2006年11月07日
2本の反ブッシュ映画公開
反ブッシュ映画2本が先月末、立て続けに公開されて話題になっています。くしくもアメリカは中間選挙を目前に控えており、この時期にブッシュ大統領や政権をこき下ろす政治映画が相次いで公開されたことに政治的な意図はあるのでしょうか。
ブッシュ大統領が暗殺されるというストーリーをドキュメンタリー仕立てで描いた「デス・オブ・ア・プレジデント(ある大統領の死)」と、イラク戦争直前にブッシュ大統領を批判したカントリ歌手ーグループ、ディクシー・チックスを巡る騒動を描いたドキュメンタリー「シャラップ&シング(黙って歌え)」の2本。
どちらも、ブッシュ大統領と政権を強烈に批判する内容で、公開を巡って様々なトラブルも発生するなど、物議を醸し出しています。
トロント国際映画祭で国際評論家賞を受賞したことで急きょ、米国での公開が決まった「ある大統領-」は、まるでノンフィクションであるかのような演出でブッシュ大統領の暗殺が描かれています。劇中に登場するシーンには本物の演説映像が使われており、暗殺シーンでも大統領の顔はCGで本物にすりかわっています。その過激さから、大手映画チェーン2社が上映を拒否したほか、米CNNや公共ラジオ放送NPRもCMの放送を拒否したのです。4大ネットワークのニュースでも、「こんな映画を作る人の気が知れない。無責任だ」と言った論調が繰り返されています。
一方の「黙って歌え」は、イラク戦争直前のロンドン公演中にボーカルのナタリーが、「アメリカの大統領がテキサス出身(同郷)なのを恥ずかしいと思っている」とステージ上で発言したことが発端となり、本国でCD不買やラジオの放送禁止運動が起こり、脅迫まで受けたその後の騒動とバンドメンバーの苦悩と戦いを描いたドキュメンタリー。ポスターは数々の論争や脅迫に抗議するかのごとく「裏切り者」「サダムズ・エンジェル」などとボディペイントしたヌード写真(米エンターテイメント・ウィークリー誌の表紙を飾ったもの)とペンを持つブッシュ大統領が合成されたもので、かなりのインパクトがあります。キャッチコピーはずばり、「言論の自由は問題ない。公衆の前でなければ」。この作品もやはり、NBCテレビやCWネットワークスからCM放送を拒否されたのです。
「ある大統領-」はブッシュ大統領の暗殺シーンばかりがメディアに取り上げられていますが、物語はむしろ、米政府が偶然現場近くに居合わせたシリア系の男性をイスラム教徒と言う理由のみでテロリストと決め付け、犯人として逮捕したことに焦点が当てられています。アメリカ人が抱くイスラム教=テロリストというイメージを痛烈に風刺したものです。
一方の「黙って歌え」も、03年に問題の発言をした当時は、「イラクは大量破壊兵器を保持しており、イラク戦争は正等なものだ」と疑いもしなかった大勢の米国人も今となっては「イラクは大量破壊兵器など持っていなかった。長引く戦争で多くの米国兵が犠牲になっている」という現実を認識するようになっています。彼女たちにとっての激動の3年間が、その時代のニュース映像などと共に描かれているのですが、ディクシー・チックスを知らない人でも、彼女たちの毅然とした態度や最後まで「言論の自由」を訴え続ける姿には感動すら覚えます。「イラクは大量破壊兵器を保持している」と、当時の政府関係者のコメント映像が流れると劇場内は失笑が漏れ、楽屋でメンバーがブッシュ大統領を批判する言葉を口にする場面では拍手喝采が起きる。エンディングロールが流れると、劇場は自然と拍手に包まれていた。自らの意思で作品を見に来た観客は、メディアの批判とは関係なく作品を楽しんでいるのです。
どちらの作品も強烈な政治メッセージを秘めているために賛否両論はあるでしょうが、「表現の自由」「言論の自由」について考えるきっかけとなっているのではないでしょうか。
(このコラムの更新は毎週火曜日です)
November 7, 2006 01:21 PM
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