2006年04月25日
アイドルと政治が絡み合う映画
全米で視聴率ナンバーワンを誇るアイドル・コンテスト番組「アメリカン・アイドル」と米大統領をブラックユーモアたっぷりにパロディにした「アメリカン・ドリームズ」はかなり笑えました。
“Imagine a country where the president never reads the newspaper where the government goes to war for al the wrong reason and where more people vote for pop idol than their president.(大統領は新聞を読まず、政府は間違った理由で戦争を行い、国民の多くは大統領選挙よりもアイドルに投票する。そんな国を想像してごらん)”
この作品のポスターにはこう書かれています。これだけで、もう十分に映画の趣旨が伝わってきます。「これってまるで、アメリカの現状そのものじゃない!」とかなり期待をして試写会場に足を向けたのです。
「アメリカン・アイドル」は、今年で5年目を迎えたスターを目指す素人が出演する勝ち抜きのアイドル・コンテスト。この冬はトリノ五輪の裏番組でも高視聴率を獲得するほどの人気で、今シーズン平均視聴者数3100万人の記録を樹立しています。視聴者は毎週、電話で投票し、参加者を選抜していくのが人気の秘訣。
ブッシュ大統領といえば、ブッシュ語録ができるほど、スピーチでの迷言や間違い発言が多く、馬鹿っぷりを存分に発揮しています。米政府は大量破壊兵器を持っていると主張して始めたはずのイラク戦争でしたが、いつの間にか9・11テロの首謀犯だったことにすりかわってしまっています。
そう、この作品には、「アメリカン・アイドル」にそっくりなアイドル・コンテスト番組とまさにブッシュ大統領にそっくりな大統領が登場しているのです。これだけでも、アメリカに住む日本人としては興味深々ですが、あまり接点のないように見えるこの2つが映画の中ではテロでリンクしているとくれば、もう見ないわけにはいかない気分になります。
大統領選挙に勝ち抜いた翌日、普段は絶対に読まない新聞に目を通す大統領。そこで、イラク戦争の理由が間違っていることに初めて気づき、愕然(がくぜん)とします。そして、実は何も知らないのは自分だけで、補佐官は全てを知っていたことにさらにショックを受けます。(この補佐官は、チェイニー副大統領にそっくり)そして、そのショックからニートになってしまうのです。
一方、エゴイストで血も涙もない「アメリカン・ドリームズ」のプロデューサー兼司会者(ヒュー・グラント)は、本家「アメリカン・アイドル」のサイモン・コーウェルを彷彿させます。視聴率のためならなんでもする男。スタッフに視聴率が取れる珍しい候補者を集めるよう命じて選ばれたのが、「歌も踊りも下手くそなダサダサのイラク人」と「優勝するためならなんでもするビッチな女」。しかし、実はイラク人はテロリストで、ビッチな女は優勝するためなら愛してもいない恋人を利用し、司会者と寝ることもいとわない。そして、これが自らの身の破滅を導いてしまうのです。
「アメリカン・ドリームズ」の人気に目をつけた大統領補佐官は、大統領をこの番組の決勝戦に特別ゲストとして出演させることを計画。そして、テロリストのイラク人は、アイドルとしてコンテストを最後まで勝ち抜き、自爆テロで大統領を暗殺するよう組織に命じられるのです。
さまざまな人々の欲望が渦巻くアイドル・コンテスト。しかも、現実に存在する番組や登場人物にそっくりとくれば、笑わずにはいられません。アイドルになった先には何があるのか? アメリカの未来はどこへ向かうのか? アイドルと政治が絡み合うこの作品、間違いなく今のアメリカをとっても上手く風刺していると思います。
(このコラムの更新は毎週火曜日です)
April 25, 2006 01:58 PM
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