2006年01月31日
「ミュンヘン」アカデミー賞受賞なるか
What’s the matter with ’Munich’?
先日のロサンゼルス・タイムズ紙にこんな見出しが躍りました。「ミュンヘン」どうしちゃったの? という意味ですが、「ミュンヘン」とはスティーブン・スピルバーグ監督が72年のミュンヘン五輪で起きたパレスチナ人ゲリラによるイスラエル選手団襲撃事件のその後を描いた最新作です。
そう。前評判のわりに興行成績が振るわず、スピルバーグ監督作品の中でワースト1になりそうな予感さえあるのです。そればかりか、今年のオスカー最有力候補と言われながら、前哨戦のゴールデン・グローブ賞では監督賞にノミネートはされたものの、期待された作品賞では候補にすら入ることができなかったのです。オスカーのノミネート発表を目前に、暗雲が立ち込めているのです。
29日現在の全米興行収入は、4050万ドル。スピルバーグ作品のワースト1は、「アミスタッド」(97年)の4420万ドルで、これを超えられるかどうかさえ危ぶむ声もあるほどなのです。ユダヤ人のホロコーストを描き、アカデミー賞で作品賞など7部門を制した「シンドラーのリスト」(93年)は9610万ドル、ノルマンディ上陸作戦を描いてアカデミー賞監督賞を受賞した「プライベート・ライアン」(98年)は2億1620万ドルを稼いでいる。仮にアカデミー賞を受賞すれば、それが追い風となり、興行成績の上昇も見込めるが、ノミネートされなかった場合は最悪の結果となると予想されています。
ちなみにスピルバーグ監督作品の売り上げベスト3は、「E.T.」(4億3500万ドル)「ジュラシック・パーク」(3億5710万ドル)「ジョーズ」(2億6000万ドル)。監督作16作品中、7作品が2億ドルを突破しており、1億ドルに満たなかった作品は今作も含めて5作品だけ。この結果からも、いかに「ミュンヘン」の興行がふるっていないか想像できるでしょう。
理由はいくつか挙げられています。1つは、公開前にほとんど宣伝をしなかったこと。そうしてもう1つは、スピルバーグ作品の中ではもっとも政治色が強く、中東のテロ問題という難しい題材を扱っただけに、方々で論争が起きたこと。ハリウッドでは通常、公開前に多額の宣伝費を投じて大々的なキャンペーンを行うのが恒例です。しかし今回、スピルバーグ監督はほとんど取材には応じず、大々的な宣伝も一切行われなかったのです。そればかりか、プレス向けの試写も行わず、内容はベールに包まれたまま公開を迎えました。ゴールデン・グローブ賞を選考するハリウッド外国記者協会の会員向けの試写も、ギリギリのタイミングで1度行われたのみでした。試写を見られなかった会員へのDVDの配布もなく、およそ半分の人が試写を見られないまま投票日を迎えたことは、大きなマイナス要素となったようです。
安易に取材を受けて誤解や論争の火種となることを避けるため、取材規制を設けたスピルバーグ監督でしたが、それでも公開前からイスラエルやパレスチナはもちろん世界各国で議論が巻き起こりました。イスラエルの批評家からは、報復劇として描かれていることに対し、事実に反すると厳しい批判の声が出ている他、事件の舞台となったドイツ国内でもサッカーW杯ドイツ大会の開催を控えていることから再び過去の汚点が注目されることに対して、大きな論争が起きているそうです。
これらの批判に対し、「この作品は平和への祈り」と語っているスピルバーグ監督。この事件があった年に生まれた私は、事件を知りません。描写が不正確だという批判もありますが、良質な作品が極端に少なかった昨年、私にとってこの「ミュンヘン」は05年ベスト3に入る秀作です。
アカデミー賞のノミネート発表は1月31日。果たして期待どおりノミネートされ、世間に作品の良さをアピールすることができるのでしょうか。そして2度目となる作品賞を受賞できるのか、多いに注目です。
January 31, 2006 03:49 PM | トラックバック (18)
2006年01月24日
ソダーバーグ監督の仰天プラン
「オーシャンズ11」「トラフィック」などで知られるスティーブン・ソダーバーグ監督が昨年、映画館の観客動員数離れの対策として、低予算映画を制作して劇場公開と同時にDVDを発売し、さらにペーパービューでテレビ放送もすると発表。そしてHDカメラで撮影する作品6本の契約を結んだ。ついにその第1弾となる「バブル」が27日に初お目見えする。
昨年のハリウッドの興行収入は入場料の値上げもあり、前年比5%のダウンですんだが、観客動員数そのものは前年比で8%以上ダウン。昨年は期待された大作の不振や、良質の作品が極端に少なかったことなどが主な原因として指摘されているが、ここ数年観客動員数は右肩下がりなのは事実。DVDの普及や海賊版の存在、入場料の高騰などが根本的な理由にあげられる中で、ソダーバーグ監督があえて天敵であるはずのDVDを劇場公開と同時に発売するという常識破りの策に出たことは、少なからず論議を呼んでいる。
低予算のインディペンデント作品を得意とするソダーバーグ監督は、今のハリウッドの映画ビジネスは「時代遅れ」と評する。そして打ち出した仰天プランは、伝統的なハリウッド映画を作ってきた関係者や観客に果たして受け入れられるのだろうか? そして、ハリウッド映画の未来はどうなるのだろう?
この数日、関係者の間ではこの話題で持ちきりだ。もちろん、最近のハリウッド映画は公開されてからDVDが発売されるまでの期間が昔に比べてうんと短くなった。たとえ劇場で見逃しても数カ月後には、レンタルビデオ店で借りることができる。当然、劇場へ向かう足は自然と鈍くなる。現に1本の作品の総収入の約半分が、DVDからの売り上げだという。つまり、スタジオは劇場で公開し、海外へ配給し、DVDを発売し、テレビなどに放映権を売ってやっと利益を得ることができるというわけだ。
しかし、仮に公開と同時にDVDを入手することができれば、ビジネスとしては成功するかもしれないが、劇場で映画を見る価値はほとんどなくなるだろう。好きな時に、自宅でくつろぎながらお手ごろに映画を見られるなら、家庭のテレビでは味わうことが出来ないほどの迫力映像でもない限り、多くの観客にとってわざわざ10ドル前後のお金を払ってまで劇場に足を運ぶ理由はなくなるはずだ。
「シックス・センス」などで知られるM・ナイト・シャマラン監督はすぐに、「自分の映画が劇場で鑑賞されないなら、映画は作らない。映画は映画館で見るものだ」と公の場でソダーバーグを非難した。そして公開を目前にして多くの巨匠たちが、ついにソダーバーグ非難を始めた。
ティム・バートン監督はロサンゼルス・タイムズ紙の取材で、「映画はビジネスではあることは事実だが、芸術作品として扱われるべきもの」とコメントし、オスカー監督ロン・ハワードは、「劇場で映画を、見ることは最高の体験。(劇場映画は)守られるべき」と語っている。ウッディー・アレン監督は、HDカメラを使用して撮影した映像をテレビで公開することの利点は認める一方で、彼のやり方には異論があると語っている。マイケル・マン監督は、「問題はテクノロジーの進化に伴い、スタジオに様々な選択肢ができたこと」とコメント。自身の作品の公開については、「現実的な方法ではない」と一蹴している。一方で、マーティン・スコセッシ監督の広報担当者は「公にコメントする気はない」と話し、間接的に批判的な態度を示す監督も多い。
そう、映画は本来、娯楽であると同時に芸術作品でもあるべきもの。それが、昨今のハリウッド映画はビジネス面だけが優先され、ヒットが確実視される作品が好まれ、人気スターを使っただけの内容の薄い作品や、ヒット作の続編ばかりが目立つようになってしまった。つまり、映画館で鑑賞したいと観客に思わせる作品を製作せずに、手っ取り早く稼げる作品ばかりを優先してきたスタジオが、自らの首を絞めてきた結果ではないだろうか。
「バブル」が、観客にどこまで受け入れられるのかは未知数だ。その結果は1週間後にならないと分からない。しかし、個人的には映画は劇場で見るからこそ、価値があるのだと思っている。劇場に足を運んでまでも、見たいと観客に思わせるような作品を作り、昔のハリウッドの栄光を取り戻して欲しいと心から願ってやまない。
January 24, 2006 03:39 PM | トラックバック (1)
2006年01月17日
A・ジョリーの男性遍歴は…
今年もまだ始まったばかりですが、ハリウッドのビックカップルに待望のベイビー誕生というビッグニュースが飛び込んできました。
アンジェリーナ・ジョリーが、かねてから交際が噂されてきたブラッド・ピットの子どもを妊娠していることが発覚したのです。2人は昨年、「Mr.&Mrs.スミス」の共演がきっかけでロマンスに発展。互いに交際については公には認めていなかったものの、世界各国でデートを重ねる姿が度々目撃されており、事実上家族同然の付き合いをしていることから、結婚秒読みと言われてきました。
ハリウッドきっての美男美女。そして、アンジェリーナは国連親善大使を務めるなど才女としても知られています。すでに2人のベイビーを予想した合成写真などもでまわっており、今夏の出産が待ち遠しい限りです。
ところで、アンジェリーナと言えば共演者キラーとして有名です。ブラピとも「Mr.&Mrs.スミス」の共演がきっかけだったわけですが、これまでも性別、年齢、国籍を問わず、共演者たちを次々と落としてきたという過去があるのです。
そんな魔性の女優アンジェリーナの過去の男性遍歴を一挙まとめて紹介しちゃいます。
まずは「サイバー・ネット」(95年)で共演したジェイミー・リー・ミラー。共演がきっかけで交際が始まり、映画が公開された翌年に結婚するも3年後に離婚しています。しかし、最近になってツーショットが目撃され、復縁も噂されていました。翌年にはドラマ「Foxfire」(96年)で共演した女優ジェニー・シミズと恋仲に。最近もジェニーが「今でも付き合っている」と米タブロイド誌に2人の関係を暴露したばかり。そして97年には「不法執刀」で共演したティモシー・ハットンと、99年には「狂っちゃいいけないぜ」で共演したビリー・ボブ・ソートンと恋仲となり、翌年2度目の結婚。お互いの血を小瓶に入れてネックレスにするなどその熱愛ぶりも大いに話題になったが、カンボジアから長男マドックス君を養子に迎えるとアンジェリーナの興味は、ビリーから子どもへと変化。その結果、3年後に離婚することに。
その後も「ポワゾン」(01年)で共演したアントニオ・バンデラスとの不倫が噂されたり、「テイキング・ライブス」(04年)で共演したオリバー・マルチネス、イーサン・ホークスとの相次ぐ交際、「アレキサンダー」(04年)で共演したコリン・ファレル、ジャレッド・レトと次々と共演者を落としていったのです。
最後の大物ブラピとは、めでたく初めての子供を妊娠。結婚も秒読みですが、果たして自由奔放なアンジェリーナだけに再び共演者と浮気なんてことにならないと良いのですが…。ちなみに現在は、ドミニカ共和国でロバート・デニーロが監督を務める「The Good Shepherd」でマット・デイモンと共演中。
まだまだラブラブな2人ですし、新婚のマットとは噂になることはないと思いますが、ベイビー誕生までしばらくはブラピとアンジェリーナの話題で持ちきりになりそうです。
January 17, 2006 03:36 PM | トラックバック (6)
2006年01月10日
ゲイの恋愛映画vs政治映画
いよいよオスカーシーズンです。今年のオスカーはゲイの恋愛映画vs政治映画という様相になりそうな予感です。
昨年発表されたゴールデン・グローブ賞で最多7部門に輝いた「ブロークバック・マウンテン」が、前哨戦を制して有力候補に急浮上しています。そしてそれに対抗しているのが、本格派の政治映画4本です。石油をめぐる米国とアラブ王族とテロリストの本当の関係を描いた「シリアナ」は、ニューヨーク・オンライン映画評論家賞の候補になったほか、ロサンゼルス・タイムズ紙など有力紙でも絶賛されています。
ミュンヘン五輪のイスラエル選手団殺害事件に迫った「ミュンヘン」は、イスラエル総領事から「表面的だ」と非難を受けたというマイナスな報道もありましたが、スピルバーグ作品の中でも傑作との呼び声が高いのです。ゴールデン・グローブ賞ではまさかの落選となりましたが、監督賞ではノミネートを果たしています。
マッカーシズムに立ち向かったニュースキャスターを描いた「グッドナイト&グッドラック」は、ワシントン映画評論家協会賞の候補など全米の評論家から高い評価を得ており、監督2作品目となったジョージ・クルーニーは監督賞でも候補入りする可能性が高いとみられています。
「シティ・オブ・ゴッド」で脚光を浴びたフェルナンド・メイレレス監督のハリウッド映画デビュー作となった「ザ・コンスタント・ガーデナー」は、ナイロビを舞台に巨大な陰謀が絡み合うスケールの大きな物語。各批評家賞で候補にあがっており、ブラジルの新鋭に期待が高まっています。
「シリアナ」では製作と主演を、ベネチア映画祭で主演男優賞と脚本賞をダブル受賞した「グッドナイト・-」では監督もこなしたジョージ・クルーニーは、両作品でのノミネートの可能性も大。「ミュンヘン」のスティーブン・スピルバーグ監督も作品賞、監督賞でのダブル受賞も期待されています。
昨年のハリウッドはなぜか、フィクションの政治映画が量産された1年だっただけに、これは当然の成り行きという気もしますが、有力候補の呼び名が高かった作品が、次々と戦線離脱するハプニングに見舞われたことも要因の1つになっているのかもしれません。
「シカゴ」のロブ・マーシャル監督の期待作「SAYURI」やピーター・ジャクソンがリメークした「キング・コング」、オスカー俳優ラッセル・クロウとロン・ハワードがコンビを組んだ「シンデレラマン」、イギリス入植者と米国先住民のインディアンとの衝突を描いた「ニューワールド」など有力候補作品が、アカデミー賞の前哨戦と言われるゴールデン・グローブ賞のノミネートから漏れるという大混乱…。
もはやどの作品、誰がオスカーに輝いてもおかしくない今年のアカデミー賞。果たして大方の予想通り、「ブロークバック・マウンテン」が輝くのか? それとも、スピルバーグ監督が「プライベート・ライアン」以来の受賞となるのか? ジョージ・クルーニーの2作品でのダブル受賞はありえるのか? はたまた、敗者復活の可能性は? 31日のノミネート発表が楽しみです。
January 10, 2006 03:31 PM | トラックバック (2)
2006年01月03日
06年の注目作品まとめて先取り
05年のハリウッドは、史上最低の興行収入記録を更新。期待作や大作が次々と大コケするなど、ハリウッド映画の危機が叫ばれ続けた1年でした。
総観客動員数は前年から6%減少と見積もられ、3年連続で前年比マイナスとなりました。興行収入総額でも昨年から5億ドル減の87億ドルと振るわず、米国内で2億ドルの興行収入を記録した6作品のうち3億ドルに到達したのは「スターウォーズ・エピソード3 シスの復讐」のみという何ともお寒い年でした。
そんなハリウッドですが、06年は人気シリーズの復活やリメイク、続編など話題作が満載です。そこで今年の注目作品を一挙まとめて先取り紹介します。
還暦を迎えるかつてのアクションスター、シルベスタ・スタローンが、16年ぶりとなる「ロッキー6」、18年ぶりの「ランボー4」の2作品で復活を果たします。「ロッキー」では監督、脚本、主演と3役をこなし、「ランボー」ではトレードマークのヘッドバンドと機関銃でカムバックを果たすと明言しています。
昨年死去したアメリカのヒーロー、クリストファー・リーブ主演で人気を博した「スーパーマン」シリーズも「スーパーマン・リターンズ」として19年ぶりに復活。トム・クルーズ主演の人気シリーズ「ミッション・インポッシブル3」もいよいよ完成で春公開を待つばかりです。他にも007シリーズ最新作「カジノ・ロワイアル」、3億ドル超える大ヒットとなった「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」(03年)の続編、シャロン・ストーンが妖艶な殺人容疑者を演じて出世作となった「氷の微笑」(92年)の続編、ケイト・ベッキンセールがヴァンパイアに扮した「アンダーワールド」(03年)の続編、ブルース・ウィリスの「ダイハード4」と、とにかくヒット作の続編が目白押しです。
注目リメイク作品は、72年に制作された「ポセイドン・アドベンチャー」の34年ぶりのリメイク「ポセイドン」です。大西洋を航海中の豪華客船が転覆。乗客が生き残りをかけて脱出するという物語は、ワーナーブラザーズのスタジオで巨大なセットが組まれて撮影されました。また、80年代の人気テレビシリーズ「マイアミ・バイス」が、オスカー俳優ジェイミー・フォックスとコリン・ファレルの黄金コンビで映画化されます。
大ベストセラーとなった歴史ミステリー小説の映画化「ダ・ヴィンチ・コード」やハリソン・フォードの3年ぶりの主演作「ファイアーウォール」、キアヌ・リーブス主演の実写をアニメにした「スキャナー・ダークリー」なども話題となっています。
こうしてみると、80年代のヒット作の続編やリメイクが目立っています。「80年代の再来」と叫ばれる昨今ですが、起死回生を狙うハリウッドを救うのはロッキー? ランボー? それとも、スーパーマンでしょうか?
January 3, 2006 03:24 PM | トラックバック (9)
