2006年10月24日
「父親たちの星条旗」で大注目ライアン
オスカー女優リース・ウィザースプーンの夫。そんな肩書きでくくられてしまうことが多い俳優ライアン・フィリップ。昨年はアカデミー賞作品賞に輝いた「クラッシュ」で警察官役を熱演し、その演技力には定評がありますが、順調なキャリアを積む妻とは対照的に独立系映画での地味な役が多いのです。そんなライアンが、クリント・イーストウッド監督の「父親たちの星条旗」で大きな注目を集めています。
今作への出演は、脚本家のポール・ハギスから見せられた「クラッシュ」の未編集映像でライアンの存在を初めて知ったイーストウッド監督が、役者としての繊細さを気に入り、抜てきしたことがきっかけでした。原作者ジェイムズ・ブラッドリー氏の父親である海軍の衛生下士官役で、国旗掲揚の英雄に祭り上げられた3人の主人公の1人を演じています。
戦地で自らの命を顧みずに負傷した仲間を助け続ける優しい兵士として知られたドクは、摺鉢山の頂上に星条旗を掲げる海兵隊員を手助けしたことで英雄扱いを受けます。その葛藤や戦地で亡くなった仲間への思いに苦しみながらも寡黙に自らの役割を果たし続けるドクから、戦争の悲惨さがヒシヒシと伝わってきます。
17歳で俳優を志し単身NYへ渡り、92年にテレビドラマで俳優デビュー。95年に「クリムゾン・タイド」で映画デビューしてからは映画俳優としてのキャリアを積んでいきます。「クルーエル・インテンションズ」で共演したリースと99年に結婚。甘いマスクのせいか幼い印象を受けますが、実生活では2児の父親でもあります。大作映画で二枚目を演じてもおかしくないほどのハンサムボーイながら、そういった役とは無縁です。
一方の妻リースは「キューティー・ブロンド」(01年)で大ブレークし、ジュリア・ロバーツやメグ・ライアンに次ぐ「新ラブコメ女王」と呼ばれ、昨年は「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」でアカデミー賞主演女優賞を手に。ジュリアを抜き、1本の映画の出演料は今やハリウッドNO・1となり、今ハリウッドでもっとも注目される女優の1人です。
リースとライアンは、幾度となく不仲説がささやかれるほど、キャリアやギャラの差が大きくなっていました。
ホラー映画「ラストサマー」(97年)に出演したころから、「これが本当に自分のやりたいことだったのか」と悩みを抱えていたというライアン。役者として大きな壁にぶち当たり、「人とは違った役を演じよう」と心に決め、大作映画ではなく独立系作品やちょっと風変わりな作品に好んで出演し、そこで俳優としての才能を開花しました。プロデューサーや脚本家としての肩書も手に入れ、ハリウッドの若手俳優の中でも最も多才な才能の持ち主と言われるまでに成長しました。それでも、リースとのキャリアの差は依然として大きく、比較されることもしばしばです。
「競争心はほとんど持っていない。妻は良い女優だし、素晴らしいキャリアを持っている。彼女を尊敬している」と語り、夫婦のキャリアの差はまったく気にしていないと言い切るライアン。「自分が見たいと思わない作品には出演しないし、過去に見たことのあるものもやらない」と、インタビューで答えるほど作品選びにはこだわりを持っています。「人生は短いから、余計なことをする時間なんてない。子供もいて、家族もいる。彼らと離れて作品作りに没頭するのだから、その価値に値するものでないと」。
30代になり、俳優としてますます脂がのってきたライアン。次回作は来年初旬公開の二重スパイのロバート・ハッセンとパワーゲームを繰り広げた実在のFBI捜査官を演じた「ビーチ」。それ以外にも出演作がいくつも控えており、なんと「バッドマン・ビギンズ」の続編への出演も取り沙汰されています。
「父親たちの星条旗」は来年のアカデミー賞最有力候補にあがっており、昨年の「クラッシュ」に次いて2作品連続受賞も夢ではありません。ハリウッドでの評価もうなぎ登りで、役者として今後の活躍が楽しみな俳優の1人です。
(このコラムの更新は毎週火曜日です)
October 24, 2006 10:00 AM | トラックバック (4)
2006年10月17日
勝ち負けでない本当の戦争の意味とは…
戦争に勝ち負けはない。攻める側とそれに抵抗して戦う側の両方ともにそれぞれの事情や背景を抱えており、どちらか一方だけを「悪者」と簡単に決め付けることはできない。
クリント・イーストウッド監督が描いた硫黄島での戦いは、そのことを改めて教えてくれる作品となった。イーストウッド監督は、硫黄島を舞台に死闘を繰り広げた日米両軍をそれぞれの視点から描いたハリウッド史上初の2部作を製作。まずはアメリカ側から見た戦い「父親たちの星条旗」が、20日に全米公開(28日、日本公開)となる。
アメリカ側の視点から描く同作品は、単なる戦争映画ではなく、摺鉢山に星条旗を掲げる5人の海兵隊員と1人の海軍兵士の写真のエピソードを基に、戦争を通じたヒューマンドラマとして描かれている。
激戦の真っ只中の1945年、砲弾に覆われた山の頂上に星条旗を掲げる6人のアメリカ兵の写真が撮影された。AP通信員のカメラマンが撮影したこの1枚の写真は、新聞の1面を飾り、長引く戦争に疲れたアメリカ国民を熱狂させ、ピューリツァー賞も受賞。勝利の象徴として歴史に大きく刻まれ、その後も記念切手の図柄やポスターになったり、ワシントンDCには銅像も建てられている。
しかし、その写真には秘められた真実が隠されていた。イーストウッド監督はこの写真にまつわるエピソードを軸に硫黄島で何が起きていたのかを丁重に描き、戦争の悲劇をまったく異なる視点から暴き出している。彼らは硫黄島にどのように送り込まれ、そこで何のために戦い、何が起きて、どのように戦場から祖国へ連れ戻され、そして祖国で何を見て、感じたのか。そして彼らのその後の人生までが「国旗掲揚者」一人ひとりの目線で、真実として語られている。
祖国に帰還し英雄として奉られた3人の兵士たちを演じたのは、日本ではほとんど無名に近い俳優ばかり。しかし、製作陣は超豪華な面々だ。メガホンを取ったのは「許されざる者」と「ミリオンダラー・ベイビー」でアカデミー賞に輝いたイーストウッド監督。そしてプロデューサーも「プライベート・ライアン」と「シンドラーのリスト」で同じく2度のアカデミー賞に輝くスティーブン・スピルバーグ監督。2大巨匠に加え、脚本を担当したのは、昨年「クラッシュ」でアカデミー賞監督賞に輝いたポール・ハギスという前代未聞の豪華メンバーが集結している。ロサンゼルスで行われたプレミアでも、イーストウッド監督とスピルバーグ監督がそろい踏みで取材に応じるという夢のようなツーショットが実現し、集まったマスコミを興奮させたばかり。
「私が観て育った戦争映画のほとんどは、悪役と善玉がはっきり分かれていた」と言うイーストウッド監督は、この2本の作品は勝ち負けを描いたものではないとインタビューで語っている。残念ながら、日本側の視点で描かれた「硫黄島からの手紙」(12月9日 日本先行公開)はまだ観ていないので論じることはできないが、少なくとも「父親たちの星条旗」はその言葉通り単なる国と国による武力の衝突ではなく、3人の帰還兵たちを通じて戦争の意味を問う作品に仕上がっている。
日本人としては渡辺謙をはじめ日本人俳優が出演している「硫黄島からの手紙」の公開が待ち遠しいところ。しかし残念ながら現時点ではハリウッド公開は来年2月になる見通しで、来年のアカデミー賞に絡むことはできないようでちょっとがっかり。でも、「父親たちの星条旗」は早くも有力候補の呼び声が高く、来年1月23日のノミネート発表が楽しみ!
(このコラムの更新は毎週火曜日です)
October 17, 2006 12:48 PM | トラックバック (4)
2006年10月09日
アカデミー賞候補作品、早くも続々公開
今年もオスカー・シーズンがやってました。例年は11月から年末にかけてオスカー狙いの作品が続々公開され、オスカー・シーズンとなるのですが、今年はかなり早いスタートとなっています。
年末までに全米公開された作品が対象となるため、ギリギリの12月にオスカー狙いの作品が続々とラインナップされるのが通例でしたが、今年は9月からすでに賞レースが始まっています。
毎年3月末に行われていたアカデミー賞授賞式が、テレビ放映の関係で04年から1カ月早まり、2月に行われることになったことで、12月公開では十分なプロモーション活動が出来ないことから、各スタジオともオスカー狙い作品の公開を前倒ししていることが要因。それに加え、昨年は5月に公開された「クラッシュ」が大逆転でオスカーに輝いたことも大きく影響をしているようです。
ここ数年のアカデミー賞受賞作品を見ると、「ビューティフル・マインド」「シカゴ」「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」「ミリオンダラー・ベイビー」と、02年から4年連続で12月に公開された作品がオスカーを手にしています。しかし、昨年はノミネートされた5作品のうち「クラッシュ」を含める3作品が、オスカー・シーズン以前に公開されたものでした。そのため、各スタジオとも早期公開を検討し始めたようです。
今年は9月にショーン・ペン主演でピュリッツァー賞小説を映画化した「オール・ザ・キングス・メン」、テレビ版「スーパーマン」で一躍有名になった俳優ジョージ・リーブスの怪死の真相に迫った「ハリウッドランド」、ヘレン・ミレンが英エリザベス女王を演じる「ザ・クイーン(原題)」が相次いで公開され、10月後半にはオスカー最有力候補と呼び名の高い「父親たちの星条旗」と「バベル」も登場し、賞レースが一気にヒートアップしそうです。さらに、レオナルド・ディカプリオとマーティン・スコセッシ監督のコンビで悲願のオスカーを狙う「ディパーテッド」も6日に公開されており、ロサンゼルス・タイムズ紙も「史上もっとも早いオスカー・シーズン」と今年の賞レースを伝えています。
USトゥデイ紙は9月上旬にすでに「今年のオスカー候補作品」を紹介する特集記事を組むなど、今年のオスカー・レースは長期戦となりそうな予感。同紙で作品賞の有力候補にあげられた11作品のうち、「ワールド・トレード・センター」「ユナイテッド93」「オール・ザ・キングス・メン」「ディパーテッド」「父親たちの星条旗」「バベル」の6作品は、すでに公開されているか、今月中に公開予定の作品。12月公開作品は、「ザ・グッド・ジャーマン(原題)」「幸せのちから」「ドリームガールズ」の3作品でした。
「バベル」はカンヌ国際映画祭でアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督が、監督賞を受賞。「ハリウッドランド」と「ザ・クイーン」もヴェネチア国際映画祭でベン・アフレックが最優秀男優賞、へレン・ミレンが最優秀女優賞にそれぞれ輝くなど両賞やトロント国際映画祭で高い評価を受けたことで、配給元のスタジオが全米での公開を早めたと指摘する専門家もいます。
しかしながら、早期公開には大きなリスクもあります。アカデミー賞に投票するアカデミー会員に投票用紙が配布されるのは、12月26日。そのため、早期公開された作品は投票する時点で作品の記憶が薄れていることが多いと言われ続けてきました。しかしそれ以外にも9月や10月に公開された作品の場合、投票する時点ですでに興行結果や観客の反応が出ているため、それが投票に影響することも懸念されています。それに比べ、12月公開の作品は公開直後ということで、人々の記憶も新しく、数字にもさほど影響されないことから、賞レースには有利だというむきがあるのです。
今年も12月にはレオナルド・ディカプリオと「ラスト・サムライ」のエドワード・ズウィック監督がタッグを組んだ「ブラッド・ダイアモンド(原題)」や大ヒットブロードウェイミュージカルを映画化した「ドリームガールズ」、ジョージ・クルーニー主演の「ザ・グッド・ジャーマン」、ウィル・スミス主演の「幸せのちから」など有力な対抗馬が公開を控えています。
昨年に比べて今年はオスカー候補に挙がる作品数も増えており、これから3カ月間、賞レースの行方が楽しみです。
October 9, 2006 12:17 PM | トラックバック (2)
2006年10月03日
アシュトン人気、日本でもブレーク間近?
デミ・ムーアの年下の夫アシュトン・カッチャー。アメリカではアイドル的存在で、若者に絶大な人気を誇るアシュトンも、日本ではまだまだ無名に近い存在。「デミの若い夫」と言うくらいしか知らない人も多いのでは。
そんなアシュトンも、そろそろ日本でも大ブレークする時期がきたようです。9月29日にケビン・コスナーと共演した「守護神」が全米公開され、甘いマスクとマッチョな肉体に多くの女性がくぎ付けになっています。人命救助のためには自らの命を顧みずに真っ先に荒れ狂う海に飛び込む沿岸警備隊員を目指す若者を描いた作品で、ファンのみならずともアシュトンの魅力にはまってしまいそうです。日本公開は来年2月。日本でも来年はアシュトン人気に火がつきそうな予感です。
アシュトンは、モデルとしてドルチェ&ガッパーナやベルサーチのコレクションに出演。カルバン・クラインの下着モデルで注目を集めました。その後ハリウッドに渡ってテレビ俳優となり、「That’s 70‘s Show」に出演して一躍人気に。99年に「エクスタシーをさがして」で映画デビューを飾り、翌年の「ゾルタン★星人」で大ブレーク。今やレオナルド・ディカプリオやブラッド・ピットに続く次世代スターに一番近い若手俳優と言われています。
アシュトンの魅力は単に甘いマスクだけはありません。アイオワ大学で生化学エンジニアリングを学んだ理系で、ハリウッドに2件のレストランを経営する青年実業家でもあるのです。若手プロデューサーとしての肩書きも持ち、製作、主演を兼任した「バタフライ・エフェクト」を大ヒットさせています。俳優としても独特のユーモアのセンスを武器にコメディで頭角を現していましたが、ついに「守護神」で本格アクションにも挑戦。あのケビンを相手に引けをとらない存在感で、世代交代を印象付けています。
デミとの年の差15歳ながら、2人はどこに行くのも一緒のラブラブぶりはハリウッドでも有名。28歳と言う若さながら、デミの前夫のブルース・ウィリスとの間の3人の子供たちのパパ業もしっかりとこなしています。ウィリスも「彼なら文句はない」と認めた男で、2人の結婚式にも出席したほど。あのデミを虜にしたこともうなずける好青年なのです。
結婚1周年を迎えた今秋は、「守護神」、声優を務めた「オープン・シーズン」と立て続けに主演作が公開され、プレミアではデミをエスコートする姿も自信に満ちていたアシュトン。「オープン・シーズン」のプレミアでは、「すぐに戻ってっくるから」と待ち構える数百人の報道陣を前にデミと3人の子供たちを最初に会場までエスコート。その後、1人で取材に応じるスマートさ。そんなアシュトンにデミはほれたのだろうと思わず納得してしまった瞬間でした。
おバカ映画「12人のパパ」や「ジャスト・マリッジ」で演じたキュートでちょっとおバカな役柄が印象的ですが、「バタフライ・エフェクト」では脱コメディ路線を打ち出して大成功。そして「守護神」では、撮影前に水泳の猛特訓を受け、現役の沿岸警備隊とも一緒に訓練をこなす徹底的した役作りを行いました。劇中ではコスナーとともに水中アクションに挑戦し、スタントなしで撮影をこなしたほどの熱の入れようだったと言います。
そんなアシュトンにも暗い過去がありました。「パール・ハーバー」でジョシュ・ハートネットと主役を争いながらも脱落、「エリザベスタウン」ではオーランド・ブルームに主役をさらわれるなど、これまでキャスティングには恵まれてきませんでした。しかし、そんな挫折をバネに今のアシュトンの輝きがあるのでしょう。
コメディからシリアス、そしてアクションまで演じられる俳優として、これからの成長ぶりがもっとも期待される1人。LAタイムズ紙では「トップ・ガン」で一躍ヒーローとなったトム・クルーズと比較し、アシュトンもトム同様に国際的なスターとなる要素を持っていると紹介しています。次はどんな役を演じるのか楽しみです。
(このコラムの更新は毎週火曜日です)
October 3, 2006 01:06 PM | トラックバック (2)
