2006年10月17日
勝ち負けでない本当の戦争の意味とは…
戦争に勝ち負けはない。攻める側とそれに抵抗して戦う側の両方ともにそれぞれの事情や背景を抱えており、どちらか一方だけを「悪者」と簡単に決め付けることはできない。
クリント・イーストウッド監督が描いた硫黄島での戦いは、そのことを改めて教えてくれる作品となった。イーストウッド監督は、硫黄島を舞台に死闘を繰り広げた日米両軍をそれぞれの視点から描いたハリウッド史上初の2部作を製作。まずはアメリカ側から見た戦い「父親たちの星条旗」が、20日に全米公開(28日、日本公開)となる。
アメリカ側の視点から描く同作品は、単なる戦争映画ではなく、摺鉢山に星条旗を掲げる5人の海兵隊員と1人の海軍兵士の写真のエピソードを基に、戦争を通じたヒューマンドラマとして描かれている。
激戦の真っ只中の1945年、砲弾に覆われた山の頂上に星条旗を掲げる6人のアメリカ兵の写真が撮影された。AP通信員のカメラマンが撮影したこの1枚の写真は、新聞の1面を飾り、長引く戦争に疲れたアメリカ国民を熱狂させ、ピューリツァー賞も受賞。勝利の象徴として歴史に大きく刻まれ、その後も記念切手の図柄やポスターになったり、ワシントンDCには銅像も建てられている。
しかし、その写真には秘められた真実が隠されていた。イーストウッド監督はこの写真にまつわるエピソードを軸に硫黄島で何が起きていたのかを丁重に描き、戦争の悲劇をまったく異なる視点から暴き出している。彼らは硫黄島にどのように送り込まれ、そこで何のために戦い、何が起きて、どのように戦場から祖国へ連れ戻され、そして祖国で何を見て、感じたのか。そして彼らのその後の人生までが「国旗掲揚者」一人ひとりの目線で、真実として語られている。
祖国に帰還し英雄として奉られた3人の兵士たちを演じたのは、日本ではほとんど無名に近い俳優ばかり。しかし、製作陣は超豪華な面々だ。メガホンを取ったのは「許されざる者」と「ミリオンダラー・ベイビー」でアカデミー賞に輝いたイーストウッド監督。そしてプロデューサーも「プライベート・ライアン」と「シンドラーのリスト」で同じく2度のアカデミー賞に輝くスティーブン・スピルバーグ監督。2大巨匠に加え、脚本を担当したのは、昨年「クラッシュ」でアカデミー賞監督賞に輝いたポール・ハギスという前代未聞の豪華メンバーが集結している。ロサンゼルスで行われたプレミアでも、イーストウッド監督とスピルバーグ監督がそろい踏みで取材に応じるという夢のようなツーショットが実現し、集まったマスコミを興奮させたばかり。
「私が観て育った戦争映画のほとんどは、悪役と善玉がはっきり分かれていた」と言うイーストウッド監督は、この2本の作品は勝ち負けを描いたものではないとインタビューで語っている。残念ながら、日本側の視点で描かれた「硫黄島からの手紙」(12月9日 日本先行公開)はまだ観ていないので論じることはできないが、少なくとも「父親たちの星条旗」はその言葉通り単なる国と国による武力の衝突ではなく、3人の帰還兵たちを通じて戦争の意味を問う作品に仕上がっている。
日本人としては渡辺謙をはじめ日本人俳優が出演している「硫黄島からの手紙」の公開が待ち遠しいところ。しかし残念ながら現時点ではハリウッド公開は来年2月になる見通しで、来年のアカデミー賞に絡むことはできないようでちょっとがっかり。でも、「父親たちの星条旗」は早くも有力候補の呼び声が高く、来年1月23日のノミネート発表が楽しみ!
(このコラムの更新は毎週火曜日です)
October 17, 2006 12:48 PM
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一枚の有名な写真がある。
太平洋戦争の激戦地、硫黄島の擂鉢山の山頂に、星条旗を突き立てる6人のアメリカ兵を写したものだ。
1945年2月23日にAP通... [続きを読む]
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