2005年11月08日

「9・11」映画化に賛否両論

 アメリカを震撼させた同時多発テロから丸4年。すでに歴史の一部になりつつあるこの「9・11」を、ハリウッドが映画化する動きがここにきて活発化しています。先陣を切ったのは、社会派監督として知られるオリバー・ストーンがメガホンを取る作品(タイトル未定)。救出作業中に世界貿易センタービルの崩壊でがれきに閉じ込められながらも、懸命に救出活動を続けた2人の警察官の活躍を描いたもので、ニコラス・ケイジ主演で撮影がスタートしたばかり。

 「ニュースの天才」で知られるビリー・レイ監督は、救急隊員の救出劇を描いたノンフィクション「102ミニッツ(原題)」の映画化の企画を進行中。1機目の飛行機が世界貿易センタービルに激突した午前8時46分からノースタワーが崩壊する10時28分までの102分間の救出劇を生存者や目撃者の証言とともに再現した作品。いずれも来年公開が予定されています。

 そしてもう1作品。ユニバーサル・スタジオも、テロでハイジャックされ、ペンシルベニア州ピッツバーグ郊外に墜落したユナイテッド93便を題材にした「フライト93(原題)」の制作を発表しています。こちらはハイジャックされてから墜落するまでの90分間の機内の様子を再現する内容。

 これまで映画化はタブー視されてきたこの「9・11」を、なぜハリウッドは今になって映画しようと動き出したのか? 1つには、来年9月11日で5周年を迎えることから、そこに照準をあわせて公開しようとしていることが理由にあげられています。しかし、当然ながら被害者やその遺族らの傷がまだ癒えていないこの時期に映画化することに反発する声が多いことも事実です。

 エンターテインメント誌の読者アンケートでは、55%の人が「9・11をハリウッドがお金儲けに利用している」と答えており、生存者がゼロで誰にも真実が分からない「フライト93」の映画化は無責任だと59%が回答しています。また、スティーブン・スピルバーグ監督は早くから、この「9・11」を映画化するつもりはないと否定的な意見を示しており、業界内にも映画化に反対する意見はあります。

 ハリウッドは、これまでも歴史上に起きた事件や戦争を題材とした作品を数多く生み出しています。しかし、まだ完全に歴史として埋もれたわけではない「9・11」を描くことは、ある意味で大きなチャレンジであることは間違いありません。娯楽性を薄め、どこまで真実を伝えることができるかということが、一番の問題点となることでしょう。

 ハリウッドが過去に作ってきた多くの歴史作品は、ノルマンディー上陸作戦を舞台にした「プライベート・ライアン」、真珠湾攻撃を描いた「パール・ハーバー」、ベトナム戦争を描いた「プラトーン」など単にドキュメンタリー的な要素の羅列ではなく、その出来事の中に隠されて埋もれていた知られざる過去や多少事実と異なるロマンスなどに焦点を当て、ドラマチックに描いたものが多いはず。

 この「9・11」もこれらと同様の手法で描かれるのかどうかはまだ分かりません。「9・11」という出来事を人々の心から風化させないためにも、真実を伝えることは必要。しかし、実際に起きた出来事だからと言って必ずしも100%ドキュメンタリーでなければいけないということはないはずです。そこに事実を歪めない程度の多少の脚色があっても良いのではないでしょうか。映画だから描ける「9・11」というものを見てみたいと思います。

November 8, 2005 01:11 PM

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