2006年02月28日

「アクション・ヒーロー」ハリソン

 「アクション・ヒーロー」ハリソン・フォードが久々にスクリーンに帰ってきた。

 「ハリウッド的殺人事件」以来3年ぶりとなる新作映画「ファイアーウォール」で、人質に取られた家族を救うために自らが働く銀行のセキュリティーシステムに侵入し、身代金を盗み出す父親を好演している。

 「スター・ウォーズ」シリーズの大ヒットでハリウッドスターの仲間入りを果たしたハリソン。80年代は「インディ・ジョーンズ」シリーズや「ブレード・ランナー」などに立て続けに出演し、アクションスターとしての地位を確立。90年に入っても「パトリオット・ゲーム」「エアフォース・ワン」「6デイズ/7ナイツ」などアクション映画に出演する一方で、サスペンスやコメディー、社会派作品など幅広いジャンルで活躍してきた。30年以上に渡って、ハリウッドのトップスターに君臨し続けるハリソンは近年、「私はアクションスターではない」とインタビューで言い続けている。

 ハリソンによると、アクションはスタントマンの仕事であり、自分はフィジカルなアクションを演じているに過ぎないのだという。アクションとは高いところから飛び降りたり、車をクラッシュさせたり、火の中に飛び込んだりという身体的に危険が伴うことを意味するのだとハリソンは力説する。フィジカル・アクションとは、走ったり、殴る蹴るなどのファイトシーンのことを意味する。今作の最大の見せ場であるラストのファイトシーンは、スタントコーディネーターと共に振り付けを考え、自らが演じたというほど気合の入れようで、若手俳優ポール・ベタニー相手に派手な立ち回りを熱演している。

 ハリソンは長年のキャリアの中できっと誰よも年齢という大きな壁を感じていることだろう。「最近は私の名前の横にミステリアスな数字(年齢)が並んでいることが多い。そしてそれは、私にはもうアクション・シーンを演じることはできないということを意味しているかのようだ」とある雑誌のインタビューで語っている。

 きっと63歳になった今でも、バリバリにアクション・シーンを演じられる、まだまだ「インディ・ジョーンズ」だってやれるんだ、ということが言いたかったのではないだろうか。

 最初に「インディ・ジョーンズ4」製作の噂が出たのは今から13年前。51歳の時だった。当時、すでに多くの人が年齢的な問題から実現は難しいと思っていたはずだ。それでもハリソンは意欲を捨てなかった。メディアに問われる度に「ジョージ(・ルーカス監督)が脚本を準備している。再びインディ・ジョーンズを演じることを楽しみにしている」と語り続けおり、早ければ年内、遅くても来年にはクランクインする予定と言われている。

 「インディ・ジョーンズ4」で再びどんなタフガイぶりを発揮してくれるか楽しみなところだが、実際のハリソンはそんな「タフガイ」のイメージはまったくない。「ファイアーウォール」の取材で会ったグレーヘアーのハリソンは、タフガイというよりもクールで寡黙なイメージ。これまで対面で6度、電話でもインタビューをしているが、そのたびに「気難しく、もっともインタビューが難しい俳優の1人」という印象を受ける。ボソボソと話す声は聞き取り悪い上に、多くを語ろうとしないからだ。例えばこんな具合だ。

 Q:身体を鍛えるために普段どんなことをしていますか?

 「何もしていない。テニスを少しやるだけ」

 Q:役作りのためのワークアウトはしなかったの?

 「していない」

 Q:アクションは今後も続けていくつもり?

 「イエス」

 Q:いつまでアクションスターを続けていくつもりですか?

 「私はアクションスターではない」

 Q:自信の作品の中で一番好きなものは?

 「ない」

 そんなハリソンだが、共演者やスタッフらは誰もが口をそろえて「ユニークで、面白い人物」と評する。面白いハリソンなんて想像ができないが、さらりとジョークを言って周囲を笑わせることが得意らしい。時には相手女優の前でズボンを下ろして笑いを取る子供みたいな悪戯をすることさえあるのだとか。

 インタビューは苦手なのでしょうが、面白い本当のハリソン・フォードをぜひ1度、見てみたいものです。そしてスクリーンでも「タフガイ」「アクション・ヒーロー」のイメージを覆すお茶目なキャラで思いっきりはじけたハリソンも見てみたいですね。

February 28, 2006 03:56 PM | トラックバック (2)

2006年02月21日

アカデミー賞で証明される「同性愛」

 3月5日に発表される第78回アカデミー賞で最有力候補に挙げられているのは、同性愛問題に真正面から挑んだ「ブロークバック・マウンテン」。作品賞、監督賞をはじめ主演男優賞など主要8部門にノミネートされており、同性愛者を演じたヒース・レジャーとジェイク・ギレンホールも熱い注目を集めています。

 ハリウッドでは長年にわたって同性愛は描かれぬ最後のタブーと言われてきました。同性愛者が登場する映画は多々存在するものの、いずれも同性愛そのものを真正面から捉えたものは少なく、どちらかと言うとストーリーの本筋とはあまり関係ないか、道化として描かれる差別的なものが多かったように思います。または「男同士の友情」という名にすり替えてそれとなく描く苦肉の策のいずれかです。そんな中「ブロークバック・マウンテン」の大成功の影響でブラッド・ピットまでが、「次回作では同性愛者の役を演じたい」と発言するなど、ハリウッドでは密かに「同性愛」ブームに沸いています。人気俳優がゲイ役を演じることはキャリアにマイナスイメージを与えるとの見方が強かったのですが、ここにきてそんな先入観は払拭され始めているようです。

 しかし、ハリウッドでは今だに人気スターが自ら「同性愛者」であることをカミングアウトすることはタブー。実生活で同性愛者であることを認めることは、役で演じるのとは違いイメージダウンは避けられないと考えられているからです。英国ではエルトン・ジョンが長年のパートナーと結婚、ジョージ・マイケルはゲイであることを告白する本を出版しています。しかし、ハリウッドでは今だにそれは許されないことと見なされているのです。

 ウエスト・ハリウッドに住む人々の3分の1は同性愛者などというデータも出ているほど業界関係者に同性愛者が多いことは有名。もちろんハリウッドスターも例外ではなく、同性愛者と噂される人物はたくさんいます。タブロイド誌でも度々、「Who’s Gey?(ゲイは誰)」という特集記事を組むほどで、これまで噂されたスターの名前をあげればキリがありません。しかし、彼らのほとんどがそれを認めることは決してないのです。

 これまで同性愛が噂されたことのある大物俳優の名前は、トム・クルーズ、キアヌ・リーブス、ジョディー・フォスター、リチャード・ギア、アンジェリーナ・ジョリー、ケビン・スペイシー…。他にも「太陽と月に背いて」(95年)で同性愛の役を演じたレオナルド・ディカプリオなどもその1人です。

 リベラルが多く、同性愛についても寛大であると思われがちのハリウッドですが、意外にもこの件に関してはとても保守的なのです。自らゲイであることをカミングアウトしている英俳優イアン・マッケランが、ベルリン映画祭で金熊功労賞を受賞した際のスピーチでこう語っています。「アメリカでは映画俳優がゲイであることをカミングアウトすることはとても難しいこと。ニューヨークの舞台俳優は大丈夫なのに、カリフォルニアはより考え方が古い」。

 ストレートのヒースがゲイを演じることができるように、自分だってストレートな男を演じられるというイアン。「演じることにゲイもストレートも関係ない」という彼の言葉は、きっと今年のアカデミー賞でヒースやジェイクがオスカー像を手にして証明してくれることでしょう。

February 21, 2006 03:55 PM | トラックバック (6)

2006年02月14日

ワイオミング州に集まる注目

 今年のアカデミー賞で最多8部門にノミネートされ、作品賞の最有力候補に挙げられている「ブロークバック・マウンテン」の舞台となっているワイオミング州が、にわかに注目を集めています。

 地元のビジネス協会の旅行・観光局には映画を見たというファンから、ロケ地の問い合わせが相次いでいるのです。ネットや電話での問い合わせはすでに数百件にのぼり、中西部の静かな田舎町に住む人々を驚かせています。

 それもそのはず。ワイオミング州と聞いてまっさきに思いつくのはイエロー・ストーン国立公園くらい。他には観光名所はなく、主な産業は農業と鉱工業。別名カウボーイ州と呼ばれ、映画同様にカウボーイたちが大勢住むことで知られていますが、観光地としての魅力は乏しいのです。

 しかも「ブロークバック・マウンテン」の舞台はワイオミング州なのですが、実際に撮影されたのはカナダ。ファンの多くは撮影地がワイオミングでないことは知っているはず。それでもなお、あの映画の舞台となったブロークバック・マウンテンを訪れたいと希望しているのだとか。

 なぜ、そんなワイオミングが注目を集めているのでしょう? 映画を見た人は、とにかくブロークバック・マウンテンの山々が美しく描かれていることに感動します。ヒース・レジャーとジェイク・ギレンホール演じる2人のカウボーイの美しい愛は、まさにブロークバック・マウンテン抜きには語れないほど、自然とマッチしています。CG映画の全盛期において、本物の美しい自然が背景に描かれているだけに、多くのファンはあの美しい景色を一目見てみたいと思うのは当然なのかもしれません。

 映画の舞台となった土地が有名になるのはよくあります。最近では昨年のアカデミー賞にノミネートされた「サイドウェイ」の舞台となったカリフォルニア州サンタバーバラのワイナリーが脚光を浴び、観光客が大勢押しかけ、映画のロケ地をめぐるツアーも大繁盛しました。他にもニュージーランドにある「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのロケ地が観光客向けに有料公開されたり、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」や数々の西部劇映画が撮影されたモニュメントバレー、ロバート・レッドフォード監督の「リバー・ランズ・スルー・イット」(92年)が撮影されたモンタナ州リビングストンなどは、今も多くの観光客が訪れる人気の名所となっています。

 旅行・観光部門責任者のミッチェル・ハワード氏は、映画の影響に驚いているといいますが、同時に今後は観光産業にも力を入れていく計画であると語っています。アン・リー監督は撮影前に同州を視察しましたが、ほとんど映画のロケを行った経験がないため、地元に充分な人材がいません。ロサンゼルスから大勢のスタッフや機材を運びこまなければならないために莫大な費用が掛かることから、同地での撮影を断念しました。

 これに対し、今後は観光業者を中心にロケ誘致にも力を入れることを計画。映画スタッフを養成するプログラムの始動も視野に入れているほか、州も50万ドル以上の予算の映画を撮影してくれた場合、15%を還元する法案が検討され始めているといいます。近い将来、ワイオミングは映画ロケ地としてハリウッド関係者から脚光を浴びることになるかもしれません。

 最近はコスト面の問題からカナダやニュージーランドなど海外にロケ地を求める映画が多いようです。でも、本来は作品の舞台となった場所で撮影することが一番なはず。最近「SAYURI」を見た時も日本を舞台にした作品なのだからやはり日本でロケすべきと感じました。いくら他に似た場所を探しても、そっくりなセットを作っても、やはりどこかでうそっぽさが出てしまいます。

 本物のブロークバック・マウンテンを訪れたことはないので、映画の中の風景との比較はできません。でも、本物のブロークバック・マウンテンを訪れたファンが、映画の中の景色と違っていたとがっかりしないことを願っています。

February 14, 2006 03:54 PM | トラックバック (2)

2006年02月07日

フレッシュなアカデミー賞候補

 今年もアカデミー賞候補が発表されました。各俳優賞にノミネートされた20人のうち、13人が初ノミネートというフレッシュな顔ぶれ。そして作品賞にもインディペンデント系の作品が並んだ今年のアカデミー賞は、例年とは一味違う賞レースが楽しめそうな予感です。

 やはり注目すべきは作品賞。保守的なイメージが強いアカデミー賞で史上初となるゲイの恋愛映画「ブロークバック・マウンテン」がノミネートされたことは大きな話題となっています。

 アメリカの銃問題に取り組んだ「ボーリング・フォー・コロンバイン」が長編ドキュメンタリー賞を受賞たり、ハル・ベリーがアフリカ系黒人として初となる主演女優賞を受賞するなど、伝統を守り保守的だと言われてきたアカデミー賞にも近年は変化の兆しが見えていました。しかし、一昨年はキリストの最期を描いた「パッション」や反ブッシュ政権を描いた「華氏911」がノミネートを逃し、再び保守的なアカデミー賞の印象を強めていただけに、この作品が選ばれたことは大いに評価されることでしょう。

 そしてもう1作品「クラッシュ」のノミネートにも大いに驚きの声があがっています。アカデミー賞レースに不利と言われる夏に公開されたこの作品が、ゴールデン・グローブ賞候補から漏れながらもオスカーレースに返り咲いたからです。それどころか今や最有力候補「ブロークバック・マウンテン」の対抗馬として、どこまで食い込めるかが注目されています。その快進撃の裏には、実は地道な努力と戦略があったのです。

 アカデミー賞を狙う作品の多くは、11月から年末にかけて公開されることが多いです。と言うのも、前哨戦と呼ばれる各映画賞がスタートするのは12月。ここでアピールするためには、出来うる限り選考時期に近いタイミングで公開した方が有利であることは明白だからです。公開前後はメディアへの露出も多く、自然と作品への注目が集まるばかりか、選考する人々の記憶にも新しい方が有利だと見られているからです。そのため、この時期はオスカー狙いの新作映画が次々と公開されるのです。

 夏公開ですでに劇場上映が終了している「クラッシュ」は、当然人々の記憶から薄れているため、再び作品を見てもらい、選考の対象に入れてもらうべく大々的なDVD配布キャンペーンが行われたのです。各スタジオはアカデミー賞を選考する会員に「スクリーナー」と呼ばれるDVDを無料配布しています。その枚数は通常、1~2万枚と言われていますが、「クラッシュ」を配給したライオンズゲートはその10倍近い13万枚ものDVDを用意して配りまくったのです。

 俳優部門では、「ブロークバック・マウンテン」からはヒース・レジャーが主演男優賞、ジェイク・ギレンホールが助演男優賞、ミシェル・ウィリアムズが助演女優賞にノミネートされており、トリプル受賞も期待されるところ。また、ジョージ・クルーニーが「シリアナ」で助演男優賞に、そして「グッドナイト・アンド・グッドラック」で監督賞にノミネートされており、史上初となる俳優部門と監督部門でのダブル受賞も期待されます。

 授賞式は3月5日にハリウッドで行われます。今年は誰がオスカーを手にするのか、今から楽しみです。

February 7, 2006 03:52 PM | トラックバック (8)