキンが受賞したこと。菊地凛子は残念ながら日本人として49年ぶりとなる快挙は逃してしまいましたが、25日付けのロサンゼルス・タイムズ紙で見開き2ページで特集記事が組まれるなど、ハリウッドでの評価の高さと期待度が大きさが改めて証明された形となりました。

 そんな今年のアカデミー賞でしたが、数日前にちょっと気になる記事を目にしました。元PLAYBOY誌のモデル、アンナ・ニコール・スミスの怪死と、ブリトニー・スピアーズの奇行が、人々からアカデミー賞の興味を奪っているというのです。

 確かに、この2週間ほど、米メディアはこの2つの話題をトップニュースで扱い、タブロイド紙はおろか、テレビでさえ、どのチャンネルを合わせても、スミスの裁判の中継だったり、ブリトニーの丸坊主姿だったりを繰り返し映し出していました。米メディアの話題が「今年のアカデミー賞」に集中していた例年のオスカー・シーズンと比べると、確かにメディアの関心が薄れていることを実感せざるを得ません。

 例年なら、タブロイド紙やファッション誌でも、この時期はオスカー絡みの記事が掲載され、映画界で最高の栄誉とされるアカデミー賞を盛り上げる演出がされていますが、今年はそれも控えめ。代わりに大きく紙面を割くのはブリトニーのスキンヘッドの写真と、スミスの怪死の真相に迫る記事ばかり。テレビでもノミネートされた各候補者のインタビューを放映したりと、様々なオスカー絡みの特集番組が作られるのですが、今年はアカデミー賞がらみのネタよりも明らかにスミスの長女の父親が誰なのか、ブリトニーがなぜリハビリ施設に入所したのか、と言ったネタの方が優遇されています。

 今年のオスカーは、「No Titanic(「タイタニック」のような本命がいない)」と評され、本命不在ということで例年よりも注目度が低かったということもあるでしょう。しかし、それ以上に、この2つの話題は映画よりも断然面白いのだから、それも仕方がないことなのかもしれません。

 まるでミステリー小説を読んでいるような気分になるスミスの怪死の謎。突然の死から2週間以上が経った現在も、次から次へと急展開で様々な新事実や証言が飛び出し、現在と過去の恋人や母親と言った身内が、遺体の引き取りや埋葬場所を巡って泥沼の裁判劇を繰り広げています。次に何が起こるのか、まったく予想不可能な面白さは、オスカーの行方なんかより100倍面白いと言っても過言ではありません。全米がスミスの死の真相に夢中になっていたさなかに今度はブリトニーが突然、自らバリカンで頭を丸めるという衝撃的な映像がテレビで流れ、度肝を抜かれた人も多かったはず。10代でスーパーアイドルとなったブリトニーのあまりな転落ぶりは、やはり人々の興味を誘ったのでしょう。

 テレビ局の関係者は、「番組の75%をニコールの話題に当てれば、当然ながらアカデミー賞に関する話題を伝える枠は小さくなってしまう」とコメントしている。それだけスミスの死は人々の関心が高く、しかも現在もなお、葬儀の日程や子供の父親が誰なのかさえ定かではないため、ネタに事欠くことはなく、日を追うごとに視聴率も伸びていっているのだとか。元タクシー運転手だった判事が、裁判で涙ながらに「アンナを息子が眠るバハマの墓の横に眠らせてあげて欲しい」と訴えるなど、脇を固める役者陣も非常に個性的で裁判がまるで一つのエンターテインメント・ショーのようになっているのだから、面白くないはずがありません。

 そしてスキンヘッドになったブリトニーも短期間で3度もリハビリ施設への入退院を繰り返し、離婚調停中の夫の家の前で傘を振り回して大暴れする姿がキャッチされたりと、こちらも話題的には申し分ないほどインパクトの強さがあります。

 果たして、今年のアカデミー賞の視聴率はどうだったのでしょう。アンナ・ニコール&ブリトニーVSオスカーの闘いはどちらが勝ったのか、ちょっと気になります。

(このコラムの更新は毎週火曜日です)

February 27, 2007 10:15 AM | トラックバック (0)

2007年02月20日

大本命は「硫黄島-」だがサプライズは…

 今週末はいよいよアカデミー賞です。菊地凛子が日本人女優として49年ぶりとなる助演女優賞受賞となるか、はたまた「硫黄島からの手紙」が作品賞に輝けるか、日本人としては気になるところ。世界中が注目する映画の祭典を目前に控えたハリウッドは、1年中でもっとも華やかなシーズンを迎えています。

 どの作品、俳優に女神が微笑むのか、米メディアの反応を参考に直前予想をしてみました。

●作品賞
◎「硫黄島からの手紙」
○「リトル・ミス・サンシャイン」
△「バベル」

 最大の注目である作品賞は、今年は本命が不在。そのため、どの作品にも受賞のチャンスがあり、最後の最後まで混戦模様となりそうな予感。評論家の間では当初は「バベル」「ディパーテッド」の評価が高かったのですが、終盤になって米映画俳優組合賞と全米製作者協会の作品賞を受賞した「リトル・ミス・サンシャイン」が一歩リードしたとの見方が強まっています。しかし、個人的には「硫黄島からの手紙」の受賞を願いたい。

●監督賞
◎マーティン・スコセッシ 「ディパーテッド」
○クリント・イーストウッド 「硫黄島からの手紙」

 監督賞はこの2人の一騎打ちになりそうな予感。2人は2年前にもガチンコ対決しており、その際にはイーストウッド監督が受賞している。スコセッシ監督はこれまで「タクシードライバー」や「レイジング・ブル」などで幾度となく候補に名を連ねているが、これまで一度も受賞経験がなく、アカデミー賞会員の中には「今年こそは」とスコセッシ監督を後押しする声が高い。

●主演男優賞
◎フォレスト・ウィテカー 「ザ・ラスト・キング・オブ・スコットランド」
○ピーター・オトゥール 「ビーナス」
△レオナルド・ディカプリオ 「ブラッド・ダイヤモンド」

 ウガンダの冷血な独裁者イディア・アミン大統領を見事に演じたウィテカーが最有力候補と言われている。すでに20を超える賞を受賞しており、他の候補より頭一つ有利だが、ピーター・オトゥール、レオナルド・ディカプリオにもチャンスが。

●主演女優賞
◎ヘレン・ミレン 「クイーン」
△ジュディ・デンチ 「あるスキャンダルの覚え書き」
△メリル・ストリープ 「プラダを着た悪魔」

 ダイアナ元妃の事故を巡って揺れ動く英王室を描いた「クイーン」でエリザベス女王を演じたミレンの評価が高い。女王の人間味を見事に演じたミレンはやはり、最有力候補にふさわしいが、ジュディ・デンチ、メリル・ストリープの熟年女優も素晴らしい演技を見せている。

●助演男優賞
◎エディ・マーフィー 「ドリームガールズ」
△アラン・アーキン 「リトル・ミス・サンシャイン」

 昨年のクリスマスに死去したジェームズ・ブラウンをモデルにした役を演じたマーフィーが本命。ブラウンの動作やスタイルを役作りのために参考にしたというマーフィーは、アカデミー賞初ノミネートでの快挙を狙っている。

●助演女優賞
◎ジェニファー・ハドソン 「ドリームガールズ」
○ケイト・ブランシェット 「あるスキャンダルの覚え書き」
○菊地凛子 「バベル」

 すでに25個の賞を受賞しているハドソンが本命。人気オーディション番組では途中で落選しましたが、「ドリームガールズ」のオーディションで782人の中から見事にエフィー役を射止めたラッキーガール。アメリカンドリームが叶うのも目前。個人的には「バベル」で見事にろうあの女子高校生を演じて、全裸にも挑んだ菊地にオスカーをあげたいところ。

 今年はどんなサプライズ、ハプニングがあるのでしょう。注目の授賞式は25日(日本時間26日)です。

(このコラムの更新は毎週火曜日です)

February 20, 2007 10:06 AM | トラックバック (1)

2007年02月13日

スミスの「パーフェクト・ストーム」な人生

 「PLAYBOY」誌のモデルで一世を風びしたアンナ・ニコル・スミスの突然の死は、大きな衝撃となっています。フロリダ州のホテルで意識不明の状態で発見されたスミスの死因を巡って連日、テレビ局各社は激しい報道合戦を繰り広げています。解剖後も死因は不明で、「窒息死」や「自然死」「薬物使用によるもの」など、様々な説がささやかれています。

 ストリッパーから人気モデルとなり、89歳の億万長者と結婚、その石油王が残した1900億円の遺産をめぐる泥沼裁判、長女出産直後に息子が不審死、100キロを越える激太りと、その波乱万丈な人生は、まるで映画のよう。死後も、生後5カ月の娘の父親をめぐって、3人の男性が裁判で争うなど、マスコミがネタにこと欠くことはありません。早くもハリウッドが自伝映画制作に乗り出し、「パーフェクト・ストーム(100年に1度と言われる伝説の大嵐)」のような人生だったと米マスコミが論じる、スミスの半生とは…。

 1967年にテキサス州ヒューストンで生まれる。幼い頃に父親は家族を捨てて蒸発。母親と叔母に育てられたスミスの夢は「第2のマリリン・モンローになること」だった。高校中退後、17歳の時にウエートレスとして働いていたレストランのコック(16)と結婚。翌年、長男ダニエル君を出産するが、わずか2年で離婚。幼い子供を抱え、スーパーやレストランで働いたものの、結局はストリッパーに転落。そして23歳の時に客としてお店を訪れた石油王のハワード・マーシャル氏と知り合い、交際が始まる。2年後の94年に89歳の同氏と結婚したが、わずか14ヶ月後に亡くなり、1900億円の遺産を相続することに。年の差63歳の結婚は当初から、「莫大な遺産目当て」とバッシングを受けていました。そして同氏の死後は、遺産をめぐって、息子ら遺族と法廷で争うこととなり、今だにその泥沼裁判は決着がついていません。

 PLAYBOY誌の創設者ヒュー・ヘフナー氏の目にとまったスミスは、92年3月に同誌の表紙を飾ってモデルデビュー。グラマラスなボディー、ブロンドの髪、白のドレスがトレードマークだったスミスは、すぐに「モンロー再来」としてマスコミから注目を集めることに。翌年には「プレイメイト・オブ・ザ・イヤー」に選ばれ、ゲス・ジーンズのモデルに抜擢されるなど、モデルとして一世を風びする。

 しかし、私生活はいつもスキャンダルまみれだった。遺産をめぐる裁判の決着がつかない中、昨年9月7日にバハマで長女ダニエルリンちゃんを出産。父親の名前は非公表だったため、その存在をめぐって様々な憶測が流れる。さらに4日後にお見舞いに訪れていた息子ダニエル君が、スミスが寝ている間に病室で死亡しているのが発見される。司法解剖の結果、3種類の薬物が発見され、他殺説も浮上するも、今もその死は謎に包まれたまま。

 ダニエルリンちゃんの父親をめぐっては、交際中の弁護士ハワード・スターン氏、元恋人の芸能記者が「自分が父親だ」と名乗りを挙げて裁判ざたに発展。スミスの死後、今度は女優ザ・ザ・ガポールの夫フレデリック・フォン・アンハルト王子が、「自分こそが父親だ」と宣言。子供の親権をめぐる壮絶なバトルが繰り広げられています。さらに、一部では子供は亡くなったハワード氏の冷凍保存した精子を使って妊娠した可能性もあると報じられ、ダニエルリンちゃんが相続するであろう莫大な遺産と共に裁判の行方に注目が集まっています。出生届けには父親として恋人のスターン氏の名前が記されているというが、裁判でDNA鑑定が行われることになるでしょう。

 スミスはハワード氏と出産直後の昨年9月末にバハマで船上挙式をしたと、USウィークリー誌がスクープしたが、結婚証明書が提出されていないために、法律上は婚姻関係は認められていなません。息子が死んですぐの出来事だけに、この結婚そのものが本当だったのかどうかさえ明らかではありません。

 豊胸と整形手術を受け、憧れのモンローのようなグラマラスなボディーを手に入れたことを告白したスミスですが、激太りで100キロを超える巨漢に。その後、ダイエットサプリメントの広告塔となり、30キロの減量に成功しましたが、「虚偽の広告をしている」と消費者から集団訴訟を起こされ、150万ドルの損害賠償を求めて訴えられています。

 39歳と言う若さで生涯を終えた自身の最期をめぐっても、不審な点が多い。ホテルの部屋で意識不明で倒れているのを発見した私設看護婦は、なぜかすぐに救急車を呼ばずにホテルのフロントに連絡。そしてさらになぜか、発見した看護婦ではなく、ボディーガードが蘇生処置を行い、病院に搬送しています。通報するまでに45分かかっており、ここに大きな謎が残る。検死をした監察医や地元警察は、他殺や事故説は否定しているが、わずか5カ月の間に親子が次々と不審な死を遂げたことになります。

 最期までも、36歳で急死したマリリン・モンローを彷彿させます。まさに「パーフェクト・ストーム」な人生だったといえます。

(このコラムの更新は毎週火曜日です)

February 13, 2007 02:13 PM | トラックバック (0)

2007年02月06日

大統領選を左右するハリウッド

 ヒラリーVSオバマ。08年米大統領選挙をめぐり、どちらの候補を支持するのか、早くもハリウッドで予備選が勃発しています。

 ハリウッドの映画産業と民主党の関係は根強い。リベラルな気風で知られるハリウッドは民主党支持者が多く、民主党にとって重要な資金集めの場がハリウッドなのです。膨大な資産を持つスターや有名監督、映画スタジオの幹部らが民主党に多額の政治資金を寄付しており、大統領選前には大規模な資金集めパーティーが開催され、ハリウッドスターが勢ぞろいし、1晩で数百万ドルが動くと言われています。

 08年の大統領選の目玉は、女性初の大統領を目指すヒラリー・クリントン上院議員と、初の黒人大統領を狙うバラク・オバマ上院議員。共に民主党指名をめぐってすでに水面下で激しい争いを繰り広げていますが、それにハリウッドスターも一枚かんでいます。

 クリントン元大統領もハリウッドから多大な支援を受けており、クリントン夫妻とハリウッド業界のパイプは太い。ヒラリー氏の豊富な資金力もハリウッドの映画業界の力によるところが大きく、誕生日には3晩連続で誕生日パーティーと称した資金集めパーティーが開かれ、多くのハリウッド関係者が詰めかけ、300万ドルを集めたことは有名。大統領選がヒートアップする中、エリザベス・テーラーがさっそくヒラリー氏支持を表明し、10万ドルを寄付するというニュースが流れたほど。

 ヒラリー氏は知名度とその資金力を武器に、世論調査でもオバマ氏を大きく引き離していますが、ここにきてハリウッド内にオバマ氏支持者が増え、資金面でヒラリー氏を急激に追い上げているといいます。

 スティーブン・スピルバーグ監督、大物プロデューサー、ジェフリー・カッツレンバーグらが20日、ビバリーヒルズで大規模な政治資金パーティーを開催することを発表。すでに700人に招待状を送っているといいます。さらに、ジョージ・クルーニー、ハル・ベリー、オリバー・ストーン監督、人気司会者のオプラ・ウィンフリーも、オバマ氏支持を表明。今後も大物支持者が増えることが予想されており、年内には最低でも7500万ドルの政治資金を獲得することが予測されており、資金面ではヒラリー氏と互角の勝負を繰り広げることになりそうなのです。

 クリントン元大統領はハリウッドに愛されていたことから、ヒラリー氏が有利との見方が強かったが、現在のところリズ以外に目立った支援者はメディアに登場していません。元大統領とも親交が深く、ハリウッドにおいて大きな影響力を持つスピルバーグ監督がオバマ氏支持に回ったことで、ヒリラー陣営には危機感が漂っているのではないでしょうか。

 カリフォルニア州は民主党の強固な地盤であるため、本選よりもむしろ党内の候補者を決める予備選の方が注目度が高いのです。04年の大統領選で、ハリウッド業界が民主党に支払った政治資金は、3300万ドルを上回っていたというデータがあります。つまり、それだけの資金力を有するハリウッドをいかに味方につけるかが勝因に大きく影響するのです。

 選挙までの長丁場、まだまだ何が起きるか分かりません。ハリウッドと政治は切っても切り離せないもの。どちらの候補が最終的に指名を得るかは、ハリウッドスターにかかっていると言っても過言ではないでしょう。

(このコラムの更新は毎週火曜日です)

February 6, 2007 10:25 AM | トラックバック (0)