2005年05月10日

ホラー映画ブームの背景

 ハリウッドでは今年は、ホラー映画がちょっとしたブームになっています。

 「ジャパニーズホラー」がブームであるということは以前のこのコラムでも書きましたが(バックナンバー参照)、今夏はなんと前年の2倍となる12本のホラー映画が公開を控えているというのです。その中には過去のヒット作やジャパニーズホラーのリメークももちろん含まれています。この数字は「リング」や「呪怨」など「ジャパニーズホラー」ブームが始まったここ数年の中でも、飛び抜けて多い。なぜ、今ホラー映画なのでしょう?

 サマーシーズン最初の週末となった6日にまず公開されたのが、古典ホラーの傑作「肉の蝋人形」のリメーク「蝋人形の館」。ヒルトン姉妹の姉パリス・ヒルトンが出演していると話題になっており、今週末の興行ランキングで初登場2位のまずまずのスタート。今後は「ハイテンション(原題)」「ザ・デビルズ・リジェクト(原題)」「ザ・スケルトン・キー(原題)」をはじめ「仄暗い水の底から」のリメーク「ダーク・ウォーター」などが次々と公開を予定しています。

 「ジャパニーズホラー」の火付け役となった「ザ・リング」の続編「ザ・リング2」は、7574万ドルを超える興行収入を記録するヒットで05年の興行ランキングで5位にランキングしているほか、先月公開された「悪魔の棲む家」のリメーク「アミティヴィル・ホラー(原題)」も6000万ドルを超える興行をあげており、今年すでに公開されたホラー映画は、どれも軒並みヒットしています。そしてこれに続けとばかりに次々とホラー映画が封切られる背景には、イラク戦争が関係しているといわれています。

 精神科医ら専門家は、連日新聞やテレビで報道されるイラク戦争など現実世界の暴力から逃避したい観客の願望がホラーブームの引き金になっていると指摘しているのです。つまり、現実世界で日々目にするバイオレンス(暴力)やテレビや新聞で見る血生臭い映像から逃避するために、人々は映画の中で実在しないゾンビが次々と人間を襲って殺す映像を求めているということのようです。

 しかし、これにはちょっと首をかしげてしまいます。バイオレンスからの現実逃避ならば、映画の中でまで再び血生臭い映像を見て、恐怖を味わいたいのでしょうか? むしろ、まったく架空な世界を描いたSFや平和で単純に笑うことのできるコメディーを求めるのではないでしょうか?

 しかし、どうやらホラー映画は観客がひと通りの恐怖の世界を味わった後で、それでも生きて劇場を後にすることができ、慰めに似た感覚を得ることができるのだとか。

 さらに製作者側の立場からもホラー映画は、通常の大作に比べて低予算でありながら、コアなファンが多いことから、利益回収率が良いという利点があるようです。03年に低予算でまったくの無名俳優ばかりが出演したホラー「マーダー・ライド・ショー」が全世界で1700万ドルの興行収入を記録するヒットとなって、関係者を驚かせたことも、現在のホラーブームに火をつける要因になっているようです。

 大スターを起用しなくとも、収益を充分にあげられるだけの数字が稼げることが分かったハリウッドは、2匹目のドジョウ狙いでホラー映画の製作に次々と乗り出した結果が現在のブームなのだとしても、不思議ではありません。

 それにしても、こんなにホラー映画ばかりを見ていると、現実と映画の境目が分からなくり、逆にゲーム脳ではなく、ホラー脳になってよりバイオレンスな性格になってしまうのではないかと懸念するのは私だけでしょうか…。

May 10, 2005 11:25 AM

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