2006年09月19日

ブッシュ大統領暗殺を描く、過激なストーリー

 米同時多発テロから5年。今年はテロを題材にした作品が次々と公開されて話題となりましたが、今度はブッシュ米大統領が暗殺されるというショッキングなテーマの作品が登場し、大きな物議を醸しています。

 制作したのは英国人のテレビディレクター、ガブリエル・レインジ氏。「デス・オブ・ア・プレジデント(大統領の死)」と題された同作品は、10日にトロント国際映画祭で世界初お披露目されるやお隣米国のメディアは「ふざけている」と大ブーイング。上映後の観客の反応も賛否両論だったようです。というのも、本物のブッシュ大統領のニュース映像を使い、暗殺シーンはCGで大統領の顔を合成し、ドキュメンタリータッチで描いているのです。反ブッシュ政権を描いたマイケル・ムーア監督のドキュメンタリー「華氏911」よりも過激なそのストーリーとは…。

 07年シカゴで経済団体の前でスピーチを終えた大統領が、ホテルを出ると外ではイラク戦争反対の抗議の真っただ中。そのさなか車に乗り込もうとしたところ、何物かに銃で撃たれて暗殺される。政府はあるシリア出身の男性に焦点を合わせて捜査を始める-。

 もちろん、全て架空の物語でフィクションなのですが、実際に鑑賞した人によると「かなりリアル」だったということで、「現役の大統領とおぼしき人物を暗殺する行為は不謹慎だ」などと非難を浴びることになったのです。

 10月に英国のテレビ、チャンネル4にて放映されることが決まっていますが、もちろんテーマがテーマだけに米国での上映は決まっていませんでした。しかし、トロント国際映画祭での反響が覚めやらないうちにニューマーケット・フィルムが米国での配給権を購入。数カ月以内に全米公開に踏み切ることを発表したのです。ニューマーケット・フィルムは、あのメル・ギブソン監督のキリストの最期を描いた「パッション」を配給したことでも知られています。

 演説シーンは今年初めに実際に行われた本物のシーンが挿入されており、大統領は架空の人物ではなくCG合成でブッシュ本人の顔。まさに、米国の横暴ぶりを批判する反ブッシュ映画と言っても過言ではありません。しかし、レンジ氏は「これはブッシュ大統領を攻撃するものではなく、現在想像し得るアメリカの将来像を描いたドキュメンタリーふうのフィクション。架空の大統領では観客の反応はまったく違うものになっていたと思うよ」と説明しています。

 まだ実際にこの作品を見たわけではないので論議はできませんが、長引くイラク戦争、依然としてテロの危機に日々さらされている米国では、実際に起きても何の不思議もない事件。それを実際に映像として見せられた時に、どう感じるのかは人それぞれ違ってくるように思います。また、9・11テロを経験し、ニュースから幾度となく流れたあのショッキングな映像を脳裏に記憶している私たちにとっては、これくらいのインパクトがないともう驚かなくなっていることも事実なのかもしれません。

 レンジ氏の自宅には暗殺を予告する脅迫電話が後を絶たないと言います。今後、アメリカでどのようにPR活動をするのか、またメディアがこの作品をどのように扱うのか、また見た人々の感想なども気になるところ。エンターテイメント作品として革新的で新鮮な作品に仕上がっていることを期待したいものです。

(このコラムの更新は毎週火曜日です)

September 19, 2006 02:25 PM

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